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http://mainichi.jp/select/seiji/archive/news/2009/05/05/20090505ddm010030128000c.html
アメリカよ・新ニッポン論:検証(その1) 「核の傘」と安全保障
◇日本が望んだ「密約」 対米依存外交の原点
戦後の日米外交・安保体制は、いくつもの密約の上に成り立ってきた。内容は大きく、核▽米軍による在日米軍基地の自由使用▽日本での米軍の地位(地位協定)−−の三つに分けられ、時期は60年安保改定と沖縄返還を区切りとしている。
外交・安保政策が、対米追随で乗り切れた冷戦時代ならではの産物だが、根底に共通して核の傘の問題が横たわるため、オバマ米政権が進める核軍縮にも、いびつな歴史は影を落とすに違いない。
来年は日米安保改定50年。核の傘▽沖縄返還▽核持ち込み−−の三つのケースを再検証し、日米密約外交の意味と限界を探る。
■検証・「核の傘」と安全保障
◇核搭載空母の「母港化」 本質的議論避け
大河原良雄・外務省アメリカ局長「(米空母)ミッドウェーについて核兵器の問題はどうなのか」
シュースミス駐日米公使「事前協議に関する日本の了解を十分承知の上で、母港化をお願いしている。従来の了解になんら反することはしない」
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1972年10月に東京・外務省で始まったミッドウェーの横須賀(神奈川県)母港化(73年10月)に関する日米事務レベル協議のひとコマだ。
ミッドウェーなどの米空母は当時、米国の核戦略の要の一つで、核兵器を装備していないと考えるほうが不自然だった。65年12月にはベトナムから横須賀に向かう途中の米空母タイコンデロガが、沖縄近海で核爆弾を搭載したままの攻撃機を海中に転落させた事故があったことも明らかになっている。
日米間には、60年の安保改定交渉時に結ばれた核搭載米艦船の寄港を認める密約がある。タイコンデロガも核兵器を搭載して横須賀に寄港した可能性が高い。しかし、密約の対象はあくまで「寄港」で、核兵器の「配備」までは認めていない。母港化は単なる「寄港」とは言えず、事前協議の対象である「配備」との間の灰色部分になる。
米国もこのことを意識していた。米国では現在、当時のレアード国防長官からロジャーズ国務長官への書簡などが機密指定解除されている。それによると、当時のジョンソン国務次官は、核兵器を配備するには事前協議が必要なことを考慮して、核兵器を搭載しない母港化を提案している。
にもかかわらず、母港化が可能になったのはなぜか。誰もが疑っているミッドウェーの核兵器についても、表では取りあげないことを日本が求めたからだった。シュースミス公使が言った「従来の了解」とは、母港化も従来の「寄港密約」の範囲内で扱うことを意味していた。大河原氏がこれに反論しなかった瞬間、母港化という日本への核兵器「配備」が事実上決まった。
その後、駐米大使も務めた大河原氏は今、シュースミス公使とのやりとりを「(核兵器は)ギスギスやるような交渉事ではなかった。お互いに相手の真意を分かり合った上で、相手を傷つけるようなことはしないという前提の下で話を進めた」と説明する。
日本が米国に核の傘で守るよう求めている以上、「傘の柄」の一つである空母について、寄港であっても母港化(配備)であっても日本は拒否するという結論は取り得ない。核兵器について大っぴらに協議したくない日本は、「分かり合った上で口には出さない」とやり過ごした。結果、空母母港化が日本の安全保障にどういう意味を持つのか、という本質的な議論は表で行われずに来た。
「寄港密約」の締結から50年近くたつ。米国は冷戦の終結を受けて、すでにすべての水上艦艇から核兵器を撤去した。密約は実質的な意味を失っている。昨年9月に原子力空母として初めて横須賀を母港化したジョージ・ワシントンにも核兵器は搭載されていない。
ところが、政府はいまだに過去の密約との整合性を問われたくないためか、ミッドウェー以来、横須賀が米空母の母港であることを公式には認めていない。ジョージ・ワシントン母港化の際、中曽根弘文外相が出した歓迎メッセージも、「母港」という言葉は一切使わず、「入港」を歓迎するという当たり障りのない表現になっていた。
小沢一郎民主党代表は今年2月、「軍事戦略的に極東における駐留米軍の存在は、海軍第7艦隊だけで十分だ」と発言し、物議を醸した。米空母は世界中に展開しながら、海外母港は日本にしかない。小沢氏の問題提起は、是か非か。しかし、日本政府はその当否を真正面から論じることができない。
◇「言葉」の確約だけを重視
牛場信彦外務事務次官「共産中国の成長は、他の国に核のオプションは持っておきたいと思わせる。米国の核の傘にいる国々は、中国の脅威を日増しに感じており、安全保障を改善するための何らかの対応を米国がとることを期待している」
ジョンソン駐日米大使「日本のような国にとっては、米国が抑止力を維持するためどんな行動が必要なのか」
牛場「繰り返し、適当な時期に確約することだ」
ジョンソン「言葉でか」
牛場「こちらは、あなた方の言葉を信じる」
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1967年8月22、23日に行われた安全保障協議委員会(SCC)小委員会でのやり取りだ。西南女学院大学の菅英輝教授が、米国立公文書館から議事録を発見した。
菅氏が発見した複数の関連文書から、この委員会の性格がうかがえる。在日米大使館から国務省への報告公電などによると、米側は「日本政府首脳は、選挙での自民党の勝利で自信を増しており、危急の課題となっている日米防衛問題について話し合いを持ちかける好機が来ている」と分析し、米側から開催を申し入れていた。
従来あったSCCの枠組みを利用して目立たないようにしているが、日本政府から外相と防衛庁長官、米側から駐日大使、太平洋軍総司令官が参加する新たな「日米防衛協議」(公電)の発足と位置づけ、重要視していた。この協議が、日本の外相、防衛相、米国の国務長官、国防長官が参加する今日の「2プラス2」に発展した。
米側は、交渉開始前に「日本と沖縄の基地使用権維持」「日本の通常戦力強化」「日本の中立化阻止」「日本の独自核武装の可能性を減らす」の4点を長期目標と設定していた。
ところが、牛場氏は日本の核武装を遠回しにほのめかした。あわてたジョンソン氏は、日本が米国にどんな「行動」を求めるのか問いかけた。それに対し、日本が求めたのは米国からの適宜反復される「言葉」だった。
公電によると、米側は交渉前「我々は、日本政府が望むものはすべて議題にすべきだ。いかなる議題であれ、北大西洋条約機構(NATO)諸国を相手にした時と同様に議論に応じるべきだ」との態度だった。そこには、核問題でも日本側が求めれば議題にする、という含みが読み取れる。
だが、日本に覚悟があれば具体的な核戦略を論じるつもりだった米側に対し、日本側は「言葉」による「確約」、米国を信じることによる安心だけを求めた。
核の傘とは具体的に何を意味するのかを詰めるより、内容はすべて米国に任せきりにして、言葉による保証だけを重視する日本の姿は、この後も日米安全保障関係の基本形となった。そのいびつな関係が、日米関係を「密約」だらけにする構造的温床となった。
◆中曽根康弘元首相に聞く
◇21世紀に入り、自主独立の国民意識が強くなってきた
◇不沈空母「日本が盾になる」という理解は全くの誤解だ
◇最近の政治家は、既存のごちそうを食べているだけだ
日米同盟を一言で言えば、日本の安全を保持していくうえで日本が米国を選択し、米国もまた日本をアジアにおける自由と民主主義の展開の基盤と考えた。両国が協調して世界的に発言権を確保しようとした。
しかし、一面において日本の安全保障の問題について、対米依存という気持ちを日本国民の間にかなり発生させた。日本の独立、自主性というものが影響を受けたということも否定できない。
安保条約第2条には経済条項がある。安全保障上の自主独立を回復する面と同時に経済的にも自主性の回復という問題があった。それ以外のいろんな文化やその他の面でも米国の文明が日本に対してかなり影響をもってきたということは事実だ。20世紀においては対米依存の気持ちがかなり強かった。ただし、日本の文化もアメリカに影響を与えた。
21世紀になってからは、むしろ自主独立性が国民意識においても政治意識においても非常に強くなってきている。日本の世界的発展、地位の向上ということを考えると、国民の努力は実を結んだと思う。
■ □
日本は自己の独立と平和を維持するために、米国の核兵器に依存している。人類的運命、理想を持った場合に核兵器の廃棄は出てくるが、当面の自国防衛というものとは少し距離がある。現実的には日本は、国家防衛のために米国の核戦略に依存している。これは、近隣の中国が核兵器を持っているからだ。
しかし、日本は非核三原則を堅持している。米国の艦船の入港や領海の通行、海峡の通過の問題については、米側は日本の考え方を理解したうえで実行していると日本は考えている。密約が存在しているとは我々も知らない。日米外交を密約外交だと断定すること自体に問題がある。日本側の自主性の尊重という問題はあくまで維持されている。実際首相をやってみて、その点は間違いないと思った。
首相当時、私が「日本は不沈空母」と発言したとされた問題は、実際には米国人に日本人が自国防衛のために、外国機の侵入を許さない、国民の決心もその点において不変だと示すのが真意だった。日本が自分で自分の国を守る決心があり、単に米国に依存しているだけではないと、誤解を解いて伝える意味があった。自主防衛の気概を示した。米国のために日本が盾になるという理解は、一部のジャーナリズムの全くの誤解だ。
(前任の)鈴木善幸元首相が「日米同盟に軍事的側面は含まれない」と発言したことに対する米国世論の懸念に応える意味もあった。
米国から見れば、中国の国力の上昇に伴って、むしろ日本の重要性はますます高まるかもしれない。それは、日本国民の努力で作っていくべきものだ。
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国政とは、世界戦略の面を十分考えながら、内政戦略をつくりあげていくものだ。私に言わせれば、近ごろの政治家は勉強不足だ。もう少し気宇壮大にならないといけない。大局的な戦略を政治家が持て、ということだ。目前のこととか、一部アジア地域の局部的な問題のみにとらわれないで、人類の運命とか、アジアの将来とか、太平洋の平和とか、そういう大局的な戦略を持った政治でなければダメだ。
我々の世代は敗戦を経験して、日本が世界戦略なり大局的展望力を持たなかった欠陥を、皆が感じていた。だから、世界戦略の上に安保条約は締結されている。最近の政治家はそういうものが薄れてきている感じがしないでもない。我々が安保条約を結ぶ時は、是か非か大議論があった。世界戦略、合理的根拠を言わなくてはいけなかった。安保条約ができてしまった後に、ひとかどの政治家になった人たちにはそういう苦労がない。既存のごちそうを食べているだけだ。
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