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2009年4月15日 (水)
痴漢冤罪事件に最高裁が逆転無罪判決を示した
痴漢冤罪事件で最高裁が逆転無罪判決を出した。
最高裁が事実誤認で逆転無罪判決を出すのは極めて異例である。私が巻き込まれている冤罪事件を含め、今後の裁判や捜査に適正な影響を与えることが望まれる。
4月14日に逆転無罪の最高裁判決を獲得したのは防衛医科大学校教授の名倉正博氏である。名倉氏は「同じように汚名を着せられている人たちの気持ちを思うと、有頂天になる気もしない」との感想を漏らした。
主任弁護人の秋山賢三氏は「冤罪(えんざい)救済運動の心強い支えになる判決だ。氷山の下で泣いている人たちのためにも、一審できょうの最高裁のような判決が得られるよう、今後も頑張っていきたい」述べた。弁護団の一人である佐藤善博弁護士は、私の弁護人にもなってくださっている。
名倉氏の冤罪事件では、
@有力な証拠が被害者の証言だけだった。
A繊維鑑定でも被害者の下着繊維と特定できるものが名倉氏の手の付着物から検証されなかった。
B女性が積極的に痴漢行為を回避していない。
ことなどを理由に、「被害女性の証言の信用性を疑う余地がある。名倉氏が犯行を行ったと断定するには、なお合理的な疑いが残る」と結論づけ、無罪判決を出した。
私が巻き込まれ、現在、最高裁で係争中の冤罪事件では、
@被害者は犯人を直接確認しておらず、犯人の手を掴まえておらず、振り返った際に犯人の手を目視しておらず、振り返った際に右後方に立っていた被告人を犯人だと考えただけであることが公判証言で明らかになった。
A被害者は犯行時の犯人を目撃しておらず、また、二名の逮捕者も騒ぎが起きたのちに現場で、被害者が犯人だと考えた被告人を捕らえただけで犯罪を目撃していない。
B事件を目撃したとの検察側証人が出現したが、この証人の証言には
(イ)9月15日に警察署で実況見分調書を作成していたことがのちに発覚したが、証言では9月16日に警察に初めて出頭したと虚偽の証言をした。9月15日に警察で実況見分をした事実を隠ぺいしようとしたのだと考えられる。
(ロ)証人が電車内で友人に送ったとされるメールには証人が「被害者の前にいた」と記述したが、公判証言では「被害者の真横の方向に立っていた」と証言した。
(ハ)犯人の顔を注視し、目の様子に注目していたと証言したが、眼鏡をかけていたことを覚えていない。
(ニ)犯人の左手から腕まで注視していたと証言したにもかかわらず、そこにあったはずの傘を認識していない。
(ホ)犯人が右に傾いて立っていたと証言しながら、右の肩だけ見えて左の肩は見えなかったと、現実に理解しがたい証言をした。
(ヘ)犯人が被害者に密着していたと証言しながら、犯人の顔と被害者の頭は離れていたと証言したが、被告人と被害者の身長差から生じる状況と矛盾する。
(ト)公判で自分と被害者の距離、間に立っていた女性との距離を詳細に証言したが、この証言が実際の被害者などの位置と完全に矛盾する。証言は9月15日の警察での実況検分の模様を供述したものだと考えられる。
など、証言の信ぴょう性が著しく低いことが明らかになった。
C弁護側証人が名乗り出て、公判で証言したが、
(イ)犯行があったとされる品川駅で電車した時点から被告人の存在を確認しており、その時点から青物横町駅あたりまで、被告人がぐったりとして吊革につかまり、女性と密着して状況を目撃していたことを公判で証言した。
(ロ)この証人は弁護団から事件内容をまったく聞かされておらず、公判で青物横町から大森海岸駅あたりまで「うとうとした」ことを証言したが、メディアはこの点を「重要な場面で眠っていた」と報道した。しかし、この報道は間違っており、証人は最重要な品川から青物横町までの経過を完全に目撃していた。
(ハ)この証人の証言内容は客観的な事実と一致しており、極めて信ぴょう性の高いものであった。
D繊維鑑定では被害者の下着ならびに衣服の構成繊維と特定できるものが被告人の付着物から検出されなかった。
E被害者が積極的に痴漢行為を回避していない。
ことなどが明らかになっている。
証拠の構造などは、今回、無罪判決が出された事件以上に、「合理的な疑いが残る」ものだと言える。
今回の判決は、秋山賢三弁護士が指摘するように、「冤罪救済運動の心強い支えになる判決」である。
しかし、現実には「氷山の下で泣いている人たち」が多数存在しており、今後のすべての事案への対応にあたって、同様に適正な判断が示されることが強く求められる。また、捜査や検察での対応に際しても、今回の判決が重く受け止められることが強く求められる。
梓澤和幸弁護士が編著書『裁判員制度と知る権利』の冒頭に記されているフランス人権宣言の流れをくむ言葉、
「たった一人であっても、無辜(むこ)の個人が公権力によってその生命や自由を不当に侵されることがあってはならない」
を改めて噛みしめなければならない。
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