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(回答先: 日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著) 全文 2−3 世界一のゼネコン ― 日本道路公団 投稿者 たけしくん 日時 2009 年 8 月 18 日 08:34:08)
日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569614140/asyuracom-22
第二章 経済むしばむ“官企業”
第四節 利権に利用される公益法人
公益法人とは何か
公益法人とは、広義の意味では学校法人や社会福祉法人、宗教法人、医療法
人、更生保護法人、特定非営利活動法人(NPO)などを含むが、一般には民法
第三四条に基づいて設立される社団法人と財団法人を指す。広義の公益法人は
特別の根拠法によって設立され、認可が必要なため官庁の裁量の幅が狭いが、
民法による公益法人は主務官庁の許可によって設立されるので裁量の幅が広
い。
このため、霞が関の中央官庁では、在任中に天下りのための公益法人を一つ
つくることが課長の勲章のようにいわれた時期もあった。ここでは民法三四条
による公益法人について検討する。
この公益法人の設立要件は、@公益に関する事業を行い、A営利を目的とし
ない、ことである。ここで 「公益に関する事業」とは、「公益法人の認可許
可及び指導監督基準」 (平成八年九月二〇日間議決定)によると「積極的に
不特定多数の者の利益を実現することを目的とする事業」とされている。また
「営利を目的としない」とは「役職員、会員、寄付者等公益法人関係者に利益
を分配したり、財産を還元することを目的とする事業を行わない」ことであ
る。
このため公益法人には税制などで特別の優遇措置が与えられている。しか
し、後に具体的に述べるが、実際には多くの法人でこれらの原則は曲解され、
あるいは、無視され守られていないばかりか、むしろ様々な特権的地位が悪用
されているのである。
社団法人と財団法人の違いを筒単に述べると、社団法人には社員が存在し、
社員による総会の決定と社員の会費をもって運営される。そして、業界団体な
ど共通の利益のための集合体が多い。一方、財団法人の場合は、設立者が定め
た寄付行為(定款(ていかん)のようなもの) に基づき、設立者が出捐(し
ゅつえん)した基本財産の運用益をもって運営される。
しかしこうした法律上の規定も長年の運用の中であいまいとなり、多くの場
合、社団も財団も営利事業を通しての実質的、個別的利益の追求に重きが置か
れるように変質しているのが実態である。
こうした趨勢とともに、公益法人は民間の篤志家などが基金(出捐金)を拠
出して社会奉仕や文化活動を行うものより、事実上官公庁が設立あるいは介入
支配し、天下りや利権のために利用されるケースが急速に増加した。
現在、官公庁出身者が理事に入っている公益法人は八〇六〇法人で、子会社
を持つものは一八五〇法人ある。ちなみに、子会社の数は約七〇〇〇社であ
る。官公庁出身者が常勤理事を務めている公益法人の数は三八〇〇で、官公庁
出身常勤理事は五一〇〇人もいる。また公益法人に対して支払われている年間
の補助金、委託費は国が四五〇〇億円、地方が七五〇〇億円で、補助金、委託
費を受けている公益法人は約八〇〇〇法人である。
公益法人のもう一つの特徴は、職員の数(五二万人)と役員(四八万人)
の数がほぼ括抗(きっこう)していることだ。これは公益法人がいかに“役員
のために”作られているかを示すものといえる。
利権のために利用されている公益法人は莫大な数に上るが、ここでは、とく
に防衛庁関係と林野庁関係の公益法人について述べよう。
天下り先の防衛に必死の防衛庁
防衛庁は年間一兆数千億円の防衛装備品(航空機から艦船、通信機やパラシ
ュート、衣服、日用品まで)の調達を行う。これらの発注先企業は七八〇社
(平成一二年度)に及ぶ。ちなみに、私の告発によって、防衛庁が発注先企業
から返還を受けた過去五年間の過払い金額は七〇六億円にのぼっている。
この過大な支払いは、企業に天下りを受け入れさせたり贈賄させたりするた
めに防衛庁が行ったもので、平成九年から約一年間にわたった私の追及と告発
で東京地検により立件され事件となった(平成一〇年九月)。またこれについ
ては拙著『利権列島』(ネスコ発行文藝春秋発売)に詳しく述べた。
何千人何万人という防衛庁OBと自衛官の再就職先となっている受注企業に対
する過払いや入札の不正は枚挙に暇がなく、もはや常態化している。こうした
再就職のあっせんと装備品発注のための一種の交流の場ともなっているのが、
防衛庁傘下の公益法人である。
これらの防衛庁ファミリーの“企業”は多かれ少なかれ政府から補助金や委
託費を受けたり、受注企業からの会費、協賛金を集めたり、防衛庁や自衛隊、
関連企業間での出版、物販、通信、運搬、講習などの委託ビジネスを行ったり
して運営されている。役員は圧倒的に防衛庁、自衛隊OBと受注企業OBである。
このうち「防衛生産管理協会」は、過払い事件の中心人物として起訴された
元調達実施本部副本部長・上野憲一氏が専務理事を務めていた。また、「防衛
装備協会」は、同じく主犯格で公判中の元防衛施設庁長官、防衛庁調達実施本
部長だった諸富増夫氏が天下って理事長を務めていた。
これらの団体は公益法人とはいいながら、やっていることの大部分は営利事
業であり、受注先企業で先方の機材を使って“講習”や“指導”をするなど、
ヘンな団体なのである。私は、利権のために設立されたこれら団体の許可を取
り消すよう再三求めたが、防衛庁長官の答弁は終始沈黙か「検討します」であ
った。
平成一二年九月に富士重工業との間に契約が行われた航空自衛隊の新初等練
習機T三改の入札について私は、莫大な国損を生じる疑惑である、として目下
追及している。東京地検も関心を持っており、事件に発展する可能性が高い。
防衛庁は平成一二年八月三〇日に総合評価方式というはじめての方法で、新
初等練習機四九機中二機分の入札を行った。これに応札して提案書を提出した
のは富士重工とスイスのピラタス社であった。平成一二年度に契約する最初の
二機分だけが入札で、平成一三年度以降毎年購入する残りの四七機について
は、その都度随意契約で行うことになっている。
総合評価方式というのはこの場合、購入する飛行機の将来のメンテナンス
(ライフサイクルコスト)をも含むトータルな性能・コストを評価して決定す
るというものである。しかし、防衛庁が行った入札方法は、最初の二機分のみ
を密封(通常の入札で箱に入れ封印すること)したが、他の四七機分とそのラ
イフサイクルコスト価格は封印もしないままファイルで受領し、航空自衛隊に
運んだ。
九月二五日に行われた開札の結果、密封して入札にかけた最初の二機分の価
格はピラタス社の方が安かった (ピラタス―三・五五億円、富士重―四・八
九億円)にもかかわらず、価格の高い富士重工が落札した。防衛庁の説明では
三機目以降の機体とライフサイクルコストで富士重工の方が安く、全体として
富士重工の方が安かった、というのだ。
決め手になった数字は、密封せず、いつでも差し替えが可能な状態に置かれ
ており、げんに開札前に差し替え修正されたと防衛庁も認めた数字だった。し
かも、防衛庁が示した三機目以降の富士重工の機体価格は、入札にかけた最初
の二機分と比べて相当安くなっている。入札の常識では、このような場合、入
札にかける決定的な価格を高く設定し、後の価格を安くすることは絶対にな
い。
疑惑に対して防衛庁は、ライフサイクルコストの具体的な数字の公表を拒ん
でいる。三機目以降の機体整備の価格はあくまで将来の入札にかかるものであ
り、その時にならないと決まるはずはない。それを“参考”に四九機の落札者
を決めてしまったので、どうしても公表できないのである。
そこで、私はライフサイクルコストの一部分を占める定期整備(車でいえば
車検のようなもの)の価格を算出した。その方法は、今回契約したT三改機と
同系機種(ほぼ同じ機体といってよい)で、すでに富士重工から海自に納入さ
れているT五という練習機の定期整備価格を基にすればよい。
防衛庁が答弁で明らかにしたT五の定期整備費用で計算すると、富士重工の
ライフサイクルコスト全体は少なくとも二二億円高くなり、全体の価格でもピ
ラタス社の方が安くなるのである。その上、防衛庁は定期整備の期間、回数に
ついてもいいわけのきかないごまかしをしている。
両者を性能・技術面でまったく同じと評価しておきながら、富士重工=T三
改は「三年九ヵ月に一度」、ピラタス=PC七は「三年に一度」としているの
だ。PC七はすでに米国をはじめ国際的に何百機も使われている優秀な飛行機と
されており、T三改は机上の試作機に過ぎないのである。もしT三改の定期整備
価格が私の計算通りだとすると、海自のT五は百数十億円の払い過ぎというこ
とになる。
私は富士重工との癒着によって不正入札が行われたものと確信する。それを
裏付ける内部の証言もある。ちなみに、防衛庁・自衛隊から富士重工への天下
り・再就職者は現在四六名であり、さらに、前述の機体整備を下請けしている
富士重工の子会社である富士航空整備(株)への再就職者数は一二八名にのぼ
るのである。私の求めに応じて会計検査院も平成一三年一一月末に検査を完
了、ほぼ私の主張通り、数々の不正を指摘した。
なお、今回の空自初等練習機の入札は、平成一〇年にいったん実施されたの
だが、富士重工と防衛庁の汚職事件で白紙に戻り、富士重工への取引停止処分
期間が空けるのを待って、やり直されたものだ。平成一〇年の入札に当たっ
て、スイスのピラタス社は、人命を守るための緊急射出座席付きの練習機を提
案した。世界的にも最近の練習機は射出座席つきがほとんどとなっている。
しかし、防衛庁は射出装置を取り付けることのできない富士重工の生産能力
に合わせた基準で入札にかけた。この五年間で自衛隊の飛行機事故による死者
は二八名に及んでいる。平成一三年九月にも、今回富士重工と“不正”契約し
たT三改の同系機種であるT五の事故によって、自衛隊員二名の命が失われ、一
名が重体となった。射出装置が付いていれば貴い命が助かったかもしれない。
そうだとすれば、防衛庁の権益は人命より重いのかと問わなければならない。
こうした「疑惑」が次々に起こるのも、防衛庁の公益法人「防衛装備協会」
や「防衛生産管理協会」などを通じた政官業の癒着体質があるからだ。
公益法人と政治家の関係
次に、公益法人がいかに政治家のカネと結びついているかを示すことにす
る。
私は、平成一二年四月一九日の衆議院農林水産委員会で、また同年五月号の
『文藝春秋』 の論文「農水省汚染」 で自民党衆議院議員M氏の例を取り
上げた。
林野庁が抱えている利権、天下り団体は、特殊法人の緑資源公団をはじめ、
(社) 日本林業技術協会、(社) 日本林野測量協会など数多いが、その一
つ、(財)林業土木コンサルタンツの役員は二二人中一五人が農水省の天下り
である。
農水省はこの林業コンサルタンツに年間五七億円の“事業≠発注してい
る。同財団はこれを一四億四〇〇〇万円で一六四の企業に再発注(丸投げ)す
るとともに、いくつもの子会社をつくって、そこにも丸投げしている。M氏は
その受注企業からも子会社からも政治資金を集めている。林業コンサルタンツ
からM氏への直接献金もある。
また、(財)林野弘済会も役員は天下りが中心の団体で、ここもM氏に対し
て毎年、政治資金規正法で定められた限度額いっぱい献金している。この財団
は、平成一〇年度は四六億六〇〇〇万円分を農林関係のファミリー企業に丸投
げしており、受注した会社はM氏に政治献金をしている。
図表2−4 M代議士へのカネの流れ
農水省(地方公共団体)
発注 発注 発注 委託金など
↓
(財)林業土木コンサルタンツ (財)林野弘済会 (社)日本林業技術協会
発注 出資 A興林産業(株) 献金 出資 発注 発注 発注 発注 出資 発注 献金 出資 発注 発注 出資 出資 発注 出資 資 発注 発注 出資 発注 献金
A林業(株)
(株)Kコンサルタンツ
献金
36社
164社 78社
(百万円以上) (百万円以上) 37社
A造林(株) K防災技術(株) D林業 (株)F
G航業(株)
献金 献金
献金 パーティー券
M議員
(社)日本林業技術協会には農水省から年間四億円前後の補助金が支出されて
いる。政府から補助金を受けている団体は法律によって政治献金を禁止されて
いるにもかかわらず、この団体はM氏に献金していた。よほど深い関係がある
らしい。これは疑う余地のない法律違反なので告発も考えたが、その前に委員
会でM氏に申しあげたところ、金を返すというので不問に付した。
これらの公益法人は、お互いに委託事業を発注し合ったり、共同で出資し合
って数百社にのぼる孫会社をつくり第三の天下り先にしたり、政治献金の財布
にしたりしている。(株)Kコンサルタンツは(社)日本林業技術協会と
(財)林野弘済会が出資して設立され、林野庁出身者が歴代社長に就いてい
る。主な業務の一つは保安林の指定解除である。送電線の敷設など公共物の建
設、リゾート開発などでバブル期には相当な事業量があった。そもそも林野弘
済会がこの事業を始めたのだが、あまりに量が多く、儲かる仕事なので孫会社
をつくったという。この会社の歴代社長のひとりは現在M代議士の秘書となっ
て“活躍”している。
こうした関係を図にしたのが図表2−4である。林野庁関係団体からM氏に流
れる献金額は報告されている分だけで年間約六〇〇〇万円にのぼっている。こ
れについてM氏自身は、私の国会質問に対する釈明として、「何ら悪いことで
はない」と、むしろ当然のことのように述べておられるので、彼の“功績”と
して、あえてここで紹介させていただいた次第である。
勝手に国民の借金を増やす − 民都機構
バブル経済の崩壊後、企業が買おうとしない土地をどんどん買い込んでいる
公益法人がある。旧建設省所管の(財)民間都市開発推進機構(民都機構)で
ある。
この公益法人は、民間都市開発事業の計画・実施に対して資金、情報、手法
などの面で援助を行うことを業務として、昭和六二年一〇月に設立された。オ
フィス、ホテル、ショッピングセンター等の建設に民間との共同事業者として
参加したり、日本政策投資銀行等を通しての融資事業などを展開してきた
(参加事業及び融資事業)。
当初は土地は買えなかったが、バブル経済崩壊後、土地取引や地価が低迷し
たことから、平成六年に法律が改正され、都心の地上げ土地の取得ができるよ
うになった。そして、企業から遊休地などを買い上げ、その土地に企業側にマ
ンションや商業ビルなどを建てさせ、収益を上げてから一〇年以内に土地を買
い戻させることを業務とするようになった (土地取得事業、譲渡事業)。土
地買い上げ資金は政府保証付きで民間の銀行団から借り入れる。万一の時には
政府が支払ってくれるのだ。
平成六年に政府保証枠として五〇〇〇億円が設定されたが、その後平成七
年、平成一〇年と五〇〇〇億円ずつ設定され、現在は一兆五〇〇〇億円に拡大
している。このほか政府から二〇〇億円の基金が支出された。
平成一二年度末までに取得した土地 (五〇〇平方メートル以上) は一九
七件、三二〇ヘクタール、九二四〇億円であり、譲渡済みは四〇件、五八億円
だ。参加事業の方は五六件、二〇〇〇億円超、融通事業は三三二件、六〇〇〇
億円超となっている。いずれの事業も政府が手出しすべきことではない。企業
ができるように必要な条件整備をすればよい。ちなみに、民都機構の事業規模
は年間三五〇〇億円となっている。
民都機構は、予算なし、国会承認なしで、公益法人が勝手に運営する。それ
なのに政府保証債はどんどん増えていく。つまり官僚たちが勝手に国民の借金
を増やしていくのである。
経済無知から出たわざわい − 第三セクター
一九七〇年代頃から“第三セクター”という言葉が流行し、各地で設立が続い
た。地方公共団体等の公共部門(第一セクター)と民間部門(第二セクター)
とが共同出資で設立する事業主体のことだ。だが、これは、とんでもないルー
ル違反であった。
本来、円滑な経済活動のための環境整備役に徹すべき権力が、「共同事業」
に参入するなど有り得べからざることだからだ。にもかかわらず、この制度
は一般に「悪くない」ものとして受け入れられた。いかにも政治や行政が企業
の経済活動を守り立てる細度のように見えたからである。
今日、第三セクターは全国に八四三八社を数え、その事業は地域開発・都市
開発、観光・レジャー、運輸・道路、住宅・都市サービス、農林・水産、商
工、情報処理、生活衛生、教育・文化など多様な分野にわたっている。
このうち経営が順調なのは、民業を圧迫して地域でシェアを独占している
か、または行政機関等からの発注で“丸投げ”“丸請け”的にうま味を吸収し
ているところなど、ごく少数である。これはこれで大きな問題だが、こうした
特殊なケースは別として全般に少なくとも“三セク”の半数は累積欠損を抱え
慢性的な赤字経営となっている。
経営破綻から清算に至った件数は、東京商工リサーチによると平成一〇年に
二五社、平成一一年に二六社、平成一二年に三三社と年々増え続けている。こ
の数字は全体の数からすればさほど大きく思えないかもしれない。しかし実態
は、清算もできず、だらだらと行政の慢性的持ち出しが続いているもの、長期
休眠状態のものが大部分だ。都道府県と政令市だけで平成一二年度の“三セク
”に対する補助金などの財政支援額は一五〇〇億円。東京都だけで四一五億円
と、年々膨らむ一方である。こうした赤字補填や破綻の穴はいうまでもなく税
金によって埋められている。
私の選挙区である世田谷区と姉妹提携している群馬県川場村では、“三セク
” の累積債務返済が不可能となり、民事再生法によって処理されることにな
った。その結果、平成一二年、約一五〇億円の負債を金融機関が棒引きするこ
とになり、当座を乗り切ったという。
青森県大鰐(おおわに)町では、“三セク”がスキー場やスパガーデンの経
営に乗り出したが、失敗し、借金を孫子の代まで払い続けなければならない事
態になっている。
“三セク”ブームに拍車をかけたのが、中曽根内閣の昭和六二年六月に制定さ
れた「総合保養地域整備法(リゾート法)」だった。スポーツ・レクリエーシ
ョン、教養文化、休養などのための大規模施設の建造・経営を政府の掛け声で
推進するという内容である。
地方公共団体による出資・補助をはじめ租税特別措置法による特別償却や、
不動産取得税、固定資産税の優遇措置、地方公共団体が事業資金のために発行
する地方債への支援策なども規定されている。
政府は四一道府県四二の「構想」を承認したが、整備が予定されている施設
八九五二のうち、事業化されたのは二一〇〇施設にすぎない。大半は赤字経営
で暗礁に乗りあげている。
リゾート法適用第一号として平成六年に開業した「シーガイア」が、平成一
三年二月に倒産し会社更生手続きに入った。宮崎県と宮崎市などが作った“三
セク”の「フェニックスリゾート社」が運営する総合レジャー施設だが、しょ
せん、行政が金と権限にあかせて経営する事業である。平成一二年には沖縄サ
ミットの外相会合にも使ってみたが経営の打開策は見出せず、二七六二億円の
負債を抱えて幕を閉じた。
まだまだ“三セク”の倒産は続き、いずれの場合も莫大な税金が消えていく
ことになる。しかし、経済のイロハに反し、市場経済をも殺す政策を進めた責
任者の責任を追及する声は通らない。こういう姿勢が、税金の無駄遣いを放置
すること以上にこの国をダメにしている。
大規模開発の「夢の跡」 − 苫東会社の解散
第三セクターを使った大規模開発の代表例が、苫小牧東部開発(北海道南
部)とむつ小川原開発(青森県下北半島) である。
双方とも、当初は石油化学を主力とする臨海コンビナートを建設する計画だ
った。国家プロジェクトとして政府、地元自治体や民間企業が出資して第三セ
クターを設立、用地買収や造成、道路建設に取り組んだ。むつには経団連も出
資した。苫東の借入金残高は一八〇〇億円、むつが二三〇〇億円にのぼる。双
方とも、そのうち約九六〇億円が財投資金である。
ところが、造成した広大な土地が売れず、開発会社(第三セクター) の経
営が悪化し、「苫小牧東部開発」(苫東会社)は平成九年末に、むつ会社は一
〇年一二月に、借金の金利も払えない「死に体」となってしまった。
苫東会社は平成二年六月の株主総会で解散を議決、翌七月、事業を引き継ぐ
新会社「苫東」が設立された。新会社の資本金は六二二億円。最終的には国
(北海道東北開発公庫) が三三四億円(五四%)、道と地元自治体、経済界
が計一九二億円(三一%)、民間金融機関が九六億円(一五%)をそれぞれ出
資した。
旧社は新社に土地を売り、その代金として現金と新社の株式を受け取る。旧
社の株主にはその現金と株が配分されるので、それを新社への出資金とする。
この手品のような操作で、旧社から新社への移行が行われた。しかし、新社の
経営に展望があるわけではない。造成した分譲用地約五五〇○ヘクタールのう
ち、売れるあてのない土地は約四七〇〇ヘクタールにのぼっている。
新社の事業計画では、公的プロジェクトを中心に八つの事業を並べたが、そ
の売却見込み面積は合計で一一五〇ヘクタールに過ぎない。残る三〇〇〇ヘク
タール以上の土地の使い途はまったく白紙だ。売却見込み分にも「水増し」が
指摘されている。
たとえば、資源リサイクルプラントは、日立製作所などが廃家電リサイクル
工場を道内に建設する意向を明らかにしたことは事実だが、業界が実際に必要
としているのはたった二ヘクタールにすぎない。それが事業計画では売却見込
み面積一三〇ヘクタールに水増しされている。「苫東処理」に関わってきた道
内選出の代議士が、「計画は民間に出資を迫る口実みたいなもの」と語ったと
新聞に報じられている。これこそ真相であろう。むつ小川原も、苫東とまった
く同じ路線を走っている。
苫東、むつの場合、本体の工業用地造成は財投資金などで行われたものの、
付随する公共事業には国費も使われている。苫東開発に注ぎ込まれた事業予算
三六〇〇億円のうち国費は二〇〇〇億円に達した。むつも投入された国費は一
〇〇〇億円を超えた。ところが、双方とも、不良債権化して問題になっている
のは財投と民間資金による「投資」 の部分で、国費の部分はまったく問題に
されていない。
苫東は旧北海道開発庁、むつは旧国土庁主管のプロジェクトだが、こうした
大プロジェクトには他省庁も便乗して予算要求する。むつでは一四、苫小牧東
部では一三もの省庁が、域内の公共事業などにかかわっている。こうした
「便乗」は、国民の税金を使うという責任意識を拡散する。官僚たちがよって
たかって「無責任の体系」を作り上げたのである。
もうひとつのあいまい法人 − 認可法人
特殊法人に似て実定法上に定義がない法人に、認可法人というのがある。特
殊法人には一応「設置法」があるが、認可法人の場合にはそれすらなく、設立
の際の定款に対する主務大臣の認可のみに任されている。
昭和四〇年代初頭までは民間の関係者が発起人となって設立されるものと考
えられていたが、それ以降、官庁などの都合で次々に無定見に設立され、昭和
五〇年代半ばには、九九団体にまで膨れ上がった。その後、廃止や統合、民間
法人化が行われ、現在八四団体となっている。
認可法人も性格、計画、事業、国との関係等があいまいであるため、多種多
様な団体によって構成されている。
たとえば、特定の会員や団体で構成される日本商工会議所、全国中小企業団
体中央会、全国商工会連合会、全国農業協同組合中央会、全国農業会議所、日
本税理士連合会、日本公認会計士協会などがある一方、国・地方の公務員や地
方議員、特殊法人の職員の共済組合がある。政府に対して独立の機関であるは
ずの日本赤十字社や日本銀行も入っている。
税理士会などを除いて抱えている問題点は特殊法人と同じだ。まず政府から
多額の出資金や補助金を受けて子会社を作っているものがある。また、基盤技
術研究促進センターや情報処理振興事業協会、通信・放送機構、海洋科学技術
センター、農林漁業信用基金などのように民間企業への政府の補助金配分を中
継しているものもある。
これらの団体は国や地方公共団体の補助金・出資金に依存して官庁OBを抱え
るとともに、民間企業と官庁との癒着の事実上の接点ともなっている。
平成九年度の実績では、認可法人に対する国庫補助金(補助金、交付金、委
託費) の合計は一兆二八〇〇億円、政府出資金の累計は一兆一〇〇〇億円で
ある。認可法人は各省庁の裁量度が強く閉鎖的で、財務状況などの実態はきわ
めて不透明である。
地方も国の相似形 − 地方公社
都道府県や指定市、市区町村が出資(または出捐)して作られた行政企業で
ある地方公社は、平成二年一月現在で一〇一三五社である(地方公共団体が設
立する社会福祉法人は含まない)。
内訳は都道府県が三二五一社、指定市が五三一社、市区町村が六三五三社で
ある。地方公社は昭和五〇年代から顕著に増加したが、最近でも前回調査した
平成八年一月と比べ七九一社、前々回の平成五年一月と比べ一八八九社も増加
している。
地方公社では、地方住宅公社、地方道路公社、土地公社など「地域開発・都
市開発関係」がもっとも多く、全体の約三〇%を占めている。次いで「観光・
レジャー関係」が約一四%、「農林水産関係」が二二・六%、「教育・文化関
係」が約一三%となっている。法人の形態としては、株式会社・有限会社が三
四八四、民間法人が四九五四となっており、「○○事業団」「○○センター」
「○○開発」「○○会館」などの名称がついている。
地方公社の職員数は二二万九五九六人で、このうち地方公社が報酬・給与を
支給している者は一九万八七五七人となっている。役員数は一三万五〇四七人
で、地方公社が報酬・給与を支給している者は二万四五三〇人である。役員の
うち地方公共団体OBは六六一五人、地方公共団体からの出向者が三万三二四三
人となっている。
以上に見る通り、わが国においては中央政府の場合と同様に地方において
も、税金で作られた特殊法人、公益法人、私企業が蔓延し、行政権力が不動
産・建設、観光、運輸、情報、商業、製造業、流通など、あらゆる経済分野に
“侵出”していることがわかる。そして、必ず地方政府の天下りが行き、ある
いは、出向者が行って報酬や給与、退職金をとっている。公金で有利な条件の
下にビジネスを展開し、民間の正規ビジネスを圧殺し、その揚げ句に行政に借
金負担を負わせているのである。
莫大な税金を食っている三セクは東京にもたくさんある。一つだけ例を挙げ
よう。
東京の渋谷区は第三セクターの 「渋谷都市整備公社」 で駐車場を経営し
ている。経営といっても運営は民間企業への委託である。駐車場は有名な公園
通りに面した超一等地にあるが、ご多分に漏れず殿様商売で、平成一一年度末
までに五七億円の累積赤字を出し、渋谷区は社債購入名目で四七億円を投入し
ている。
この赤字の“打開策”として区は一〇億円を投入し、駐車場への新たな進入
口を作る計画を立て、近隣住民などの反対を押して強引に工事に着手した。こ
の公社の社長は区の企画部参事で、給料は公社からもらっている。公社の専務
理事には区の部長職があて職で就いている。職員は一人しかいない。
そもそも公社は区に地代を払って用地を借り上げ、借入金で設備を作った
が、赤字続きのため設備を区に寄附したりスペースを区に貸す名目で地代を約
半額にしたりして、固定資産税や消費税のがれの算段をしてきた。借りたモノ
を貸主に貸す。借りた場所に作った設備を貸主に寄附する。いったい何をやっ
ているのか!? しかし、事態は悪化する一方なのだ。
この場合、唯一の真の解決策は「公社」を廃止し、ビジネスを止めること
だ。行政事務活動に不要であるなら売却すべきだ。もしくは公開入札で民間に
経営させる以外にない。その際、民間で経営が成り立つように土地等の無料貸
与などの措置が必要となろう。
平成二一年一一月六日、駐車場問題にからんで渋谷区などの“いじめ”にあ
った「公園通りの生活と環境を守る会」(会員約六〇〇人)代表の森啓氏(当
時七四歳)が、抗議の自殺をした。これに対して渋谷区当局はそしらぬ顔で通
した。この事実が、地方公社についての多くを物語っているといえよう。
第二章 第二節 ここまで
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