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話はわかりにくくても、「ホントの事を言う人」が、やっぱり一番信用できる
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投稿者 中川隆 日時 2018 年 11 月 23 日 09:00:55: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 社会でうまく生きられずに常に問題を起こしている人は本音を隠せない純粋な人 投稿者 中川隆 日時 2017 年 12 月 12 日 10:14:25)


話はわかりにくくても、「ホントの事を言う人」が、やっぱり一番信用できる。

自宅の近くに、子供の調子が悪い時に診ていただく、小児科医の先生がいる。

はやっている病院のようで、近所には子供が多いので、いつも診察待ちの人々が溢れているような状態だ。

ところが妻に聞くと、その小児科医の先生の、近所の人達の評判は、真っ二つに分かれるという。

一つは、「とても誠実で、信頼できる」という高い評価。

そしてもう一つは、「はっきりしなくて、信用できない」という低い評価。

熱狂的なファンがいる一方で、めちゃくちゃにこき下ろす人もいて、カルト的人気(?)を誇る診療所である。

それにしても、なぜこのように評価が明確に分かれるのか。

先生にかかってみればすぐに分かるのだが、私が強く感じたのはこの先生、おそらく「正直すぎる」のである。

例えば、昔、娘が熱を出して、変な咳をしているので病院へ連れて行ったときのこと。

先生に聴診器を当ててもらい、喉を見てもらい、耳の中を覗いてもらったあと、先生はこう言った。

(注:会話はうろ覚えなので、医学的な見地からは、会話の中身が正確でない可能性がある)

「んー、中耳炎の可能性はないし、肺からおかしな音もしない。喉が赤いから、まあ、ウイルス性の風邪の可能性が高いですね……」

「風邪ですか、良かったです。」

「ただ、せきの音がちょっとね……。」

「おかしいですか?」

「クループかもしれないねえ。」

説明によれば、クループというのは、喉がウイルスなどに感染して、呼吸が困難になる状態のことで症状がひどいと、窒息死に至るケースもあるという。

参考:
クループ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97

窒息死、と聞いた時点で、私は少なからず動揺した。

「どうすればいいでしょう?」

「薬を出しておきますけど、今の段階では、正直、加湿する以外に、あまり有効なことはできないですね。」

「そ、そうなんですね。夜に特に咳がひどいんですけど、息がくるしそうだったら、病院に連れて行ったほうがいいですかね?」

「そうなったら、迷わず救急車を読んでください。ただ……。大抵の場合は救急車は間に合わないと思います。呼吸が止まったら数分持たないですから。」

……先生、正直すぎるぜ。

「あと、あくまでも可能性、リスクがある、という話であって、重篤化するのは稀です。また、クループ、というのもあくまで可能性の一つですから……。」

「そ、そうなんですね。重篤化するのでしょうか?」

「いやー、わからないね。なんとも言えない。経過を見て、症状がおさまらない場合は、また来てくださいとしか。」

先生が言うには、要するに、薬を飲んで安静にしているほかは特にやれることもない。

重篤化したら運が悪かった、病名も可能性でしかわからない、ということのようである。

つまり、病院に連れて行っても、あまり安心できなかったのだ。

少し前、こんな記事を読んだ。


「病名がつかない」は医者には当然

「医者に病名をハッキリと言われない不安」とは何だろう。

知人から送られてきた質問を見て、私は疑問に思いました。「そんな不安があるのだろうか?」と。私はすでに医者の脳みそになっていて、患者さんのお気持ちが分からなくなって来ているのかもしれません。

皆さんが調子が悪くて病院にかかった時、「ナントカ病ですね」などとハッキリ医者に言われないことは多いのではないでしょうか。そんな時、「結局自分はどこが悪いんだ?」と不安に思われることと思います。

しかし医者からすると、はっきりと病名を断言できることはそれほど多くありませんし、病名を言いづらいことも多いのです。
患者さんは病名を言ってほしいけれど、医者は病名を言いづらい。この点、患者さんと医者の間に大きな認識のズレがあるのではないか。私はそう考えています。

(日経ビジネス)

この記事は、医師の抱えるジレンマを本質的に示している。

患者は、「はっきりとした原因の究明と、適切ですぐに効果の出る治療」を求める。

命がかかっていれば、なおさらだ。

だが、実際に医師ができることは、「病気の原因の仮説と、治療手段の可能性を示すこと」に過ぎない。

おそらく、「はっきりしなくて、信用できない」という低い評価を与える人たちは、はっきり言ってくれない、断定してくれないことを嫌気したのだろう。

極端な話、「嘘でもいいから、安心させてくれ」という要望である。

しかし、である。

私はこの小児科医に、むしろ好感をもった。

なぜなら、この医師は間違いなく、本当のことを言っているからだ。

「病名を断言することは難しく、かつ、今はできることも限られている」と、この医師は言った。

そして、それはおそらくそのとおりなのだ。

ここに、医療の難しさがある。

考えてみれば、医療は企業へのコンサルティングとよく似ている。

実際、「会社の抱える問題について、原因を診断すること」をコンサルティングではよく求められ、そして、クライアントが「単純化」を求めるシーンによく遭遇する。

例えば、

会社の方針が曖昧だ、

人事制度が良くない、

システムが古い、

管理職のスキルが低い……

そういった、「わかりやすい理由」を求めるクライアントは多い。

むしろそういう「わかりやすい理由」を知りたいから、コンサルタントを雇ったんだろ、というわけだ。

もちろん、クライアントの言うことだから、多くのコンサルティング会社はそれに従う。

(もちろん、そうでない会社もたくさんある)

わかりやすいレポートに、わかりやすい話をくっつけて。

クライアントに望むような結末をつけてあげるのだ。

そんな話はいくらでもある。

しかし本来、会社の抱える問題を、シンプルな原因に求めること自体、無理がある。

会社は複雑系であり、システムや制度、人のモチベーションなどが相互に影響しあっているので、「◯◯◯が悪いです」と断定できるケースは、ごく簡単なケースに限られている。

結局のところ、業績を改善するためには、企業のあらゆる活動を、気長に少しずつ改善していくことが求められる。

例えばこんなケースがある。

会社で、売上目標が未達の状態をなんとかせよ、と経営者が吠えていた。

それでは、ということで営業部が内部で調査をした結果、営業の「訪問件数」が著しく減っていることがわかった。

前年に比べ、営業が顧客に訪問している数が少ない事がわかると、経営者は

「営業はなにをやっているんだ。行動量が少ないから、売上が減ったのだ」と営業部長を詰める。

営業部長は真っ青になって、営業一人ひとりの尻を叩く。

「行動量を増やせ」と。

ところが、1ヶ月、3ヶ月、半年と過ぎ、営業の行動量は若干増えたのに、売上はたいして伸びていないことがわかってしまう。

「なぜだ」と経営者はますます営業部長への圧力を強め、それが現場に届く。

現場も行動量が落ちると、評価に響く事はわかっているので、必死になってお客様への売り込みを激しくする。

だが、成果はあまり出ない。

なぜ行動しているのに、売上が増えないのだ?

経営者は悩み、ついに、原因は営業部長の無能にあると決めつけ、営業部長をクビにして、後釜を据える。

そして、後釜の営業部長は、前の営業部長を批判する。

「本当の課題は、訪問件数なんかじゃありませんよ。訪問をいくら伸ばしたところで、営業のスキルが低ければ成約には結びつきません。」

と、次の営業部長は経営者に誇らしげに言う。

経営者はなるほど、と思い、営業のスキルアップのために、外部の研修会社を使って研修を行った。

ところが、営業のスキルもあがり、訪問件数も増えたら、当然のことながら成果が出る……と思っていた経営者は、
またもや裏切られる。

売上が依然として、伸びないのだ。

これはどうしたことだ、と経営者は怒り、結局次の営業部長もクビにし、別の人間を営業部長に据える。

3人目の営業部長はこう言う。

「今、訪問件数を追求し、スキルアップせよと言われ、必死に動いていますが、実際は、営業の現場は疲弊しています。生産性を高める工夫をしなければなりません。」

経営者は、じゃあなにをすればいいのだ、と営業部長に聞くと、「営業管理システムを入れてください」と営業部長は言う。

そして、営業は営業管理システムに日々の情報を入力し、効率的な営業を目指すことになった。

ところが、残念ながら、どうしても売上が伸びない。

経営者は、またもや営業部長をクビにして、ついに自分が営業部長になった。
だが、経営者は営業部長3名をクビにしたものの、お手上げ状態だった。

三人も営業部長を入れ替えてきたのに、目立った成果が何も上がっていない。

「結局なにが悪いんだ」とその経営者は、半ばヤケになって思う。

ついに経営者は、大学時代の友人であった、現役のコンサルタントに相談をした。

コンサルタントは言った。

「売上を伸ばしたいなら、会社全体を強化しないと。」

「どういうこと?」

「採用、商品開発、マーケティング、営業、アフターサポート、すべてが売上という結果につながっている。どこか一部だけをいじっても、大した効果はない。お前は安易すぎる。」

「……はっきり言うな。で、何を変えればいいんだ?」

「お前、全くわかってないな。そう言うところが、お前のダメなところだ。何が悪い、何を変えればいい、とわかりやすい答えだけを求める。」

「……」

「いいか、健康な体を作るのに、何を食べればいい?と聞かれても、「バランスよく」としか言えないだろう?食べるものだけを変えるのじゃなく、生活習慣すべてを見直さないと、健康な体は実現できないだろう?」

「ああ……説教はたくさんだよ。」

「何いってんだ、経営者が考えなくなったら、会社は終わりだ。」

「……わかった。」

「じゃ、まず採用から話を聞こうか……」

世界中で「トランプ的政治家」が人気を集めているという記事を見た。

「トランプ的政治家」が世界で増殖中

この話はとても良くわかる。

「わかりやすい敵」を設定すれば話はとても単純になるし、手軽に安心感も得られる。

だが、本来政治は複雑であり、会社経営と同じく、あるインプットに対して、線形のアウトプットが得られる、という性質のものではない。

物事をそのように単純に捉えることばかりをしていると、上の経営者のように、右往左往するだけで、結局何も成果をあげることはできないのである。

私は「シンプルな打ち手」や「明快な発言」をする専門家には確かに魅力を感じる。

だが、信頼できると考えるのは、冒頭に紹介した、わかりにくい話であっても、煮え切らなくても、ホントのところを言う、小児科医の先生のような方なのである。
https://blog.tinect.jp/?p=54499  

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