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(回答先: スパイになるなら潜入先はゴールドマンとハーバード−リン 投稿者 gikou89 日時 2010 年 7 月 22 日 01:19:32)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100720/237485/?P=1
財政問題は、日本だけでなく欧州でも重要なテーマになっている。財政再建を第一に考えれば、歳出を抑えて税収を上げなくてはいけない。しかし景気回復を優先するのなら、税収が少ない中で歳出が増えて財政が悪化していく。財政再建と景気回復はまさに二律背反だ――というのが多くのエコノミストに共通する意見である。
ところが、欧州中央銀行(ECB)のトルシェ総裁は、それを否定して重要なことを言っている。「財政再建をしたら景気が失速するという考え方は間違っている。財政健全化こそ持続的成長につながる」というのである。
ようやくメディアも日本の財政危機の本質を取り上げた
トルシェ総裁の発言はきわめて教科書通りでまっとうな意見だと思う。私も国債の大量発行と財政悪化の問題については、本連載をはじめ近著『民の見えざる手』(小学館)などを含めいろいろなところで繰り返し発言してきた。民主党のバラマキ政策によって財政の悪化に拍車がかかり、このまま突き進めば財政破綻したギリシャ以上に立ち行かなくなる可能性があるのだ、と。
しかし残念ながら、日本のメディアは政府が「消費税増税で財政再建」と言えば「景気に悪影響を及ぼす」と声高に叫ぶだけ。逆に、「景気回復のための財政出動」と言えば、それはそれで「バラマキだ」と批判する。日本の財政をどう立て直すのか、経済をどうやって回復するのかという議論はなく、結局は政府のやることを批判しているだけだ。
ところが、ようやく私が主張するような内容の記事を「日経ビジネス」誌7月12日号が掲載した。「日本倒産 あなたは消費税30%に耐えられますか」という特集を組み、今の財政赤字を解消するには消費税を30%に引き上げなければならないとしている。私にしてみれば「今頃カバーストーリーになっているのも、のん気な話だ」という思いもないではないが、取り上げられないよりはずっと良い。
国債を国民が買わなくなったとき、暴落のトリガーが引かれる
特集で取り上げられている個々のテーマは、これまで私が指摘してきたことに近い。扉ページの写真では、ギリシャ・アイルランド・イギリス・米国・スペイン・フランス・イタリア、そして日本などをドミノに見立て(いずれも累積債務が多く財政赤字がマイナス方向に大きい国ばかり)、それが倒れていく様子を描いている。私がこれからの世界経済を「積み木倒し」と指摘していることと同じイメージだ。
日経ビジネスは「アソシエーション(類推・連想)の危険性」についても指摘している。私の言う「次はどこか?」という連想ゲームのように忍び寄る危機のことだ。現在世界がもっとも懸念しているのはギリシャ危機だが、「ギリシャの次はどこか」と類推が始まると、危機は別の国に飛び火する。つまり、ドバイショックのソブリンリスク(政府債務の信認危機)はギリシャからスペインに飛び火し、各国を巻き込みつつ、やがて日本を襲うというわけである。1990年代後半にタイから始まった通貨危機がインドネシアやマレーシアに飛び火し、やがて韓国に波及してアジア危機になったように、だ。
今回の特集は、私が過去に指摘してきたことを手際よくまとめてくれたような印象がある。ただ日経ビジネス1誌だけではなく、NHKや朝日新聞、日本経済新聞などがもっと国債問題や財政問題を取り上げ、国民の間で議論を深めてほしいものである。残念ながら、まともにこのような主張をしているところはほかにはまだない。
いずれにせよ、今の国債バブルが永遠に続くわけではない。いつかはそのバブルが弾ける。日本の国債がいまだに弾けないのは、基本的に日本国内で消化しているからだ。しかし、現状でも40兆〜50兆円の日本国債を外国人が買っている。その分を空売りされたら国債バブルは弾け、大変なことになる。
私は最近、国債の買い手が躊躇し始めていることを懸念している。日本国民が日本国債を買うことを放棄したとき、空売りは本格的に始まり、暴落のトリガーが引かれる。
最優先すべきは財政規律、その間は社会福祉も後退せざるを得ない
トルシェ総裁が「財政健全化こそ持続的成長につながる」と発言したのに対して、菅直人首相は今年6月のG20(20カ国・地域首脳会議)で「強い経済、強い財政、強い社会保障」などと訳のわからないことを言っている。そもそも、この三つを同時に実現できるのだろうか。歴史を振り返って見ても、そんなことを実現できた政治家は世界を見渡しても誰一人としていない。実現不可能なことを平然と言ってしまうあたりが菅首相の恐ろしいところだ。
企業経営者なら誰でも知っているが、今は選択と集中の時代である。「価格を上げて、コストを下げて、売り上げを伸ばす」というノー天気なことをいう人は少なくなった。“いいとこどり”はできない、ということを皆良く知っている。
菅首相は三つの目標のうち何を一番重視し、どのような優先順序で政治を行おうとしているのか、それを考えなくてはならない。当然財政規律が最優先順序で、その間は社会福祉も後退せざるを得ない、ということである。
カーター以来続いた民主党のバラマキで悪化したアメリカの財政建て直しのためにレーガンは国家による福祉を放棄する施策に打って出た。401k(確定拠出年金)という自己責任の年金制度に税制上の優遇措置を与え、運用は自己責任でやってくれ、と宣(のたも)うたのである。
日本の民主党も野党の頃にはこれに近い年金改革案を標榜していた。すなわち年金を2階建てとし、1階部分は生活保護と一致させ、税金でカバーする。そのために社会保険庁を解体して国税庁と合体させ、歳入庁とする。2階部分は401kと同じく民間部門が自分の計画に沿って拠出し、運用していく、というものである。現行のシステムからの移行期間は20年とし、今までに払い込んできた人に不利にならないようにする、ということまで書かれていた。
長妻昭厚生労働大臣も立案に拘(かか)わっていたわけだが、政権を取り、大臣になってしまったら、社会保険庁の解体も、歳入庁も、2階建て方式の年金も、すべて闇の彼方に消えてしまった
日本も北欧型の高福祉社会を目指すのか
「消えた年金記録」問題をとって見ても、いまだに解決の糸口が見つからない。本件もまた長妻厚労大臣である。民主党が野党だった時代に長妻氏は「ミスター年金」と呼ばれ、自民党に厳しく詰め寄り、当時の桝添要一厚労大臣を追い込んで莫大な金をかけて年金のデータの調査を迫った。ところが自分たちが与党になり、大臣になってみるとこの追究はピタリと止まってしまった。
その理由は簡単である。失われた年金を調べるにはデータベースとの照合が必要だが、基になる情報がデータとして残されていない。社会保険庁の職員が、集金した年金を自分のポケットに隠してしまい入力していないような例が数多(あまた)あるからだ。入力ミスではなく、そもそも入力されていないものもある。これでは照合のしようがない。いくらお金をかけて調査しても、結果が出るはずがない。
そうした問題にフタをして社会保険庁の多くの職員は「日本年金機構」でほとんど同じ数の同じ人間が同じ仕事しているのである。解体ではなく“社名変更”である。昨年の総選挙で圧倒的な支持を受けて衆議院を握った民主党がなぜ支持を失っているのか、評論家の分析は要らない。民主党は姿見鏡を見れば自分で原因が分かるはずである。
「強い経済、強い財政、強い社会保障」の一部を選択し、死ぬ気でやるなら実現も可能だろう。たとえば北欧は租税負担率を50%にして強い財政基盤を作った。だからこそ、強い社会保障を実現できた。国民は税金が高くとも、年金や病気のときの面倒を国がきちんと見てくれるから不満は少ない。貯金をしなくてもイザというときは国が面倒を見てくれるのである。その代わり、決して経済は強くはないし、成長性も高くない。しかし社会は安定し、生活水準は世界最高レベルである。
日本も決意すれば、北欧のような高福祉社会を実現することも可能だろう。であれば、民主党はそういうビジョンを国民に示す必要がある。租税負担率を50%まで高めるが、その代わり安心した生活を提供すると。国民がそれに納得すれば、その道を邁進すればいい。
渡辺代表は正攻法で国会論戦に臨んでほしい
だが、それは現実的には難しい。日本の国民はそこまで国家を信頼していないからだ。また財政規律と社会福祉が二者択一になったときに国家による社会福祉を選択する国民がそれほどいるとも思えない。子ども手当や高校の無償化が評価されなかったのは、それが国民の要求する基本的な政策だ、と認識していないからだと考えられる。
財政規律を回復しないで国債がデフォルト(債務不履行)状態に陥れば、貯金・年金・保険・信託などすべての金融資産が失われるし、また預金封鎖も現実には行われるであろう。日本の歴代の自民党政権がやってきたバラマキの結果がどのようなモノか、これを放置するとどういうことになるのか、国民の金融資産を差し押さえることなしに国債暴落からの回復はあり得ない、ということを国民に分かりやすく説明すれば、「財政建て直し」が最優先という選択をするに決まっている。
それでもまだ福祉、というならやればよい。私もいろいろなところで発表しているが景気回復については税金を使わない方法がまだまだたくさんある。だから最終的には福祉を後回しにしても財政規律という選択になる。財政に関しては前回も触れたようにまず20兆円くらいの予算を削り、その上で消費税に手をつける、という順序であろう。
今後みんなの党がこうした「小さな政府」へのアジェンダ(政策課題)で民主、自民両党に論戦を挑むと思われる。渡辺喜美代表がブレなければ財政再建に向けた、だいたい正しい方向の議論が進むものと思われる。民主党が9月の代表選に向けて分裂し、政局にならない限り、「国債の暴落を防ぐための最後の修羅場:デフォルト国会」となるはずである。
国民の淡い期待と風を受けて第三勢力に上ってきた渡辺代表には、あまり色気を出さずに正攻法(公表されているアジェンダ)で国会論戦に臨んでもらいたいものだ。
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