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http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090123ddm041040076000c.html
海自イージス艦・漁船衝突:あたご海難審裁決(その1) 海自、基本なおざり
◇「父と兄、悪くなかった」 遺族や仲間、安堵の涙
父と兄は悪くなかった……。海上自衛隊のイージス艦「あたご」側に衝突事故の主因を認めた22日の海難審判裁決。事故で亡くなった漁船「清徳丸」船長の吉清(きちせい)治夫さん(当時58歳)の長女で、長男哲大(てつひろ)さん(同23歳)の妹、俣木(またぎ)まどかさん(21)は裁決後、安堵(あんど)から目に涙を浮かべた。事故から約1年。「真実を明らかにしてほしい」との遺族や漁協仲間の願いが届いた。一方、裁決で「見張り体制が不十分」と基本動作の欠如を指弾され、前艦長は低頭した。【柳澤一男】
まどかさんは「自分の耳で裁決を聞きたい」と横浜地方海難審判所を初めて訪れた。遺族席で、治夫さんの弟美津男さん(57)や清徳丸が所属していた新勝浦市漁協(千葉県勝浦市)の外記栄太郎組合長(80)ら6人とともに一列に並んだ。
午後2時前に裁決の言い渡しが始まっても、7人の表情は硬い。事故の主因について織戸孝治審判長が「あたごの動静監視不十分」と読み上げると、初めて美津男さんの表情が少し緩んだ。だが、まどかさんは審判長をじっと見つめたまま。
約45分間に及んだ言い渡し後、報道陣の取材に応じ、まどかさんは「父と兄が悪くなかったことが証明されてうれしかった」と目を潤ませ、美津男さんも「兄は間違っていなかった」と涙を流した。
外記組合長は「私たちが主張してきたことが認められた」と裁決を評価。僚船「金平丸」船長の市原義次さん(55)は「最近はマグロ漁をしているが、清徳丸がいれば一緒に漁をしていたんだなとよく思う」と涙ぐみ、2人をしのんだ。
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■解説
◇組織の責任、厳しく問う
「あたご」側に衝突事故の主因があると断じた横浜地方海難審判所の裁決は第3護衛隊という「組織」の有りように踏み込んだ点が最大の特徴だ。あたご側の過失を明確に認めたうえ「当直の基本が励行されておらず見張りの体制が十分構築されていなかった」と述べ、基本をおろそかにした海自を断罪。書類送検された2当直士官の刑事処分にも影響を与えるとみられ、海自に重い課題と厳しい結果を突き付けた。
裁決は清徳丸の航跡などの主な争点で、理事官側の主張をほぼ全面的に採用。4個人への勧告は見送ったが、理事官側は2審請求しないとみられ、海自組織への勧告が初めて確定する見通しだ。ある理事官は「組織として、ちゃんと教育できていなかったのが事故の大本」と納得する。
裁決は人的ミスの積み重ねが事故につながったと指摘した。レーダーなど最新鋭の機器を備え、多くの見張りを配置しながら、清徳丸を明確に認識したのは、衝突1分前。「人がミスやエラーに陥ることは避けられない事実。相互にチェック・カバーしあう意識を持って業務に当たらねばならない」。一般の組織論にも通じる裁決の指摘は、艦橋とCICの機器・人材が機能しなかった背景として、束ねる「組織」の責任を厳しく問うている。
30人の死者を出した海自潜水艦「なだしお」事故から20年。この間、海自艦船による衝突事故の裁決は10件あったが、うち4件が海自側に「主因」を認めた。今月10日にも鹿児島湾内で海自潜水艦「おやしお」が接触事故を起こしたばかりだ。「なだしお」事故で遊漁船側の補佐人を務めた田川俊一弁護士は「20年間ちゃんと安全教育をしていれば避けられた事故」という。一方、事故時と交代前の2士官のうち、裁決は事故時の士官だけに「過失」を認めた。捜査に携わった3管幹部は「海難審判は行政処分。真相究明は刑事裁判でないと分からない」と言い切る。書類送検を受けた横浜地検の捜査や判断が注目される。【池田知広、吉住遊】
毎日新聞 2009年1月23日 東京朝刊
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