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(回答先: ユーロ下落一服も終わらぬ財政不安、日本の欧州債投資にも懸念 投稿者 gikou89 日時 2011 年 1 月 14 日 15:52:15)
http://www.toyokeizai.net/business/international/detail/AC/83d14e3f393502ce232b5820e6d09e54/
2010年11月末、EUとIMF(国際通貨基金)が、アイルランドの銀行を救済するために最大850億ユーロを拠出すると約束した。これにより、ヨーロッパの債務危機は終結に向かうのだろうか。
残念ながら、その答えは否だ。おそらく危機はまだその中間点に達しただけである。持続的な高成長を実現できれば債務問題を解決できるだろうが、そうした楽観的なシナリオはありえない。最終的には、1980年代のラテンアメリカの債務危機と同じように、債務償却の波が押し寄せる可能性が高い。
今後は、債務危機に直面する国に対し救済策が講じられることになるはずだ。救済リストの最上位にある国は、ポルトガルである。
同国は、過去10年間の平均成長率が1%を下回っている。労働市場はヨーロッパで最も硬直的であり、多額の公的債務と対外債務を抱えている。ポルトガルは、自国の状況はギリシャほど深刻ではないと主張しているが、その債務水準は極めて解決困難なレベルである。今後数年にわたり、同国は緊縮財政の中でリセッション、もしくは低成長に陥ることが予想される。早晩救済を求める日が訪れるだろう。
スペインの状況はさらに深刻だ。政府には債務返済能力があるといわれているが、地方銀行の債務の大半は返済不能だ。スペインの大きな問題は、アイルランド同様に、政府が民間と地方自治体の債務を引き受けるかどうかである。過去の歴史からして、同国は債務引き受けを選ぶだろう。経済の主要部門が崩壊の瀬戸際にあるとき、政府が傍観の立場をとるのは極めて難しい
ラテンアメリカと同じ道を歩んでいる
しかし、ポルトガルとスペインの救済は、欧州経済危機の最終段階ではない。あくまで危機の序章だ。
ユーロ圏において債務危機に直面した国は、民間債務と公的債務の大幅な整理が不可欠となるだろう。EUとIMFによる救済は問題解決の先送りにすぎない。どんな緩やかな条件の融資であっても、最終的には返済しなければならないのだ。
いわゆるPIGS(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン)は緊縮財政を取る前から成長鈍化に直面しており、80年代にラテンアメリカが経験したような“失われた10年”を経験するはずだ。
ラテンアメリカの再生とダイナミックな成長は、ブレイディ米財務長官が発案した協調的な債務償却計画“ブレイディ・プラン”が実施された、87年以降に実現したものである。これと同じような債務償却を実施することが、ヨーロッパで最も実現性のあるシナリオだ。
債務削減に前向きに取り組もうとしているユーロ圏唯一の指導者はメルケル独首相である。ドイツは、「ヨーロッパには国家の破綻を処理する明確な仕組みが必要だ」と指摘したことで批判を浴びている。多くの専門家や評論家は、ドイツの不用意な声明がなければ、アイルランドはそこまで大きな痛手は受けなかったと非難している。
これは根拠のない批判である。巨額の民間債務、住宅価格の下落、国民所得の10倍以上の対外債務を抱えるアイルランドにとって、事態を打開する容易な方法などない。芝居がかった裏交渉で問題を解決しようとしても、債務問題をさらに悪化させるだけだ。
ユーロ圏は7月、さまざまな危機シナリオの下で銀行の耐久度を調べる大規模な“ストレステスト”を行い、「アイルランドの銀行を含めほぼすべての銀行に問題はない」というお墨付きを与えている。このように現実の厳しさから目をそらすのは、金融危機に対する有効な対策ではない。なぜなら、必要な債務償却を行えば、ヨーロッパの債務問題は処理可能だからである。
その観点からすると、アイルランド救済は、当惑以外の何ものでもない。今回の救済策は、民間債務問題を公的債務問題にすり替えただけだ。民間の債券保有者は資金回収が認められ、民間債務は公的債務に置き換えられた。EUは、国家の債務不履行に簡単に対処できると考えているのだろうか。あるいは、国家の債務不履行は起こらないと夢見ているのだろうか。
民間債務を国有化することにより、EUは80年代のラテンアメリカの債務危機と同じ道を歩み始めたのである。ラテンアメリカでは政府は民間債務を“保証”し、その債務は返済不履行に陥った。最終的にブレイディ・プランの下で、債務の約30%が償却され、4年後に危機は本格的に終息に向かった。
ラテンアメリカ危機の分析結果は、「もし全関係者がより早く債務の一部減免に同意できていれば、ラテンアメリカ諸国はもっと早く成長軌道に戻れたかもしれない」ことを示している。その結果、債権者はもっと多くの資金を回収できていたかもしれない。
EUの各国政府は、お互いに非難し合う段階から次の段階に進む道を模索している。今はより現実的に将来を考える時なのである。その第一歩は、メルケル首相と同じように、ヨーロッパが問題を抱えていることを認めることなのである。
(週刊東洋経済2010年12月25日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
Kenneth Rogoff
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名を馳せる。
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