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【日経BP:田原総一朗の政財界「ここだけの話」】 “検察内クーデター”説も出た西松建設事件
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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090312/138612/
時評コラム
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
“検察内クーデター”説も出た
西松建設事件
2009年3月12日
西松建設の違法献金事件で、小沢一郎民主党代表の公設第一秘書である大久保隆規容疑者が逮捕された。
また小沢代表の資金管理団体「陸山会」の事務担当だった石川知裕衆院議員(民主党)に、東京地検特捜部は事情聴取を要請している。彼は小沢代表の元秘書だ。
謎に満ちた事件
この西松建設の違法献金事件は、よく考えれば考えるほど謎に満ちた事件である。
小沢代表は記者会見で、検察のやり方に対して真っ向から攻撃的姿勢を打ち出した。 考えてみれば当然である。取りざたされている政治資金規正法違反で、いきなり第一秘書が逮捕されるという前例はない。異常な事件である。
しかも、小沢さんも言うとおり、今にも総選挙が行われようとしているときに、世論調査などで自民党に代わって政権を奪取する確率が極めて高い民主党の代表が、こんな深刻なダメージを受けるというのは尋常の出来事ではない。
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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090312/138612/?P=2
●この事件に対する佐藤優の見方
この出来事の直後、一部マスコミで「検察ファッショ」という言葉が流れた。
民主党の鳩山由紀夫さんらが検察に「徹底抗戦する」と宣言しているのも、「検察ファッショ」についてだといえる。
しかし、我が畏友である佐藤優さんは、「検察ファッショではないと思う」との見方を示している。
彼は、「もしも検察ファッショならば、もっとバランスのとれたやり方をするはずである。これは、検察上部の慎重さ、あるいは臆病さに苛立った、現役検事たちのクーデターではないのか」と言っていた。
さらに佐藤さんは、「これは2・26事件だ」とも言った。
佐藤さんの話は、なかなかリアリティーのある説だと思う。
確かに、今回のやり方は、著しくバランス感覚に欠けている。
佐藤優さんが逮捕されたのも国策捜査であり、検察ファッショの一種であった。
こうした場合、例えば、鈴木宗男さんや佐藤優さんが逮捕されたときは、事前に「鈴木宗男、佐藤優はいかに悪い人間で、いかにいかがわしいことをしているか」ということを、検察が新聞やテレビに散々リークして、一定の世論をつくったところで逮捕に踏み切る。
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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090312/138612/?P=3
●自民党議員の名前も報道されはじめる
ところが、今回はそうした世論作りが全く行われていない。
そして、あわてるように検察は、小沢代表の会見の後、各新聞に「実は、大久保秘書が西松建設の常務などと直接交渉をし、金額を定め、請求をしている」という情報をリークしている。
つまり、事前に行うべき世論誘導を、あわてて事後に行っているわけだ。
2・26事件は軍の上部が青年将校たちを銃殺することで幕を閉じた。
しかし、今回の事件は、事が大きくなって、上部はこのクーデターにつじつまを合わせなくてはならなくなった。
そして検察は、その日の夕刊や翌日の新聞など、次から次へと小沢代表の記者会見が偽りであるという情報を流し続けている。
さらに、1週間ばかり経って、やっと自民党側に対する捜査も開始した。
自民党側は二階俊博 経済産業大臣、尾身幸次 元財務大臣、森喜朗 元首相などが政治資金を受け取っていることがわかった。
いずれも小沢代表の場合と同様に2つのダミー団体を通じてである。
検察は、自民党側も捜査することでバランスをとろうとしているのだろう。 しかし、検察の事情を取材すると、単なるバランス取りでは終わらない可能性が見えてきた。
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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090312/138612/?P=4
●職務権限がらみや裏献金のうわさも
自民党の政治献金を受け取った顔ぶれをみると、捜査によっては、職務権限がかかっている人物もいる。
あるいは、表に現れた政治献金だけでなく、多額の裏金を受け取っている政治家がいるという情報もある。
当初は「受け身、受け身でやってきた我が党が、形勢逆転だ」とはしゃいだ自民党側にも強い不安が惹起(じゃっき)している。検察のバランス感覚による自民党の捜査ならば、自民党側は心配する必要はない。
しかし、“クーデター”という要素が入っているとなると、自民党側は民主党側以上のダメージを被る可能性がある。
漆間巌官房副長官が記者団とのオフレコ懇談で、西松建設の違法献金事件が「自民党に波及しない」と言った(後に本人は「記憶にない」と否定)のは、まさに検察上部は当初そのように考えていたということの証だ。
漆間さんは前警察庁長官で、現官房副長官という人物だ。官房副長官というのは、実質的に官僚のトップである。彼に、事前に捜査の情報が届いていないわけがない。
しかし、その漆間さんが「自民党に波及しない」と発言していたにもかかわらず、自民党に捜査の手が及んでいる。
だから自民党が皆不安がっているのだ。それどころが、下手をすると傷は自民党の方が深くなるかもしれない。
何より、自民党の名前の出た政治家たちの事務所が行ってきたことは、金額こそ違えど、小沢事務所が行ったことと何ら変わりはない。
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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090312/138612/?P=5
●検察はどこまでやるのか?
日を追うごとに不安は民主自民の両党に広がっている。何人かの自民党議員にも話を聞いた。
検察が、政治資金規正法だけで追及するのか、それとも職務権限まで追及するのか。あるいは、別の政治家の裏献金問題にまで及ぶのか―。
もし検察がそこまで敢行すれば、選挙以前に麻生内閣はひっくり返ってしまいかねない。
こうなると、小沢一郎代表の「陸山会」の裏事情や、自民党政治家たちの弁解話ではなく、“検察内部”に、否でも関心を高めざるをえない。
田原総一朗(たはら・そういちろう)
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1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。1987年から「朝まで生テレビ!」、1989年からスタートした「サンデープロジェクト」のキャスターを務める。新しいスタイルのテレビ・ジャーナリズムを作りあげたとして、1998年、ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。また、オピニオン誌「オフレコ!」を責任編集。2002年4月に母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生たちの指導にあたっている。最新刊に「ズバリ!先読み 日本経済」(アスコム)がある。
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