コブの滑り方によって変化する谷回りと山回り http://mogul2.blog.shinobi.jp/Entry/107/ 今回は、コブの滑り方のちがいによってターン弧はどのように変化するのか、また、コブのどの部分をターン前半の谷回りとしてとらえ、どこからどこまでがターン後半の山回りになるのかを考えてみましょう。
コブにはいろいろな滑り方がありますよね。 この滑り方の違いにより、コブのどこが谷回りになり、どこが山回りになるのかが変わってきます。 この違いを認識して使い分けることができるかどうかが、中級者と上級者を隔てる大きな壁の1つになっているのではないかと思います。 なんだか理屈っぽい話になりそうだなぁ、と感じているかたが多いかもしれませんね。 でもこれを理解することで、そこそこコブを滑れるようになったけどそこからなかなか上達していないかたにとっては、もしかしたら大きな意識の転換になるのではないでしょうか。 ◆谷回り+山回り=ターン弧 ここであらためて説明するほどのことではないかもしれませんが、まずターンの谷回りと山回りの構成についておさらいしておきましょう。
ターンの切り替えからスキーがフォールラインへ向くまでのターン前半が谷回りです。 横に向いたスキーが下に向いていく局面ですね。 スキーがフォールラインに向いた状態からターンの切り替えまで、スキーが横に向いていくターン後半が山回りです。
この、谷回りと山回りが組み合わされることによって、ターン弧が作られます。
スキーで滑っているときは、常に斜面下方向に落下していく力が働いていて、この落下する力によってスピードがでます。
谷回りではスキーが下に向いてフォールライン方向へ落ちていくため、加速します。 いっぽう、山回りではスキーをずらす抵抗が生じたり、スキーが横方向に切れ上がっていったりするため、下方向への落下が妨げられて減速します。 あたりまえの話ですが、まずこれが前提となります。 ◆スライドとカービングとターン弧の関係 スキーをスライドさせて回したり、エッジを噛ませて切ったりする等、滑り方の違いによりターンの谷回りと山回りが変化し、また、ターン孤も変わってきます。 まず、コブの説明に入る前に、整地のターンから見ていきましょう。 ●整地1.クルッと回し横ずれで減速するターン 上の図では、切り替え直後にスキーを大きく振って横に向けてずらしています。 初心者がずらして減速し、ゆっくり安全に滑り下りるには有効な滑り方です。 では、スキーの動きを見てみましょう。 切り替え直後にスキーを横に振っているため、ターン前半の谷回りに該当する部分がほとんどありません。 いっぽう、ターン後半の山回りは長くなります。(横ズレしているだけで、山回りではないという見解もあるかもしれません) 谷回りはほとんど無いため、 クルッと回す→長い山回り→クルッと回す→長い山回り といったターンになります。 では次に、ターン弧について見てみましょう。 この滑り方では、ちょっとターン弧と呼ぶには辛いものがあるスキーの軌道ですね。
スキーが加速する谷回りがほとんどなく、スキーをクルッと回している時以は減速する山回りになるので、ブレーキ要素の大きな滑り方になります。 スピードが出てしまうのを抑え、減速してゆっくり滑るのに適した滑り方です。 ●整地2.ずらしながら回るスライド系ターン 次はスライド系のターンです。 スキーをずらしていますが、上記のクルッと回し横ずれで減速するターンよりスキーをゆっくりと回していきます。 ずらしながら同時にスキーをまわしていくことで、ずらしを伴ったターンになります。 スキーをゆっくりと回していくため、短いですがターン前半の谷回りが見て取れます。 ターン構成としては、 短い谷回り→長い山回り→短い谷回り→長い山回り といったターンになります。 ターン弧を見てみましょう。 谷回りが短いので、丸いターン弧と言うにはちょっと無理があるかもしれませんね。 ●整地3.カービング系ターン
次は、カービング系のターンを見てみましょう。 エッジを噛ませ、ズラシを少なくしたカービングターンでは、ターン前半の谷回りがはっきりと表れます。 谷回り→山回り→谷回り→山回り といったターンになります。 ターンは丸い弧を描きます。 スキーが加速する谷回り局面がしっかりあり、ターン後半の山回りでもズレが少ないため、ブレーキ要素の少ない滑り方になります。 注:3つの滑り方の中間 強引に3つの滑りに分類しましたが、これらは必ずしも明確に分類できるわけではありません。 実際には、それぞれの中間に位置する滑り方もあります。 例えば、「クルッと回して横ズラシ」と「スライドターン」の中間くらいの滑り方、また「スライドターン」と「カービングターン」の中間くらいのターンもあります。 その他にも、「前半ずらして後半切る」、「前半切って後半ずらす」などのバリエーションもあります。 ただ、細分化すると説明が煩雑になってしまうので、ここでは説明をわかりやすくするために、あえて3つだけに分類しています。 この点はご了承いただければと思います。 ◆コブ斜面の谷回り山回りとターン弧 ここからは、上記の整地の滑りをコブ斜面にあてはめていきましょう。 ズレの多い滑りからカービングターンまで、谷回りと山回りがコブのどの部分に該当するのかを見ていきます。 ※コブを滑るライン取り
まず、ズレの多いターンからカービングまで、比較する条件を同じにするためにコブを滑るときのラインを統一しますね。 ここでは、コブの外側を通り左右のスペースを大きくとったバンクターンや、コブ内側を縦に滑るモーグルのような特殊なライン取りではなく、ごく一般的な中庸なコブのライン取りで見ていきましょう。 紫色がバンクライン、緑がモーグルライン、オレンジが一般的なラインです。 今回はオレンジの一般的なラインで説明していきますね。 ●コブ1.コブでクルッと回し横ずれで減速するターン スキーをクルッとまわして横にずらす整地1のターンを、コブで行う滑り方を見てみましょう。 いわゆるズルドンと言われている滑り方で、ビポットでスキーを回し横ズラシで減速する滑り方になります。 もう少し詳しく見てみましょう。 コブの出口でクルッとスキーを回します。
コブの裏の落ち込む部分でズラシをいれて、コブの溝にドスンと落ちます。 この溝に落ちたところがターン終了になります。 溝に落ちた後、コブの上に乗り上げるまでの区間では、少しスキーが次のターン方向へ回り始めますが、この段階ではエッジはまだ切り替わっていません。
このコブに乗り上げる部分は、次のターン方向へスキーが回り始めていますが、まだエッジは切り替わっていないので、谷回りと呼んでいいのか迷うところです。 スキーの向きの変化を優先して溝に落ちたところがターン切り替え局面ととらえるか、それともエッジの切り替えを優先してコブの頂点に乗り上げたところをターン切り替え局面ととらえるかは、それぞれの滑り手の感覚や認識の違いによって異なってくる部分でないかと思います。 多くの人のイメージとしては、溝の底からコブに乗り上げるところは、山回りが終わってから次のターンに入るまでの、ちょっとしたターンの空白局面という感じじゃないでしょうか。 スキーをクルッと回す部分はコブの出口(頂点)の部分になります。 コブの上でクルッとスキーを回してしまうので、ターン前半の谷回りはほとんどありません。 谷回りがほとんどないかわりに、ターンの大半を山回りが占めることになります。(横ズラシをしているだけで、山回りではないという見方もあるかもしれませんが…) 山回りを行うのは、コブの裏の落ちこむ部分です。 スキーの軌道は下の図のようになります。 加速してしまう谷回りを省き、減速する山回りを多く取ることができるので、スピードコントロールが簡単な滑り方です。 減速しやすい滑り方なので、急で不規則な難易度の高いコブ、堅いアイスバーン等で有効な滑り方になります。 また、初心者が低速で滑るのにも向いていています。 加速局面の谷回りが無く、ターンのほとんどが減速局面の山回りになるので、強く減速することができます。 この初心者向けの滑り方の詳細は 「初心者がコブを完走できるようになるには」 http://mogul2.blog.shinobi.jp/Entry/98/ のページをご参照ください。 ●コブ2.コブでずらしながら回るスライド系ターン 次に、コブで行うスライドターンを見てみましょう。 コブの出口でエッジを切り替えターンを始動するところは、上記のクルッと回して横ズラシと同じです。 ただ、クルッと回して横ズラシのようにコブの肩でクルッと早くスキーを回してしまうのではなく、ゆっくりとスキーを回していきます。 コブの落ちこむ部分でスキーをずらしながら回していきます。 スキーを回しこむ角度は、最終的に溝の角度に一致するようにします。 ここで、スキーを回しこむタイミングを早くしてしまうと、前述のクルッと回して横ズラシの滑り方に近づき、ターン前半の谷回りが少なくなってしまいます。 スキーを回すタイミングを遅らせ、回しこむ動きが完了するのが溝に落ちるタイミングとほぼ同時になるくらいゆっくりとスキーを回しこめば、ターン弧が丸く見えるようになります。
ただ、スキーを溝の角度に合わせて回しこむのが遅れ、トップからコブの表(受ける部分)に当たってしまうと、コブに弾かれてバランスを崩してしまう危険性があります。
そのため、スキーを回すタイミングを遅らせれば遅らせるほど見栄えが良くなる一方で、失敗してしまうリスクも高くなります。 ※はじめからスキーのトップをコブに当てていく心づもりで滑っている場合は、トップからコブに当たってもバランスを崩しにくいです。 スキーを溝の角度に合わせて回しこもうとしたけど、回しこむのが遅れてトップからコブの表に当たってしまった場合は、予想以上の衝撃を受けたり、スキーが予期しない動きをしたりするため、コブにはじかれてしまうことが多くなります。 スキーを回しこむタイミングを遅らせ、溝の角度に合わせて回しこむのを溝に落ちるタイミングに合わせることで、斜面の下から見上げている人たちからは、丸い弧のカービングターンで滑っているように見えるメリットがあります。 でも、後ろから見るとスキーをずらして回しているのがバレてしまいますが…。
ターン終了は溝に落ちた時
さて、前述のクルッと回して横ズラシする滑り方と同様、このスキーをずらしながら回す滑り方では、ターン後半の山回りが終了するのはコブの溝に落ちた時になります。 つまり、ターンを行うのはコブの頂点(出口)からコブの溝(底)までの間の、「コブの裏の部分」になります。 この点、次で説明するカービングターンとの対比で重要になってくるポイントなので、覚えておいてください。 ●コブ3.コブでカービング系ターン 次に、コブで行うカービング系ターンを見ていきましょう。 コブの出口(頂点)で切り替え、ターンを始動します。
コブの落ち込む部分ではスキーを回しこまずに、スキーが下(フォールライン)に向いた状態でコブの表(受ける部分)にトップを当てていきます。 コブの表に当たる時点ではスキーがフォールラインに向いているので、コブの落ちこむ部分がターン前半の谷回りになります。 この谷回りはスキーのトップが次のコブの受ける部分に当たるまで続きます。 そして、スキーのトップがコブの受ける部分に当たり、コブに乗り上げていく局面がターン後半の山回りになります。
スキーの軌道は以下の図のようになります。
スキーのトップ、ブーツ(センター)、テールが同じ位置を通るカービングの軌道になります。 ※コブでカービングを行う場合、モーグルのような縦のライン取りであれば、コブの形や条件によってはほとんどズレのないターンが可能になります。 いっぽう、基礎スキーのように横の移動スペースをとった滑りでは、少しズレを伴ったターンになります。 前述のクルッと回して横ズラシの滑り方や、スライドの滑り方では溝に落ちたところがターン終了となりますが、カービング系のターンでは溝の部分はターン中盤のターンマキシマムに該当します。 ここがスライド系のターンとは大きく異なる点です。 つまり、スライド系のターンではコブの裏の落ち込む部分でターン後半の山回りを行いますが、カービング系のターンではコブの裏の落ち込む部分はターン前半の谷回りになります。 このように、スライド系とカービング系ではコブに対するターン局面が反対になり、それにともない滑るときの意識の持ち方も大きく変えていく必要があります。 クルッと回して横ズラシの滑りからスライドターンへ発展するには、スキーを回すタイミングを遅らせることにより、わりとすんなり移行できます。 いっぽう、カービング系のターンではコブに対するターン局面の違いにより、スライド系ターンとはかなり異なった意識で滑る必要があることをお分かりいただけるのではないでしょうか。 このように、いわゆるズルドンの滑りからスライドターンに発展していくことは容易にできるのですが、スライドからカービングの滑りに移行していくには、大きな転換が必要になります。 そのため、上達の過程でスライドターンとカービングターンの間には、わりと大きな壁があるのではないかと思います。
「コブでは谷回りは必要ない」、「コブの裏を削って減速することがなにより大切」という考え方は、ある程度のレベルまでは間違いではなく、それをオーバーアクションで行うことで比較的早くコブを滑れるようになります。 ただ、この成功体験にとらわれてコブでは絶対的なものと思い込んでしまうと、その先の上達にとっては足かせとなってしまいます。
カービング系のターンをもう少し細かく見てみましょう。 コブの落ちこむ部分で、スキーのトップが次のコブに当たるまでがターン前半の谷回りになります。 そのため、谷回りをとる時間と距離がスライド系のターンに比べ大幅に長くなります。 スキーのトップが次のコブに当たるまでが谷回りなので、スキーのトップがコブに当たるタイミングでは、スキーがフォールラインに向いていることになります。
実際はコブの形や雪質、滑るラインの違いなどによって、スキーがフォールラインよりちょっと外側を向いている状態や、ちょっと内側を向いた状態でコブにトップを当てることがあります。 このへんはコブに合わせて臨機応変に対応することになります。 次に溝の部分に差し掛かりますが、ここでスキーがたわみます。
スキーがたわむことにより、スキーはずれずにカービングになります。
また、スキーのたわみによりターン孤がつくられ、横方向に切れ上がるように移動します。 この滑り方ではコブの裏の部分は谷回りになるため、コブの裏ではスキーをずらして減速することはほとんどできません。 この点が、コブの裏をずらして減速できるスライドターンとは大きく異なる部分です。 カービング系ターンではコブの裏でほとんど減速できないので、山回り時にコブに乗り上げる衝撃を利用したり、スキーのトップをたわませたりすることで減速します。 スキーをたわませることはカービングさせることにつながりますが、これによりコブにぶつかる衝撃を緩和したり、トップをつまらせて減速したりする効果があり、非常に重要な操作になってきます。 コブでスキーをたわませることの詳細については、 「コブの溝でスキーをたわませる」 http://mogul2.blog.shinobi.jp/Entry/80/ のページをご参照ください。 ●谷回りが長く山回りが短い難しさ
コブの形は、下の図のようにコブの裏(落ちこむ部分)が長く、コブの表(受ける部分)は短くなります。 そのため、カービング系の滑り方ではターン前半の谷回りが長く感じられて、ターン後半の山回りはコブに乗り上げる一瞬になります。 つまり、加速局面になる谷回りの時間と距離が長く、減速局面になる山回りの時間と距離が短くなります。 この、加速局面が長く、減速局面が短いことが、コブでのカービング系ターンを難くしている1つの大きな要因になっているのかと思います。 スライド系ターンからいきなりカービング系ターンに変えてみるのはなかなか難しいので、入門段階でお勧めしたいのはコブの少し外側の溝が丸く窪んだ部分を通るライン取りで滑ってみることです。 このラインを通ることにより、ターン前半の谷回りが短くなり、ターン後半の山回りを長く取ることができます。 これにより、スピードコントロールが容易になります。 また、このラインではコブに当たる部分が縦(フォールライン)向きになっているため、コブにぶつかる時のショックが小さく、バランスを崩しにくいというメリットもあります。 このラインを滑る場合はズレをともなったターンになりますが、コブの落ちこむ部分で谷回り、コブの受ける部分で山回りというカービング系のターンと同じターン構成になります。 そのため、カービングターンに発展していく前段階の滑り方として1つの有効な手段ではないかと思います。 このラインの詳細については、 「ボール状の凹みを通るライン」 http://mogul2.blog.shinobi.jp/Entry/95/ のページをご参照ください。 ●モーグルの縦溝コブが苦手なら 基礎スキーの上級者でも、モーグラーが作った細かい縦溝のコブを苦手としているかたは非常に多いのではないかと思います。 モーグルの縦コブが苦手なかたの多くは、コブでずらしながら回るスライド系ターンで滑っているのではないでしょうか。 スライド系のターンはコブでは最も一般的な滑り方なのですが、この滑り方ではモーグルの縦コブでは十分に減速できずに、コブのラインからコースアウトしてしまうことが多くなります。 縦溝のコブでは、コブの裏でスキーをずらして減速することが難しいため、減速は主にコブの表に乗り上げる時に行います。 そのため、縦溝のコブと相性がいいのは、コブの受ける部分が山回り(減速局面)になるターン構成であるカービング系の滑り方になります。 カービング系の滑り方を練習していくことで、モーグルの縦溝コブに対する苦手意識は薄れていくのではないかと思います。 ◆モーグルの谷回り モーグルの滑り方はカービング系のターンに分類されますが、コブの裏で谷回りをしているという感覚は薄いように思います。 その1つの理由としては、モーグルは縦に滑るライン取りのため、スキーを横に向ける角度が非常に小さいことが挙げられます。 スキーを横に向ける角度が浅いため、スキーをフォールラインに向けるまでの谷回りの意識が希薄になります。 また、かなりスピードを出すとコブの裏ではスキーが雪面に接していないで空中を飛ぶようになるため、谷回りという感覚がなくなります。 もう1つの理由としては、コブを超えて先落としが完了した時点で、すでにスキーがフォールライン方向に向いていることが多いためです。 コブの頂点を超える際にスキーを回さなくても、スピードが出ていると前へ進む慣性が強く働いているため、コブを超えてコブから受ける抵抗が無くなった時点で、スキーは自然とフォールライン方向へ向きます。 そのため、先落としが完了している時点で、スキーはすでにフォールラインに向いていることが多くなります。 結果的に、コブの裏では谷回りというより、まっすぐに次のコブに向かっていくという感じになることが多いように思います。 ◆ターンの質を考えてみよう コブでクルッと回し横ずれで減速するターン、コブでずらしながら回るスライド系ターン、コブでカービング系のターンの3つの滑り方について説明してきましたが、それぞれのターンの質について考えてみましょう。 順番としては、 コブの出口でクルッと回し横ずれで減速するターン ↓ コブでずらしながら回るスライド系ターン ↓ コブでカービング系のターン の順にターンの質は高くなっていきます。 また、この順でターン弧はより丸くなり、スキーの動きもシャープになります。 もちろんターンの質とは今回お話しているスキーの軌道だけではなく、他のさまざまな要素を包括したもので判断されます。 ただ、スキーの軌道のみにフォーカスすると、上記の結果になることは論を待たないでしょう。 同様に滑りの難易度も上記の順に高くなっていきます。 やっかいな条件のコブでは、ターンの質を求めて難しい滑り方をするよりも、ターンの質は下げても安定性を重視して、難易度の低いターンを選択するほうが賢明です。 バラバラにバランスを崩しながらカービング系のターンを行うより、ズラシを入れてきっちりコントロールした滑りの方が、全体の滑りとしては質が高くなることは明白ですよね。 ですので、急で不規則な自然コブや、凍った硬い雪質などの難しい条件では、クルッとまわして横ズラシのターンやスライドターンで滑るのがいいんじゃないかと思います。 でも、それほど難しくない整ったコブであれば、私はカービング系のターンで滑るほうを選びます。 また、これをお読みの方々にも、可能であればカービング系のターンにトライしてみることをお勧めしたいです。 でも実際のところ、カービング系のターンは体力的な負荷が大きくて疲れやすいという欠点があります。 また、難しい滑り方なので、失敗してしまうリスクが高くなります。 コブ斜面を楽に安全に降りてくることを優先するのであれば、スライド系のターンを選んだほうがいいのかもしれません。 では、なぜわざわざカービング系のターンでコブを滑ることを勧めているのでしょうか? それは、やっぱり気持ちがいいからです。 ◆気持ちがいいターン 整地のターンでは、ズレの多いターンよりカービングターンのほうが快感度は高くなります。 コブも同じで、ズレの多いターンよりカービングのほうが滑っていて気持ちがいいです。 気持ちの良さでは、 コブでクルッと回し横ずれで減速するターン ↓ コブでずらしながら回るスライド系のターン ↓ コブでカービング系のターン の順に快感度は増していきます。 コブをスライドで滑るのも十分楽しいのですが、スライドターンは「コントロールできている感」が快感につながっているように思います。 つまり、コブという難しい斜面条件でしっかりコントロールできて滑っているといった精神的な充足感があります。 いっぽうカービング系の滑りでは、精神的なもの以上にもっと体で感じる純粋な快感が強いように思います。 これが、カービング系の滑りをお勧めする理由です。 ◆意識を変えると見え方も変わる 私は時々、ふと思うことがあります。 それは、そもそも人は同じものを見て、それが皆同じように見えているのだろうか? ということです。 もしかしたら自分が見て感知しているものは、他の人たちには違って見えているのかもしれない、みたいに思ってしまいます。 たとえば、下の赤い色を見て、私が肉眼で見て脳で認識している赤は、あなたが見て感じている赤い色と本当に同じなのでしょうか? 答えは他の人になってみない限りわかるはずないのですが… こんなどうでもいいようなことを考えてしまいます。 そのいっぽうで、意識の持ち方や立場の違いによっても、同じものを見ても違って見えてしまう場合があります。 例をあげると、株価のチャート。 株を保有していないときにこのチャートを見ると、一定の値幅間を上下しているだけの退屈なレンジ相場に見えます。 でも、いったん株を買ってしまうと見え方が一変し、ちょっとした値の変化に一喜一憂してしまうことになります。 特に、赤丸の部分なんかはジェットコースターのように感じてしまうことでしょう。 そのいっぽうで、短期売買はせずに長期で保有しようという心づもりであれば、このくらいの値幅の変化は些細な事に見えてきたりします。 このような、同じものを見ているのに意識の持ち方や立場によって見え方が変わってくることは、コブでもあてはまるように思います。 上級者にとっては楽しい遊び場であるコブ斜面は、 初心者にとっては恐怖の絶叫デコボコ斜面に見えてしまうことでしょう。 また、今回のトピックのように、クルッと回して横ズラシ、スライドターン、カービングターンのどの滑り方を選ぶかによっても、コブの見え方は変わってきます。 クルッと回して横ズラシの滑り方では、スキーをずらして減速する部分が大切なので、コブの裏のずらしやすい部分を目で探しながら滑ることになります。 スライドターンでは、スライドしながらどのくらいスキーを回しこむのかが大切になるので、コブの溝と受ける部分の角度を見て確認するようになります。 カービングターンでは、コブの表のどのあたりにスキーのトップをどのような角度で当てていくかが大切になるので、コブの表の受ける部分を目で追うようになります。 また、さらにスピードを上げていくと次のコブだけではなく、2つ先や3つ先のコブも含めて全体のライン取りを俯瞰(ふかん)するような見方に変化していきます。 このように、滑り方によってコブの見る部分は変わって行き、コブの印象も違ったものになります。 私はよく、カービング系の滑り方でバランスを崩しまくっていたコブを、次の1本はスライドで滑ろうとしてコブを見下ろすと、同じコブなのにさっきまで見ていたコブのラインとは全く違ったラインに見えることがあります。 このような意識の違いで同じコブでもまったく表情が変わって見えてしまうところが、コブのおもしろいところだと思います。 http://mogul2.blog.shinobi.jp/Entry/107/
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