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こんな選挙結果はこの国これまでなかった
2009/7/16 10:00
「自公の過半数割れ」と「民主党の第1党躍進」は予想されたことだったが、都議選で驚いたのは票の出方だ。自民が獲得した145万票に対し、民主には229万票も集まった。議席数以上の完勝だ。
「都議選は1人区が7つ、残る35は中選挙区です。だから自公はどうにかビリ争いで61議席を拾えましたが、これを小選挙区の衆院選に置き換えると、ほぼ全敗です。そのくらいすごい雪崩が首都で起きたのです」
こう言うのは政治評論家の森田実氏だ。
「自民党が都議会第1党の座を失うのは44年ぶりですが、状況は今回の方がはるかにひどい。昭和40年の時は都議会の汚職事件で自民党は解散に追い込まれ、社会党が第1党になったが、都民は都政のデタラメに怒ったのであり、一時的なものだった。しかし今回の都議選は有権者が“自民党はもう去れ”と声を大にして明確な意思表示をした。怒りのスケールははるかに大きくて深いのです」
ここまで政権政党の自民党が否定された選挙はかつてなかったということだ。
●結局、バカな麻生がすべてを壊した
都民の怒りの標的は、もちろん麻生バカ首相だ。この期に及んでも「都議選は地方の選挙。何の影響もない」なんて謙虚さゼロだから、「それなら麻生を引きずり降ろしてやろう」と、さらに有権者の怒りを買った。
「国民は麻生の顔を見るのも嫌になっている。大不況でカネが回らず、会社はどんどん潰れ、庶民は職もなく苦しんでいるのに、バカばかりやっている男がマンガのような政治をやっている。この不真面目さが許せない。“麻生は消えろ”と引導を渡されたのです」(森田実氏=前出)
「オレが応援すれば勝てる」と麻生が駆けつけた1人区、自民党は全敗だった。「麻生で票を減らした」と恨み節が出ているが、有権者の気持ちが分からない男を総理・総裁に担いでいる自民党の全議員、全党員も同罪。自業自得なのだ。
●大変化望む選挙民の実力行使は止まらない
これで自公は大型地方選5連敗。政権交代の実力行使に出た有権者のうねりはもう止められない情勢だ。法大教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「普通、注目の地方選で自民党を懲らしめると、国民はそこで留飲を下げるものですが、今は自民党がいくら負けても“ガス抜き”にならない。むしろ、増幅し、流れが加速している。政治を大きく変えたいという意識をもった国民は、一連の地方選で、自分の一票で政治を変えられることが分かった。だから自民党の連敗が止まらないのです。この流れは総選挙に向けて、さらに大きくなりますよ」
世論調査では、つい最近まで「民主党中心の政権を望む」と「自民党中心の政権を望む」が大差なかった。「大連立を望む」という声がトップになることもあった。自公政権には不満でも、いきなり民主党など野党政権になることに国民の抵抗があった。だが、麻生が何も決断できず、グズグズと解散を引き延ばしている間に、国民の気持ちは「一気に民主党で政権交代」に傾いてしまったのだ。局地的雪崩だと甘く考えていた自公政権は、今ごろ大雪崩発生に慌てふためいているが、気づくのが遅すぎるのだ。
●首相を舛添に代えても政権交代は確実
都議選でハッキリしたことは、解散・総選挙になったら、確実に「政権交代」が起きるということだ。与党は「麻生で解散」を決めた。自民党内がこれで納得するか不透明だが、有権者にとっては「表紙」が誰になろうが同じ。もはや自民党が政権を維持することはありえない。
朝日新聞の世論調査では、「麻生首相を支持しない」は67%に達しているが、同時に「麻生降ろしに納得できない」も65%ある。国民はコロコロ表紙を替えて生き延びようとする自民党という政党の姑息な体質にも完全に愛想を尽かしている。だから、「麻生で堂々と解散・総選挙をしてみろよ」と挑発しているのだ。
「都議選の票の出方は、有権者の気持ちを端的に表しています。民主党議員の多くが、ぶっちぎりでトップ当選している。直前に公認された候補者までが次々に当選し、58人の候補者中、4人しか落選していない。国民は、民主党に政権を取らせることを決めたのです。これ以上、自民党には任せられないという気持ちでしょう。小泉政治の5年間で暮らしが破壊され、ただでさえ不満を強めているのに、東国原知事にまですがる姿を見せられた。あまりにも見苦しい姿に、自民党支持者も見切りをつけたはずです」(五十嵐仁氏=前出)
このまま解散・総選挙に突入したら、「自民党が300小選挙区で勝てるのは50程度だろう」(森田実氏=前出)の声もある。それも極論ではなくなってきた。
●四分五裂で集団自殺に突き進む自民党
自民党の国会議員たちが都議選に青ざめたのは、1人区の1勝6敗という結果だ。大ベテランまで民主党の若い新人や無名の女性にコロリとやられた。これを見て、「もう、麻生を降ろして選挙の顔を替えてどうなるというレベルを通り越した」と、あきらめの心境だ。
「それで『麻生降ろし』の動きも鈍いのです。落選確実の小泉チルドレンなどの若手は、もう選挙をあきらめましたよ」(自民党関係者)
一部の中堅議員からは、「この際、仲間を集めて自民党を離党した方が当選しやすい」という声も上がっている。ベテランたちも右往左往だ。
「もはや自民党議員は、自分の当選しか考えていない。麻生首相がどうなろうが、自民党がどうなろうが、知ったことじゃないという状況です。『麻生降ろし』をすれば、自民党の評判をさらに下げるだけなのに、それでも騒いでいるのは、首相を批判することで自分を有権者に売り込もうという狙いしかない。おまけに自民党が末期的なのは、まとめ役や司令塔がいないことです。派閥の領袖がなにを言おうが、下は言うことを聞かないし、キングメーカーとされる森喜朗や参院ドンの青木幹雄も、実際には日和見で、大勢が決まってから、もっともらしく登場するだけです。まさにカオス状態です」(政治評論家・山口朝雄氏)
自民党は総選挙前に四分五裂しかねない。これでは総裁選の前倒しも麻生降ろしもムリ。バンザイ突撃の集団自殺の道しかなくなった。
【各党の獲得議席数】
◇獲 得/議席数/現議席/増減
◆民主党/54/34/+20
◆自民党/38/48/−10
◆公明党/23/22/+1
◆共産党/8/13/−5
◆ネット/2/4/−2
◆社民党/0/0/±0
◆諸派・無所属/2/4/−2
◆計/127/125(欠員2)
(日刊ゲンダイ2009年7月13日掲載)
2009/7/16 10:00 更新
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