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(回答先: 前福島県知事、二審は減刑 「無形のわいろ」のみ認定(朝日新聞) 投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 10 月 19 日 12:49:04)
http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/51272871.html
2009年10月19日
前福島県知事の「無形の犯罪」
欲望をまっさらにしてしまった地点から見える現実は、あきれかえるほど猥雑です。現実とは、無数の欲望のみからなる猥雑そのもの。わたしはここ半年、歯医者さんに通っていますが、これは、ちゃんとした歯がほしいという欲望ですし、掃除をするのは、気持ちよく過ごしたいという欲望です。それらの欲望が、猥雑でいきいきとしたわたしの日常をなしています。
理不尽への怒りや卑劣への蔑みを感じる限り、人を失った悲しみにうちのめされる限り、わたしの欲望はまっさらではないことを知ります。世界はすこしでもまっとうであってほしい、愛する人たちといつまでも生を楽しみたいという欲望を前提にしているからこそ、怒りも蔑みも悲しみも、湧き起こるのですから。
けれど、人はいざ知らず、わたしの欲望にはまっさらの地点が、除去しようもなく居座っています。ちょうど、網膜の盲点のように。あなたはいかがですか。盲点からは視神経が伸びて脳に繋がり、そこで初めて、光は意味あるものの像として「見える」。それと同じように、欲望のまっさらの地点は、欲望をいとおしい、肯定すべきものとして映し出し、わたしに見せてくれます。欲望のいとおしさをつい忘れがちになるわたしに。
けれど、許せない欲望もあります。それは、権力による、手段を選ばない保身と利権維持への欲望です。
去年の夏、あるところで講演をしました。その後、その団体の創立周年記念パーティがあったのですが、わたしは移動の関係で、そちらは失礼するつもりでした。ところが、パーティにはある方が出席するという。ある裁判で係争中の方です。
「あなた個人はどう思われます?」わたしは、アテンドしてくださっている方に尋ねました。その方は、「ものすごく潔癖な方です。わたしたちは全員、知事がそんなことなさるわけがないと信じています。ですから、きょうの記念パーティにぜひお越しいただいたのです」ときっぱりと言いました。すでに「前知事」のはずですが、「知事」と呼んだ声には力がこもっていました。
やっぱり、と確信を強めたわたしは、ぜひご挨拶がしたいと頼み込んで、その方、前福島県知事・佐藤栄佐久さんとお話をすることができました。わたしは、「あなたの潔白を信じています。きびしい現実が待っているでしょうが、がんばってください、応援しています」と、声を励まして言いました。そして、1冊の本をお渡ししました。拙訳のフランクル『夜と霧 新版』(みすず書房)です。
佐藤さんは、見知らぬ女が意気込んで話しかけてきたので、ちょっとひるんだようすでした。「おお、学生時代に読みましたな、ありがとう。応援よろしく頼みます。ほんとうにひどいことになっておりましてねえ、でも、わたしは負けませんよ」
当時の新聞や週刊誌の見出しは、まっ黒な事件像を見る人の目にたたきつけていました。いわく、クリーン標榜する知事の犯罪、ダム工事受注に天の声、土地の不正売買つうじ巨額の賄賂、弟の会社を使った巧妙な手口、5期目腐敗の構図……。知事の汚職が相次いで発覚していた時期でしたから、またか、というのがおおかたの受け止め方だったでしょう。だから長期政権、とくに保守系のはだめなんだ、とも。
けれどわたしは、これはどこかおかしい、と感じました。はっきりとはわからないけれど、この「ストーリー」は宮城県や和歌山県の知事の犯罪とはなにかが違う、という感じがしたのです。
というのは、佐藤さんは、東電のトラブル隠しに端を発して、保守系の知事として初めて、国の原発政策に厳格で慎重な運営を求め、福島の「原発銀座」浜通にさらなる原発をつくることやプルサーマルに反対していたのです。また、当時全国を席捲していた市町村合併の嵐の中で、それに応じない県下のちいさな自治体を応援する姿勢をみせていました。郵政民営化にも、はっきりと疑義を呈していました。
国策捜査という、はやりのことばが思い浮かびました。知事は、時の権力の逆鱗に触れた結果、狙われたのだ、と。
その佐藤栄佐久さんに、14日、東京高裁での二審の判決が下りました。東京新聞では、「二審も有罪」という大見出し、けれどもうひとつの見出しは「土地差額のわいろ否定」、そして異例のことに、「渡辺恵一・東京高検次席の話」として、「検察官の主張がいれられず遺憾」とあります。まるで、検察が敗北したようなコメントです。
判決から浮かび上がる「事件」は、工事は競争入札でダムに実績のある大手が順当に受注し、土地は適正価格ではないとは言えない、というものです。宗像紀夫主任弁護人は、「実質無罪」「首の皮一枚で検察の顔を立てた判決」「薄氷の有罪」と意気軒昂、佐藤さんはもちろん上告の構えです。
でも、一審より量刑は軽いとは言え、なぜやはり有罪なのか。土地を換金するにあたり口利きをしたということが、「無形の賄賂」なのだそうです。そんなことで犯罪は成立するのでしょうか。まったく売れる当てのない土地を急いで売りたがっていたなら、そういう理屈もあるいはなりたつかもしれませんが、まさか立件はしないでしょう。ましてや有罪とは。しかも、問題の土地は商業地として一等地、現にその後、買い手は時をおかずにより高値で売って、利益を得ています。
ことの顛末は、佐藤さんがビデオニュース・ドットコムに緊急出演して語っておられます。
「マル激トーク・オン・ディマンド 第445回(2009年10月17日) 「物言う知事」はなぜ抹殺されたのか」
司会の神保哲生さんのほか、郷原信郎さんが元検事の立場から東京地検特捜部の堕落、醜態、情けない保身を衝き、飯田哲也さんが脱原発の立場から、佐藤知事が国の原発推進政策を阻止する上でいかに大きな存在だっかを解説しています。河野太郎さんの電力自由化論に続いて、またもやマル激をご紹介することになりましたが、この有料配信ニュース、月500円は安いと思います。この際、購読を始めて、全篇をご覧になることをお勧めします。
佐藤さんからは、ときどきお手紙をちょうだいします。お元気です。ご著書、『知事抹殺 つくられた福島県汚職事件』(平凡社)の淡々とした、しかし筋の通った剛胆な著述には、お人柄がよくあらわれています。