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(回答先: 政治批判の能力を失ったメディアへの告別の発言 投稿者 カクジツ先生 日時 2009 年 10 月 24 日 22:50:34)
ここで取り上げられている『さらば暴政』という本は、情報によると出版されて二ヶ月が経過したのに新聞や雑誌のメディアから完全黙殺であり、書評は皆無だということである。
<貼り付けによる引用>
Platonette (115.178.25.218)
暴政に関しての本格的な著書として選挙前に出て、小池百合子候補などの落選に影響を及ぼしたといわれた藤原肇記者の「さらば暴政」は、活字メデヰアの新聞や雑誌から完全に黙殺されて書評は皆無だった。この著者の前著の「小泉純一郎と日本の病理」も書評がゼロだったので日本新記録だったと、「さらば暴政」の後書きに書いてあったので驚いたが、わが国では暴政を論じるとメヂアから総スッカンを食うことになるようだ。
<引用終了>
日本のメディアから総スッカンを食うというのは奇妙な話であり、大手メディアに書評や紹介がなかったというせいで、反権力を歌いものにしている『週刊金曜日』や『赤旗』などの編集者が本の出版に気がつかなかったというのであれば、こういうメディアの編集者たちがいかに大手メディアの記事を頼りにしているかという証拠になり、その怠慢な編集態度がばれてしまうということである。そこで幾つかのキイワードを使ってこの本と著者について調べたところ、右翼問題の専門家で評論家として知られている猪野健治氏と藤原肇氏が、『財界にっぽん』九月号で対談している記事が見つかった。
<貼り付け引用>
http://dappan.hp.infoseek.co.jp/fujiwara/kiji.htm
『財界 にっぽん』 2009.09月号
暴政が支配する日本に救いはあるか
ネオコン政権が日本を破滅に追いやった
国際ジャーナリスト 藤原肇
ジャーナリスト 猪野健治
日本の政治がいよいよ阿鼻叫喚状況を呈するに至っている。本誌の長期連載「マスコミ批評119番」で健筆を振るう猪野健治氏と、たびたび本誌で日本の政治の暗部を鋭く批判してきた台湾在住の国際ジャーナリストの藤原肇氏に、藤原氏の新著『さらば暴政』(清流出版)を踏まえながら、日本の政治危機の深層と立て直す可能性についてを語り合ってもらった。(文中・敬省略)
平成維新が必要でも短兵急にはいかない
猪野 藤原さんはアメリカ在住とうかがっていましたが、アメリカを離れられたそうですね。
藤原 アメリカの資本主義は潰れましたから、もうアメリカにいてもしょうがないと思って、台湾に移住しました(笑)。
猪野 これからはアジアということですか。
藤原 いろんな意味で、アジアでしょう。
猪野 最近の日本の政治も潰れたも同然の状態で、私は平成維新が必要だと思うんです。その平成維新の最大の眼目は、対米追従からの脱却です。藤原さんは最近、『さらば暴政」(清流出版)という本を出し、自民党政治を徹底的に批判されています。本日はその本の中身を中心に、日本の政治の空洞化を徹底的に解剖し、この国の政治のあるべき姿を探りたいと思います。
藤原 平成維新が必要だといわれましたが、「維新」という言葉はファシストの言葉です(笑)。
猪野 いや、必ずしもそうじゃないですよ。いま日本の右翼は「反 米」だけでなく、自主独立を主張しています。昭和維新から連想すると、そういうイメージがありますが、昭和維新という言葉は明治維新から来ていますからね。維新というのは、これまでの旧い体制を壊し、新しい体制を創っていく、という意味です。
そういう意味で、平成維新が必要だと思うわけです。
藤原 ただ、維新は体制内での権力の収奪戦であり、人民から沸き起こったレボリューション(革命) とは違います。
猪野 私がイメージする平成維新は、昭和維新とは違います。実際、対米従属から脱却しようと思えば、相当の緊張を強いられます。また、国民の大多数がその方向に賛成するように、誘導していかなければならない。短兵急にはいかないと思います。
たとえば、目の前のことで言えば、今回はひとまず民主党政権をつくる。しかし、半年か一年で潰れるだろうと思います。検察がスキャンダルをしっかり握って、待ち構えていますからね(笑)。同時に、すでに壊れかけている自民党がぶっ壊れ、新しい政党ができる可能性があります。いや、可能性というよりも、新しい政党を創らにゃいかんと思います。
藤原 日本国内では、政権交代とか政界再編などと言っていますが、世界から見ると、日本はほとんど存在感がなくなっています。評価されていないというか、日本ナッシングになっています。だから、今の政治を立て直す中で、日本サムシングというものを考えていく必要があります。
猪野 当然です。その場合、対米従属を含めて、国際関係をどう変えていくかです。私はイギリスを除いたEUの路線が正解ではないかと思います。イラクに参戦しなかったドイツ、フランスの路線ですね。その路線をとれば、中国とも対決しなくて済みます。領土問題は残りますけどね。
「公共善」を忘れた日本の「暴政」を批判
猪野 さて、『さらば暴政』は自民党政治に引導を渡すような厳しい内容になっていますが、最初に藤原さんの思いをうかがっておきたいと思います。
藤原 実は、この本の大半は、二年前、安倍政権時代に書いたものです。それが本にならなかった。 それにはその前段があるわけです。私は小泉政権時代、『小泉純一郎と日本の病理」(光文社)という本を出しました。当時は小泉を「よいしょ」する本ばかり出ていましたが、世界から見た小泉の実像を書いて、小泉を批判したわけです。
しかし、その本は小泉を批判すると同時に、メディアがいかに腰抜けかということも書いてありましたから、メディアから完全に無視されました。ただ、最近はネッ トが発達していて、ネットで話題になったものですから、一ヵ月で四万部も売れました。小泉サイドには相当ショックを与えたと思います。
小泉のあとに安倍が出てきて、これは日本が危ないと思って、安倍政権の頃に、この「財界にっぽん」に、安倍を批判する記事を連載したわけです。その連載を柱に、安倍を批判する本を作りましたが、前の本がショッキングな内容で、メディアからも無視されたものですから、どの出版社も二の足を踏んだのです。
猪野 まあ、現在の日本の政治を「暴政」と位置づけているわけですから、出版社も腰が引けるでしょう。(笑)
藤原 調べてみると、明治以降、日本で「暴政」という言葉をタイトルに使った本は、たった三冊し かないそうです。今回も「暴政という言葉は強すぎる」と言われましたが、私が言う暴政は、「善政」に対する言葉ではなく、世界的に通用している「公共善」「共通善」に対する言葉です。「公共善」「共通善」とは、その国に住む国民の幸せのために、国は何をすべきかという考え方に立脚する言葉で、英語で言えば、「コモングッズ」です。それが日本の政治にないから、その反対語である「暴政」を使ったのです。
猪野 「コモングッズ」つまり「公共善」「共通善」という言葉の反対語としての「暴政」を持ち出すところなどは、日本脱藩して、アメリカに拠点を置きながら、世界から日本をウォッチしてきた、藤原さんならではですね。
藤原 私は二十五年間、アメリカにいました。その間、アメリカの資本主義は帝国主義的に、やりたい放題やってきました。弱肉強食の論理で、あらゆる悪どいことをやり、その果てに自分のエネルギーを消耗して、世界からつまはじきにされる。その内部崩壊と外部崩壊が一気にやってくるのではないかと見ていましたが、案の定でし た。それに加えて、欲望丸出しの金儲け主義が行き詰って大恐慌をきたしている。何百年に一度という金融帝国主義の終わりを、この二十五年でつぶさに見てきたわけです。
ネオコンの巣窟はシカゴ大学だった
猪野 二十五年間のアメリカ在住で、日本人が知らないアメリカというものも感じたでしょう。
藤原 アメリカは民主党、共和党の二大政党ですが、実は民主党も共和党も共和主義を理念にしています。日本は共和制とは相容れない君主制だから、共和制のことを全然わかっていない。だから、さまざまな政党が生れては消えていますが、一度も共和党は出てきていません。
私はアメリカ在住の初期の頃に、中西部で石油開発に携わりましたが、周りは共和党支持者ばかりでした。共和党の総本山がどこかといわば、シカゴであることがわかりました。それで私は、シカゴを徹底的に調べるために、娘をシカ ゴ大学に入学させました。二十三年前のことです。
シカゴ大学はロックフェラーが創った大学で、百年の伝統しかありませんが、アメリカを支配しています。
今回、シカゴからオバマ大統領が誕生しましたが、歴史的にシカゴとニューヨークは、アメリカの大きな対立軸なのです。日本では、シカゴ大学はノーベル賞受賞者を世界でいちばん多く輩出した大学として知られていますが、私のように、アメリカの共和党の砦とし てシカゴ大学を調べたのは、日本人で初めてだと思います。そしてわかったのは、ネオコンの巣窟がシカゴ大学だということです。
猪野 どのようにして調べたんですか。
藤原 学生の父兄なら、大学にも出入り自由です(笑)。シカゴ大学はネオコンの巣窟であり、金儲け資本主義の総本山でした。
猪野 シカゴ大学を調べているうちに、シカゴがネオコンの巣窟とわかり、マネー資本主義のルーツ. もわかって、アメリカの帝国主義 的な資本主義は、いずれ破綻すると確信したということですね。
藤原 そういうことです。私が日本も危ないと深刻に感じたのは、「私は日本のネオコンである」と主張する安倍が首相になったときです。これはアメリカに引きずられて破綻すると思いました。
猪野 安倍は岸信介の孫ですが、藤原さんは『さらば暴君」のなかで、安倍のルーツをよく解剖していますね。
藤原 戦前の帝国主義、植民地主義を戦後に持ち込んだのが、岸・福田派の流れです。それに対して、金権・利権を柱にしたのが田中派です。田中派の流れは現在、小沢一郎が引き継ぎ、民主党の底流にある。岸・福田派の流れは清和会として、安倍が所属する森派・町村派に受け継がれています。そういう意味では、現在の永田町には、旧態依然とした共産党を除けば、昔の自民党しかないわけです。
日本のメディアは、こんどの総選挙で政権交代が行われるようなことを報道していますが、これは三十年以上前の、自民党内の官僚派と党人派の権力闘争のようなものです。現在の日本の政治の混迷 は、小渕が不可解な死に方をしたあと、岸・福田派は引き継ぐ森が、談合で首相になったとき始まっています。そして森政権が短命に終わったあと、日本を葬ろうとしている外国勢力とつながって、構造改革を推進したのが、小泉・竹中の買弁ラインでした。
米から資金提供受けた岸信介と自民党
猪野 そのあたりは『小泉純一郎と日本の病理」に詳しく分析されていますね。
藤原 小泉・竹中が外国勢力とつながってやろうとしたことが、今回の大恐慌によって、次第に白日の下にさらけ出されようとしてい ます。そして、小泉のあとに安倍が出てきた不透明な背景も、徐々に明らかにされると思います。そこは日本のジャーナリズムの真価が問われるところです。安倍は官房長官はやっていますが、ろくに大臣経験もないまま首相になっています。そういう例は、日本新党ブームに乗って、反自民の連立政権で首相になった細川護煕ぐらいでしょう。
猪野 安倍は坊ちゃんに過ぎない。何も知らないですね。その点、麻生と似ている。
藤原 いや、坊ちゃんというのは良い家に生れて、きちんと躾けられた、物事のわかる人のことですよ(笑)。安倍はそうじゃない。安倍家のどら息子ですよ。指導者はエキスパートでなければなりませんが、安倍は全然違う。そういう人間を、「安倍ちゃん」などと親しげに呼ぶ、日本のジャーナリストも甘いですよ。
安倍は首相になるとき、「美しい日本」なんてトンチンカンなことを言い、尊敬するのは祖父・岸信介だというようなことを書いた。それで私は『さらば暴政」のなかで、岸が戦前、満州でやったこと などを検証し、歴史的に総括しておいたわけです。
ニューヨークタイムズのワイナi 記者が書いた本を読むと、岸は戦後、駐日アメリカ大使館のCIA 筋から資金をもらって首相になったと書いてある。首相になってからも、もらい続けて弟の佐藤栄作に渡した。つまり、自民党はアメリカの諜報機関から資金をもらい、五五年体制を守ってきた。そういう歴史の実態を知らないと、いつか歴史に仕返しをされる。
もともと自民党は、満州ゴロ、上海ダマと言われた人たちが支えた政党です。児玉誉士夫が上海で、児玉機関を使って集めたプラチナ、金、ダイヤモンドを、朝日新聞の社機を使って日本に運び、それを仲間の辻嘉六に渡したという話は、昔の本には詳しく書いてあります。そのあたりは猪野さんの方が詳しい。
猪野 児玉が上海から貴金属を運んだというのは、終戦直前の話ですね。上海の飛行場を飛び立とうとしたとき、荷が重くてすぐには飛べなかった。「何を積んだのか」と操縦士に訊かれると、児玉は「黙って飛べ!」と、飛ばせたそうです。どこの飛行場か忘れまし たが、よく上手く着陸できましたね。積み荷は今で言うレアメタル、希少金属です。戦後、自民党はそのカネを資金にして創られた、と言われていますね。
藤原 戦後しばらく、戦犯として小菅に収監されていた児玉に代わって、その資金を自民党の結党のために流したのが、辻嘉六です。要するに、自民党は右翼とゴロツキのカネでできたわけです。
猪野 もともとその貴金属は、児玉が米内光政海軍大将(当時)から、「日本はもう負けたから、これはあんたの旧部下のために使え」と言われ、譲り受けたものです。多少は児玉機関で使いますが、残りは最初、宮内省に預けていますね。しかし、占領軍に調べられて見つかるとまずい、ということで、児玉がまた取りに行くわけです。その情報が辻嘉六の耳に入り、児玉のところに交渉に行く。提供するに際して児玉が出した条件は、「天皇制を護持すること」の一点だったようです。その後、そのダイヤモンドを河野一郎が売り歩いていた、という話もありますよね。いずれにしても、古い話ですよ (笑)。
自由資本主義は崩壊、国家社会主義の芽が
藤原 しかし、それが自民党の出発点になっていることは間違いありません。
そして、自民党政治は表では利権漁りをやり、裏では右翼、暴力団とつながっていた。自民党にカネを流した辻嘉六の場合は、娘の辻トシ子を自転車協会に陣取らせ (現・監事)、自ら通産省に大きな影響力を行使しました。
つい最近、麻生は十五兆円の補正予算をばらまいたが、これもすべて利権と絡んでおり、役人の天下り先を通じて、政治家に還元されるシステムになっています。昔の自民党と何ら変わりません。
猪野 ばらまきと言えば、最近のアメリカも背に腹は替えられないと、おおっぴらにやっているようですね。
藤原 そう。つぶれかけた銀行や自動車メーカーを救済するために、ドル刷りまくっています。刷りすぎてインクが足りなくなり、日本のインクメーカーにまで緑色のインクを注文しているようですよ (笑)。
従来、アメリカはドルを大量に刷ることによって、日本から自動車をもらい、中国から電化製品をもらい・フランスからはワインをもらってきた。世界はそれに、もううんざりしていますよ。フランスはドゴールの時代からそれに気づき、「ドルは嫌だ。金にしてくれ」と言い、最近はとうとうユーロをつくったわけです。
そのアメリカの自由資本主義も二〇〇八年で崩壊しました。今、アメリカで何が行われているかと 言えば、企業の国有化です。これはまさに国家資本主義です。このあとに何が来るかと言えば、国家社会主義、ファシズムの時代です。一九二九年に始まった世界大恐慌のときには、アメリカ国内にまだ自由主義が健在で、ファシズムヘのブレーキ役を果たしていたが、今は自由主義はありません。ヨーロッパの社会民主主義もブレーキ役を果たす力はない。このまま行けば、世界中が全体主義に巻き込まれる可能性があります。
猪野 おっしゃるとおりです。巨大企業を救済するには、国が資金を出さざるを得ない。それを安易に容認していくと、気づいたときには国家社会主義が根づいていることになりかねない。
藤原 倒産は資本主義におけるもっとも安全な解決策ですよ。それを国家が干渉して企業を無理に存続させると、国家資本主義になり、やがて国家社会主義になる。歴史は繰り返しますよ。だから、最良の解決策は「歴史の教訓」に学ぶことですが、力量のない人が真似をすると失敗する。一九三〇年代の大恐慌のときには、イギリスにケインズがおり、 その前にはマルクスがいました。マルクスもケインズもすでに破綻したという人がいますが、これを超える人が現在の世界にいない。
アメリカの巨額国債が日本に押しつけられる
猪野 アメリカの金融資本主義、カジノ資本主義と言った方がいいと思うが、これが破綻した原因は、企業の会計を時価会計にしたことと、そこに金融工学を導入したことです。そして、サブプライムローン的な滅茶苦茶な金融派生商品をでっち上げて、いわば毒入りまんじゅうを世界にばらまいた。これが破綻することは目に見えていました。
それをアメリカがどう再構築しようとしているかと言えば、オバマ体制は資本主義を国家管理する道を選びました。GMだって、国家がカネを注ぎ込んだからといって、蘇生するかどうかわかりませんよ。
藤原 無理でしょう。
猪野 そこで私が心配するのは、アメリカがその原資を巨額な国債 発行で賄おうとしている点です。それを誰が買うのか。ヨーロッパは買わない。中国も買わない。となると、日本が買わされるのではないか。どれくらい押し付けてくるのか。それを考えると、空恐ろしくなりますね。
藤原 その土壌をつくったのは、ネオコンに尻尾に振った日本の政治家たちであり、はっきり言えば、小泉、安倍ですよ。小泉などは、メディアを利用して、「改革」をオウム返しに言っていただけで、ネオコンにいいように利用された わけです。
猪野 小泉改革の目玉は郵政民営化ですが、日本郵政の株式が売却されるときが危ない。「かんぽの宿」の売却が問題になりましたが、日本郵政の株を誰が買うか、これは厳しくチェックする必要がありますよ。
藤原 アメリカはカネがありません。日本のカネを吸い上げるために、知恵を絞っている。そのために工ージェントとして使わ れたのが竹中平蔵です。竹中は一年の半々を日米に住み分けて脱税するような、姑息で意地の汚いな男です。そういう男は操りやすいので、アメリカは竹中を使ったわけです。
竹中は日本開発銀行時代にハーバード大学に客員研究員として留学し、その後、同大学の客員准教授になっています。日本人は肩書主義ですから、彼が優秀だと思っていますが、ハーバード大学にはコネがあれば入れる五パーセント枠があり、ハーバードに留学したからと言って、優秀とは限りません。
現実に、竹中が母校・一橋大学に経済学博士号を取るために提出した論文は、あまりにも初歩的だと判定され、不合格になったそうです。
猪野 民間出身大臣が選挙に出て、一度参議院議員になったにもかかわらず、小泉内閣が終わると、任期を四年近く残して辞職してしまったのも不評だった。
藤原 日本では、ネオコンのことをネオ・コンサバティブ、新保守主義ぐらいに受け止めていますが、彼らはとんでもない連中ですよ。 彼らの考え方は、カネを稼ぐためには何をしてもいい、強い者は何をしてもいいという、弱肉強食の思想です。
猪野 アメリカ流資本主義。
マネタリズムを煽ったシカゴの人脈
藤原 それは、英国で起こった古典的な資本主義とは全然関係ありません。帝国主義が化け物と化したもので、拝金主義に凝り固まったものです。その巣窟が先ほど指摘したシカゴなのです。ここでもう一度、シカゴ大学の系譜について詳述しておきます。
実は、シカゴにはヨーロッパでもっとも反動的といわれるオーストリアの勢力が流れてきています。ヨーロッパ大陸の近代の勢力図を見ると、オーストリアのハプスブルグ家と、フランスのブルボン家を倒したナポレオンが対立し、そしてその外側にイギリスがいる、という構図になっている。この対立がアメリカにも持ち込まれ、私が見るところ、オーストリア勢力がシカゴに、フランス勢力がイー ストコーストに根づいたわけです。オーストリア勢力のうえにロックフェラーが乗っている。そう見ると、フリードリッヒ・ハイエク、レオ・シュトラウスといった学者が、シカゴ大学を拠点に活躍した背景が理解できる。そのシュトラウスの弟子のフリードマンあたりが、マネタリズムを煽ったわけです。紙幣の発行額を操縦すれば経済は上手くいく、などというマネタリズムはインチキですよ。カネ貸し主義をごまかしている。
ハイエク、フリードマンはノーベル経済学賞の受賞者ですが、もともとノーベル賞には経済学賞はなかったんです。それがスウェーデンの銀行協会が資金を提供して、途中からできた賞です。経済楽賞 を取った経済学者が、人類の幸福に貢献したとは言えません。いずれにしても、シカゴ大学は反動の巣窟であり、ネオコンの若大将と呼ばれたウォルフォビッツはコーネル大学でネオコンのブルム教授と出会い、ブルムがシカゴ大学に移ったので転校して、ネオコンの三羽鳥に育ちラムズフェルト国防長官やチェニi副大統領と、イラク侵略を推進した。その後ウォルフォビッツは世界銀行の総裁になり、ネオコンのバックボーンになったことは間違いありません。
猪野 ネオコンの宗教的背景は、キリスト教原理主義でしょう。
藤原 そうです。ネオコンの大半がユダヤ系の人たちです。ユダヤ人にも国際派と国枠派があるが、 国枠派はシオニストと呼ばれています。
この連中はユダヤ人はエリートであり、最後のハルマゲドンが起きたときに、本当にバイブルを信じている自分たちだけが救われる、と考えている。要するに、右翼ファンダメンタリストです。
猪野 当然、イスラエルを支持している。アメリカではイスラエル・ロビーが強いですよね。
藤原 アメリカではユダヤのことを論じるのは、一種のタブーになっています。アメリカだけではなく、日本でもそうでしょう。「マルコポーロ」事件を想起しても、ユダヤ人がメディアをコントロールしているわけです。ただ、世界には「ユダヤ陰謀論」というものがあ ります。悪いことは何でもユダヤのせいにする傾向があり、下手にユダヤを批判すると、陰謀論者と間違えられる可能性があるから、気をつけなければなりません。
「チェンジ」を掲げて登場したオバマが、チェンジするかと思われたのは最初の一日だけで、二日目からはおとなしくなったのは、国務長官から大統領補佐官まで、シオニスト系の人たちに囲まれてしまったためです。ただ、今回の『さらば暴政」では、ユダヤ人問題には余り触れずに、ネオコンの盛衰を総括しながら、日本のジャーナリズムの腰抜けぶりを指摘しておきました。それにしても、最近の日本の新聞の経営は厳しいようですね。(次号に続く)