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今回の裁判員裁判も、犯罪事実は争わない「簡単な」裁判。
量刑など知識の無い素人が、検事に
「争点は▽覚せい剤が与える社会への害悪▽密輸組織にとって運び屋は重要な役割▽密輸した覚せい剤は470グラムに上る▽密輸に成功した分は流通したはず▽井村被告は報酬目当てに積極的に参加」
等と誘導されては、反論や独自の考えを入れる余地は無い。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(引用ここから)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/120834
福岡地裁の裁判員裁判詳報(第1日)
2009年9月10日 00:29
福岡地裁で9日開かれた裁判員裁判の法廷詳報は次の通り。(裁判員は法壇に向かって左から順に1−6番と表記)
【罪状認否】
午後1時半少し前、301号法廷に、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの罪に問われた井村幸一被告(39)が入廷し、弁護士席前の長いすに座った。丸刈りで黒いシャツにジーンズ。革靴に見えるサンダルを履いている。
間もなく裁判官3人、裁判員6人、補充裁判員2人が順に入ってきた。裁判員は男性2人、女性4人。補充裁判員2人はともに男性。
松下潔裁判長が開廷を告げ、被告を法廷中央の証言台の前に立たせた。井村被告は氏名、本籍などをボソボソと答えた。裁判員は下を向き、井村被告を見ない。
菊池和史検事が法壇へ向かい「お手元に資料はございますか」と呼び掛け、起訴状をゆっくり朗読。松下裁判長が「(起訴状の内容に)間違いはありますか」と尋ねると、井村被告は「間違いありません」。裁判員4番の男性と裁判員6番の女性が顔を上げ、井村被告を見た。
弁護人の落合真吾弁護士が立ち上がり「お聞きの通り、井村さんは事実を認めております」と大きな声で述べた。
【検察側冒頭陳述】
法廷の左右にある大型モニターに「冒頭陳述」と映し出された。菊池検事は証言台の横に立って一礼するが、裁判員は顔を上げない。
「この先の説明はペーパーに沿って進めます。逐一メモを取る必要はありません。安心してください」と前置きし「体の中に(覚せい剤を)隠して税関を通過したということを意識していただきたい」と述べた。
裁判員4番の男性はみけんにしわを寄せた。裁判員1番と6番の女性はモニターと検事を交互に見ている。
「被告は大阪市で生活していましたが、収入が不安定でした。知人の紹介で密輸組織の窓口的な存在の櫛田勇二(被告、裁判は別)と知り合い、イランからの覚せい剤密輸に関与することになりました」
裁判員2番の男性と5番の女性はほとんど身動きせず、モニターを見つめている。
「畑山典昭(被告、裁判は別)は金銭的に困り運び屋になりました」。検事はモニターに櫛田、井村、畑山各被告の関係を示し「よろしいでしょうか」と確認する。
その上で(1)櫛田被告がまずイランに渡航し、覚せい剤を入手(2)5グラムずつゴム製の袋に小分け(3)遅れてイランに渡った井村被告が35包みを、畑山被告が59包みをそれぞれのみ込んで成田空港に帰国‐と事件の経緯を説明する。モニターに井村被告の移動経路が示された。
「ここから先がこの事件の特徴です」と検事。井村被告は櫛田被告が手配したホテルで35包みを排せつし、覚せい剤を組織に渡して報酬の15万円を手にしたという。
一方の「畑山(被告)に異変が生じました。排せつがうまくできず、体内の覚せい剤の影響で中毒症状を起こし『おばけが見える』など不可解な言動をするようになり、ホテルを抜け出したところを警察に保護され、福岡市の病院に入院。体内の覚せい剤が見つかり、59包みは警察が押収しました。こうして事件が明るみに出ました」。
裁判員1番の女性は小さくうなずきながら、メモを取っている。
次いで検事は、35袋をのみ込んだ井村被告が畑山被告の分も含め計94包みの密輸入で起訴された仕組みについて「共犯者と互いに協力して一緒に事件を行った場合、すべてについて全員が責任を負うとされています」と解説した。
争点は量刑になるとして、その際のポイントを次の通り指摘した。
▽覚せい剤が与える社会への害悪
▽密輸組織にとって運び屋は重要な役割
▽密輸した覚せい剤は470グラムに上る
▽密輸に成功した分は流通したはず
▽井村被告は報酬目当てに積極的に参加
最後に、検事は証拠の一覧表を配り「ぜひ、お手元に置いておいてください」と述べた。
【弁護側冒頭陳述】
弁護人の藤尾順司弁護士は被告が座る長いすの前にイーゼルを立て、説明に使う大きなボードを5枚ほど出した。「見えますでしょうか」と、ボードの向きを裁判員に確認した。
「この事件は井村さんがお金になる仕事を探していたところ、アルバイト先から密輸の仕事を紹介され、覚せい剤を国内に持ち込んだというものです。井村さんは密輸組織の一員でも、暴力団の組員でもありません。それに覚せい剤を使ったこともありません。覚せい剤を運んだことを心から反省しています」
罪を認めていることを強調し、量刑を判断する際に考えてほしいこととして、まず井村被告が事件に関与するまでの状況について(1)アルバイトを二つ掛け持ちしていたが収入は少なかった(2)住まいを持つことができず、大阪の簡易宿泊所を転々としていた(3)結婚して安定した生活をしたいと考えた‐などと説明した。
藤尾弁護士は被告がまじめに働いていた「非正規労働者」と訴える。裁判員6番が顔を上げ、弁護士を見つめた。
「そこでアルバイト先の雑貨業者に『いい仕事はないか』と相談したわけです。ここで図を使って説明します」
イーゼルに立てかけたボードを一枚めくり、密輸組織など関係者のつながりを示す。
裁判員4番はまゆを寄せ、手元のモニターと藤尾弁護士を交互に見る。
弁護士は身ぶり手ぶりを加え、ペーパーをほとんど見ないで、被告が事件前にフィリピン人の女性と結婚したことや、家財道具をそろえるため、お金を稼ごうと思ったことなどを詳述した。
裁判員2番はしきりに顔に手を当てながら、弁護士を眺めている。久屋愛理裁判官が裁判員の様子をうかがう。
「櫛田(被告)から受け取った報酬は15万円でした」「覚せい剤をおなかの中に入れるのは危険なことです」「井村さんは密輸組織にかかわっていないので、組織のことは解明されていません」
藤尾弁護士が検察側と異なる事件のポイントを述べると、裁判員は一斉にメモを取った。
冒頭陳述は被告の生い立ちに移る。藤尾弁護士は(1)事件まで覚せい剤とかかわりがなかった(2)中学生のときに父親が養父と知ってショックを受けた(3)中学卒業後は漁師として働いた(4)暴力団に入ったが抜けた(5)就職した不動産会社が1年でつぶれ、露天商の手伝いなどをしていた‐などと明らかにしていった。
井村被告が時折視線を裁判員に向ける。
「こうした生活から何とか抜け出し、安定した生活を送りたいと願い、その資金を作ろうとしたのが本件である。妻は心細い思いで大阪で過ごしている。今後はどんなにお金に困っても違法なことは絶対しないと誓っている」。藤尾弁護士は冒頭陳述をこう結んだ。
この後、休憩を3回挟んで公判は進んだ。
■証拠調べ モニターに視線くぎ付け
【証拠調べ】
検察側の証拠調べに入った。まず畑山被告の供述調書を三井隆史検事が読み上げる。
「2月15日に上京し、上野のホテルに泊まり、翌日にレストランで櫛田(被告)から紹介され、初めて井村(被告)に会いました」
裁判員3番の女性はメモを取りながら聞いている。三井検事が「失礼します」と言って上着を脱ぎ、白いシャツ姿に。
調書には、イランに渡り、覚せい剤入りの袋をのみ込んだ経緯などが詳しく記されている。モニターに袋をのみ込んだ民家の見取り図が出て、裁判員1番と2番がモニターをのぞき込んだ。
「井村(被告)とともに(イランから)飛行機に乗りましたが、胃も痛く、気分は最悪でした。井村(被告)も腹が痛いと言い、互いに会話することもできず、毛布をかぶってひたすら早く日本に着いてくれと思っていました。(途中の)北京を出発してから、ほとんど記憶がありません。次の記憶は病院のベッドで寝ているところです」
畑山被告の調書朗読が終わると、裁判員は顔を上げ、ひと息ついたように見えた。
千代延博晃検事が立ち上がり、井村、畑山両被告が確かにイランから航空機に乗り、成田に到着したことの証拠として、乗客リストや税関の携帯品申告書などを挙げる。
「ご覧ください。申告書の『持ち込み禁止品を持っていますか』との質問には『いいえ』の欄にチェックがあります」
続いて畑山被告を診た医師の供述調書。意識障害から覚せい剤使用を疑い、胃の中に8袋あることを見つけ、さらに排せつ物から51袋を回収した経緯が読み上げられた。
モニターには、銀の皿に載せられた袋の写真や袋の中に入っていたものが間違いなく覚せい剤と確認した鑑定書などが映し出された。裁判員の視線はモニターにくぎ付けとなる。
検事は「(井村)被告の密輸量は(押収されていないので)量れませんが、畑山(被告)が持ち込んだ覚せい剤を参考に特定します」と述べ、1袋5グラム×35で175グラムと説明した。
さらに検事は「追徴」について説く。「追徴という言葉は聞き慣れないと思います。関税法で輸入が禁止されているものは、差し押さえできれば裁判で没収します。流通した場合は没収できないので、それに相当する価額を取り上げます」
追徴額は(覚せい剤と成分が同じ)医薬品の価格などを基に計算し、約750万円になるという。裁判員はモニター上の計算式を見ている。
検事は「早口になったかもしれませんが、よろしいでしょうか」と問い掛け、反応がないので、覚せい剤の害悪に関する文献の引用に移る。
▽1回の使用で幻覚を見ることがあり、多量に使うと死ぬこともある
▽同量では快感を得られなくなり、使用量が増え、覚せい剤中心の生活になってしまう
▽妄想に駆られる
▽暴力団によって国内で流通している
「当初は賭博場に出入りする人だけでしたが、現在は会社員でも主婦でも少年でも、誰もが手に入れることができる状況です」。千代延検事が力説した。
三井検事に交代し、井村被告の供述調書を読み始める。モニターには、櫛田、畑山両被告ら関係者の顔写真。運び屋を頼まれたときの状況は次のように述べた。
「違法な薬物は覚せい剤ぐらいしか思い付きませんでした。初めて櫛田さんと会い『ジュースのようなものと(一緒に)のみ込むのです』と言われた」
イランに行った経緯あたりになると、井村被告はきょろきょろと視線が定まらず、落ち着かない様子。裁判員4番と6番はまばたきを繰り返し、少し疲れが出ているようにも見える。
「イランでは、アリという外国人が空港に迎えに来ました。現地時間の2月25日朝に、わたしと畑山(被告)、櫛田(被告)、アリの4人で飲み物を買い、櫛田(被告)が『1人1袋をのんで。100個入っている』と説明しました。袋はウインナーのような質感のもので、のみ込み始めて、30分で苦しくなり『おえっ』と吐き出すこともありました。35個ぐらいのみ込み、それ以上は無理でした」
詳細な供述内容に、裁判員は顔をしかめたり、興味深そうに検事を見たりしている。
「(帰国後に)ホテルでのみ込んだ覚せい剤を排せつしていたら、畑山(被告)がわたしの部屋に入ってきて『死に神が来た』と壁に向かって話し掛けました」
調書によると、畑山被告は自ら救急車を呼び、乗り込んだが、井村被告が「こっちで面倒みますから」と言って救急車を帰したこともあった。
検察側に続き、落合弁護士が弁護側の証拠を明らかにする。井村被告の妻と手紙でやりとりした内容が中心だ。原文は英語だが、日本語訳が朗読された。
‐逮捕されたことについてどう思いますか。
「ショックでした」
‐(井村被告は)どうしてお金が必要だったのでしょうか。
「分かりません」
‐(被告は)アルバイトをしていたのですか。
「はい」
‐罪を償い出てきたら一緒に生活できますか。
「はい」
‐もう犯罪をしないよう監督できますか。
「はい」
‐裁判所などに言いたいことはありますか。
「わたしは夫を愛しています」
井村被告はうつむいたまま。裁判員6番が少し身を乗り出した。
■被告人質問 被告を見る目一転険しく
【被告人質問】
松下裁判長が井村被告を証言台に呼び、被告人質問が始まった。
まず落合弁護士が「裁判員のみなさん、お疲れさまです。被告人質問と言って、本人の口から話してもらいたいと思います」と説明した。
弁護士は事件に至るまでの経済状況などから、尋ねていく。
弁護士「住まいはどこですか」
被告「大阪です」
弁護士「住んでいるのは賃貸アパートですか」
被告「はい」
弁護士「そこにはいつから住んでいますか」
被告「平成20(2008)年12月です」
弁護士「それ以前に決まった住所はありましたか」
被告「ありません」
弁護士「簡易宿泊所を転々としていた?」
被告「そうです」
弁護士「いつから転々とするようになったんですか」
被告「平成13(01)年からです」
弁護士「それはなぜですか」
被告「前に働いていた会社が倒産して、家賃が払えなくなって追い出されました」
弁護士「決まったところに住みたいと考えたことはないんですか」
被告「考えたこともあります」
弁護士「それはなぜですか」
被告「38(歳)になって結婚しようと思って」
弁護士「部屋は実際に探しましたか」
被告「はい」
弁護士「どのくらいかかりましたか」
被告「敷金と礼金もろもろ込みで30万円ちょっとですね」
弁護士「貯金はあったんですか」
被告「アルバイト代が…」
ほとんどの裁判員がうつむいて聞いている。4番、5番、6番はメモを取っているようだ。
被告の貯金は約10万円で、30万円に足りなかったことを弁護士が指摘すると、被告はアルバイト先の雑貨業者に仕事の紹介を頼んだことを話す。
被告は小声で、聞き取りづらいためか、弁護士が答えを復唱するような形で質問を重ねていく。
弁護士「違法な仕事を紹介されると思っていましたか」
被告「思いません」
裁判員6番は真偽を確認するかのように、じっと被告の顔を見つめた。
雑貨業者から櫛田被告に会うように言われ、仕事が薬の運び屋と聞かされた経緯に移る。
弁護士「薬を持って帰る仕事だと聞いて、どう思いましたか」
被告「やばい仕事かなと思いました」
弁護士「断ろうとは思わなかったのですか」
被告「何でもやると言ったので断れませんでした」
雑貨業者からは、50万円くらいの報酬と聞いていたことを落合弁護士が確認する。
弁護士「櫛田さんからどんな薬を運ぶか聞きましたか」
被告「全く聞きませんでした」
語気を強めた被告の顔を、裁判員の何人かが顔を上げて見た。
被告は今回の事件の前に、マレーシアで覚せい剤入りの袋32個をのみ、日本に持ち帰って櫛田被告に渡し、3万円を受け取ったことを明かす。
裁判員2番はメモを取る手を止め、被告を見る目が険しくなった。
弁護士「報酬は50万円と言ったのに、おかしいとは思わなかったのですか」
被告「後でもらえるんだと思いました」
弁護士はフィリピン人の女性と結婚したことを確認。被告は敷金・礼金が計約10万円で家賃3万4千円の住宅を借りたことやテレビ、テーブルなどの家財道具を調達しなければならず、資金が必要だったことを述べた。
その後、落合弁護士とのやりとりから、被告がマレーシアから覚せい剤を密輸したのは1回でないことが明らかになる。
弁護士「(2回目は)何個のみ込みましたか」
被告「35個です」
弁護士「日本に帰ってもらった報酬は」
被告「3万円です」
弁護士「2回目も3万円だったんですね」
被告「はい」
弁護士「額についてはどう思いましたか」
被告「だまされたかなあと」
被告に厳しい目線を送る裁判員もいたが、ほとんどはうつむいたままじっと聞いている。
2回とも報酬が安く、だまされたと思っているのに、なぜ櫛田被告から今回の事件の依頼を受けたのか。弁護士がただすと、被告は「家財道具も買わなきゃいけないし(アパートの)仲介手数料も払わなきゃならんと思って」と、ぼそぼそと答えた。
弁護士「イランに行き覚せい剤を持ち込む計画を立てたのは誰ですか」
被告「櫛田さんです」
弁護士「イラン行きのチケットを取ったのは」
被告「櫛田さんです」
弁護士「櫛田さんが指示した以外のことでやったことはありますか」
被告「ありません」
法壇の端に座る裁判員6番は、身を乗り出すようにして聞いている。
弁護士「畑山さんが中毒になったと聞いてどう思いましたか」
被告「怖いなと思います」
弁護士「危険なことだと思っていましたか」
被告「櫛田さんに『大丈夫だ』と言われていたので、大丈夫だと思っていました」
弁護士「大変なことをしたと思いますか」
被告「思います。2度とやりません」
午後5時少し前、松下裁判長が閉廷を告げた。裁判員はファイルや書類を手に持ち、法壇後ろの扉から出て行った。
=2009/09/10付 西日本新聞朝刊=
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(引用ここまで)
もし否認している容疑者に誘導が使われたら、素人に反論できるのだろうか。
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