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http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090112k0000m070086000c.html
発信箱:「オバマ待ち」の危険=福島良典
国際ニュースの読み方の一つは、報じられた出来事の深層を流れる地下水脈を探ることだ。推理小説の展開を想像するような醍醐味(だいごみ)がある。
チェコが旧ワルシャワ条約機構陣営初の欧州連合(EU)議長国に就任した1日。10歳の誕生日を迎えたユーロに旧東欧のスロバキアが加わった。
同じ日、ロシアがウクライナ向け天然ガスの供給を停止し、7日までに欧州十数カ国でロシア産ガスが届かなくなった。
浮かび上がってくるのは、版図拡大を続けるEU・北大西洋条約機構(NATO)の欧米連合の影におびえるロシアが揺さぶりをかけている構図だ。
競争は中東・アフリカにも飛び火した。ロシアは海賊対策でEUの一足先にソマリア沖に艦船を急派。ガザ情勢では欧州の機先を制して中東諸国に特使を送り、仲介を申し出た。
欧露に共通するのは、オバマ大統領就任前の「米国の不在」の間に、国際情勢をできるだけ自陣営に有利な形にしておこうという、したたかな計算だ。
国益追求型の外交が荒々しい顔をむき出しにする時、利害衝突の火花が散る。だが、やけどを恐れて、火中のクリを拾いに行かなければ、国益の実現も、紛争の解決もおぼつかない。
「まず、オバマ大統領の外交姿勢を見極めてから」という日本政府関係者の発言をよく耳にする。残念ながら、そこに、自分たちの力で世界を動かす気迫は感じられない。
多極化した今の国際社会は、群雄がしのぎを削る戦国時代だ。「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」(日本国憲法)するのであれば、「オバマ待ち」している時間はない。(ブリュッセル支局)
毎日新聞 2009年1月12日 0時06分
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