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(回答先: 【事業仕分け】スパコン凍結を批判したノーベル賞・野依の正体!!---(反米嫌日戦線) 投稿者 梵天 日時 2009 年 12 月 02 日 09:40:18)
専門家の意見「あなた方に言われたくない」--計算基礎科学コンソーシアムの声明はお門違い--(CNET-JAPAN)
公開日時:2009/11/21 23:01 著者:能澤 徹
2009年11月18日、今月13日に行われた事業仕分けで次世代スパコンの来年度予算が「限りなく見送りに近い縮減」と仕分けされたことに反発し、計算基礎科学コンソーシアムという団体が「次世代スーパーコンピュータ開発に関する緊急声明」なるものを発表した。
この声明に関しては、近頃流行りのフレーズを借用するなら、「あなた方に言われたくない」という事である。
前回の拙稿「スパコンTop500 2009-11、国別シェア」で述べたとおり、現在の日本のスパコンの総計算能力は、欧米中の各国に劣り、世界の6位に甘んじている。この原因を作ったのが、国際相場を無視した法外な値段で、税金を湯水のように垂れ流してスパコンを設置し続けてきた、国立大学や独法の研究機構で、この声明を出した大方の連中が属する組織である。
自分、乃至は、自分の属する組織が、税金を無駄に使い、世界の第2位から瞬く間に第6位などという体たらくな状況に転落させてしまっておきながら、この転落の原因には目をつぶって、次世代スパコンの見直しは「我が国の科学技術の進歩を阻害し、国益を大きく損なう」などというのは、それこそ「臍で茶が沸く」ほど可笑しないいがかりなのである。いいかえると、そもそも既に「あなた方」によって「我が国の科学技術の進歩は阻害され、国益を大きく損ねてしまっている」のである。
だからその張本人の「あなた方に言われたくない」のである。
国家基幹科学技術に指定された次世代スパコンのヴェクタ・スカラ両輪論が民間企業の撤退で片輪になってしまっても、「影響は無い」などといってプロジェクトを継続しているほど、メロメロな日本のスパコン戦略である。このいい加減な戦略に基づいて作られる次世代スパコンの完成が1年遅れたからといって、日本の科学技術にインパクトがあるなどということはありえないことである。
従って、まず最初に、この声明は問題の本質を全く理解していない、短絡的な声明であるとい言ってよいと思う。
そもそも、この次世代スパコンの仕分け問題は、次世代スパコンのグランドデザインが出鱈目であったことに端を発した問題であることは明らかなのである。
前々回の拙稿「次世代スパコン、開発の凍結・見直し」で述べたとおり、財務省の論点は、文科省が国家基幹科学技術に指定した次世代スパコンのグランドデザインであるヴェクタ・スララ両輪論の、片方の車輪であるヴェクタ部が途中で脱落・消滅してしまったにも関わらず、影響はほとんど無いと主張し、ヴェクタ部を無視して、スカラ片輪でプランを強行するといった「いい加減な点」にあるのである。
この「いい加減な点」に包括される具体的な内訳は、
第1に、無くなっても影響が無いようなヴェクタ部の設計に何故大金を支払わねばならなかったのかという「グランドデザインのいい加減さ」に対する技術的なクレデビィリティの問題、
第2に、そのいい加減な設計のために数百億円もの多額な税金が浪費されてしまったのに、何のペナルティも責任追及もなされないと言う無責任体制の問題、
第3に、その無責任体制による杜撰な片肺の計画のまま、来年以降も総額約700億円という巨額な税金が要求され、完成後も年間80億円超といわれている巨額な維持経費が要求されるといった、費用対効果無視のバブル・プロジェクト運営に対するクレディビリティの問題などである。
従って、次世代スパコンの仕分けとは、上記の内訳が示しているように、次世代スパコン・プロジェクトの、基本設計には信用が置けないということと、プロジェクト運営そのものにも信用が置けない、ということで、このままでは、到底、残りの開発費約700億円+年間維持費(80億円程度?)×使用年数、と言った巨額な税金を投入することは出来ないということで、根本的なところの見直しは必須、と言うのが財務省の主張である。
なお、仕分けのやり取りの報道で有名になった「世界一位、二位」論争は、大枠では、費用対効果の議論で、財政上余裕の無い昨今、必要以上にお金をかける余裕などは無いという主張であろう。
従って
こうした論点に対し、計算基礎科学コンソーシアムの声明は、前述のとおり、財務省の論点を的確に捉えておらず、お門違いで全く的外れな声明なのである。内容的には、仕分けのときに、噛み合わない回答で、失笑をかっていた文科省・理研の担当者達と同じレベルで、言ってることが抽象的で具体性に欠け、説得力が無く、またまた失笑をかうに足る、お粗末な声明なのである。
もう少し大所高所からのスパコン政策全体を見渡した、データに基づく提言ならまだしも、余りに観念的で、状況認識にも誤りが多く、日本の計算基礎科学の知的レベルってこの程度なの、とため息が出てしまう内容である。
まず声明の始めの部分に、今回の事業仕分けの結論が「我が国の科学技術の進歩を著しく阻害し、国益を大きく損なうものである」との主張があるが、「無くなっても影響が無いようなヴェクタ部を国家基幹科学技術などに指定し、その意味の無いヴェクタ部の設計に巨額な税金を投入した事が」が「我が国の科学技術の<進歩を著しく推進し>、<国益を大きく増進した>」などとは到底思えないし、事実は全くその逆で、NECの撤退で、結局、税金投入が無駄になってしまったわけで、「国民に多大な損害を与えた」事は明白であろう。
仕分けで問題になっているのは、当該声明の中に書かれているような、能天気な一般論・抽象論ではなく、次世代スパコン・プロジェクトと言う具体的な税金プロジェクトがやってきた具体的内容に関しての仕分けである。抽象的なお題目を述べても意味は無いのである。
そして声明には、半導体技術を指し「その基盤にあるのがスーパーコンピュータなどで用いられる最先端の技術であり、それは数年後に広く社会で応用される」などと主張が続くが、これも「えーっと驚く」程、現実を理解していない迷文である。
半導体技術で、今日、「スーパーコンピュータが発祥」で、「数年後に広く社会で応用された」技術があるのなら、ぜひとも、列挙してもらいたいものである。
コンピュータのアーキテクチャならまだしも、ユーザの母集団が極めて小さいスパコンのために特別な半導体技術が開発されたなどといった事例は聞いたことが無い。
ちなみに、1976年のヴェクタの名機Cray-1はメモリを除いてLSIは使っておらず、高速処理のためECLのICで構成され、手作りに近いものであった。しかしこの時期、MainframeではIBMのS/370とかAmdahlのV470などは当然VLSIを使っていたし、Microcomputer分野でもVLSIによるIntelの8080などのCPUが発売されていたわけで、半導体のテクノロジーの流れは「スパコンから民生へ」などではなく、「民生からスパコンへ」という逆の流れである。
その後、この高額なCrayのVector方式の後継に対し、廉価な民生で対抗したのが、今日のスカラ・クラスタ型スパコンで、1994年頃にNASAの研究員が作ったBeowulfが始まりである。UNIXの走るパソコンをTCP/IPのLANで結合し、並列計算を可能にしたものである。つまり、スカラ型スパコンは、廉価な既存の民生テクノロジを使って組み立てるという哲学で始まったものであり、その思想は今日でも連綿と受け継がれている。
OpteronやXeonはパソコン用のCPUからのものであり、PowerXcellもゲーム機用のCellからのものである。計算科学に関係の深いBlue Geneの源流は、コロンビア大学のQCDSPで、この機械は廉価な民生用のDSPを演算器として並列に並べて作ったスパコンであり、次のQCDOCとBG/LはIBMの産業組み込み用CPUであるPPC440を用いたものである。どれをとっても、「民生からスパコンへ」の流れである。
反対にスパコン用だけに開発されたNECのSXなどは、結局、コスト的に立ち行かなくなってしまい、民生に広がることも無く、消えてゆくことになるのである。
明らかに、半導体技術の流れは、母集団の巨大な民生のマーケットのための技術があって、そのおこぼれを使用させてもらうのがスパコンという構図である。
従って、声明文中の「その基盤にあるのがスーパーコンピュータなどで用いられる最先端の技術であり、それは数年後に広く社会で応用される」などというのは認識不足もはなはだしく、この声明のいい加減さを全国民に示す明確な証明なのである。
個人的な感想ではあるが、まあ一言で言えば、この声明は、いつもの、科学という美名を振りかざした「金よこせ運動」に過ぎないと言う事であり、多分「次世代スパコンが見直されると当該プロジェクトからのオコボレ分が切られてしまう」などといった、極めて次元の低い話を、慌てて、それらしく見せるためにすり替えた抽象的で内容の無い声明にしか見えないのである。