<早くも始まった「ポスト鳩山」レース> 閣僚人事はまさに権力闘争だった。民主党の次世代リーダーたちの出世争いも明暗を分けた。 一歩後退したのは、鳩山氏と代表選挙を争い、次期代表の最右翼と見られていた岡田氏だ。岡田氏は総選挙中から幹事長として「政権移行チーム」を率い、新政権の骨格作りを主導するつもりだったが、「そうした事前の動きが小沢(一郎)さんと鳩山側近たちの警戒を呼び、早い段階で外相に内定して体よく新内閣の官邸から遠ざけられた」(民主党幹部)とされる。 その結果、内閣は鳩山首相と菅副首相の2頭体制、党務と国会運営は小沢幹事長が握るという、かつてのトロイカが完全復活し、菅氏がポスト鳩山の有力候補として復活した。 もう1人、防衛相候補として入閣有力と見られながら、土壇場で外されたのが反小沢派の代表格の1人、野田佳彦氏だ。事前の身体検査で「集団的自衛権行使に前向き」なことが社民党との連立の障害になると判断された。そのことが入閣見送りの理由とされているが、同じ主張の持ち主は党内に多い。防衛相以外の選択もあった。 むしろ、前原氏や仙谷氏ら「反小沢派」のなかでの大臣レースに敗れたのだ。 鳩山側近議員が打ち明ける。 「岡田さんを別格にすれば、反小沢勢力の大臣枠は前原、仙谷、長妻の3人。それ以上は増やせない。政策通で実績のある3人に比べて、野田氏はセールスポイントが弱かった」 野田氏は格下の財務副大臣に内定したが、同じ当選5回ながら松下政経塾の後輩で小沢氏、鳩山氏に近い原口一博氏が有力閣僚の総務相に起用されており、出世レースに大きく水をあけられることになった。逆にこれまで出遅れていた原口氏は、ニューリーダーの1人として飛躍するきっかけを得た。 新内閣の看板大臣の1人、長妻・厚労相も先を見ている。長妻氏は、鳩山首相から行政刷新相就任の打診を受けながら、それを蹴って難題山積の厚生労働相を希望した。それは、「あえて火中の栗を拾い、実績をあげて、ポスト鳩山で先行している岡田氏や前原氏に一気に並び、後継者レースに名乗りをあげようと意欲を燃やしている」(民主党スタッフ)と見られている。 若手政治家たちが権力の座に野望を隠さず、政策実行力で競い合うのであれば、民主党という政党だけでなく、日本の政治も活性化するだろう。総裁選に有力候補が次々と出馬を見送り、権力闘争の力さえ失ってしまった自民党とは対照的だ。 「首相を辞めたら政界引退する」と表明している鳩山氏が、ことさら自分がリーダーシップを発揮しようと力むのではなく、若い大臣、副大臣たちの功名心をうまく利用して政権を運営していくなら、かなりの成果をあげることができるのではないか。 (つづく) 【千早 正成】
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