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http://newsnews.exblog.jp/d2009-06-03
「核密約」報道と記者会見
すでに、いろんな方がいろんなところで評価しているが、共同通信による「60年安保の核密約」記事は、なかなかのヒットだった。配信を受けた新聞社の中で、東京新聞は1面、北海道新聞も1面。ほかにも多くの地方紙がこのニュースを大きく扱ったようだ。(私に見落としのない限り)全国紙の朝日新聞、読売新聞は、この件を全く報じていない。毎日新聞は「一部報道を官房長官が1日の会見で否定した」という形で報じたが、せめて、最低でもそのくらいの記事にはすべきだろう。「一部報道」という引用のやり方も、いい加減に止めたらどうかと思うが、まったく無視することはなかろう。
そして、である。この共同通信の記事が配信された後の、外務省の記者会見が、会見記録のテキストを読む限り、どうやら、全く盛り上がっていない。ふつうなら、スクープされた怒り・情けなさもあって、容赦ない質問が飛び交う、、、ものだと思っていた。しかし、実情は違ったようだ。以下は、外務省のHPに記載された6月1日の薮中三十二外務事務次官の会見記録(当該箇所のみ抜粋)である。
(問)一部報道で、「60年安保の核持ち込み密約」があったと報じられています。報道によれば、外務官僚が文書を管理して出す出さないを判断していたと、そして総理、外務大臣にも教えたり教えなかったりと、実際に引継ぎもされていたと、具体的に匿名ですが4人の次官の証言も報じられていると、これについて、事実関係を教えてください。
(事務次官)これは明白であり、そのような密約は存在しないということ、これは繰り返し歴代の総理、外務大臣も説明をされておられますけれども、これに尽きているということですし、私が承知していることもそれに尽きているということです。
(問)特段引き継がれてはいないと。
(事務次官)全くありません。
(問)その4人の中には、日本政府は国民に嘘をついていたと証言されている方もいます。否定するということは、その4人の方が嘘をついているというご認識なのでしょうか。
(事務次官)その4人の方というのが、どういう方で、どのような形でインタビューされたのかよくわかりませんが、私が申し上げたいことは、そのような密約は存在しないということです。私自身もそれ以外一切承知していませんし、大事なことは歴代の総理も外務大臣もきちんと明確に説明をされていると、これに尽きていると私は考えています。
(問)国民の方から見ると、どちらが本当なのか、むしろ具体的な4人の方のお話の内容からみると、外務省の方が嘘をついているのではないかと思うのではないかと思うのですが、80年代から90年代に次官をされていたということで、ある程度特定されるのですが、外務省として話しを聞いて事実関係を調べるというお気持ちはあるのでしょうか。
(事務次官)その必要は全くないと思っています。我々としての説明は一貫している訳ですから、それ以上の事は必要ないと考えております。
会見記録が実際のQ&Aを忠実に再現しているものと考えたら、この核密約問題に関する質問は4つ。北朝鮮問題があったとはいえ、全体の問答からすれば、全体の5分の1弱の分量しかない。事の重大さに比べたら、いかにも質問が少ないではないか。加えて、質問がどうにも優しい。別に、言葉を荒げる必要はないが、この会見録の感じからすると、記者たちは、ずいぶんと「物分かり」が良さそうだ。
例えば、3つめの(問)。質問者は「次官経験者の4人は嘘をついたということか」と聞いているのに、藪中次官はそれに答えず、「密約は存在しない」と言っている。質問の仕方を説経したいわけではないが、もっと、たたみかけて聞けばいいのに、と思う。「では、次官経験者4人が嘘をついたということでいいですね?」とか、「藪中次官は正直者だけれども、藪中次官の先輩の4人は嘘つきなんですね?」とか。あるいは「こんなデタラメを書かれたわけだから、共同通信には当然、抗議したんですね?」とか。
だいたいにおいて、米国でこれに関する公文書が公開されているにもかかわらず、日本政府は「密約はない」と言い続ける。その図式こそが、滑稽極まりないのだ。そして、そういう、「公然たる嘘」を許してきたメディア側の責任も相当に重い。
例として適切かどうか分からないが、数年前、北海道警察の裏金問題を追及した際、当時の取材班は取材をスタートさせる際、「裏金の存在を公式に警察に認めさせる」ことを目標に置いた。なぜなら、公式に認めさせない限り、いくら悪弊を暴く記事であっても、「書きっぱなし」で終わる可能性が高かったからだ。警察の裏金自体はその時点でも、過去、週刊誌や全国紙などで何度も報道されていた。警察の裏金の存在を暴くこと自体は、何も、全く新しい話ではなかった。しかし、それに関する過去の報道は、「裏金の存在を暴く → 警察は否定 → そのうちウヤムヤになる」というパターンの繰り返しだったのである。これでは、世の中、悪弊はなかなか是正されないのだ。北海道警察が裏金の存在を認めるに至ったのは、原田宏二さんという元道警の大幹部が、実名で名乗り出て、その存在を暴露したことが大きく寄与しているが、「認めさせるまで報道を続ける」というしつこさも結構な役割を担っていたと思う。
今回の「核密約」報道も、何となく、これに似ているように思える。もちろん、見えぬところで取材は継続しているかもしれないし、この先、さらに驚くような関連ニュースが出るのかもしれない。だから即断はできないのだが、しかし、例えば、報道後、最初の外務大臣会見だった2日の会見では、記者側から核密約の質問は全く出ていない。公式な記者会見での質問だけが取材ではないが、少なくともスクープされたネタに関して質問も出ないのだから、やる気の無さは覆い隠しようもない。
「会見で質問してもどうせ否定するから」などと思ってはいけない。たしかに、公の記者会見で「はい、確かに密約はございました」などと認めることは、ほぼあり得ないだろう。しかし、外務省幹部に厳しい質問を矢継ぎ早に浴びせ、それに対して何と答えたか・答えなかったかは記録に残せる。その繰り返しが大事なのである。「知る権利の代行者であるわれわれ記者は、この問題を看過しませんよ」という姿勢を見せ続けることが、まずは大事なのだ。そして、そういう会見記録の集積は、その時々の政治や官僚の姿勢を映し出す。国民には政治的判断の大きな材料になるし、後の世代にとっても価値ある記録になるはずだ。
密約を公式に認めさせることはできないにしても、せめて、会見でそれぐらいの質問は重ねて欲しい。「もう、会見はいやだ。取りやめにしたい」。相手にそう思わせてこそ、記者だと思う。
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