チューブオーディオラボ 6AR6 の感想ブログ Audio miniature garden 2020 http://my-vintage.music.coocan.jp/2020.html
昨年の令和元年はアナログオーディオ中心にこだわりが加速して、3台のプレーヤーに使用するアームが6本にまで増殖することとなった。 使用するカートリッジはこれまでMC型一辺倒だったが、年末に購入したMM型SHURE M44Gのキレのある音色が気に入り、新たな常用カートリッジとして加わった。 またフォノイコにも純正のSHURE M64を組み合わせることでロックなどの曲種で満足感が高まっている。 最も音色に影響のあるスピーカーには、クラシックからロックまで英国Goodmans2機種のSPシステムを使い分けている。 これらの美しい響きを持ったスピーカーに高い駆動力を持った300Bシングルと音楽性の高いUESUGI OLSON TYPEのアンプを組み合わせることで、幅広い曲種を十分満足感の得られる状態で楽しんでいる。 今年もアナログを中心に熟成を進め、心地良い音楽をのんびり楽しむ時間を増やしてゆきたいと考えている。 〈6系統のアナログ入力〉 Nottingham GRACE G-565F + Ortofon MC-30s
Nottingham INTERSPACE-ARM + LYRA Clavis.D.C
Nottingham audio-technica AT-1503II + SHURE M44G
Garrard401 audio-technica AT-1503III + Ortofon Classic-GE
Garrard401 audio-technica AT-1501II + Ortofon MEISTER-GE
Thorens TD126mkIII SME3010RB + Thorens MCH-II
★〈2020年1月現在の我が家のシステム構成〉 Analog AMP SPEAKER player
tone-arm cartridge MC-trans PHONO-EQ PRI POWER Thorens
TD-126 MK III Centennial SME 3010R/B Thorens MCH-II Ortofon T-30 → Marantz7 SUN VALLEY SV-91B 300B Single GOODMANS 2WAY ▼▼▼▼ AXIOM 22 MK II + TREBAX Garrard 401 audio-technica AT-1501 II Ortofon SPU MEISTER GE Western Electric KS-9450 → Nottingham Interspace.Jr Grace G-565 Ortofon MC-30 SERIES EAR 834P Garrard 401 audio-technica AT-1503 III Ortofon SPU Classic-GE J's No.6600 → Chriskit MARKY Custom UESUGI TAP-31 OLSON TYPE NON-NFB EL34PP GOODMANS 3WAY ▼▼▼▼ AXIOM 150 MK II + MIDAX + TREBAX Nottingham Interspace.Jr Interspace arm LYRA Clavis D.C Langevin 408A → Nottingham Interspace.Jr audio-technica AT-1503 II SHURE M44G → SHURE M64 このような構成で幅広く音楽を楽しんでいる。 少し苦手なジャズはディアゴスティーニ/LPコレクションの定期購読を続けていたが、徐々にピンとくるアルバムも少なくなって来たのでNo.59を最後に止めてしまった。 クラシックについてはGoodmans AXIOM22MkIIの2WAYと300Bシングルアンプの組み合わせにより、ほぼ不満のない音色を得られるようになった。 POPS&ROCKはメインアンプをUESUGI EL34PPに入れ替えた後、MM型カートリッジの素晴らしさに目覚めさせられたSHURE M44Gとそれに対応する石のフォノイコライザーを導入することにより、こちらもあとわずかで終着点を迎えようとしている。 昨年はオーディオを通じての交流も活発化し、我が家の愛機を試聴していただくだけでなく、巡礼に足を運んで貴重な体験をさせていただいた。 今年も更に有意義な交流を続け、新たな刺激として楽しんで行きたいと考えている。 1/1 ■ EMPIRE598のレストア
年末からのんびりと、使用しなくなって埃をかぶったEMPIRE598のレストアを手掛けている。
まずターンテーブルのプラッターをサブシャーシから引き抜き、アームやモーター、スイッチなど外せるものは全て取り外す。 ウッドケースは紙やすりで磨いてワトコオイルを塗り重ね、からぶきしてからTANNOYのウッドワックスで仕上げることにする。 発売当時は結構高額なPLだったが、内部のフローティング構造は実にシンプルでチャチなものである。 シャーシと外周ターンテーブルは紙やすりで磨いた後、メッキ調のシルバー塗装を施してクリア塗装でガードすることにした。 オリジナルの990アームは改造に失敗して使用不能となったため別に購入した980アームを搭載しているが、このアームは通常のSMEタイプのヘッドシェルを使用できるように改造されており、内部配線材も新しいものに交換している。 何度もシャーシの塗装に失敗するが、ようやく完成した。 SHURE M44Gを組み合わせてオシャレにジャズでも楽しもうかと考えたが、フォノイコ経由のアースが不完全なためか盛大にノイズが出る。 まあ、焦らずのんびりまいりましょう。 1/6
昨日に引き続きEMPIRE598の調整を行う。
特に出力するフォノケーブルについてはアームの980が配線材直出しなので、背面にターミナルを設置してRCAケーブルで出力できるようにした。 昨日の仮配線ではSHUREのフォノイコ経由でアンプに繋いだところ、アースが浮いた状態のためか盛大にノイズが出ていた。 今日はプリのフォノに直接繋いでアースも直接取ったところ、バッチリ音出しに成功。 スイッチを入れてターンテーブルを回転させると、僅かにドイツ製大型モーターから「ゴーッ」と回転音が聞こえるが、ボリュームを上げてもゴロもなくSN比も問題ないレベル。音質もSHURE M44Gとの相性がぴったりで、キレの良いジャズが壁面いっぱいに響き渡っている。なかなか良い状態に仕上がったものだと自己満足している。 1/7 ■ オーディオ巡礼 「オートグラフを愛するクラシック愛好家編」 今年初のオーディオ巡礼として、昨年の夏から2回ほどご来訪いただいた東京都杉並区のsigetaさん宅へお邪魔する機会を得た。
sigetaさんはご自宅でレコードを楽しむだけでなく、多い時には月間に5回もコンサートに通われているという熱烈なクラシック愛好家である。
お住まいになっているのは阿佐ヶ谷と高円寺の中程に位置する閑静な住宅地である。
お邪魔して2F和室10畳オーディオルームに案内されると、一部床がフローリングとなった部分に設置された巨大なTANNOYオートグラフにまず目を引き付けられる。 購入されたのは50年ほど前にTEACが代理店となった頃で、購入時の使用ユニットはHPD385だったが、後になってM-Goldに入れ替えたとのことだ。 また部屋の入り口にはこちらも巨大なEMT-927Dstが設置されているが、一般家庭のオーディオルームにこれら世界最高峰の機器が収まるだけで、その存在感に圧倒されてしまう。 使用されているアンプ群はWEアンプの修理依頼でアメリカまで出張されるという技術者の方の手によるもので、以前はWE-91Bレプリカを使用されていたらしい。 下の左画像奥がプリアンプで手前がレイセオンの送信管?を使用したパワーアンプとのことだ。 下右の画像はそのパワーアンプの別整流アンプとのことで、これが左右2台構成となっていて凄まじい熱量を発している。
今回特に音質バランス改善のため導入されたというルームチューニングでは、オーディオリプラスのハーモニックディフューザーを壁面のコーナーに設置し、オートグラフの弱点である長大なバックロードホーンがもたらす低域のこもり感を解消させているとのことだ。
sigetaさんのシステムは一般家庭のユーザーが望みうる世界最高峰の機器を組み合わせられているが、この他手掛けられているこだわりとして各種WEケーブルやルームチューニングアイテム、電圧関係のダウントランスなど多岐にわたっている。 また、使用されているアンプやこの純鉄コアMCトランスのように、高い技術力を持ったエンジニアのサポートにより、市販品のレベルを超えた組み合わせを実現されている。 EMT-927Dstに搭載されているアームはオルトフォンRF-297でカートリッジにはSPU-MEISTERを組み合わせられているが、昇圧トランスを貴重なWE-618やJ's赤ドット付初期型No.41、No.6600などからこちらの大型トランスに変えることで、描き出される音の世界が違ってくるとおっしゃっていた。 早速、取り揃えられた超弩級機器の説明もそこそこに、貴重なクラシック・オリジナルプレスの数々を試聴させていただく。 オートグラフを聴くのは何年ぶりだろうか? 1960年代から80年代までの名演を交響曲、ワーグナー、バイオリンソナタ、声楽など次から次へと、また持参した2019年新譜の「ニュー・イヤー・コンサート」を含めあっという間の充実したひと時を過ごさせて頂いた。 今回聴かせて頂いたsigetaさん宅の音は、TANNOYを初めて聴いた当時の感動が、年月を重ねるにごとにさらに美化されてゆくといった音の記憶を上廻る、これまで経験したことのないまさしくTANNOYトーンと呼べるものではないだろうか。 最初に比較的新しいプレス盤を聴いた時、オートグラフ独自の長大なバックロード・ホーンを通して放出される低域のややこもった音色に違和感を感じたが、徐々にこちらの耳が慣れてくると素晴らしいホールトーンを堪能できるようになる。 sigetaさんのお話によると、以前は過剰な低域バランスに苦労したが、ルームチューニングを施すことによりかなりバランスを改善することができたとのことであった。 特に素晴らしかったのはオートグラフが生産されていた同時期の古い英国SAXやEMIのオリジナルプレスで、適度なホールトーンを伴った低域の抜けの良さと高域の繊細な響きのバランスに感動させられた。 神経質な金切り声に成りがちなルートビッヒが、豊満で慈悲深い、笑みを称えた歌声で歌っている・・・・・。 低域の量感を抑えるのに苦労されているという反面、調整が不十分な小型エンクロージャーのIIILZなどで感じる、高域の刺激的な響きは嘘のように影を潜めているようだ。 ヴァイオリンソナタでも高域が上ずるようなことは全くなかった。 しかし日本のような少し面積の狭い和室を使って、EMTや膨大な熱量を発する大型送信管を用いたアンプなどの強力な駆動系でオートグラフを手懐けるには、相当な努力が必要だとsigetaさんのお話から伺うことができた。 最高級の機材を組み合わせているのだから、良い音が出て当たり前と思うのが普通だが、そうはいかないのがオーディオの奥深いところでもある。 要は限られた空間でバランス良く聴こえるように、それぞれの機器をどのように組み合わせ調整して行くかが、オーディオの難しさであり醍醐味なのかもしれない。
またオートグラフを使う上での重要な調整ポイントとして、長年の使用に伴って緩みが出た15インチユニットを固定するネジを、均等なトルクで締め付けることが重要だとおっしゃっていた。 オートグラフのホールトーンにどっぷり浸かった後、帰宅して我が家のグッドマンで同じアルバムを聴くとその低域の質の違いに驚かされる。 そんな中でも耳に慣れた響きが心地よく感じられ、sigetaさんの機器に比べると大人と子供ほどの違いはあるが、これはこれでバランスが取れているとひとりごちた自分がいるのである。 sigetaさん、素晴らしいひと時をありがとうございました。 1/10 ■ Shure M44E
レストアしたEMPIRE598がなかなか好ましい音色なので、組み合わせるShureのカートリッジを別途購入する。 今度は楕円針だ。 ボディは1978年から83年までの間に生産されたカモメマークで、付いていた新品の交換針N44EはスイスのPfanstiehlのものらしい。 同じ楕円針でも昨年購入したKYOWAブランドの上位機種の旧型N55Eとはかなり出力や音質傾向が異なり、クラシックなども無難にこなす大人しく繊細な音のするカートリッジである。 昨年試したN55Eと同様、全体的にキレが薄れてエッジが甘くなるのが楕円針の音色傾向となっているようだ。 このカートリッジ一つで色々なジャンルの音楽を楽しむのであれば、この楕円針が最も適しているのかもしれない。 しかし我が家のように複数のカートリッジで音楽を楽しむ場合は、高域の繊細感と低域の豊かな響きに限ればMCタイプカートリッジに優位性があるので、こちらのMM型ではタイトな切れ味を追求することにしたい。 そんな訳で、昨年Nottinghamで試して高域の強調された音色のため上手く生かせなかった丸針のN44-7を試したところ、ちょうど良いバランスにおさまったのでEMPIRE598にはこの丸針を常用とすることにした。 1/11 ■ 箱庭式ルームチューニング
先日お邪魔した杉並区sigetaさん宅のルームチューニングに触発され、我が家でも試してみることにした。
しかしsigetaさんが使われているような市販のチューニングアイテムは高価なためとても手が届かないので、我が家に見合ったグッズを活用して挑戦してみることにする。 その使用したグッズというのは「必殺 卵トレー!」である。 お値段の方はネットで20枚3,000円ほどで手に入り、壁に取り付けるカラー画鋲と合わせても4,000円でお釣りが来るという圧倒的なコストパフォーマンスだ。 こんな子供騙しのアイテムで音質が改善されるようであれば全く儲け物ではないか。 画像の通り、SPを設置している壁面の上部角と中央天井部分にこのグッズを設置して試聴したところ、「あ〜ら不思議」横と奥に部屋が広くなったような音場効果と音源の分離度が高まってプレゼンスの改善がはっきりと認められた。物は試しでやってみるもんだな〜。 特に我が家のような少し狭い部屋を使用している場合には、さらに効果が発揮されるのかもしれません。 嫁殿は見るなり「何かの巣があるみたいね」と言っている。 あまり見た目を物々しくしたくはなかったが、音質が良くなるんだから我慢しましょう。 sigetaさん曰く「団子状になって耳に飛び込んでくる音の塊がほぐれて、いろいろな楽器の音が聞こえるようになったのは驚きだった」とのことだったが全く同感で、こんなチープなグッズで同じような効果が得られるとはまさしく目から鱗である。 sigetaさんありがとうございました。 1/12 ルームチューニングアイテムを設置して試聴を続けている。 ハイビジョンTVでは画面が細かいところまで鮮明に見えるようになるのと同じで、音の分離度が改善されてクッキリ感が強まり、弦楽器群などの高域が強調されて聴こえるように感じる。 壁面左右に設置しているトレーは左右の音場の広がりに影響し、中央上部のトレーは音場の奥行き感とコントラストに影響を与えているようだ。 最終的にそのコントラストを若干緩和するため、左右スピーカー中央の壁面と天井に装着しているトレーの天井部分だけ外し、加えて2WAYスピーカーの高域アッテネーターを少し絞ることでバランスを取ることにしている。 余韻も深まって低域の量感も増加し、スケールが大きくなったように聴こえるのは2WAY、3WAYとも同じ傾向である。 これまでは映画館やコンサートホールの中程で聴いている感覚だったのが、今回のルームチューニングを実施する事で前の方に座ってかぶりつきで鑑賞しているイメージに変わって来ている。 少し音のメリハリが強まる事で聴き疲れに繋がらなければ、この状態で楽しもうと考えている。今回使用したトレーには壁面色に併せて水性スプレーで塗装を施しているが、音を拡散するだけで吸音効果がないのが影響しているのかもしれない。 1/13 ■ 続・箱庭式ルームチューニング
その後色々な曲種を聴いているが、やはりコントラストが強くなり過ぎてクラシックの弦楽器群が煩く感じるようになって来た。
トレーは当初壁面左角に7枚と右角はエアコンがあるので6枚、中央上部に4枚使用していた。 この状態だとフォーカスが合って定位がハッキリするのは良いが、高域がキツくエッジが立ちすぎる。 アッテネーターでツイーターのレベルを絞ると緩和するが、今度は高域の繊細感が死んでしまう。 そんな訳で使用する枚数を少しずつ減らしてみる事にした。 最初は左角が5枚と右角に4枚に減らしたところ、ピントがややソフトフォーカスになって高域のキツさは治るが、今度は低域の膨らんだ不自然な音色となってしまった。 続いて中央上部を2枚に減らしたところ、低域の自然な響きが戻り高域の柔らかさが戻って来たように聴こえる。 ツイーターのアッテネーターを元のレベルに戻してもうるさく感じなくなって、繊細感のある本来の響きに戻ったようだ。 この状態だと中央最前列のかぶり付きで聴いているのが、少し席を後ろに移動して全体を見渡せる感じで聴こえるようになった。 更に左角3枚と右角2枚、中央上部2枚と天井部分1枚にまで枚数を減らしてリスナー側背面の壁にも同様に設置したところ、響きが自然のまま奥行き感が出て来た。 音源の定位の方もトレーを使用する前に比べてハッキリしているので、バランス上この状態が一番良いのではと考えている。 それぞれのご家庭で音楽を楽しまれているオーディオルームは、当然のことながらカーテンや敷物、家具などの設置状態によって音の反響条件が違ってくる。 このような方法でトレーの枚数を増減させて試聴してみるのが一番確かだ。 幸いトレー自体はとても軽く、画鋲で数カ所壁面に刺すだけで簡単に設置できるのでそれほど苦にならない。 スピーカーの間に何も置かず空間となっている場合は、この壁面にトレーを並べても効果があるそうだ。 我が家での効果はかなりあると実感したので、是非一度お試しいただくことをお勧めする。 1/15 最終的にSHURE M44の交換針は、オリジナルでカンチレバーがヨレヨレになったN44Gを使用している。 使用し始めたEMPIRE598が快調なこともあり、最近はロックをもっぱらこの1970年代のプレーヤーを使って聴いている。 トランジスターを使用した業務用純正フォノイコとの組み合わせで低域の締りもバッチリだ。 楕円針のN44E/N55Eは切れ味の面で不満が残り、未使用のまま終わってしまった。 N44-7も相性が良いかと思ったが、少し高域が煩く低域の締りも甘い感じがするので出番が無くなった。 不思議なのは同じM44Gでも先に購入したカモメマークなしのボディにJICOの交換針を装着したものと、このカモメマークにオリジナルの針を装着したものでは音色がかなり違ってくることだ。 SMEシェルを使用して古いカモメマークM44Eのボディにメキシコ製オリジナル針を装着したこちらの個体の方が、Ortofon木製シェルを使用しウッドハウジングでボディ剛性強化したものより左右の音の広がりが自然で聴きやすい音色となる。 EMPIRE598を使用するようになってNottinghamの外付けアームが余ったので、出番の無くなっていたDENON DL-103シリーズの再使用を目論んでいる。 組み合わせるフォノイコが足りないので、現在安価でコンパクトな現行品を選別中である。 1/21 ■ フォノイコライザー
マエストロ・ガレージさんに注文しておいた現行品のフォノイコがユキムより届けられた。
店主の谷口さんにも相談して決めたのが、こちらのMoFi Electronics Studio Phono2という2019年の中頃に発売された機種である。 この米MoFiはモービル・フィデリティというレコード・CDの復刻を手掛けている会社らしいが、決め手となったのはこの製品の監修をEARのパラヴィッチーニが行っているという点だった。
さて、ノッティンガムに増設したショートアームを使いSHUREのフォノイコとM44の組み合わせを楽しんでいたが、アメリカ物はアメリカものでということで、久しぶりにEMPIRE598を引っ張り出してきて使い始めたのがコトの起こりである。 しかしノッティンガムのショートアームで別のカートリッジが使えるようになったまでは良かったが、今度はフォノイコが足りないので活用できないままでいた。 昨年からのアームの増殖により使用する機器も増え、狭いオーディオルーム環境ではフトコロ状態以前にこれ以上大袈裟な機器を置くスペースもない。 そんな訳で置き場所を取らない、可能な限りの低価格での選出となった訳である。 組み合わせるカートリッジは長らく出番の無くなっていたDENON DL-103/103C1が真っ先に頭に浮かぶが、VL型のDECCAやMI型EMPIRE辺りでも良いかと考えていた。 現物はご覧の通り手のひら大のコンパクトなサイズで、この価格帯だと電源部がチープなのは致し方ないが、音質を考慮して電源スイッチは省略されている。
こちらのフォノイコを使用するにはプリのChriskitはライン入力が既に一杯なので、Marantz7に接続してGoodmans2WAYで楽しむことになる。 底面のディップスイッチで負荷インピーダンスを47KΩ(MM)に設定し、簡単な接続を済ませて早速試聴開始。 まず最初はトランス無しでDECCA MarkV-EEから音質を確認する。 EARなどと違ってシンプルな機種なので当初はあまり期待しないつもりだったが、聴き始めはいつもハラハラ、ドキドキするものだ。 しかし出てきた音は一聴して低域の厚みの無い高域の繊細感だけが際立った価格通りの音色だったが、この音はこれまでに聴いた経験のある組み合わせバランスを欠いた時の中性的なデッカの音質だった。 やはりこんなモノかと半分諦めかけたが、気を取り直して本命のDENON DL-103にチェンジして試してみることにする。 組み合わせるMCトランスは相性の良いALTEC/Peerless4722だ。 そうしたところ寝起きのボケた音質が目を覚ました如く、やっとのことで低域に重量感のある耳に馴染んだまさしくDENONの音が再現され始めた。 年末より使い始めた古いSHURE製フォノイコに比べ、ワイドレンジかつノイズレスなクリアな音質が展開され、音の滲みを感じられないのが特長となっている。 低域が若干軟調となる傾向にあるが、DENON特有の息の詰まるような重苦しさが影を潜め、身軽な抜けの良さが加わったような気がする。 使用開始して数時間後には更に広がりのある音場とキレの良さが見え始めたので、真空管デバイスの機器と同じく寝起きが悪いのかもしれない。 まずは目出度く期待以上の音質を得られることとなったので、これから色々な曲種を楽しもうと考えている。 1/23 ※谷口さんにこのような電源SWが無い機種の使用方法をお伺いしたところ、すぐにメーカーに確認いただき常時電源を入れた状態で問題はなく、音質面でも極力繋いだままで使って欲しいとの回答を頂戴した。 また半導体アンプでも数十時間のエージングは必要とのことで、やはりDECCAでの聴き始めはまだまだ寝起きの悪い状態だったようだ。 そんな訳でお値段の方は大変安価ながら、RCAプラグが少し緩い点を除くと作りもしっかりしていて質感も高いように感じた。 音質面でも真空管アンプでは味わうことのできなかったクリアで見通しの良い音場が新鮮で、昭和の名機DENONの新しい面を引き出せたように感じている。 エージングが進むと更に音質の改善がありそうなので、今後の楽しみが増えたと喜んでいる。 谷口さん、ありがとうございました。 ■ 続・フォノイコライザー
新しいフォノイコをプリアンプに接続している時、これまで聴いたことのない原因不明の異音が発生した。 使用しているプリアンプMarantz7に接続している機器は下記の通りとなっている。 フォノイコ入力→PHONO1(Ortofon T-30+Thorens MCH-II)/PHONO2(WE KS-9450+Ortofon SPU MEISTER GE) ライン入力→TV(Studio Phono2+Peerless4722+DENON DL-103)/AUXILIARY(EAR845P+Ortofon MC30s) 新しいフォノイコ(一番右)にケーブルを配線する時は、一端セレクターをAUXILIARYに切り替えて音が出ないよう作業を実施していた。 PHONO1/PHONO2のアースはプレーヤー→MCトランス→プリアンプまで伸びているが、ライン入力に接続しているフォノイコからプリアンプにはアースは接続されていない。(アースはプレーヤー→MCトランス→フォノイコまで) この状態で新しいフォノイコのINPUTにケーブルを接続すると、プリのセレクターを別接続に切り替えているにも関わらずSPから「ブロロロ〜」とバイクのエンジンがアイドリングしているような異音が発生するのである。 ケーブルを動かして微妙に接続状態を変えるとノイズが出なくなるツボがあるが、フォノイコの接続を外すと当然その異音は出なくなる。 現在はいろいろケーブルを動かして異音のしない状態で音出ししているが、SPボックスの上に置いているために使用しているユニットの強力なアルニコ磁石が影響しているのか原因は不明である。 その後、2日ほど通電状態が続いており、試聴時間も10時間を超えているのでエージングはかなり進んだ状態にあると思われる。 当初感じた高域のキツさを和らげようとDL-103のリード線をオーグラインからDUCCに変え、MCトランスからフォノイコに伸びるケーブルもOrtofon7NからSMEケーブルに変更している。 同じ半導体を使用したSHURE製フォノイコと比較しても、ワイドレンジかつ精細度の高い音質傾向がリスナーに緊張感を感じさせているものとなっている。 組み合わせるカートリッジの音質にも影響されるのは当然だが、ジャズなどの曲種に向いているのではないだろうか。 同じ曲をEARに切り替えて聴いてみると、価格の違いが大きいので当然と言えば当然だが、「音の雰囲気」や「ゆとり」が全く異なって聴こえる。 そりゃそうでしょう。まだまだいろいろ試してみることがありそうですね。 1/25 ※追伸 AUXILIARYからのアイドリング・ノイズは、やはり置き場所を変えても接続時に必ず発生する。 スピーカーは無関係で依然として原因不明だが、なぜか本体トップパネルのサブソニックフイルター・スイッチをONにすると止まる。 そして再びサブソニックフィルターをOFFにすると異音は消えたままとなるので、そのやり方で使用している。 パーツの不具合でなければ良いのだが、今度谷口さんに聞いてみましょう。 ※発振ノイズ 谷口さんに問い合わせたところ、「入力インピーダンスとフォノイコの出力インピーダンスとの間で整合が取れないなどの原因で、発振(ハウリング)を誘発している可能性がある」とのことだった。 併せて電源の取り方など何項目か対応策をご教授いただくが問題の発振は解消しなかった。 使用するプリとの相性の可能性もあるとのことでChriskit Mark Y Customのプリを使用した3WAYのシステムで試したところ、なるほどおっしゃる通りこちらでは全く発振しない。 やはりMarantz7のようなオジーちゃんには孫のような今時の半導体フォノイコは馴染まないのかもしれません。こんなこともあるんだな〜。 オジーちゃんと相性が悪いというのも困った話だが、しょうがないので別のオジーちゃんのシステムで使用することにしましょう。 まあ、音質的にはジャズなどの曲種に向いていることもあるので、POPS&ROCK用の3WAYシステムで使用する方がベターかもしれません。 それにしても今回のようにオーディオ専門店で購入すると、後々困ったときに適切な助言をいただけるのもありがたい。 谷口さん、いろいろとありがとうございました。 1/27 ■ EMPIRE 598N
新たなフォノイコMoFi Electronics Studio Phono2はEMPIRE598の純正組み合わせで使用することにした。 昇圧トランスを使用してMC型のDENON DL-103と組み合わせて聴いていたが、中域の上の方に妙な出っ張りというかつっかえる部分があってヴォーカルなどがキツく響く傾向がある。 ケーブルやリード線を替えMCトランスを別のものに組み合わせたりしたがこの傾向は解消せず、カートリッジをDENON DL-103C1にしてもダメだった。 やはり高音質レコードを制作する会社のフォノイコだけありHi-Fiに特化した切れ味の良い音作りがされているようで、我が家の古いヴィンテージ機器と組み合わせるにはやはり相性的に無理があるのかもしれない。 なんとかこの異端児を使いこなせないものかとコントラストの淡いMI型EMPIRE1000ZE/Xと組み合わせてみたところ、低域に少し軟調な傾向はあるが量感、広がりとも十分で中高域の刺激的な響きも出ないことが分かった。 そんな訳でレストアしたEMPIRE598との純正組み合わせが実現することになった。 1/31 ■ あるところにはあるもんだシリーズ 第二弾 昨年の年末に手に入れた新品のGoodmans MIDAX650に続いて、またもや新品未使用のクロスオーバーネットワークをヤフオクにて調達した。 出品された方の話では半世紀ほど前に購入後、いつか使用するつもりで保管してきたものらしいが、未だに未使用品とはあるところにはあるもんですね〜。 このGoodmans XO-950/5000は3WAY用のネットワークで、既にAXIOM150MkIIのSTAGE3スピーカーシステムで使用している。 今回予備用に購入したが、使用時には内部コンデンサー(1.5μF/8μF)の交換が必要となる。 現在使用しているネットワークは、専門業者に依頼してWESTCAPとDEARBORNのハーメチックタイプのオイルペーパーに交換済だ。 WESTCAPの1.5μFはAXIOM22MkIIのSTAGE2スピーカーシステムのネットワークXO/5000でも使用しているが、容量の大きい8μFはアメリカでも入手困難となっているため、現行品のフィルムコンを使おうかと思案中である。 耐圧の方も指定のものより大きければ良いというものでもないらしく、なかなか悩みどころでもある。 2/1 ■ オーディオ定例会
本日はsigetaさんに都合3回目となる来訪をいただき、前回から変更となった機器やルームチューニングの効果などをご確認いただいた。 併せて愛用されているWE純鉄コアのMCトランスをお持ちいただいたので、我が家のWEトランスとの比較試聴を実施した。 この超ヘビー級のMCトランスは、使用する際には磁気テープをそれぞれのトランスに巻いて内部の磁気が外に漏れないようにされているとのことで、このテープを巻く巻かないで音が違うとおっしゃっていた。 SPU-MEISTERに組み合わせてクラシック音源を試聴したが、音質の方は我が家のWEトランスを上廻る中域に濃密な味を持つ「コッテリ系」である。 特にバイオリンの甘い響きとコーラスの分離度の高さは秀逸で、通常のWEトランスの音色を濃厚さで凌駕しているようだ。 主にGoodmans2WAYを使用して試聴をするが、薄くなりがちな中域の密度が上手くマスキングされ、充実した円やかな音質バランスとなっている。 我が家でクラシック系常用となっているMCH-II+Ortofon T-30の組み合わせで比較試聴してみると、剛と柔ほどの違いがあり興味深かった。 続けてsigetaさんに、昨年秋に導入したUESUGI OLSON TYPE NON NFBアンプをEMPIRE598+2000ZEXの純正組み合わせを使って試聴いただくが、音の広がりや金管の力強い響きなどに満足いただきMM/MI型の音色の美しさを再認識したとのことだった。 システムを設置している壁面とリスナー側壁面に設置した箱庭的ルームチューニングについても、比較試聴した訳ではないのではっきりした事は言えないが、音場に奥行きが出たような気がするとの事だった。 前回sigetaさん宅にお邪魔した際にお借りした、この「巨匠たちの音、巨匠たちの姿」は大変参考になる書物だった。 小生のようなコンサートに出る機会が少なく家庭で聴覚に頼るばかりのレコード愛好家にとって、視覚を補う想像力をもたらしてくれる知識の広がりは、音楽を聴く楽しみを倍増させてくれるものである。良い書物に出会ったと喜んでいる。 sigetaさん、本日もありがとうございました。 2/6 ■ 新規アンプ導入計画(1) 「企画立案編」
名古屋の先輩に勧められ、今年度最大のアンプ製作BIGプロジェクトが始動開始!
もちろん自分一人の力でなんとかなるものではないので、現在とある工房に製作をお願いしたところである。 構想=半月(My Vintage Audio) 製作=TAラボ(新潟) 製作費=ウン十万円(断捨離推進委員会) 協賛=Y下企画(名古屋) 後援=Sigeta出版(東京) 果たして見どころ満載のこの企画、完成試聴会は今年の夏頃となりそうだ。乞うご期待。 2/16 ■ 新規アンプ導入計画(2) 「直熱三極管編」
そもそもこの企画、Y下先輩の「英国のVintage-SPには同じ英国の直熱三極管が最も適している」から始まった。
GECで開発された古典ビーム管KT66は長年QUADIIで愛用してきたTUBEだが、直熱三極管のPX25/PX4も同じく英国生まれの真空管だった。 古いナス管は価格が高騰していて手が出ないが、ちょうどタイミング良く新型ST管のPX4がヤフオクに出品されているのを発見したので落札した。 ブランドシールはKT66でも使用したことのあるMarconiロゴだが、OSRAMと同じ英国MOV(Marconi-Osram Valve Co.Ltd.)で作られていたものだ。 アンプ製作を依頼している工房の方のお話では、ST管タイプはフィラメントが切れやすくハムレベルが下がらない個体が多いとのことだった。 続く・・・・・・・・ 2/17
■ 新規アンプ導入計画(3) 「搭載真空管選別編」
話は前後するが、まだ年金支給年齢に至っていない現状を鑑みると、我が家の大蔵省の厳しい追及を逃れるため極力コストをカットする工夫が必要となってくる。
新型コロナウイルスの全世界的な蔓延に伴うGDPのマイナス成長が続くこの時期に、表立った突発的な支出を要求するには社会的背景が悪すぎる。 もちろん断捨離委員会の活動を活発化させるのも財源を確保する主要な有効策の一つである。 そんなこともあり、製作していただく工房とも相談して使用する真空管はこちらで用意することにさせていただくことになった。 前述のとおり、本命の直熱三極管はすでに調達済みである。 残る初段や整流管なども製作工房と相談しながら、手持ちの英国製TUBEをチョイスして活用することにした。 初段管は6SL7系の在庫が手持ちにないためMullard ECC82/12AU7でお願いすることにして、整流管には出力管と同じ形状のCOSSOR 53KUをチョイス。 初段管も無骨な古典球に拘りたかったが、まあ脇役にはあまり個性を期待せずにこの辺りで我慢することにしましょう。 続く・・・・・・・・・ 2/18
■ 新規アンプ導入計画(4) 「初段管変更編」
計画当初は初段管に手持ちのECC82を使用する予定でいたが、よくよく考えてみるとミニチュア管では見た目のバランスが貧相なことに気がついた。
そこでアンプ工房でもお勧めいただいた6SL7系のTUBEを調達することにする。 幸いなことに以前所有していた300Bシングルアンプの初段で使用していた6SN7系より市場相場はそれほど高くないようだ。 今回調達したTUBEは英コードKB/FE(STC)CV1985/ECC35と米RAYTHEON5691、同じくRCA6SL7GTスモークガラスの3種類である。 そのうち流通量の少ない(STC/Oldway)CV1985と6SL7の最高峰となる高信頼管RAYTHEON5691については流石に値段の方も少し高かった。 RAYTHEONのVintage管は品質の高さで評判だが、よくよく調べてみるとこのRAYTHEONの赤ベースはRCAのOEM品のようである。 英STCvs米RAYTHEON、この2本が本命と対抗馬になりそうだ。 とりあえずこの3種類ぐらいあれば何とかなるでしょう。 続く・・・・・・・・・ 2/28 ■ 最近のアナログ事情
明日から早くも弥生3月を迎える。 2月22日に昨年より15日も早く春一番が吹き、梅も満開となって待ち侘びていた本格的な春の到来に水をさしたのが新型コロナウィルスの蔓延だ。 当初は3月の初旬から京都の実家へ両親の見舞いと並行して中国〜九州縦断旅行を計画していたが、さすがに延期とせねばならなかった。 オーディオの方は依然として不満のない音色を味わっている。
クラシックはもっぱらEMPIRE598にMI型の1000ZE/Xを使用して、壁面いっぱいに広がる独特のゆったりとした音色を楽しんでいる。 組みわせたMoFiのフォノイコもMC型のDENONを使用すると中域に違和感を感じたが、若干淡いEMPIREの色彩感にクッキリとしたスパイスを効かせているようだ。 この美しいMI型の音色に味を占め、後発で最上位機種のEMPIRE4000D/IIIに付け替えてみると、どうしたことかゆとりのないこじんまりとした音色となってしまう。 このEMPIRE1000ZE/Xはいつもリード線でお世話になっている旭川のkeisさんの手によって山本音響工芸製ヘッドシェルに組み合わされたカートリッジだが、リード線は直付けとなっているらしく微妙なチューニングが音質の向上に影響しているのかもしれない。 こちらはOrtofon SPU-GEをA-CRAFTのアダプターを介してアルミブロック削り出しのヘッドシェルに装着し、リード線には古いWE線材を使用した吟醸リードを組み合わせたカートリッジである。
MCトランスにはJ's No.6600を組み合わせているが、オリジナルのGシェルで使用した時よりにじみ感のない歯切れの良いタイトな音色が得られ、ロックなどのパルシブな音源にはちょうど良い感じに仕上がっている。 2/29 ■ Garrard401 キャビネットの再塗装
3月に入っても新型コロナウイルスの蔓延がさらに規模拡大しているのが恐ろしい。
デマが広がって石油危機の時同様に、トイレットペーパーの買い占めが起こっているのは日本独自の現象だろうか? このGarrard401は2007年に導入後、我が家の主力アナログ・プレーヤーとなっている半世紀前に製造された名機301の後継機種である。 アームはaudio-technicaの局用タイプを2本装備しており、主にSPUなどロー・コンプライアンスのOrtofonカートリッジを組み合わせて使用している。 同時期の1960年代後半に発売されたEMPIRE598Nがレストアにより美しく蘇ったので、こちらの1970年代前半に製造された後期型Garrard401についても、あちらこちらに傷が目立ったキャビネットのレストアを実施することにした。 ターンテーブル本体には針を落とす時に手が掛かるあたりに塗装の変色が見られるが、稼働10年以上で音色は当然のこと機能的にも問題はない。 最近フェルト製のパッドが磨耗してブレーキが掛かりにくくなったので、ブレーキパッドの取り替えパーツを注文しているところである。 モーターの分解清掃には手を付けたことはないが、軸受けだけは定期的に分解清掃してOILを入れ替えている。 軸受けのスラストプレートはカーボン製に交換し、アイドラーとスラストパッドは共に一回新品交換している。 ボディの部分的な変色については、色々なクリーナーを試してみたが黒ずみは取れなかった。 積層キャビネットはサンドペーパーで研磨してワトコオイルを重ね塗りしたのち、TANNOYウッドワックスを塗り込んで磨きをかけている。 なんとかエンパイヤ同様美しく蘇ったので、今後も我が家のアナログ・オーディオの主力として頑張って回り続けてくれることを期待している。 3/3 注文していたGarrardフェルト製ブレーキパッドと化学合成OILが届いた。
これまではEMTのOILを使用していたが、こちらの純正OILに交換したところ、粘度が低いのか若干回転数が速くなったように感じた。 起動後半回転ほどで定速に達するし、回転も滑らかなのでアイドラーはまだまだ大丈夫な様子。ブレーキもパッドの交換でしっかり効くようになった。 OIL注入のため軸受けを分解清掃したところ、スラストパッドの摩耗が進んでいるようなので様子を見て注文することにしよう。 3/7 ■ Garrard401用パーツのあれこれ
ストックを漁っていたら使用ずみアイドラーが2個出てきたので、記憶を辿ると2回交換しているのを思い出した。 それほど状態も悪くなかったので表面を研磨して試してみたところ、どちらとも半回転ほどで定速になるのでまだまだ使用できそうだ。 復元のやり方は、硬化して少し湾曲していた表面を電動ドリルに挟み、800番程度のサンドペーパーで直線が出るよう研磨する方法である。 捨てないで取っておいたのが正解だった。なんとかなるもんだな〜。 スラストパッドの方は現在2mm程度の直径で当たりが出ているが、どの程度が寿命なのかわからない。 こちらはすでに交換したスラストパッド。 中央部分にスピンドルとの接触によって3mm弱ほどの面積が摩耗している。 この直径が大きくなることによってスピンドルとの接触面が増加するわけだから、抵抗が増えるということだろうか? また摩耗することにより音質にはどのような影響があるのだろうか? 今回、試しに中央のスピンドルと接触する部分にボールベアリングを使用した、UPGRADE SPINDLE THRUST PADなるものをイギリスから調達することにした。 お値段の方も純正パーツを国内で購入するより、国際送料込みでも安価となっている。 たまたま見つけたこの改良型スラストパッドの英文記事によると、「使用しているソフトリン青銅ボールベアリングはスピンドルより材質が柔らかく、ボールベアリングのみが摩耗する場合、スピンドルの表面接触が最小限に抑えられるため摩擦が減少し、音質が向上する。」とのことであった。 はてさて、海を渡って届けられるまでは2ヶ月ほどかと思われるが、到着するのが楽しみである。 3/9
■ Mullard ECC83
ECC83/12AX7はプリアンプやフォノイコなどで使用する機会の多いTUBEである。
Marantz7ではカップリング・コンデンサーやセレン整流器などオリジナル仕様のパーツに変更後の試聴にて、やはりオリジナル通りのTelefunken◇マークが最も相性の良い真空管だと確認している。 この独製◇マークに肩を並べるTUBEとして英Mullard製のものがあるが、そのムラードの中でも製造時期やタイプによって音質が違ってくる。 我が家には高信頼管となる軍用CV4004や後期に製造されたECC83/12AX7(CV492)ショート・プレートについてはまだ使用可能なストックが多く残っているが、1950年代の後半まで製造されていた、音質の良いと言われるロング・プレートの在庫が少なくなっていた。 最近はヤフオクでもこのロング・プレートの出品は少なくなってきており、たまたまアムトランスさんに入荷したのを見つけたので即購入した。 我が家にある17mmロング・プレートはMullardの旧ロゴ(中央:B9I)とFisherロゴ(左:B8F)の2種類で、全てゲッターがシングルサポートのラウンドタイプである。
今回調達したのは1957年製造の角形Dゲッター(右:B7A)で、e-Bayなどには出品されているが日本では最近滅多にお目にかかれないTUBEだった。 2本しかないので使用するのが勿体無いが、また試聴する機会があればChriskitのプリアンプにでも試してみようかと考えている。 3/10
■ 6AR6シングルアンプが到着 「新規アンプ導入計画」で製作を依頼している新潟のチューブ オーディオ ラボさんから、アンプが完成するまでの間に試聴用アンプをお借りすることになった。
この6AR6シングルアンプ2号機は昨年の真空管オーディオフェアに出品されたアンプで、1号機はすでに別のオーディオ愛好家の元へ嫁いで行った。 6AR6は米WEが開発した小型の5極管で、現在でも比較的安価に手に入るようだ。(このアンプでは3極管接続で使用されております。) 開発当初はWEでも製造されていたが、その後はTung-Solなどの他メーカーでの製造が大半となったTUBEである。 管球王国の「歴代の5極管/ビーム管 50種の音質比較テスト」でも、5極管接続ながら高い評価を受けている。 真空管博士のブログでの説明にあるとおり、3極管接続時にはPX4系PP3/250にそっくりな特性を示しているTUBEである。 (球球コレクション プアマンズPP3/250) (製作記についてはTAラボさんのHPに公開されおります。)
さて、英国SPをこよなく愛したオーディオ評論家の故上杉氏が製作監修した UESUGI TAP-31に一旦席を譲っていただき、AXIOM150MkIIを使用したグッドマン3WAYにはSV-91Bをカップリングして、クラシック用に使用しているAXIOM22MkII2WAYをこのアンプと組み合わせることにした。
使用されている真空管は、初段に6SL7を1本、出力管はTung-Solの6AR6と整流管にGZ34といったコンパクトで可愛らしいアンプである。
内部の配線は流石に美しくまとめられており、配線材にはWEを使用されている。 また、出力段のカップリングに使われているのは音質の良いWEST CAPと思われ、随所に高質なパーツを使用されていて完成度は高い。 音質の良し悪しは当然のことながら、この「見た目が美しい」ということが所有する喜びを増加させるポイントではないかと考えている。 たまにオーディオ雑誌などでお世辞にも美しいと言えない、乱雑な配線で作り上げた自作アンプ記事を見ることがある。 自作ならまだこの乱雑さが努力の証として我慢もできるだろうが、完成品を購入する場合は音の良さに加えて美しさが選択の重要なポイントとなって来る。 音が良ければ良いというものでもないだろう。 音質の決め手となるトランスには、ラボさんお勧めのTSM Productsの手巻きトランスが使われている。 当方で製作を依頼しているアンプにもこの手巻きトランスでとお願いしているが、少し高価なアモルファス・コア製を希望している。 ユーザーにとって重要なポイントとなる価格の方も、このような質の高いパーツを採用している割にはとてもリーズナブル価格設定となっているので驚いた。 試聴結果は追々記入させていただくが、来週のオーディオ定例会でSigetaさんにご来訪いただくので、その時までに本調子となるよう聴き込む予定である。
3/13
■ 6AR6シングルアンプの試聴@ これまでAXIOM22MkIIの2WAYを駆動していたSV-91B(右)と比較するとかなりコンパクトにできていることが分かる。
出だしは軽いPOPS系の音源から試してみる。 まず最初に感じるのはSV-91Bが捻じ伏せるような力強さが特徴なのに対し、こちらは低域の量感も程々ですっきりとした瑞々しさが持ち味となっている点である。 価格が倍以上違うSV-91Bと比較するのも可哀想な話だが、クラシックの良さを楽しませてくれると言った部分ではそれほど遜色もない。 両者の最も大きな違いは低域の量感とその構築力にあり、SV-91Bが重戦車のようなガッシリした押し出しの強さを持っているのに対し、6AR6シングルは質の良いリッチな響きと余韻が特徴となっているようだ。 さて、本命のクラシック音源の試聴に入る。 POPSなどではこじんまりとして少し淡白に感じた音質が、クラシックではこってりとした織物のような彩でオケを描き分ける能力には驚くことになる。 声楽を聴くと中域の上の方に少し引っかかったトゲのような部分を感じるが、これはTAラボのKさんがおっしゃっていた整流管GZ34に起因しているのだろうか。 馬力が乏しい分少し音場が狭まったようにも感じるが、しかし弦楽器群の合奏にもコクがあるし金管楽器の緊張感のある響きも素晴らしい。 特に良いのが音の色付けがはっきりしている点で、色々な楽器の音の強弱が色彩感を伴って息遣いのような生命力を感じさせてくれるアンプである。 このシングルアンプにはプリアンプのMarantz7を組み合わせている。
使用上のポイントとして、シングルアンプの出力が低いため出力ボリュームをMaxに上げており、さらにミニマムで使っていたプリのOUTPUTレベルを中程まで上げることができるようになったことも音質の向上に影響しているのかもしれない。 圧倒的な馬力はないが必要十分な力感があり、なんといっても色彩豊かな彩が素晴らしくて、なるほど評価が高いのも肯けるものと感じた。 機器を変えた当初は変わった部分が良くなったように感じることが多い。
このアンプもまず最初のつかみはOKだが、一週間ほど試聴を続ければ短所も見えてくるかもしれない。じっくりと参りましょう。 3/13 PartII
■ 6AR6シングルアンプの試聴A 6ARシングルアンプの試聴を、じっくりといろいろな曲種で続けている。
このような試聴では、その日の機器の状態やこちらの体調によって感じ方が違って来ることもあるので、その辺りはご了承いただきたい。 2日目にはウォーミング・アップにより冷めた体が温まって動きが軽くなるように、伸びやかでダイナミックな音色に変化してきた。 POPSやJAZZでも初日はどちらかというと大人しく理性的だった音質が、低域の量感が増してよく弾み、ダイナミックな迫力が加わるようになった。 個々の質感をはっきりと描き分け、説得力のある音を聴かせてくれるという点は、初日に感じた印象と変わっていない。 見た目はコンパクトなアンプだが、結構馬力と細やかな表現力を兼ね備えているのは手巻きの出力トランスが影響しているのだろうか? 逆にクラシックでは押し出しの強い中高域に、弦楽器ではそれほどでもないが少し粗い響きを金管や声楽で感じるようになる。 この辺りは使用している初段管(RCA/6SL7)と整流管(Zaerix/GZ34)を差し替えることによってかなりニュアンスが違って来るかもしれない。 工房のKさんに承諾いただいたので、明日はこの辺りを手持ちの真空管で「球転がし」を仕掛けてみようかと考えている。 小出力のため音場が少し中央に集まる傾向はあるが、それでも音が団子になることもなく質感の異なる音色で描き分ける点には感心させられる。 今日はPOPS系で迫力ある音楽を楽しませてもらった。明日の「球転がし」での音質の改善が楽しみである。 3/14
■ 6AR6シングルアンプの試聴B
昨日の試聴ではようやく本領を発揮し始めたようで、躍動感が出て迫力ある音色に変化してきた。
POPSやJAZZなどは特に不満を感じなかったので、本日はクラシックでの中高域の粗さを「球転がし」によって改善ができるものか試すことにする。 前述したが少し不満に思っている点が、声楽テノールやオケ金管楽器の乾いたような粗い響きである。 逆にこの高域の粗さについてはJAZZなどの曲種においてはプラスとして作用することが多く、なんとも痛し痒しである。 この刺激的な響きが真空管を取り換えることによって若干でも改善できるとすると、オールマイティーに使用できるアンプとなるはずだ。 さて、交換してみるTUBEは前段の6SL7と整流管である。 オリジナルの6SL7GT/VT-229は米RCAのブラック・プレート/ボトムゲッターで、整流管は英ZaerixのTUBEだがエッチングコードもないので日本製かもしれない。 特に工房のKさんからは、この整流管の交換により高域の質感が改善できるとアドバイスを受けている。 クラシックでのこれらの問題点を解消するためには、やはり英国製の真空管を使うべきだろう。 6SL7は互換球のSTC/ECC35、整流管には同じくSTC/CV717/5R4GYかCOSSOR53KU/CV378などをチョイスすることにした。 最初に初段管をSTCに交換して試聴する。 残響が増してホールトーンが豊かに聴こえるようになり、弦楽器群に繊細感が加わって細やかに美しく響く。 声楽のテノールの声質にも温かみが出始め、初段の変更だけでもかなり改善されたように感じる。 さらに初段管をそのままに整流管をSTCに付け替えると、弦楽器の繊細な響きに滑らかさと柔らかさが出てきて、テノールの声質も血が通うと言うのか芯の強さがある割にキツい響きとならなくなった。 全体的な響きに柔軟性が出ることによって、持ち前の息遣いのような音色の強弱がさらに美しく表現されるようになる。 整流管をCOSSOR53KUに替えると同質な音色傾向ながら、さらに重心が下がって奥行き感が加味される。 この状態だと全く不満のない堂々とした音色を味合わせてくれるようになった。 コンパクトなサイズが嘘のように、フロアタイプの大型SPを楽々と鳴り響かせる力を持った音楽性の高い真空管アンプと感じている。 3/15
■ SV-91B 300Bシングルアンプ
GOODMANS AXIOM22MkIIのSTAGE2/2WAYには音楽性豊かな6AR6シングルを組み合わせたので、こちらのSV-91BはAXIOM150MkIIのSTAGE3/3WAYで使用することにした。 このアンプは名古屋のアンプビルダーY下さんの手によりSUNVALLEY SV-91Bを大幅に改良されたもので、外観も高級感溢れるものとなっている。 Y下先輩の説明によると、310A-310Aのみ交流点火で300Bは直流点火に改造してあり、カップリングCにSPRAGUE/バンブルビー、抵抗はA&B、カソードコンデンサには銀タンタルを使用しているとのことだった。 これまでは基本通り、3WAYにシングルアンプは荷が重いと考えてプッシュプルで駆動し、こちらのアンプは2WAYで使用していた。 また、昨年までは真空管をオールウエスタンで使用していたが、秋頃より出力管を日本製TAKATSUKI TA-300Bに交換して楽しんでいる。 今回初めてこのアンプを3WAYに組み合わせてみたが、驚いたことにUESUGIのプッシュプルより厚みと馬力のある低域を聴かせてくれている。 以前、整流管の聴き比べを実施した時に最も馬力と勢いを感じたSYLVANIA VT-244を、WE-274B刻印から取り替えてPOPS&ROCKを中心に楽しむつもりでいる。
少し甘い香りが漂うAXIOM22MkIIを隅々にまで血を通わせてくれるような高い駆動力を持ったこのアンプ。 硬質でリッチな響きのAXIOM150MkIIからは、どのような音色を引き出してくれるのだろうか? 楽しみである。 3/16 ■ オーディオ定例会 本日はSigetaさんをお招きして、恒例となりつつある定例会を開催する。
今回のメニューは新潟のTAラボさんにお借りしている6AR6シングルアンプの試聴と、お持ちいただいたルーム・チューニング・グッズの効果検証である。 我が家で試聴を続けているそのアンプは現在、クラシックに最も適している組み合わせ(初段STC/ECC35整流管COSSOR53KU)に差し替えて使用している。 Sigetaさんにはまずオリジナルの真空管に戻して試聴していただき、その後「球転がし」を行って音色の変化を二人の"耳"で実施することにした。 最初に初段から交換するが、我が家の英STC/ECC35、米RAYTHEON5691、RCA6SL7GTスモークガラスとSigetaさんにお持ちいただいたKen-Rad VT-229、RCA5691赤ベースに加え、オリジナルのRCA 6SL7GT/VT229の6種類。 整流管の方は英STC/COSSOR、米RCA JAN CRC 5R4GY、WE-274B刻印に加え、こちらもお持ちいただいたRCA80などが試聴ラインナップである。 ソースはクラシックアナログ盤を使用し、カートリッジにはSigetaさんも愛用されているOrtofon SPU MEISTERを組み合わせた。 (Garrard401+SPU→Marantz7→6AR6シングル→Goodmans Axiom22MKII/STAGE2)
初段RCA+出力管米Tung-Sol+日ZaerixのオリジナルTUBEに戻して、試聴を実施されたSigetaさんのご感想は、
低域から高域までストレスなく質の高い音色を聴かせてくれる、クラシックには丁度良いバランス感を持ったアンプではないか。 以前のSV-91Bよりこちらの組み合わせの方が、クラシックでの試聴では相性が良いように感じるとの初見であった。 さて初段管から「球転がし」終えた後のSigetaさんのご感想は、少し渋い傾向の英国管より高域がよく伸びて音色の明るい米国管に好感を持ったとのことである。 Sigetaさんが選ぶ初段管のベスト3は、RCAとRAYTHEON/5691赤ベース、オリジナルのRCA VT-229ボトムゲッターだった。 また整流管の方ではWE-274B刻印がダントツのNo.1で、COSSORの柔らかい音色も好ましかったとの評価である。 最終的なアンプの感想としてSigetaさんからは、「山椒は小粒でもピリリと辛い」ではないが小振りな容姿にも関わらず、相当熟成された好ましい音色と感じた。 併せて出力の低いアンプの場合には駆動力に問題が出ることがあるが、SPが能率の高いGoodmansでは軽々とドライブする力強さを感じたとのことだった。 当方は初段や整流管ともやや渋めの英国系の音色に好ましさを感じたが、アンプ自体の評価は概ね同じようなものである。 次にご自宅で2セット愛用されているオーディオ・リプラスのルームチューニンググッズの効果検証を実験する。 まず画像の通り、お持ちいただいた1セット(2個)をそれぞれのSPの天板の上に設置して聴いてみる。 これだけでも音質に顕著な変化が表れるが、明らかに高域がヒステリックに響きすぎてこの配置ではいま一歩の評価となる。 次に外側のSPの壁面に立て掛けて配置してみると、音場が自然な広がりを見せて聴きやすいバランスとなることを発見する。 Sigetaさんからは我が家で設置しているチープな「必殺チューニング・グッズ」の効果により、増設しなくても自然な音場が再現されているのではとのことであった。 最後に、新たな組み合わせとなったSV-91BとGoodmans AXIOM150MKII/3WAYの音色や、Ortofon SPUシリーズ(GE/Classic GE)の聴き比べを実施して本日の定例会を終了する。 Sigetaさん、本日もありがとうございました。 3/19 ※追伸 Sigetaさんから本日の試聴感想を、掲示板の方にご投稿いただきました。 興味のある方はそちらもご覧ください。 ↓ https://zawazawa.jp/bcjd0i1lnr55w007/topic/1 ■ Garrarad401 アップグレード・スピンドル・スラストパッド 依然として世界的なパンデミックは終息への光明が見えてこない。 そんな中でも四季は普段通りの移り変わりを見せ、3月中旬よりいよいよ気温も上昇して埼玉でも桜の開花が進んでいる。 イギリスからGarrard401用のUPGRADE SPINDLE THRUST PADが届いた。 3/9に注文したから到着するまで2週間弱と意外に早かった。 画像下ボールベアリングが付いたパッドとその左に交換用ベアリングが2個、白っぽいガスケット2枚と商品内容の印刷物が送られてきたパーツの全てである。 当初考えていた価格には国際配送料が含まれておらず、到着時に着払いで送料分3600円払ったので購入金額は合計9000円となり、国内で純正パーツを購入するより少し割高となってしまった。 現在は円高が進んでいるので、日本での購入価格が値下がりしているようだ。 交換用のボールベアリングが2個付属しているので、こちらのパッドの音質に問題がなければ当分は交換品の購入は必要ないと思われる。 このボールベアリングの素材がミソのようで、国内にもかなり出回っているKokomo kitはセラミック製なの対し、こちらはスピンドルの素材より柔らかい青銅製となっているようだ。 早速スピンドルの底を磨いて清掃し、新たなパッドを装着してプラッターを回転させてみた。 少し摩耗の進んだオリジナルのスラストパッドと回転数はほぼ同等で、音質の方も今のところは大きく変わったところがある訳でもなかった。 馴染んでくるまでもう少し様子を見てみることにいたしましょう。 3/21 ■ TELEFUNKEN ECC83について 愛用しているMarantz7Rの真空管は現在、オリジナル通りのTELEFUNKEN ECC83◇を使用している。
このアンプを2002年に中古購入した時にはレプリカ専用の曙光電子製ECC-83とともに、TELEFUNKEN ECC83◇リブ・プレート58年製同ロット6本が付属していた。 購入後しばらくは真空管のみTELEFUNKENに替え使用していたが、2012年にカップリング・コンデンサを後期オリジナルでも使用されているSPRAGUE BLACK BEAUTYに取り替えたところ、音質が激変したので整流方法もオリジナル通りのセレン整流器を使ったものに変更している。 カップリングCを替えるまでは神経質で薄っぺらい音質に不満があり、よく「球転がし」を仕掛けて少しでも満足の行く音質にならないか足掻いていたが、交換後は全く不満もなくなってTELEFUNKEN ECC83◇の組み合わせが定着しその後の変更はなくなった。 購入して18年近くが経過しているわけだから、ここ数年で購入当初から使用している58年製リブ・プレートにも劣化が見え始めた。 そんな訳で現在は、フォノ段V1〜V2とライン段V4〜V5はエミ減により新品の◇マークに交換しているが、V3/V6のバッファはまだ使用可能である。 早晩寿命が来ることは確かなので、今回このTELEFUNKEN ECC83◇のストックを新たに調達することにした。 画像の4本は共にダイヤ・マーク付きの本物で、左側2本がリブ・プレートと右側2本はスムース・プレート品である。 今回のテーマはプレート横に開いている穴の有無で、スムース・タイプには横穴が2(〜4)箇所上下に開けられているが、リブにはそれが無かった。 TELEFUNKEN ECC83◇マーク/リブ・プレート TELEFUNKEN ECC83◇マーク/リブ・プレート(横穴なし)
TELEFUNKEN ECC83◇マーク/スムース・プレート TELEFUNKEN ECC83◇マーク/スムース・プレート(横穴2箇所) 色々調べてみたところ、プレートの長さはMullardなどとは違って全て17mmのロングタイプしかなく、プレート表面がリブとスムースの2種類あることはわかっていたが、プレート横の穴の有無についてははっきりと理解していなかった。 そんな訳で真贋を確かめる時にボトムに◇刻印は必須ながらプレート横に穴がないのは本物ではないとの噂もあるが、リブ・プレートにはそもそも横穴が無いようだ。 さらにスムース・プレートの横穴も画像のTUBEは上下2箇所だが、3〜4箇所空いているTUBEもあるようなので、この辺りもご注意いただいた方が良いだろう。 3/25 ■ TUBE TESTER (真空管試験機) 計測器マニアには(真空管だけに)タマらないTUBE TESTERのお話。 最近不必要となった真空管の断捨離を推進しているが、それでも諸々100本以上のストックがある。 それらの真空管の良否やペア組みの選定をするため、エミッション型とGM測定型の2種類のTUBE TESTERを使用している。 ※共にアメリカ製機器ですから117Vにステップアップして使用しております。 エミッション型はHEATHKIT/IT-17という機種で、ヤフオクで調達したものである。
若干計測数値が怪しかったので、自力で劣化の可能性のあるオイル・コンデンサーをフィルムコンに、またセレン整流器をダイオードに交換している。 更に頑固親父さんに依頼して測定値に影響する不良抵抗などの良品交換を実施してもらっている。 ○IT-17での合否判定方法 @電源を入れる。右中段のSET LINEダイヤルをOFFの位置から時計回りにメーターの針がLINE TEST中央の50を示すまで上げて行く。 A画像にはCalibration Tubeの6L6メタル管が先に挿してあるが、中央の窓表示から左右のダイヤルを回して6L6を選び出す。 B判定する6L6 TYPE→3/FILAMENT→6.3/PLATE→27/TOP(T)→CDE/BOTTOM(B)→GHの計測条件表示を確認する。
C右下段のTYPEダイヤル→3/左中段のFILAMENTダイヤル→6.3/左下段PLATEダイヤル→27に合わせる。 D下段横一列(A〜N)のレバーC・D・E→T(TOP)上に上げる、G・H→B(BOTTOM)下に倒す。 E右上のSHORT ADJ. LINEノブを下に押し下げて合否判定(BAD/?/GOOD)する。 判定結果はGOOD(58〜100)の88を示しているので非常に良好という判定になる。(BADは42以下) GM測定型は軍用TV7でお馴染みのHICKOKが1950年代に生産したModel 533を、セカイモン経由でアメリカより調達したものである。
購入当初は計測時にメーターの揺れ(フラつき)症状が出ていたので、頑固親父さんに依頼してメンテナンスをお願いしている。 修理内容は、回路図上はメーター端子にコンデンサーが配置されていたが欠落していたので加え、計測スイッチのクリーニングを行なっている。 ○Model 533での測定方法 測定精度を判断するため、アメリカより画像のModel533で使用可能なCalibration tubeを調達している。 RCA製メタル管で5628μmhoの正確な計測値が示されている。 このTUBEを使用して計測の手順を説明する。 @左中段のPOWERスイッチをON。(右中段パイロットランプ点灯) A下段表示窓に右側のダイヤルを廻して6L6を選び出す。 B測定するTUBE TYPE 6L6→右側PILOTランプ左のFILAMENTダイヤル→6.3/中段横一列SELECTORS(7つのノブ) →左からJ・R・5・3・4・7・2/ 中段左BIASダイヤル→23/中段右ENGLISHダイヤル→88にそれぞれ合わせる。 PRESS(測定ボタン)P4/MUT.COND(基準値)5000 C合否判定する時は右下MICROMHOSレバーを左ENGLISHに合わせる。 D計測前に下段横一列ボタン右端のLINE.ADJを押して、メーターの針をボタン左のLINE ADJUSTノブを回して中央のLINE TESTに正確に合わせる。 EP4ボタンを押してスケール上の針の位置で判定する。GOOD(緑)範囲内を指せば合格、REPLACE(赤)なら交換、?は早めの交換必要。 FGM計測時には、右下MICROMHOSレバーを計測するTUBEの値から3000/6000/15000スケールの中から選択。6L6→6000スケール GP4ボタンを押してスケールの値を直読する。
GM計測値は5600を超えた付近を示しているので、Calibration tubeの実測値(5628)とほぼ合致している。 ※ENGLISHでの合否判定を行なっていないが、GM測定で基準値5000を超えているのでそれだけでも元気な状態と判断できる。 更にこのModel 533にはLIFE TESTという便利な機能(右下スイッチ)がある。
通常の合否判定やGM測定時には上NORMALで計測する。 真空管の寿命を判断する時、下LIFE TESTでのGM計測値がNORMALの計測値の75%以下なら寿命、といった仕組みである。 6L6ではGM基準値だけで廃棄値が分からなかったが、廃棄値がわかるTUBEではこの値を下回ると既に寿命と判定できる。 GM測定値が廃棄値〜基準値の間であれば使用可能、基準値を上回れば元気な状態と判断している。 新品でもGM基準値を下回るTUBEもあるが、合否判定などと組み合わせて状態を管理している。 この試験機は大変重たくて、計測するたびに肩が悲鳴を上げている。 3/28 ■ 桜の開花状況 あと数日で新年度を迎える。 毎年この時期になると、近隣の荒川沿い遊歩道に咲き乱れる桜並木を撮影することにしている。 今年は3月20日(金)「春分の日」の花見となったが、東京に比べるとこちらはやや開花が遅れているようだ。 樹によっては満開に近いものもあるが、その隣が蕾だったりするので、並木全体が一斉に満開となるような感じではない。 3月下旬になって、新型コロナウイルスの世界的な蔓延拡大を受け、各国で厳しい外出制限や渡航禁止処置が取られている。 そのため生活必需品への需要が集中して、スーパーのトイレット・ペーパーの棚などは依然として品不足が続いている。 経済活動の長期間停止を余儀なくされた中小企業の倒産増加が予測される中で、なんとあのTOYOTAがパンデミック長期化に備えて1兆円もの融資枠を銀行団に要請したのは驚きだった。 定年して外出機会が減少し引き篭もりに近い生活を送っている我が家では、幸いなことに感染などのリスクは少ないが、週3〜4日通っている地元スポーツクラブの施設利用が禁止となって、喜んで良いのかますますオーディオに接する機会が増えている。 3/30 ■ 無題・・・・・ 月末に実家より急報があり、深夜高速にて京都へ車を走らせる。 新年度初日から数日を掛けて一通りのお弔いを終え、一旦関東に舞い戻る。 新型コロナの急激な感染拡大により身動きが取れなくなるのを恐れ、初七日を待たずして早めに帰路につくことにしたのである。 西に位置する鴨川の桜並木は8分咲きだが高野川の方は満開に近く、火葬場に赴く車列に最後の彩りを添えていた。 4/4 ■ Chriskit MARKY Custom
今年度最大のプロジェクト「新規アンプ導入計画」の進捗状況は、真空管をチョイスしたCの後、工房の製作開始待ちが続いている。 老境に差し掛かると、この「待ち侘びる」=『その時や事態が来ることを非常に期待して時を過ごす』というのも楽しいものだ。 その工房から借り受けた6AR6シングルアンプは、その後もクラシック向きの美音を楽しませてくれている。 さて、Chriskit MarkYのプリアンプと組み合わせ、ROCK&POPS用GOODMANS AXIOM150MkII/3WAYで使用するようになったSV-91Bは、 理想的で素晴らしいマッチングを見せている。 Chriskitプリアンプは昨年、カップリング・コンデンサをWEST CAPに交換して電解コンデンサーも一部銀タンタルに換装している。 UESUGI TAP-31とコンビを組んでいた時、使用する真空管については試聴して決め込んだがそのままとなっていた。 新たなSV-91Bとの組み合わせでは馬力のある重低音に満足感も高く、搭載フォノイコを使用したOrtofon SPU-GEのタイトな音質は全く素晴らしいものだ。 そんな中、Mofiのフォノイコをライン段に繋いだEMPIREの音質にも特に不満はないが、Shureフォノイコ経由のShure M44-Gの音質に高域のトゲがあるのが唯一不満となっていた。 そんな訳でこの辺りの問題を解決できないかいつも通りの「球転がし」を仕掛け、音質の変化を試してみることにした。 これまではフォノ段V1〜V2にLUXの選別管MATSUSHITA12AX7G/バッファV3にはMullard ECC83Long・Plate/ライン段V4〜V5のECC82にはMullard CV4003(8136)/V6バッファにはTELEFUNKEN ECC83◇という組み合わせだった。 これをV1〜V2にMullard ECC83Long・P/バッファV3にTELEFUNKEN◇/V4〜V5のECC82にはMullard 4003(8136)/V6バッファにはMullard ECC83Long・Pを組み合わせて、Marantz7Rなどの過去の経験を生かした最強の組み合わせでチャレンジしてみることにした。 特に不満がある訳でも無かったフォノ段についても、MullardとTELEFUNKENの組み合わせに替えて試聴を開始する。 低域の量感と高域の解像度をあわせもったMullard/Long・Pに◇マークの組み合わせは、キレ味の増加が聞き辛さにつながるのではとも思う。 そんなことを考えながら試聴したところ、やはり圧倒的な押し出し感のあった低域の勢いが弱まり、迫力の落ちた上品な音に変わってしまった。 そこでバッファには元通りMullard/Long・Pを使い、V1〜V2には米RAYTHEON12AX7A/Black・Plateを持ってきたりもしたがこれも今一歩。 最終的にはV1〜V2をがむしゃらな勢いで闊達な音色のMITSUBISHIとして、バッファにもMullard/Long・Pという元通りの組み合わせに戻った。 次に少し違和感のあった問題のライン段である。 ボックスプレートのCV4003(8136)をそのまま残して、バッファのTELEFUNKEN◇マークをMullard/Long Pにチェンジする。 そうすることで切れ味抜群の◇マークから、高域をやや大人しく色付けさせる狙いがある。 その結果、違和感のあったShure M44-Gで思い通りの改善効果を得られ、EMPIREでもグルーブ感のある音色のまま高域の抜けが良くなった。 今回もこのような試行錯誤の結果、なんとか理想に近い音色で楽しめるようになったと感じている。 もちろんケーブルの変更などでも音質は大きく変わる。 しかしアンプに内蔵されている真空管の「球転がし」の方が、微妙な音質の変更が可能で交換作業に手間取らないのが良い。 好みの音に色付けを変えられる真空管アンプは素晴らしいと今更ながら感じている。 4/5 ■ 緊急オーディオ活動宣言 遅ればせな感じが否めないが、緊急事態宣言が発令されることとなった。 細かな対応は各自治体の判断に委ねられる模様だが、不要不急の外出自粛要請が強まりそうだ。 子供たちは体力を発散する場を失われストレスが溜まる心配が深まるが、オーディオを趣味とする年配のおじさんたちは引きこもりが全く苦にならない。 そんな訳で趣味の音楽鑑賞やオーディオ実験室の取り組みを細々強化することにしましょう。 本日のテーマは「ターンテーブルシート(マット)」である。 主にクラシックを楽しんでいるGoodmans AXIOM22MarkII/2WAYは、TAラボよりお借りしている6AR6シングルアンプを使って駆動している。 アナログ・システムにThorens TD126+MCH-IIを使う場合、これまでと違って低域方向へのバランスが少し希薄なため、高域がヒステリックに感じることがある。 このトーレンスのプレーヤーには付属していたマットは厚過ぎてカートリッジの高さ調整が難しく、ブチルゴム系シートOYAIDE/BR-12を組み合わせている。 このタングステン配合シートは明るく押し出しの強い音質特性が、どちらかといえばROCKやJAZZ向きではないかと考え、今回新しいシートを試してみることにした。 昨今、アクセサリー類にも高単価の波が押し寄せていて、1万を超えるような商品も多数販売されているが我が家ではそんなグッズに用はない。 選んだのは比較的安価なAETのシート(HPDM-2913M)で、「アナログリスナーに捧げる新世代ターンテーブルマット」の謳い文句が明記されている。 重みのあるゴム系のオヤイデと比較すると軍需用途に開発された新素材らしく、Nottinghamの純正マットと同じような非常に軽いマットだ。 Garrard401には5mm厚の純毛フェルトシートを使用しており、NottinghamにはパイオニアのJP-501ブチルゴムシートを使用している。 どちらかというとゴム系のシートは低域方向の量感が豊かになり重心が下がるが、フェルト系は抜けが良くなって濁り感がなくなる傾向がある。 その抜けの良さが効果的に働いて、高域に独自の繊細感を持っているMCH-IIの音色が柔らかくなれば有り難い訳だ。 さて、クラシック系ソースを使用して、早速比較試聴を実施することにしよう。 一聴して新たに購入したAET機能素材シートは、音場に立体感は出るが高域のサーフェスノイズが耳につく、やや密度の薄い音色で即NGとなってしまった。 やはり軽めの素材は無理かと早々に諦めて、ゴム系の手持ちのシートを片っ端から試してみることにした。 この中で比較的バランス良く聴こえたのが、厚めのThorens 純正マットと東京防音の安価なハネナイト素材のマットである。 そんな訳でThorens純正マットは厚過ぎてアームの高さが足りなくなるので、これまで使用する機会のなかった東京防音のマットを選ぶことにした。 OYAIDEのマットと比較して、優しく大人しいバランスの音色となる点が良かった。 軽量の機能素材のシートは、余程低域の量感があるシステムでないと音色バランスが取れないのではないだろうか。 4/7 ■ 久しぶりにMCカートリッジの話題
引きこもりオーディオ活動継続中。 こちらはNottingham INTERSPACE-ARMに装着しているLYRA Clavis.D.C(ダ・カーポ)である。 発売はSPU MEISTERと同時期の1995年。 STEREO SOUND「コンポーネント・オブ・ザ・イヤー'94〜'95」のカートリッジ部門で、SPU MEISTER と1位を分け合っている。 高精度インタースペース・アームを生かせるカートリッジとして中古で購入したが、購入後十分に活用しないまま不注意にもカンチレバーを根本から折ってしまった。
そのまま廃棄するのも忍びないので、たびたびお世話になっている富山の修理業者にお願いして外径接合により根本からカンチレバーを付け替えた。
オリジナルはセラロイカンチレバー+針先3×30μダイヤモンド無垢針のところ、アルミパイプカンチレバー+ダイヤモンド接合楕円針で修復している。 左画像のオリジナルと右画像の修復後を比べていただくと、カンチレバーが倍以上の太さになっているのがお分かりいただけると思う。 心臓部の強力なネオジウム磁石は同じで音質がどれほど変わったかはよく分からないでいるが、安価な修理代を考えれば文句は言えない。 さて、久しぶりにパワーアンプをSV-91Bに入れ替えたGoodmansSTAGE3/3WAYを使って愛聴盤に針を落としてみた。 MCトランスにはLangevin408Aを組み合わせている。 Pink Floyd 『P・U・L・S・E』
こちらは1995年にリリースされた新生ピンク・フロイドのライブ・アルバムである。
その後の『LIVE IN GDANSK』や『LIVE AT POMPEII』などライブの原型となるが、『狂気』の再現を含んだこちらのアルバムが最も完成度が高いと感じている。 巨大なドーム型ステージに降り注ぐライティング・シャワーが生み出す幻想的なイメージを、このカートリッジは立体的な構築力で余すことなく表現してくれる。 ワイドレンジで緻密な表現力が持ち味のカートリッジだが、それが決してきつさや煩さに繋がっていないところに好感を持っている。 4/10 ■ 真空管のソケット 引きこもりオーディオ活動継続中。 SV-91Bアンプの音質には満足しているが、以前一度交換した整流管用GTソケットの具合が今一歩しっくりこない。
しっくりこないと言うのは音質的な問題ではなく、真空管を挿入してもグラ付きが激しくてなんとなく頼りなく感じている点にあった。 前回交換したのはオリジナルと同様の中国製オクタルセラミックタイプだが、今回はもう少し品質の高いUSA製を選ぶことにする。 同時に300BのUX4ピンの方も、セラミック中国製からUSA製に交換したかったが、こちらは取り付けサイズが合わず断念した。 左上はAMERICAN PHENORIC(アンフェノール)UX4ピン、右上は40年ほど前にウエスタン狂のオーディオ仲間からもらった米NATIONALセラミック4ピンソケットだが、ともにサイズやピン配置の問題で取り付け不可となった。 GTソケットはいつもお世話になっているバンテックさんより調達した、信頼性の高い米EBY製のMIL規格オクタルソケットだ。 しかし、UX4ピンソケットについてはe-bayを含めネットを通じてかなり探してみたが、良質なものはほとんど枯渇しているようだ。
現在生産されている中国製はいつも通り財布に優しいのはありがたいが、工作精度が低い上にバラツキも多く、接触不良を起こすものがあるようだ。 GTソケットを良質なものに取り替えたところ、期待通りピンの食い付きも良くなって精神衛生上すこぶるよろしい。
今回、真空管アンプの重要なパーツであるソケットを従来の中国製から質の良い国産かUSA製に改良したかったが、またしても持ち越しとなった。 相変わらずハンダの技術に上達が認められず、配線材の被覆を焦がすなど全く汚い仕上がりで悲しい限りである。 4/13 ■ AXIOM22MkII+UESUGI TAP-31 いつまで続くのか、引きこもりオーディオ活動継続中。
久しぶりにEL-34TRIODE/NON-NFBプッシュプルアンプUESUGI TAP-31を持ち出し、GOODMANS AXIOM22MkII STAGE2に組み合わせて聴いてみる。
考えてみると昨年このアンプが我が家に来てから、組み合わせるのは初めてだ。 ここ数ヶ月に渡って6AR6シングルアンプで楽しんできたが、やはりプッシュプルのアンプで駆動すると音質傾向がかなり違ってくるのがすぐ分かる。 音場の見通しが良くなり、それぞれの音のエッジがハッキリして解像力と描写力がともに高まって聴こえる。 シングルでは詳細に描写するのではなく全体をシルキータッチで包み込む音質傾向が、コントラストのハッキリした分だけきめが荒くなったように聴こえてくる。 よく伸びた低域にも十分なパワーを感じさせる力強さがあり、この低域が土台となり全帯域に渡って説得力のある音質傾向を特徴付けている。 プッシュプルの中では比較的繊細で柔らかい美音系アンプに感じたが、シングルアンプと比較すると男性的に感じるほど音質傾向が異なっていた。 やはりクラシックオンリーで楽しむなら、シングルアンプの滑らかさを好ましく感じた。 4/14 ■ 接点クリーニング 至って真面目に、引きこもりオーディオ活動継続中。 本日のテーマは真空管アンプ愛好家なら必ず経験のある「ガサ、ゴソ」ノイズの解消にチャレンジである。 一時緩和したと思ったが、最近またChriskit MarkYプリアンプの発するこのノイズが気になり始めた。 これらのノイズはもっぱら真空管のピン(足)とソケットピンの酸化が引き起こす接触不良が原因となっている。 真空管のピンはクリーニングや磨きをかければ何とかなるが、劣化したソケットの方はこれまで新品に交換するしかないと考えていた。 Marantz7では同じ問題で悩まされた時にいつもの専門店に修理をお願いしたところ、真空管ソケットがカシメ留めされているために簡単に交換することができず、ピンを1本ごとに交換するしかなく苦労したとの話を伺った。 こちらのプリアンプは1970年代中頃の製品で、真空管はプリント基板に取り付けられた基板用のMT9ピンソケットを使用するタイプである。 これをシンチなどに取り替えれば問題は解決するはずだが、ソケット取り替え時にボケをかまして基板のパターン切れなどを起こすのが心配である。 ソケットの寿命は承知だが、何とか接触不良を解消できないものかとクリーニングを徹底してみることにした。 いつもは基本の綿棒と歯間ブラシに無水エタノールを使って処理しているが、今回は和光テクニカルのオイルとクリーナーを試してみることにする。 ゲイグなどの接点復活材は避けた方が良いとの話もあるが、こちらのアイテムはアルコールを主成分としているので悪影響はないかと思われる。
手順としては、真空管のピンやソケットピンをメタルクリーナーMC13を使って汚れを落とし、チタンオーディオオイルTi-102で保護する。
ソケットのクリーニングには歯間ブラシを使用していたが、今回使用した先の尖った工業用綿棒もなかなか優れものである。 今回この方法でクリーニングした結果、直近でクリーニングしたばかりだった真空管とソケットの両方とも、使用した綿棒には黒ずみが出ている。 クリーニング後の結果については、「ガサ、ゴソ」ノイズはかなり改善され気にならなくなったが、耳を澄ませば継続的なホワイトノイズも出ている。 たぶんこれはこのアンプ固有のもので、少し雑音が大きめなのは全体的なハンダの劣化などが影響しているものと考えられる。 今度症状が悪化した時は、やはりソケットの交換が必要なのかもしれない。 その時には頑張って、基板用ソケットの交換にチャレンジすることにしましょう。 4/15 ■ EMPIRE4000DIII 依然として引きこもりオーディオ活動を継続中。
今回は1970年代に生産され、その後半世紀近く経過した令和の時代に至っても愛用者の多い、EMPIREのMI型フラッグシップ機がテーマとなる。 現在アナログプレーヤーのEMPIRE598Nには、EMPIRE1000ZE/Xの純正組み合わせでポップスなどを中心に楽しませてもらっている。 この1970年代初頭の米国製プレーヤーには、内部配線をオーグラインと102SSCに換装したEMPIRE980アームを搭載しており、音質の方もオリジナルの古臭いナローレンジなものからリフレッシュされている。 以前その1000ZE/Xと音質を比較し、全く精彩を欠いていた4000DIII。 その後、そんなはずでは無いとテクニカのスタイラスクリーナーでクリーニングを行なっていたところ、針先が取れて無くなってしまった。 高倍率のルーペで針先を確認したところ、円柱形の金属台座は確認できるがスタイラスチップだけ綺麗に取れており、これは明らかに安価な接合針の構造だ。 このカートリッジは90年代に調達したもので、カタログには「4面でカットされたダイヤのムク針」とあるし高価な価格設定からダイヤモンド無垢針が妥当だが、そもそも販売価格が6〜7割引と2春価格に近いものだったことを思えば実際のところはハッキリしない。 とにかく今更オリジナルは諦めて、今回は右画像のJICO製の交換針(シバタ針)を調達することにした。 組み合わせるヘッドシェルは1000ZE/Xが山本音響工芸製HS-1A(アフリカ黒檀)で、4000DIIIの方はHS-3(ツゲ材)を使用している。 音質の好ましい1000ZE/Xにはドライカーボンのスペーサーがシェルの上に挟んであるが、4000DIIIの方は新たに調達したカーボンシートのサイズが少し大き過ぎるので、シャルとカートリッジの間に取り付けた。
さて、新しい交換針に付け替えてカーボンシートを使用した4000DIIIは、先日試聴したものとは全く別物の響きを見せている。 やはり針先が既に寿命だったようで、これまで嫌と言うほど聞かされてきた評価のとおり、フレッシュでワイドレンジなとても心地の良い音だ。 1000ZE/Xと比較しても帯域が上方に伸びた影響で重心がやや持ち上がり、低域のにじみが消えて情報量の多いクリアな音質となっている。 LPを2〜3枚と聴き進むに連れて下ろし立ての針先が馴染んできたのか、低域の量感が増して中高域にキレが出てきた。 「そうだ、そうだ、この音質だよ」と納得してポップスの愛聴盤に次々と針を落とし、ニンマリと悦に浸っている。 4/21
■ SHELTER 引きこもりオーディオ活動を継続中。
SHELTERは旧FRの技術者が1986年に立ち上げたアナログオーディオ専門メーカー。 今回導入したMODEL501Classicはアルミカンチレバーに丸針を装着したオーソドックスな構造のカートリッジで、販売開始は2007年頃のようだが現在でも品揃えに名を連ねているベーシック機種である。 丸針の名器として人気のあるDENON DL-103と比較されることが多いらしいが、現代版日本製カートリッジの音質を試してみたくなり購入することにした。 我が家にもDL-103/DL-103C1の2機種があるが、どうしても高域の潤い感や艶かしさを乏しく感じて、もっぱらOrtofonの楕円針を愛用している。 そのような音質傾向が針先の形状に影響されているとすれば、また同じ結果になるのかもしれない。 さて、組み合わせには今年度調達した現行Mofiのフォノイコに、昇圧トランスはDENONの時と同じくPeerless4722を使用することにした。 POPS&ROCKの愛聴盤を使用して慎重に針を落とすと、一聴して音数の多いワイドレンジな音質が感じ取れる。 音域的には中低域に重心を落としたバランスで、高域の質感がソフトなためか耳障りな音の一切しない心地良い音色が持ち味だ。 かといって高域が伸びていない訳ではなく、繊細感もありそれなりの情報量を持っている。 音場の左右の広がりと奥行きともに自然で、伸び伸びとした響きや余韻の美しさを感じることができ、DL-103とはかなり異質な音質に感じた。 製作に当たった技術者は鉛筆に例えると「2B」と喩えていたが、決して太いばかりの音質ではない好ましい響きを持っている。 4/23 ※追記・・・・・・・何気なく90年代のSTEREO SOUNDを眺めていたら、1995年/No.116にこのカートリッジに関する記事があった。 501TypeIIの試聴記で、「本機の姉妹機としてモデル501の針先を0.65milの丸針としたモデル501クラシックがある」との説明があった。 ■ SHELTER MODEL501 Classic 引きこもりオーディオ活動を継続中。
昨日から試聴開始した新しいMCカートリッジ。
誇張された意図的な色付けを全く感じさせない、自然な音色がとても気持ちが良い。 ライブ録音を聴いていても、その会場の中に溶け込んでいるような感覚を味合わせてくれるカートリッジだ。 低域の押し出しに迫力があるとか高域にキレや艶があるという感じはしないが、なぜかほのぼのとした心地よさを感じさせてくれる。 清流のような滑らかさを持ったカートリッジで、オーディオ機器の存在を忘れさせるような味わいを持っている。 このナチュラルな感覚はとても貴重で、常用のカートリッジとなって使用する頻度が多くなりそうだ。 4/24 ■ オーディオ工作室 「増設アームベース編」 引きこもりオーディオ活動を継続中。 本日は、Nottinghamのプレーヤーに増設している「自作アームベースの改良に取り組む」の巻。 左がSHELTERを使用しているGRACE G-565ロングアーム、右は現在お休み中のaudio-technica AT-1503IIである。 これまではベースの底4カ所に振動吸収ゴムを貼り付けていたが、自重がそれほどでも無いためグラ付きがあり頼りなかった。 オーディオ用スパイクに交換するのが最も効果的かと思われるが、オーディオ用と銘打っただけで値段が大きく跳ね上がる。 そこで身の回りの金具で利用できるものはないかと考えたところ、棚板を固定するスクリュー式ダボを思いついた。 これなら高さの調整も可能だし強度も十分で、なんといってもコストが大幅に安くて済む。 早速、いつもお世話になっている近所のホームセンターで購入したのが、ダボのオス、メスとそれを埋め込むときに使うダボ錐ドリルである。
真鍮タナダボ メス(10個) \150 真鍮タナダボ オス(10個) \150 六角軸ダボ錐(10mm) \848 小計 \1,148 外税 \114 合計 \1,262 お値段の方は上記の通り、圧倒的なコストパフォーマンスで、2台分(8個)使用しても2個余ります。
オーディオスパイクなら1台分(4個)でも5,000円以上するのは間違いありません。 さて、作成手順は@ゴム製クッションを取り除き Aドリルで穴を開け Bダボ(メス)を埋め込む 、で小一時間ほどで完成した。 少しネジの遊びが大きいので高さを調整するのにコツがいるが、グラ付くこともなく十分使用可能なレベルではないだろうか。 固形のグリスなどを流布すればちょうど良い塩梅になるのかもしれない。 如何なものでしょうか? 場所さえあればアームの増設はそれほど難しくはありません。 Ortofon/SME/FRなど人気のアームは高価なので、格安で高性能なアームを吟味して使用しております。 4/25 ※追記 高さ調整のためタボを緩めた時に発生するネジの遊びについては、万能グリースを塗り込んでほとんど気にならなくなった。 さらにTAOCのボード上にアームベースを設置すると簡単に横滑りするので、手持のオヤイデのスパイクベース(4個/約1,600円)をダボの下に置いたところ、ベースがその分高くなるがコストパフォーマンス最高の理想的なアームベースが完成した。
メデタシ メデタシ。 4/26
■ 不思議なSHELTER
引きこもりオーディオ活動。
継続してSHELTERのカートリッジで楽しんでいる。 昨年試聴したKOETSU BLACKに似てハーモニーがとても自然で美しく表現されるが、こちらの方がワイドレンジでさらに滑らかさがある。 この辺はボロンカンチレバー+ラインコンタクト針とアルミカンチレバー+丸針の違いによるものなのだろうか。 また、光悦の時には感じなかったが、なぜかこのカートリッジで音楽を楽しみたいと思わせる不思議な魅力を持ったカートリッジだ。 POPS&ROCKなどではよく弾む低域の量感も十分だし、クラシックでは弦楽器のナチュラルな繊細感がとても心地よく感じられる。 それほど高価でもなくネット上にも愛用者からの投稿はあまり見かけない機種だが、十数種あるカートリッジのなかで特にお気に入りのものとなった。 4/28
■ GRACEのトーンアーム 引きこもりオーディオ活動。 GRACE(品川無線)はオーディオ関連の開発企業で、1980年代のCDの登場によりオーディオからは撤退するが、現在も会社自体は存続している。 特にNHK放送技術研究所と共同開発したMM型カートリッジのF-8シリーズや、工作精度の高いトーンアームは1970年代からオーディオマニアの憧れの的だった。 我が家でもこのGRACEとaudio-technicaのアームを愛用しているが、製造後半世紀近く経っても高い品質と音質の良さを維持しているのは驚きである。 それらのアームは21世紀に入ってから中古購入したものだが、選んだ理由がOrtfonやSME、FRなどの人気商品と比べ手頃な調達価格にあるのは間違いない。 さて、画像はG-545(F)ショートアームとG-565(F)ロングアームである。 後発のモデル番号末尾にFがついている商品は、4チャンネルレコード再生向け低容量シールドケーブルが採用されている。 ジンバル・サポート方式を軸受に採用した美しいフォルムも、音質だけでなく所有したいと思わせる大きな要因となっている。 工作精度の高さはこのウエイトのネジ一つからも窺える。 ピッチが昔のインチネジのようで簡単に換えが効かないのが困り物だが、ネジ先の白いストッパーは単純に接着してあるわけでなく埋め込まれる構造となっている。
こちらは2種類の純正フォノケーブル。 左が通常のケーブルで、右がモデル番号末尾にFがついている商品に付属している低容量シールドケーブルだ。 低容量シールドケーブルの方にはPC-4の型番がある。 この「低容量」というものがよく理解できなくて色々調べたところ、1970年に開発された4chステレオ(CD-4)の音楽ソフトに対応した、高い周波数帯域を減衰させないフォノケーブルのことだった。 さらに当時のようなMMカートリッジの全盛時には、カートリッジごとの負荷容量に環境を整えないと、高域が強くなったりすることがあったとのことだ。 MCカートリッジでは特に気にする必要はないらしいが、最近使用する機会の増えたSHUREやEMPIREなどの使用時には注意が必要だということになる。 SHELTERのカートリッジ購入後は、MM/MI/VL型などの機種はEMPIRE598で使用するようになった。 GRACEのアームではもっぱら軽針圧MCカートリッジを使用しているので低容量シールドケーブルの必要性はないはずだが、一度音質の比較をしてみることにした。 カートリッジには最近お気に入りのSHELTERを使用することにする。 まず、純正2種類のケーブル比較では、やはり後発の低容量シールドケーブルの方が若干レンジが広く、ワンランク上の印象を持つが基本的には同傾向の音色だ。 どちらも半世紀前の古い製品でどのような線材を使用しているのかは明らかではないが、OFC(無酸素銅)などの導体はすでに採用されていたのだろうか? そんな訳で今回、オヤイデフォノケーブル自作セットにカルダスのM-DINプラグを使用して、新しいケーブルへの交換を思いついた。 (GRACEのフォノプラグの差し込みプラグは画像の通り、現在主流のメスではなくオスタイプなので、自作するしか新しくする方法はない。) このオヤイデのセットで使用しているケーブルは102SSCの1芯シールド線で、この導体はEMPIRE980の内部配線材としても使用している。 流石に半世紀の間にオーディオ用として使用される導体も、進化を遂げているのは間違いないことが交換してすぐに感じ取れる。 不純物だらけの古いWE銅線をいまだにオーディオマニアが好んで使用している例はあるが、音楽性はともかく明らかに音数が増えクリアで力強い音質に変わった。 エンジンの馬力がアップしてスピードが時速から音速に変わり、シワだらけだったヨボヨボの老人がはち切れんばかりの肉体を持った若者に変身したイメージだ。 値段は安価なのでもう一本作り、Ortofon MC30シリーズを使用しているお隣のGRACE G-565Fも新しいケーブルに付け替えることを考えている。 4/30
■ オーディオ工作室 「フォノケーブル編」
引きこもりオーディオ活動延長戦。 今日のテーマはMC型以外のカートリッジで使用することにした、EMPIRE598用フォノケーブルの作成である。 以前に何度か投稿させていただいているが、この1970年代のアメリカ製プレーヤーはアームをEMPIRE980に交換しており、アームの内部配線をプレーヤーキャビネットの後部ターミナルまで伸ばしてそこからRCAケーブルで配線できるように改造している。 これまではプレーヤーからSHURE M64フォノイコまでの配線はFUJIKURA RG-174/U(線間容量101pF/m)を使い、そこからプリアンプへはBELDEN8412(線間容量108.3pF/m)を使用していた。 MM型などのカートリッジではそれぞれの負荷容量に環境を整えないと高域が強調されるとのことだったので、フォノケーブルを線間容量の異なるCANARE2芯シールドケーブル(線間容量73pF/m)に交換してみることにした。 負荷容量に適応させるといっても、その範囲がカートリッジからフォノイコまでの全ての配線(リード線〜アーム内部配線〜フォノケーブル)と、フォノイコまで含まれるというから話がややこしい。 一般的なMM型カートリッジの推奨負荷容量は100〜200pFを指定しているらしいが、このカナレのケーブルは長さを考慮しても100pFほどである。 ちなみに先日製作したGRACEのフォノケーブル(102SSC 3398-SY)は、線間容量280pF/mである。 これがリード線やフォノイコまで含まれると一体どれぐらいの負荷容量になるのかは想像もつかないが、結局合わせてみるしかないとの結論に至った。 そんな訳で秋葉原の千石電商から部品を配送で取り寄せ製作を開始する。 今回選んだケーブルはThorensにも使用しているカナレの2芯ケーブルで、プラグは前回のGRACEと同様にスイッチクラフトの金メッキプラグを使用する。
左はプレーヤーとフォノイコを接続しているFUJIKURAの(MIL規格同軸)RCAケーブルで、右が今回製作したCANARE RCAケーブルである。
方向性は皮膜にプリントされている文字に合わせている。 一時間ほどで完成しEMPIRE1000ZE/X(静電容量100pF)で試聴すると、 ベルデンとは線間容量にもそれほど大きな差がないためか音質も大きな違いはないように聴こえるが、交換後の方が低域のにじみが消え見通しが良くなった。 しばらく聴いていると、ベルデン特有の滲み(よく言えば厚み)が消えた分、音場がすっきりしてそれぞれの楽器の分離が良くなったように感じている。 負荷容量の高いSHURE M44(450pF)ではまだ試していないが、問題が無ければこのまま使って行こうと考えている。 5/10
■ 6AR6シングルアンプの試聴C 引きこもりオーディオ活動延長戦 依然としてクラシックを聴くときは、チューブ オーディオ ラボ さんからお借りしているシングルアンプを使っている。 整流管には英STC/CV717/5R4GYを使用していたが、最近になって高域の質感が滑らかで音色に温もりのあるGZ32/CV593に変更している。 一昨年トランスの寿命によりQUADIIの使用を諦めたときに整流管のMULLARD GZ32/CV593の大半を処分したが、エッチングコードが無く出所が分からない2本が手元に残っており、その内の1本を試してみたところなかなかの音色だった。 ブラウンベースにG.P.O.(General Post Office)の印字があり、構造からMULLARDブラックバーン工場製と思われるが、管壁のコードが消えてしまっている。 STC/CV717/5R4GYでは高域が少し平面的な音色となっていたが、ゆったりとした奥行きを感じさせてくれる鳴り方はまさしくMULLARDの響きそのものだ。 最近は老化のため聴力の衰えもどんどん進んでいるようで、日によってはカートリッジを変えてもあまり音質の差を感じなくなってきた。 若い頃には高域の鋭い響きによって頭が痛くなることがしばしばあったが、幸か不幸か最近はかなり長時間聴き続けないとこの違和感を感じなくなっている。 外出自主規制と同時に体育館の使用ができなくなり、4月初旬よりスポーツで体を酷使する機会がめっきり少なくなっている。 還暦後に再開したスポーツでの肉体疲労はかなり改善されたが、腕を振った時のボキボキ音と肩の痛みだけは整骨院に通ってもなかなか抜けなかった。 最近になって肩甲下筋のマッサージ動画がYouTubeに投稿されているのを発見し、試してみたところ長期間苦しんでいた肩の痛みがやっと引いてきた。 ランニングやウォーキングだけは適度に実施しているが、6月からは体育館通いを再開できないものかと考えている。 5/13
■ 新たに調達した真空管 ホームタウンの埼玉県は依然として外出自粛が解除されないので、引きこもりオーディオ活動延長戦が続いている。 真空管アンプとアナログレコードで音楽を楽しんでいるオーディオ愛好家は、真空管やカートリッジを替えることにより色々な音色を楽しむことができる。 そんな訳で真空管全盛期に各国で生産された音質の優れたTUBEを探し出し、その音色を楽しむことが真空管愛好家の楽しみとなっている。 今回調達したBRIMAR(STC)6060/CV4024(12AT7WA)は、1950年代後半から60年代初頭にかけて製造された黄色Tデカールの貼られた希少球だ。 昨年にUESUGI TAP-31を導入するまではECC81/12AT7の使用経験はなく、純正のPHILIPS ECGに加えてTELEFUNKEN ECC81◇を購入してあった。 そのTELEFUNKEN ECC81◇1本にノイズが混じるようになったので手頃なTUBEがないか物色していたが、同じダイヤマークの出物もあまり見かけないので、こちらのBRIMAR「Yellow T」に狙いを定めヤフオクにて落札した。 BRIMARは通常の1970年代に製造されたECC83を複数個所有しているが、特にこれと言ったクセのないナチュラルな響きが持ち味のTUBEだと感じていた。 それらと比較するとこの古い「Yellow T」は英国パートリッジのトランスが聴かせてくれた高域の美しい硬質感と、グッと締まった迫力ある低域を楽しませてくれる。 Telefunken801Sなどと並び称されると言うのも納得させられる音質ではないだろうか。 Chriskitプリアンプのライン段に使用しているMullard M8136/CV4003を少し増幅率の高いこちらのTUBEに変えると、低域がタイトに締まり高域の美しい輝きが俄然生きてくる。 想像以上にBRIMARの「Yellow T」は良いTUBEだ。 お次は手持ちの在庫が意外と少ない独SIEMENSブランドのE82CC/12AU7Aである。
SIEMENSは僅かにTriple-Mica E83CCをフォノイコEAR-834Pの初段で使用しているのみで、我が家では英Mullardの影に隠れたBRIMAR同様、♢マークの後塵を拝するブランド扱いとなっている。 この他に我が家のストックを見てみると、1980年代に調達した珍しいE82CCのシングルフランジのTUBEしかなかった。 Chriskitプリアンプで音質を確認してみたが、Mullard M8136/CV4003と相通ずる、ゆったり感のある滑らかで肌触りの優しい音質だった。 Chriskit MarkY CustomはパワーアンプSV-91Bと組み合わせ、GOODMANS 3WAYを使用して主にPOPS&ROCKを楽しんでいる。 今回の試聴でゆとりある優しい音質のMullard/SIEMENSより、エッジがはっきりしてゴリゴリ感のあるBRIMAR「Yellow T」を組み合わせることにした。 5/20
■ 新たに調達した真空管 Part2 他県への移動自粛が徐々に緩和される中、新型コロナ感染患者が再び増加し始めている北九州市などの状況が心配だ。 さて、6月最初の投稿はまたしても真空管の話題。 これまでECC81(12AT7)系TUBEの使用経験はなかったが、昨年導入したUESUGI TAP-31に使われているので徐々にストックを増やしている。 プリアンプChriskit MarkYのライン段に使用されているTUBEをECC82からBRIMAR ECC81に変更すると、響きに実在感が出てきたのでこちらもECC81系に変更。 UESUGI TAP-31に付属しているオリジナル12AT7WCはPHILIPS ECG(シルバニア製)だったが、まず最初に最高峰のTELEFUNKEN ◇マークを調達した。 しかしこのTUBEの1本にノイズが出始めたので、新たにBRIMARの「Yellow T」を調達してこれをプリアンプに転用したところ好結果を得たというわけだ。 今回調達したのはBRIMAR/CV4024で、BRIMARの「Yellow T」より後に製造されたもののようだが、程度も良さそうだったので購入することにした。 購入後、早速HICKOK真空管試験機にて良否判定とGM測定を行い、さらに実機に装着してノイズなどの音質確認を実施している。 6/2
■ MM型カートリッジのその後 先日、MM型カートリッジに合わせて線間容量の低いシールド線を使い、EMPIRE598用に新たなフォノケーブルを自作した。
その後、MI型EMPIREやVL型DECCA、MM型SHURE M44の各種カートリッジで試聴を続けている。 BELDEN8412を使用していた時にはEMPIREのカートリッジが最もバランス良く聴こえたが、交換後に聴くとなぜか腰高のバランスとなってしまった。 それとは逆にSHURE M44シリーズの音質が最もバランス良く響くようになった。 現在我が家にはSHURE M44のボディは3種類、前期カモメマークのM44GとM44E、後期型番のみボディのM44Gがある。 針は6種類、後期ガード付きのオリジナルN44GとN44-7、JICO製N44-7とN44G、KYOWA製N55E、スイスPfanstiehl製N44Eがある。 色々組み合わせてみて最も音質の良かったのが、画像のカモメマークM44Gに後期ガード付きオリジナルN44Gを組み合わせたものだった。 N44E/N55Eの楕円針ではキレが乏しく音質傾向が一挙に大人しくなり、逆にN44-7では少し乾いた荒っぽい暴れ気味の音質となる。 カモメマークM44Gに後期ガード付きオリジナルN44Gの組み合わせでは、このカートリッジの持ち味であるキレやパンチに響きの良さが加わって、これまで聴いた中ではMM型として最高の音質を楽しむことができた。 特にROCK系の曲種には相性がバッチリで、十倍以上の価格のMC型をも凌ぐ音質を味わうことができる。 今後このEMPIRE598ではこの組み合わせがリファレンスとなりそうだ。 6/2 Part2
■ 塗装の不思議 MM専用で使用しているEMPIRE598(980アーム搭載型)プレーヤー。 SHURE M44の音質が気に入って、最近使用する機会がめっきり増えている。 今年の冬に徹底的にレストアして、再塗装を行った件はすでに投稿させていただいている。 その時に投稿した画像とアウタープラッターの色が変わっているのをお気付きいただけるであろうか? 実はシャーシやアウタープラッター用に選んだ塗料はオリジナルと同色のシャンパン・ゴールド塗料が見つからなかったので、アサヒペン「メッキ調スプレー/シルバー」を使用して、さらに保護の意味もありクリア塗装で上塗りしている。 最近、何気なしにゴムシートを取り外してみたところ、アウタープラッターの塗料が溶けてネバネバとシートに貼り付いてしまっていた。 塗装の乾燥が十分でないまま使ったのが原因かとも考え、今頃になって使用した塗料の説明書きを注意深く読んだところ、 ※金属表面に金属粉を浮かして金属光沢を出すようにしていますので、乾燥後も手や衣服などが触れると金属粉が付着し金造光沢が損なわれます。 ※外観が変わったりハガレを生じたりするので、クリアなど他の塗料を上塗りしないでください。 と記入されているが、色だけを考えていてこの注意書きなどは全く気にしていなかった。 アウタープラッターは手に触れると説明の通りシルバーの粉が手に付着するが、シャーシ本体は触れても全然問題もなく表面はクリア塗装でしっかりガードされている。
しかしこのプレーヤーに付属する上質なゴムマットは、製造後半世紀が経過しているにも関わらず未だに柔らかく光沢もあり、レコードを載せても吸い付くようである。
今度は念を入れてプライマーで下地処理を行い、プラモデル用タミヤ/ゴールドスプレーで塗装することにした。 さらにタミヤ/クリアカラーで表面保護したが、今回もしばらくすると一部塗料が溶けたようにベトついて、左画像のように所々ゴムマットに塗装が剥がれてしまっている。 しっかり乾燥させたつもりだがまだ十分に乾いていないのか、またこのゴムマットを載せると塗料との相性が悪くて溶け出してしまうのか全くわからない。 仕方なく薄い紙をゴムマットと同じ大きさに切って、右画像のようにゴムマットの下に挟んで使うことにした。 こうすればゴムマットが塗装面に接触することもなく、溶けることもないと考えたがいかがなもんでしょうか? 6/4
■ 続・塗装の不思議 なぜ本体シャーシの塗装は問題ないのにプラッターの塗装は溶けるのだろう?
この不思議な問題を解決するため、塗装についてあれこれ調べてみた。 そうしたところ、ターンテーブルマットの柔軟性を保つためにゴムに添加されている可塑剤が影響しているのではということが分かった。 この可塑剤が塗装面に付くと塗料が溶ける性質があるとのことで、だからシャーシ本体の塗装には問題なかったとの結論に達した。 そんな訳でこの可塑剤の影響を受けないクリアスプレーはないかとあれこれ探してみたところ、車用のCRCシャーシーコートクリアが使えそう。 早速、この水性コート材を表面に流布して使うことにした。 再び可塑剤の影響を受けると最初から塗装をやり直さなくなるので、プラッターとマットの間には紙を挟むことにした。 6/7
■ 2台のGoodmans
有難いことにこの稚拙なHPの愛読者が少なからずいらっしゃることを、最近いろいろな場面で知るようになった。 掲示板やオークションを通じてなどで、記入した本人が忘れているのに以前の投稿にありましたとお申し出いただくと、苦労して作成した甲斐があるというものだ。 現在愛用しているGoodmansのスピーカー2台体制となってから早くも1年が経過したが、それぞれ全く不満を感じさせない音質を楽しませてくれている。
このAXIOM22MARKII(2WAY)とAXIOM150MARKII(3WAY)2機種を曲種別に使うようになってから、聴覚の衰えの影響もあるかもしれないがあまり音質に際立った違和感を覚えなくなった。 カートリッジや真空管の組み合わせによって音質の一部に不満を感じることはあるが、昔のように聴いているのが苦痛ということがほとんどない。 昔所有していたTANNOYのコーネッタ Monitor-Red IIILZは、エンクロージャーがもう少し大型で横幅が30cmほど広かった。 その当時のことを振り返ってみると気難しいユニットを手懐けるのに苦労して、単純に音楽に浸れたのはわずかな時間だったような気がする。 せっかく2台で楽しむならもっと音質の異なる、違ったメーカーのスピーカーを使い分けた方がいろいろな曲種を楽しめるのではと当然思う。 特にロックやポップスならアメリカ系の歯切れの良い音質を持つJBL/ALTECなどが楽しめるような気もしたが、実際に試してみると頭が痛くなってくるのだ。 たぶん音楽を聴く感性の根本的な部分でGoodmansが醸し出すこの英国の音質が肌に合っているらしく、低域が出る出ないや高域に繊細感があるやキレがあるなど曲種によって音色に若干の味付けを加えて使用している。 同じメーカーの2機種のSPにどれほどの音質差があるかというと、基本的な音質の色目や風合いは同質だがAXIOM22の2WAYでは高域が瑞々しくかつ甘く響く。 AXIOM150MARKIIと比較して低域のゆとりと高域の艶やかさが両立しているユニットだから、2WAYでの使用でその長所を最大限味わえると考えている。 一方、AXIOM150MARKIIの3WAYではスコーカーが加わることにより、クッキリとした持ち味に音の厚みが増し、奥行きやスケール感をメリットとして感じられる。 ツイーターはともに純正TREBAXを使用しているが、異なる真空管やカートリッジを組み合わせることにより、高域に繊細感を持った響きの2WAYと低域に馬力と高域にキレのある3WAYと言った具合に音色に変化を付けている。 主に2WAYではクラシックやヴォーカルものを、3WAYではPOPSやROCKなどの曲種を楽しんでいる。 しばらくはこの体制が続くものと考えている。 6/10
■ オーディオ工作室 「MCトランス・ケーシング編」
本日は、WE-9450インプット・トランスのリケーシングを実施する。 これまでは某オーディオ専門店が製作したものをそのまま使用していたが、ベースの真鍮プレートがすぐ酸化して黒ずむのが難点だった。 MCトランスのケーシングはすでに5台目となり、今回もいつもの通りタカチのアルミケースを利用して製作することにする。 画像はすでにケースにドリルで穴を開け、プライマーで下地処理を施した状態。 内部配線材にはWE単線を使用して、悩みどころのRCAジャックはアムトランスさんから調達することにした。 当初はオヤイデさんの少し値段の高いロジウムメッキ仕上げを使用するつもりでいたが、どうしてもプラグの食いつきが甘いため方針変更する。 スイッチクラフトのジャックが一番安心して使えるが、別途絶縁ワッシャーを使用すると長さが足りなくなる恨みがある。
さて、ケースに直接塗装しても問題はないが、EMPIREの塗装で使用したプライマーがあるので念のために下地処理を施して塗装に入る。
今回もサビたまんまで塗れるカラースプレーを使い、仕上げにクリアスプレーでガッチリ塗装をガードすることにしよう。 内部配線についてもこれまで気に留めていなかったワイアリングの美しくさを考慮して、直線的な配線を心掛けている。
こんな感じに仕上がりましたが、いかがなもんでしょうか?
流石に工作室も回を重ねるごとにレベルが上がってきたようで、塗装やハンダなどの見栄えもよく我ながらなかなかの出来と満足している。 未使用のウエスタン22GA単線(錫メッキ・ゴム・紙巻)を使用したためか、音質が少しタイト気味になったような気がする。 こんな短い内部配線材についてもエージングが必要と言うことか? 前回製作したJs No6600との揃い踏みで、奥にはLangevin 408Aが収まっております。 6/17
■ 丸針の考察
ふっと考えてみると、最近になって丸針を使用する頻度がめっきり増えてきている。 以前はOrtofonやMCH-IIなどのラインコンタクト(楕円)針ばかり使用していたが、最近気に入っているSHELTERやSHUREは共に丸針だ。 昔からカートリッジの名機といえばOrtofon SPUとDENON DL-103がお決まりだったが、 小生の好みはDENONの丸針ではなくSPUの楕円針だった。 本日は平成のSHELTERと昭和のDENON DL-103丸針の音質の違いについて、試聴しながら比較してみることにする。 ステップアップトランスとフォノイコは共通でALTEC/Peerless 4722、MoFi Electronics Studio Phono2を使用する。 これまでDL-103については、90年代に購入した103C1や最近やっと購入したオリジナルタイプとも、あまり常用とする機会がなかった。 オルトフォンと比較すると全体的にタイトな印象で、響きが少ないところに大きな違いがあると感じていた。 低域の質感がオルトフォンでは「ボン、ボン」と鳴るところ、DENONでは「ガン、ガン」と響きの乏しい硬めの音色となり、高域の方もオルトフォンでは艶感や余韻を感じられるが、DENONでは直線的でやや押し出しの強いメタリックなものとなっているところが特徴だ。 派生モデルのC1の方は、上下とも帯域が拡大して音質にナチュラル感が出てややソフトな印象を持つが基本的な音質は同色である。 そんな持ち味がJazzなどの曲種では功を奏して愛好家を増やしているものと想像するが、クラシック愛好家にはこの直線的な高域は味気なく感じるだろう。 丸針についてそんな風に感じていたが、最近購入したSHELTER MODEL501Classicの響きがあまりにもナチュラルですっかり気に入ったのである。 再度そのSHELTERと同じアルミカンチレバー+丸針を採用したDENONを比べてみると、かなり音質傾向が異なるのを感じる。 DENONはこれまでの記憶とあまり異なった響きもなく、相変わらず硬い低域と直線的な高域が持ち味と感じられた。 SHELTERの方は響きの豊かさが美点となっており、さらに音の重なり具合「ハーモニー」がとても美しく表現されるカートリッジだ。 低域の質感も少しくぐもった乾いた感じはあるものの、「ボン、ボン」と楕円針に近い響き方をしている。 マグネットはSHELTERがネオジウムを使用しており、DENONはアルニコマグネットとのことなのだがこの辺りに違いがあるのだろうか? そんな訳で、DENON DL-103の出番はこれまで通りあまり期待できない結果となってしまった。 DENON DL-103の丸針について色々調べていたところ、NHKと協同で放送用ステレオ・ピックアップの開発を実施するにあたり、その設計方針と構造の概略の中に 「ステレオ・レコードやモノーラル・レコードを共通のカートリッジで再生できること」との項目が含まれており、この内容を満たすために「針先球面半径を0.65ミルとした」との記事があった。 そんな訳で同じ針先構造を持つSHELTERについても同様の扱いが可能だろうから、モノラル盤にはこれらの丸針を使えば良いと考えている。 6/19
■ 新規アンプ導入計画(5) 「製作開始編」 「待てば海路の日和あり」 「果報は寝て待て」 「石の上にも三年」 「急いては事を仕損じる」 「急がば回れ」 これぐらいでどうでしょう ?
企画立案後4ヶ月強を経て、遂にラボのK村さんから「手巻きトランスが納品されたので製作を開始します」との連絡が入った。 思い起こせばこの4ヶ月の間に、新型コロナウィルスの世界的な蔓延や実父の死去など、未曾有な出来事が起こっている。 さて、いよいよ待ちに待った新規アンプの塗装色や出力インピーダンスなど、電話にて諸々打ち合わせを行って希望内容を伝えた。 出力は8〜9Wになるとのことだったが、GOODMANSには十分な出力である。 お借りしている6AR6シングルアンプは、相変わらずなかなかの美音をたのしませてくれているが、このアンプを上廻る音質を期待するのは贅沢だろうか? 今後のために具体的な回路内容など、しっかりお伺いしておく必要がありそうだ。 完成を待ち詫びる日々も、いよいよあと僅かとなる。 6/26
■ 新規フォノイコライザー
いよいよ新規アンプの製作は回路構成もほぼ決定し、図面作成が終わってCAD外注にまで進んでいる模様である。 アンプ工房のK村さんや真空管博士のMさんなどのご尽力により、当初の構想では英国直熱三極管PX4を使用したシングルアンプ企画だったものが、独テレフンケンの球も楽しめるコンパチアンプにパワーアップしている。 いよいよもって、完成が待ち遠しい。 さて、本日は新規に調達した古いSHELTERのフォノイコがテーマ。 使用するプレーヤーにアームを増設したことによりフォノイコが足りなくなり、今年初めにパラヴィッチーニが監修した安価な現行フォノイコを購入して使用していた。 その後、新たに導入した丸針カートリッジSHELTER MODEL501Classicの音質が気に入り、組み合わせるフォノイコも純正タイプに組み合わせを変更することにした。 このSHELTER MODEL216 CR型フォノイコは、1995年〜2005年ごろまでロングランで販売されていた人気機種である。 キングオブアナログのパラヴィ翁が監修したMoFi Electronics Studio Phono2は、古いMarantz7真空管プリアンプに組み合わせると原因不明の発振が起こるなど組み合わせに無理があったようだが、こちらのフォノイコはそのような古いヴィンテージ機種にも寛容で相性も悪くなさそうである。 音場に厚みがあり豊かな響きが持ち味で、真空管機種と組み合わせても全く違和感のないものである。 フォノイコの入れ替えとともに、最近めっきり出番の少なかったNottingham INTERSPACE-ARMのLYRA Clavis.D.Cを、Ortofon MC-30Sに入れ替えてみた。 Clavis.D.Cは流石に情報量も多く切れ味鋭い音質が魅力となっているが、音がストレート過ぎて情感が乏しく感じてしまう。 以前このアームにOrtofon MC-30SUPERIIを組み合わせたときは、痩せた彩の少ない音質で今一歩納得できないものだったが、後継機種のMC-30Sではゆったりとした奥行きと高域の切れ味がうまい具合に調和していて、なかなか良い塩梅で音楽を楽しませてくれそうだ。 やはりカートリッジはオルトフォンから抜け出せないでいる。 7/6 ※追記・・・・・古いSTEREO SOUND(1995年/No.116)にこのSHELTER 216とカートリッジ501TypeIIの試聴記についての掲載があり、その姉妹機としてモデル501Classicの紹介についても記入されていたので、同時期に販売されていた組み合わせであることが分かった。
■ 組み合わせあれこれ
またまた東京のコロナ感染者数が右肩上がりに増加しており、隣接する埼玉や千葉の感染者数も同様の傾向にある。 3密(ソーシャルディスタンス)で感染を防ぐのにも限界があり、早くワクチンの開発が着地しないと経済が立ち行かなくなるのではと心配している。 さて、こちらはロングランを続けているEAR-834Pフォノイコライザー。 発売当初はECC83の3本構成だったが、最近では中国製コピー商品に対抗して、あまり聞き馴染みの無い13D16双三極管へ仕様変更となっている。 基盤上には依然としてECC83のプリントがあるので、我が家では3本ともECC83ヴィンテージ管に変更して使用している。 これまではOrtofon MC30シリーズと組み合わせ、パラヴィッチーニがデザインした内蔵トロイダルトランス経由でクリスキットのプリに繋いでいた。 先日、Nottingham INTERSPACE-ARMをMC30シリーズに組み替え、LYRA Clavis.D.CをEARのフォノイコ経由に入れ替えた。 響きが乏しくタイトに締まったClavis.D.Cの音質を少し滑らかにしようと、このフォノイコのTUBEを交換して試してみる事にしたのである。 これまではV2〜V3にMullard Short-Plateを、初段のみSIEMENS Triple-Maicaを使用していたが、これらをコクの出るMullard CV4004に変更してみる。 さらにクリスキットのライン段はBRIMAR「Yellow T」ECC81を組み合わせていたが、少しケバが立ち過ぎるのでバッファーをあまり出番の無かったナチュラルなBRIMAR ECC83に変更することにした。 これらの真空管変更により、なんとか意図する音色方向に改善された模様。 SHELTERのフォノイコとカートリッジの組み合わせはMarantz#7に繋いでいるが、製作者の意図する低音の太さが顕著となってまさしく「2B的音色」となっている。 太い音質が特徴となているだけではなく、結構細かい情報を拾ってくるのがこのカートリッジの持ち味だ。 7/17
■ ORTOFON Erik Rohmann Signature 我が家では昔からOrtofonのSPUを愛用している。 その中で最も気に入っているのが1992年に1000個限定生産で発売されたSPU MEISTER GEで、磁気回路にはネオジウム・マグネットが採用されている。 その他にもオリジナルSPU-GEや復刻されたClassic GE、コイルに銀線を使用したリファインモデルのGOLD GEやネオジウム・マグネットのSYNERGYなどを使用して来たが、GOLDとSYNERGYは音色が気に入らずに放逐してしまった。 クラシックにはThorens MCH-IIの存在が見逃せないが、 MEISTERはあらゆる楽曲をオールマイティーに楽しませてくれる唯一のカートリッジだ。 またOrtofonのMC30シリーズを2機種(MC30SUPERII/MC30s)所有しているが、こちらは残念ながらヴォーカルなど限られた曲種での使用が常である。 さて、今回ご紹介するMC-ERはMEISTERと同時期の1991年に発売された500個限定生産モデルで、ネオジウムマグネットと発電コイルに7N銅線を使用し、ベリリウム製カンチレバーにファイン・ラインスタイラスの振動系が採用されている。 ボディーはMCシリーズと共有されていて磁気回路も1993年発売のMC30sと同等だが、音質の方はどちらかと言うと繊細な切れ味が持ち味のMCシリーズと違って、SPUのような低い重心と安定感を感じさせる音質バランスに仕上がっている。
MC30シリーズではどうしても腰の座った低域を求めるのは難しく、女性的で少し浮ついた音質が表現力の欠落につながっているように感じている。 その点こちらのMC-ERはSPU譲りの中低域の密度の濃さを持ち合わせており、POPS&ROCKを幅広く楽しませてくれるカートリッジだ。 MCトランスにはLangevin408Aを組み合わせているが、SPUと同じく絶妙の相性を見せている。 1998年発売で新技術を盛り込んだJubilieやその磁気回路と振動系を継承しているKontrapunktなども使ってみたかったが、2005年に発売された新世代のSYNERGYが期待外れだったので原点回帰する構図となった訳である。 これでMC30シリーズの方もお役御免となるかもしれないなあ。 7/28
■ 新規アンプ導入計画(6) 「シャーシ完成編」 例年より長かった梅雨も明け、今度は打って変わって記録的な猛暑の夏を迎えている。
連日発表される新型コロナウイルスの感染者数は下降線を辿る気配もなく、東京や大阪などの大都市だけでなく地方都市での拡大傾向が恐ろしい。 さて、待ちに待ったアンプ製作の方も佳境を迎えている。 http://shinkuukan2.web.fc2.com/2020/11/2020_PX4.html 一度に3台ものアンプ製作に入り、ラボのK村さんもバテ気味なのではないだろうか。 塗装されていないので全体的な雰囲気が掴めないが、ケース左奥にはTSM Productsの手巻きアウトプット・トランスが配置され、左側縦に配置された初段管と中央の出力管の間にあるのが、真空管博士の説明にあった手巻き大型チョーク・トランスではないだろうか? シャーシのほぼ中心にはバイアス切り替えスイッチがあり、これでRE604系のTUBEも使える事になった構図である。 ラボのK村さんから、「Rチャンネルのボリューム位置がトランスケースに近いので操作がしにくいです。アンプのボリュームは左右のレベル合わせに使って頂き、プリアンプで音量調整を行うようにして下さい。」とのご説明があったが、見たところでは特に問題はなさそうだ。 回路をご検討いただいた真空管博士の説明によると、このアンプの回路はクラングフィルムの回路も参考にしながら、無色に近く、ほんのりと薄化粧をしたような音質を目指したとのことだった。
美音系のPX4とスピード系のRS289に加えてRE604系の古典球が揃えられれば、Goodmansのシステムは1系統で済むかもしれません。 続く・・・・・・・ 8/10
■ 新規アンプ導入計画(7) 「出力管の点火方式」 経験のない遠い昔の戦争を彷彿とさせるような未曾有のコロナ禍で、連日発表される感染者や死亡者の夥しい人数に感覚が麻痺して来ている。
アメリカを中心とした中共制裁の行方とともに、一般報道では伝えられない中共内部の権力闘争にも注意が必要だ。 そんな世界情勢に目を奪われがちだが、猛暑に伴う熱中症死亡者数にも驚きが隠せない日々が続いている。 さて、ソーシャルディスタンスの影響により(笑)長らく待ち焦がれていたアンプ製作の順番が訪れ、益々ラボの新着・更新報告が楽しみとなっている。 昨日、ラボのK村さんからご連絡があった時に、素人ながら回路についていくつか質問させていただいた。 シャーシにハムバランサーが装備されているのを発見して出力管の点火方式をお伺いしたところ、直流点火方式を採用しているとのことだった。 この音質に深く関わるフィラメントの点火方式については諸説あるらしく、我が家で愛用しているSV-91BについてもY下先輩によって、ウエスタンアンプと同様の交流点火方式への改造が試みられているが、結局のところ前段のみ交流点火に収まり出力管についてはハムノイズの少ない直流点火に戻されている。 ラボのK村さんによると、確かに大規模映画館用のスピーカーを駆動するようなウエスタンの300Bアンプは全て交流点火方式を採用されており、SPと観客との距離が広ければ問題はないが、SPと近距離で対面する家庭用オーディオではどうしてもハムノイズの影響を受ける弊害があるとのことだった。 交流点火方式を採用した300Bアンプの音質は聴いた経験はないが、現在愛用しているこのSV-91Bアンプの音質には満足している。 点火方式により一番影響を受けると思われる高域には、美音とまでは行かないまでも適度なキレと繊細感があり、実在感のある中域とダンピングの効いた低域が大変好ましいバランスに仕上がっている。 新規アンプについては、真空管博士に考案いただいたプレートチョーク結合回路と、量販品では得られないK村さんの製作ノウハウによって、長らく続けて来たオーディオ道楽の最後のアンプになることを期待している。 特にこれまで経験のないコンパチアンプということで、数々の名だたる出力管が使えることは大きなメリットとなるだろう。 アンプ完成時には自前で準備したMarconi PX4のST管と、ラボさんから供給いただくTelefunken RS289の音質を楽しみながら、できればPX4系ナス管とROE604系のTUBEもコレクションに加えたいと考えている。 8/24 ■ 新規アンプ導入計画(8) 「塗装完了編」 塗装が完了したことで、全体の雰囲気が見えて来た。
今回の塗装はグリーン系のハンマートーンで実施されており、高級感のある好ましい色だと感じている。 要となるアウトプット/プレートチョーク・トランスはアモルファス・コアの特注サイズのものを使用しているとのこと。 続く・・・・・・・。 8/25 ■ 新規アンプ導入計画(9) 「パーツ取り付け編」
外装部品の取り付けが完了して全容が見えてきた。
入力端子などそれぞれパーツの質感も高く、堂々たる雰囲気を醸し出しているが、右後部電源トランス関連のブラック色が上手くアクセントになれば良いが・・・・・。 続く・・・・・・。 8/27
■ 新規アンプ導入計画(10) 「配線開始編」
中央2個のバランサー右側に出力管の直流点火回路を設置。 ゼネラルの電源トランス、出力管ソケットの上部にDALEのメタルクラッド抵抗が見える。 続く・・・・・・。 8/30
■ 激動の令和2年 未曾有の危機に直面している2020年(令和2年)も残すところ4ヶ月となるが、8月中旬頃からようやくコロナ新規感染者の減少が明らかなものとなってきた。
しかしウィズコロナの時代に入って人々の生活様式が一変し、ワクチン開発後のアフターコロナの時代には、肌をつき合わせた人と人との直接的な関わりからネットワークを通じた間接的な関わりへ大きく移行していくのではないだろうか。 20年ほど前から始めたこのホームページもコロナ渦のひきこもり影響を受けてか、3月頃から急激な訪問者数の伸びが顕著となって、7月にピークを迎えている。 特に直近の2〜3ヶ月はウクライナやロシアの複数の外部ページからのリンクが増加しており、原因が特定できずに不思議に思っている。 さて、今年2020年のオーディオの目玉は、なんといっても「新規アンプ導入計画」である。 2月の企画立案編から約7ヶ月が経過し、ようやく今月9月に着地完成の見通しである。 このコンパチアンプが導入されることにより、我が家のオーディオがどのように変わっていくのかが楽しみだ。 9/1
■ 新規アンプ導入計画(11) 「配線途中編」 各トランスや基本パーツなどの配線が完了。 SPRAGUEの電解コンデンサーが取り付けられている。 RE604系使用時のバイアス切り替えスイッチ配線へと続く・・・・・・。 9/3 ■ 新規アンプ導入計画(12) 「バイアス切り替え配線編」
出力管バイアス切り替え配線完了。 カップリングにWEST CAP、バイパスコンデンサーにはROEが採用されている。 完成まであと少し。 続く・・・・・・。 9/5
■ 新規アンプ導入計画(13) 「熱暴走トラブル編」 Telefunken RS289にてエージング中、直流点火回路のDCコンバータが熱を持つとのことで、出力管の点火方式が交流点火に変更となったようだ。 直流点火基盤を取り外して交流点火に切り替えるが、フィラメントハムも問題なく収まり完成に近づく。 9/6
■ 新規アンプ導入計画(14) 「完成編」 点火回路の熱暴走トラブル修復後、出力管を入れ替えながら順調にエージングを進めている。
明日には我が家に到着予定。 9/7 ■ PX4/RS289/RE604 コンパチブル・シングルアンプ TUBE AUDIO LABO 6AR6シングル(手前)とPX4コンパチアンプ(奥) PX4/ RS289/RE604コンパチブルアンプ
チューブ・オーディオ・ラボに制作をお願いしていたアンプを、わざわざK村さんが炎天下のなか新潟よりお持ち下さった。 当初は英Marconi PX4シングルアンプで依頼したが、ラボのK村さんや回路をご検討いただいた真空管博士の助言もあり、独Telefunken RS289(RV210)やRE604系の各種古典球も使用できるコンパチタイプに仕上げていただいた。 準備しておいたPX4に加えてラボさんからRS289を購入し、貴重なRE604は一旦ラボさんのストックをお借りして音質を確認後、真空管博士より調達予定である。 更にTelefunken RV210も試聴用にお借りしている。 Telefunken RE604 Telefunken RV210 Telefunlen RS289はプレートキャップの不具合により、再送していただくこととなった。
シャーシの塗装色にも高級感があり、全体的なサイズバランスも良好に感じている。
特にRE604ナス管を使用した時のグラマラスなボリューム感が非常に好ましい。 コンデンサーや手巻きトランスのエージングに2ヶ月ほどかかる予定なので、それぞれの出力管の試聴感想は追々アップさせていただくことにする。 本日短時間だったが、K村さんと動作確認がてらそれぞれのTUBEを試聴してみる。 どのTUBEを聴いても好ましく感じさせる音色の中で、特にウエスタン300Bを凌駕するというRE604のリアルな音質は素晴らしかった。 当初、電源トランスの上部に設置されていた出力管の直流点火回路が取り外されている。
交流点火方式での動作に変更した結果、電源投入時に「ブ〜ン」とハム音がするが、しばらく経つと全く気にならないレベルに収まっている。 K村さんのワイアリングはいつもながら美しく、仕上がりも上質で文句のないものだ。 K村さん、本日はありがとうございました。 9/8 ■ コンパチブル・シングルアンプの音質/PX4編 まず最初は本命のMarconi PX4から試聴を開始している。
旧型ナス管(OSRAM)や同型管のPP3/250(MAZDA)の方が良かったのだが、高額となるため新型のドーム管ではなく音の良いST管を選択した。 当初予定通り、初段管にSTC CV1985/ECC35、整流管はCossor 53KUと英国勢で脇を固めて聴き始める。 数々の愛聴盤に針を落とし、一番最初に感じたのが音場から溢れんばかりのダイナミックな低域の響きである。 オケを聴いてるとキャンバスの隅々まで濃厚な下地を描いたように各楽器群が豪放磊落に響き渡り、半端のないゴージャス感を感じさせる。 音数の多さだけでなく響きにはコクがあり、ピアニッシモでの繊細感、音の重なりなどのデリケートな表現も申し分ない。 これまで使用してきたアンプとの一番大きな違いは、それぞれの楽器がクローズアップしてマクロ的に響かせる点である。 各楽器のパートが音場にはっきりと浮かび上がり、オペラでの歌声もこれまでの記憶より、舞台上で太く大きく堂々とした歌声を聴かせてくれる。 高域には刺々しさを感じさせず、英国機器の持ち味となっている硬質感のある明晰さが美しく、エージングが進めば更に柔らかさが加味されるだろう。 レコード中心に20時間ほど試聴を進めたところで、組み合わせる初段管や整流管を交換してみた。 前段はSTCで違和感なく落ち着いたが、整流管の方はCossorで感じられる弦楽器のコクのある飴色の響きが好ましいが、やや暴れ気味の音質となるため、落ち着きのある響きのRaytheon5U4Gを組み合わせている。 英国勢で固めたかったが、期待していたMullard GZ32では高域がヒリ付き気味で、低域方向の厚みも薄くなるなど現状では今一歩の結果だった。 エージングが進んで全体的に角が取れたところでCossorに戻そうと考えている。 現状では剛が優っている印象だが、アンプ全体にくまなく血が通い、柔よく剛を制するバランスに行き着いた時が短しみである。 9/10 ■ 続・Marconi PX4 新作のアンプは完成した後、ラボさんの方でエージングを兼ね8時間ほどの試聴を済ませているとのことだった。 そのアンプが我が家に来て4日目、25時間ほど試聴を進めているが、愛聴盤に針を落とす度に驚きの連続が続いている。 PX4で試聴を開始して三日目ほどのところで、微妙な音質の変化が現れ始めた。 どうやらダイナミックな音場を形成していた原因は滲み気味な音質が影響していたようで、全体的に音像が締まり始めるとともに、少し重苦しく厚化粧気味だった音場に軽快感が出始め見通しが良くなって来た。 同時に太く大きく膨らみ気味だったそれぞれの音源が、ピントが合ったように小振りに聴こえるように変化している。 ここで再度、整流管をCossorに戻して音源に色彩感を加味するが、現在のところPX4にはこの組み合わせがベストのようだ。 新たなアンプを導入したシステムでは、Goodmans AXIOM22MkIIを使って、主にクラシックをアナログで楽しむことにしている。 カートリッジはThorens MCH-IIとOrtofon MEISTERを使用しているが、ともに長年愛用して来たMC型の名器だ。 MCH-IIでプッチーニのオペラを聴くと、昭和30年代生まれの方ならお分かりになると想うが、総天然色で映画を観たような趣で音楽が奏でられる。 MEISTERでは解像度が高いためか、そのような誇張した色彩感は薄らいで爽やかな自然な音場が形成されるのが特徴だ。(トランスはWEを使用) オーケストラなど大編成の曲種では、各楽器の低音が床に反射してホールトーンが下方向に伸びるという、豪華絢爛な音質を聴かせてくれている。 特に中央左右に配置された弦楽器群が、厚みを持った帯状の合奏となってとても心地よく響く。 しかし、ソロ器楽曲の中でピアノなどは組み合わせるプレーヤー自体の音質影響を受け、これらのカートリッジも明暗を分けている。 フローティングタイプのThorens純正組み合わせは、重厚感あるグランドピアノの響きを聴かせるのに対し、リジットなGarrardシステムを使用したMEISTERでは、高域の煌めきが強すぎて若干腰高な印象を持った。 さて、明日からは次の出力管、ラボさんからお借りしているTelefunken RV210の試聴に入ることにしよう。 9/12 ■ コンパチブル・シングルアンプの音質/RV210編 ラボさんよりお借りしたTelefunken RV210はオーディオ用の傍熱三極管である。
真空管博士の説明を借りると、「RV210はPX25並みの出力が得られる球ですが、今回のアンプでは軽い動作での使用となります。あまり高価な球ではないので面白い存在と思います。」とのことだった。 細身のTUBEはステムから上部がスモークガラスで覆われているため、内部構造を見ることができなくなっている。 この真空管に差し替えてアンプの電源を入れても、PX4の時のような「ブ〜ン」「グオ〜ン」という立ち上がりのハムノイズは一切しない。 出力の方はPX4とほとんど変わらないようだ。 PX4とその音質を比べると、このアンプの持ち味となっている「コクの深い音」には変わりはないが、少し色彩感が薄いような気がする。 もちろん耳で聴く“音”には目で識別する色は分からない筈だが、醸し出される音色が色をイメージさせるのである。 その反面、高域の繊細さと締まった低域に特長を持っており、なんとなくECC83ダイヤマークを連想させる音作りだ。 この出力管でドビッシーの「海」を聴いていると、ダイナミックな波のうねりの高さや大きさを如実に感じさせてくれるが、葛飾北斎の「富嶽三十六景」で描かれた景観が、鉛筆で描いた精密なデッサン画のような風情で聴こえてきた。 RV210のどこまでも冴え渡ったダイナミックな音質は、濃厚な色目の油絵を見るようなPX4の音質とは性格が全く異なっている。 弦楽器独奏では冷徹なまでに強い浸透力を見せるが、大編成モノになると少し粗めで調和を欠く傾向は、音の締まり具合の強さが影響しているのだろうか? 声楽のバリトンを聴いていても少し上擦った、腰高で神経質な歌声に聴こえる傾向があるようだ。 反面、ヴァイオリンやチェロソナタなどでは演奏者の技巧が花火のような煌めきでリスナーに訴えかけられ、素晴らしい演奏を聴かせてくれる。 ドラマティックな曲目でもRV210の良さが明快となるので、ひょっとするとPOPS&ROCKなどの曲種にも向いているのではと感じた。 しかしこのTUBEの個性的で素晴らしい音質は、次に控えている同じテレフンケンRS289の期待度をさらに高めるものとなった。 9/14 ※追伸 真空管博士よりRV210の補足説明があった。 「RV210はプレート損失25Wの傍熱型三極管です。内部抵抗はとても低くWE300BやDA30と同じくらいです。WE300BやDA30より少し増幅率が高いので直線性は良好です。プレート形状を工夫して電極間の静電容量を低減しているので純三極管の中ではハイスピードな方です。音声信号を扱う様々な用途に使用されていたようです。(業務用アンプ・送信機のモジュレーター・有線ラジオ設備・電話通信設備) フルオペレーションですと7W近く出ますが、今回のコンパチアンプでは軽い動作で3W程度と思います。 RV210には弟分とも言うべきAD101という球があります。コンパチアンプではRV210同様PX4の設定で使用可能です。出力はRE604と同じくらいですのでRE604の傍熱バージョンと言えるかもしれません。 テレフンケン製の安価な球でRENS1374dという五極管があります。ST型の初期の球はメッシュプレートの外側にワイヤーリングによるシールドを施すという他に類を見ない構造をしています。出力は1W弱と小さいですが音質は良好です。PX4の設定で使用可能でお値段も@8000円程度です。」 ということだが、やはり真空管の神様である。 ■ コンパチブル・シングルアンプの音質/RS289編 いよいよ期待の送信用五極管Telefunken RS289の試聴に入る。
形状はRV210とほぼ同じだが、こちらはフィラメントの灯りや内部構造がはっきり確認できる。 真空管博士曰く、「RS289はテレフンケンが開発した送信管です。アメリカ型の増進管は高域に偏った音の球が多いのですがRS289は違います。三極管接続にすると極めて内部抵抗が低く素晴らしい低音を聞かせてくれます。物理特性はAD1やEdと非常に近くオーディオ専用管に全く引けを取りません。送信管特有の高域の抜けの良さを兼ね備えていますからとてもワイドレンジな球です。電極容量はとても小さく前段管の6SL7に優しい球でもあります。値段が安いのでスペアチューブの心配もありません。」と良いとこ尽くめな球のようである。 出力の方は僅かにRV210より小さいようで、電源投入時のハム音も一切無かった。 先に試聴したテレフンケンのオーディオ用傍熱三極管RV210は、個性的な正しくスペシャルTUBEだ。 低域の締まり具合や解像度の高さが際立っていて、切れ味の鋭い日本刀を思わせる音質が持ち味だった。 その反面、ゆったりとした響きや余韻を拭い去ったような音色が、大編成の楽曲になると温度感の低さとハーモニーの欠落を招いてた。 さて、今回のRS289の音質は、キレの良い高域はRV210の長所をそのままに、低域方向の量感を増した余韻も豊かなバランスとなっている。 大編成のオーケストラを聴いてもふくらみを持ったホールトーンを感じることができて、RV210ほど硬質な高域もそれほど苦にならなかった。 しかし一旦、豊かなホールトーンとブリリアントな響きを持ったPX4で大編成のオーケストラを聴いてしまうと、流石にこちらは少し物足りなく感じてしまう。 テレフンケンの2本を音質比較すると、個性的な音質はRV210に一歩譲るとして、トータルのバランスはRS289の方が優っているように感じる。 これらのTUBEを使用した時の音色がJAZZやROCKなどの曲種で問題が無ければ、もう1系統のシステムは役目が無くなってしまうのでは・・・・・・。 ※真空管博士のRS289の補足説明。 「ある方はRS289で聞くとストラディバリとガルネリの違いが明瞭に分かると仰いました。これはRS289の解像度の高さのなせる業でしょう。 RS289は送信管ですから受信管より真空度が高いのです。更にはグリッドのプラス領域まで入力を加えますから動作時のピーク電流は相当なものになります。球自体は大きくはありませんがヒーターパワーはPX25やDA30同等であり豊富なエミッションを実現しています。 それからコンパクトな電極構造も見逃せません。送信管は電極間の静電容量をできるだけ小さくするためにプレートは小さい方が良いのです。電極間の静電容量が小さければ抜けの良いハイスピードな音が期待できます。これらのことを踏まえると低周波増幅使用時のRS289は非常に楽な動作をしているといえます。RS289の解像度が高いのは、高い真空度、豊富なエミッション、コンパクトな電極構造が寄与していると考えています。」 9/17 ■ 続・Telefunken RS289 新作アンプが我が家に到着して約10日、聴き始めてから35時間ほど経過している。 真空管博士の詳細な説明を伺って、ますますTelefunken RS289の完成度の高さを感じることとなった。 しかしクラシック系の小編成や弦楽器の再生に最適なTUBEだが、オケなどの大編成になると解像度の高さが災いしてか、臨場感の乏しい音質と感じていた。 そんな中、本日はPOPS&ROCKを中心に試聴を行なってみたが、予想通りこのテレフンケンのTUBEは、これらのタイトでパルシブな曲種にも適している。 特にエージングがまだ足りないのか少しマットな響きが気になるが、ドラムのタイトな響きやベースのボディに喰いこむリズム感は申し分ない。 別系統でPOPS&ROCKを聴く時に使用している、SV-91B→Goodmans AXIOM150MkII 3WAYより、よく締まった響きは心地よく感じられるようだ。 3WAYは低音の厚みや奥行き感はあるが鈍重傾向で、2WAYが持つ軽快感とよく前に出る音質傾向が影響しているのかもしれない。 前段や整流管を入れ替えて、このTUBEで大編成モノを聴けるようになるのなら、我が家のシステムは1系統で十分かもしれません。 しかし、異なる機器を使用して変わった雰囲気で音楽を聴いたり、真空管やカートリッジを色々変えて愛器に触れるのもオーディオの楽しみなので、無理せずにこのままのスタイルで参りましょう。 再びクラシックに戻って交響曲に針を落とす。 TUBE自体のエージングが進んだのか低域の量感も増してきたようで、少しボリュームを上げると澄み切った迫力のある表現力がなかなか良い塩梅だ。 しばらく聴いていると、ストレートで音質が厳しすぎる傾向はあるものの、オーケストラのフレッシュでドラマティックな表現も悪くないと思うようになってきた。 さて、いよいよ次は博士の説明で300Bを凌駕するというTelefunken RE604の出番となる。 ひょっとするとこのTUBEがRS289の音質の幅をさらに広げてくれるのかもしれません。 9/19 ■ コンパチブル・シングルアンプの音質/RE604編
いよいよ待ちに待ったTelefunken RE604の出番を迎えた。 このアンプを製作依頼するまでは、ウエスタン300A/OLD300Bなどの噂は良く聞いていたが、こちらの独製古典球については存在すら知らなかった。 真空管博士によると 「RE604は1933年〜1941年にかけて製造されたバリウム昇華型フィラメントの球が最高です。このタイプは酸化被膜フィラメントの最高性能を誇る300B以上の性能です。出力こそWE300Bに及びませんが動作における直線性においてはWE300Bを全く寄せ付けません。」 とのことだった。 試聴に使ったRE604はチューブ・オーディオ・ラボさんからお借りしている同タイプのTUBEだが、現在博士に調達を依頼しており、まもなくバリウム昇華型フィラメントの中期型と後期型の極上品が到着予定となっている。
このTUBEを使用する時は、出力管ソケット上部にあるトグルスイッチをRE604側に倒して使用することになる。 まずグリュミオーのヴァイオリンソナタから試聴を開始する。 聴き始めてすぐに硬質な美音を隈取るように立ち昇る鮮やかな色香を感じることになる。 解像度はこれまで試聴した2種類のテレフンケンTUBEよりさらに高まり、弦を抑える指がネック上で動く時に出る僅かな擦れ音も聴こえてくる。 先に試聴したテレフンケンTUBEの解像度の高さと硬質感は確かに素晴らしかったが、それが音質を冷たく感じさせる要因ともなっていた。 しかしこのRE604は高い解像力を持ちながら、その音質に暖かさや気品が感じられるのは期待以上の驚きである。 最初に試聴したPX4の音色はすでに忘れかけているが、先のテレフンケンTUBEとは格の違いを見せているのは確かだろう。 真空管博士やK村さんからその音色の素晴らしさを散散伺っていたが、この芳しい色気を持った音はこれまで聴いたことのないものだ。 ほっと胸を撫で下ろしてシュタルケルのバッハに針を落とす・・・・・・・。 さて、続けて聴いた交響曲のレコードは、セルがコンセルトヘボウを指揮した蘭フィリップス盤だ。 このレコードを数日前にPX4で聴いた時は、これまでコンセルトヘボウで聴いたことのない弦楽器群の左右の厚みに驚かされたが、こちらのRE604では各楽器の微動だにしない定位感とクローズアップしたようなリアルな音場再現が、想像以上の美音となって音楽を楽しませてくれている。 弦楽器のユニゾンや金管楽器の咆哮にすら刺激的な趣は全く感じさせず、申し分ない中低域の厚みは上質なホールトーンを体験させてくれる。 嬉しい誤算だが、今まで全く知らなかったドイツのTUBEが、英国の名球と呼ばれたPX4をも音質に於いて上廻っているのではと思わせるものだ。 これまで昭和の中学生時代からオーディオを続けてきて半世紀近くが経過している。 高校入学祝いで初めて手にしたのはパイオニアのトランジスタアンプだった。 その後真空管の音質の良さに目覚め、米DYNACO/Marantz、英QUAD、伊UNISON RESERCH、日LUX/ELEKIT/SUNVALLEY/Chriskit/UESUGIなど数々のメーカー製アンプを使用してきた。 プロ製作者によるオリジナルアンプでTANNOYオートグラフを駆動されているsigetaさんも、いかに優秀なメーカー製アンプより技術的な信頼を置けるアンプビルダーが、部品や回路に拘りを持たせて製作したオリジナルアンプの方が音質は優れているとおっしゃっていた。 当然のことながらメーカー製アンプは商品化して購入者に複数台販売されるが、使用されるパーツなどは特性にバラツキの少ない安全性を考慮した現行部品を採用する場合がほとんどで、完成後の品質確認についても人間の耳によるヒアリングではなく、機械を使用して標準化、平準化された特性を確認するのが大半だろう。 その点オリジナルアンプは、生産終了品や現行品に関わりなく音質の良いパーツを自由に選択し、ノウハウを持った技術者により確実な手作業で製作されている。 さらに複数台の商品化ではないから、完成後に同じ品質(音質)を求められる訳でもないので、1台1台の高音質化が計れるという構図だろう。 Y下先輩が大改造した半オリジナル91B型アンプの音質も素晴らしいが、我が家も結局このオリジナルアンプが終着点となりそうだ。 う〜ん、まさしく至福の時が続いている。 9/20 ■ 続・Telefunken RE604
Telefunken RE604を使用して二日目。
昨日の感動は本物かと未だに興奮気味の頭を冷やし、極力冷静な気持ちに立ち返って試聴を始める。 これまでの経験の中で、機器や部品を交換した当初はその音質の変化が「音が良くなった」と思い込み、後日聴いてみると前のほうが良かったということも度々ある。 電源を投入すると、PX4ほどではないが「ブ〜ン」とハム音がして、その後稼働時のフィラメントハムも気にならない程度に発生している。 前段のTUBEはSTCから変わりはないが、整流管をMullard GZ32から再びCossorに戻している。 この黒ベースのMullardは、エッチングコードが見当たらないためどこの工場で製造されていたものか分からないが、高域が上ずって低域も厚みが薄い。 今のところCossorが一番バランス感が良いように感じているが、今度茶ベースのSTCを試してみようか。 カートリッジは低域の量感が芳醇なフローティングのThorens純正組み合わせを使用していたが、交響曲などではOrtofon MEISTERの柔らかい響きも好ましい。 聴き始めの昨日は、ヴァイオリンやチェロなどの弦楽器や、交響曲、オペラなどでその音質の良さに触れ、感激した記憶が脳裏に残っている。 早速その試聴結果を真空管博士にメールで報告したところ、次のような返信をいただいた。 「RE604気に入って頂けたようで安心いたしました。RE604は銘球と言われながらベストコンディションで鳴らしている人は少ないと思います。回路は私が基本設計を行いましたが配線材や半田を含めた使用パーツの絶妙な選定はK村さんの経験のなせる技でしょう。さらには私たちの無理な注文を快く引き受けてくださるTSM Productsさん手巻きのプレートチョークコイルとOPTの威力も絶大です。自画自賛になりますがこれまでのアンプの中でコストパフォーマンスは最高ではないかと思っています。私がアンプのコンパチ化をお勧めしたことを喜んでいただけているようなので安心いたしました。」 チューブ オーディオ ラボのK村さんからも久方ぶりにご連絡を頂いたが、RE604のバリウム昇華型フィラメントが音質の肝となっているのではとのことだった。 また、PX4にも初期型で音質の良いバリウム昇華型フィラメントのTUBEがあるとのことだったが、滅多に出てこないとのことなので聞かなかったことにしよう。 そういえば真空管博士も、PX4系出力管の頂点はバリウム昇華型フィラメントのナス型管で、その次はPP3/250最初期のニッケルプレートですとおっしゃっていた。 二日目に入り、この音色に耳が馴染んできたのか昨日聴いた新鮮な驚きは減ってきたが、初めて針を落とした愛聴盤の旋律でハッとさせられる驚きが続いている。 PX4では厚みとコクのあるゴージャスなホールトーンに驚かされたが、このRE604には高解像度に支えられた明確な定位があり、さらに響きも柔らかい。 半年以上待った甲斐もあり、このアンプの音色は素晴らしいとホッと胸を撫で下ろし満足感に満たされている。 今週は最近アンプを新調したとおっしゃっているsigetaさんが来訪されるので、この新しいアンプの評価が楽しみである。 9/21 ■ バリウム昇華型フィラメント RE604 青森の真空管博士より、待望のTelefunken RE604の他、お願いしていた数種類のTUBEが届いた。 チューブ オーディオ ラボからお借りしていたRE604は初期型と中期型だったが、こちらのチューブは中期型(1934/8)と後期型(1941/4)の組み合わせである。 スイスから取り寄せられた極上品とのことだが、博士の方でベースピンのハンダの入れ替えクリーニングを実施していただいている。 以前、SV-91Bで使用していた整流管(WE-274B刻印)が接触不良を起こし、ベースピンにハンダを流し込んで復活した経験があるが、古典球ではありがちなこのようなトラブルが起きないよう博士の対応も流石に万全である。
さらに博士お勧めの比較的安価な五極管Telefunken-RENS1374dと整流管のBRIMAR-5Z4G、その他今回のアンプに使用するわけではないが米GE12AX7 Long-Plateが手に入ったとのことだったので、こちらも2本ほど頂戴することにした。
我が家のストックにはGE12AX7/ECC83のShort-Plateは軍用を含め数種類あるが、淡白で少しボヤけた音質のためこれまで出番が全くなかった。 独テレフンケンにはLong-Plate(17mm)タイプしかないが、英ムラードでも後発のShort-Plate(14mm)より、1959年頃まで製造された初期型Long-Plate(17mm)の方が音質は良いので、米GEのLong-Plate(17mm)を一度試してみたかった。 RE604には長年灯が入っていないだろうから現在エージング中だが、博士のお話だと長期間未通電だった球には、直熱管で24時間以上が必要とのことだ。 エージング中の球がどのような経過を辿っているのかについて、以下のような博士独自の考察をご教授いただいた。 1.管壁や電極等からガス成分がイオン化して真空度が低下し始めガスによりIpは増加し始める。 この時点では音のフォーカスが甘く感じることが多いように思います。 2.球全体が十分に温まりゲッタが活性化すると管内ガスの吸着が始まり真空度が上昇し始めIpは減少傾向に転じます。 この時点のIpの減少はフィラメントやヒーターの性能が落ちているのではなく真空度の上昇によってガス電流が減少するためです。 3.管内ガスの吸着が完了すると再びIpは微増傾向となり、Ipの増加が止まればエージング完了です。 この時点になると解像度が増し低音の締まり具合も良好となります。 球の状態にもよりますが、直熱管で24時間以上、傍熱管で36時間以上はかかります。 お付き合いいただいてまだ日は浅いが、真空管博士の知識には脱帽する思いである。 それぞれの音質評価についてはまた後日・・・・・・。 9/24 ■ オーディオ定例会 本日はsigetaさんをお招きして、新作アンプの試聴会を実施した。 前回お越しいただいたのは、コロナウィルスによる緊急事態宣言が発令される前の3月だったから丁度半年ぶりとなる。 その間にsigetaさんのシステムもプリアンプをリフレッシュされたようで、プロ用機器のグレードがさらに改善された模様である。 上の画像は、昨日真空管博士から届いたTelefunken RENS1374dと整流管BRIMAR 5Z4Gを用いた組み合わせである。 このメッシュプレートの傍熱五極管はTelefunken RS289のようなトップのプレートグリッド接続ではなく、ベースのピンにスクリーングリッドを接続する構造となっている。 真空管博士からの使用上注意点として、「SP端子の接続を既存の16Ωから8Ωに替えて使用することで、さらに締まった低域を聴くことができます」というものだった。 さて、新作アンプのプレートチョークの音質がどのようなものか、興味津々だったとおっしゃるsigetaさんのご感想は・・・・・・。 まず聴き始めの冒頭に一言、「変わりましたね〜。」 「古典球ということで何というかもう少し古臭い音をイメージしておりましたが、そんな感じは全くしません。」 「すごい世界に足を踏み入れたものですね。」 そんな驚きの言葉だった。 出力管はMarconi PX4から始まり、Telefunken RS289→Telefunken RENS1374d→Telefunken RE604の順に試聴を行う。 前段のSTC CV1985/ECC35→RCA5691に続いて、整流管のCossor→BRIMAR 5Z4G→KEN-RAD VT244→WE-274B刻印→STC5R4GYを次々に付け替えて試聴を続けるが、予想通りそれぞれのTUBEで大きな音質の変化を感じ取ることになる。 出力管ではPX4とRE604が大編成で音数の多さを発揮するゴージャス系、RS289とRENZ1374dがソロ系で強みを発揮するTUBEと意見が一致した。 あくまでも我が家の機器組み合わせでの場合だが、PX4よりわずかにRE604に音の深みが上廻るのではとの評価だった。 意外と音質の良さが確認できたのは、当方も昨日到着後ほとんど試聴を行なっていないRENS1374dだった。 テレフンケン特有の低域の締まりの良さに加え、柔らかな余韻もあって大編成のオケを聴いても無理のない自然な響きを感じとることができた。 前段ではやはりSTCの良さが光り、整流管ではCossorとSTCが双璧ではないか・・・・・・・。 アンプ自体の音質については、交流点火の音なのかプレートチョークが影響しているのか判断できないが、太い豪快な音がするように感じるとのこと。 出力管から前段や整流管まであれこれ入れ替えて音色を確認し、別系統のシステムで新たに調達したOrtofon MC-ERの音質も確認していただいた。 盛り沢山のメニューで、無駄話もなくあっという間に時間が過ぎる定例会となった。 アンプの基本性能が高いためか、TUBEを入れ替えるたびに比較的好ましい評価を頂戴したが、概ね当方が感じたものに近いものだった。 一方、オーディオで音楽を楽しむには問題ないが、原音再生視点で考えると実際の演奏会ではここまで豊潤な低音は聴こえて来ないとおっしゃっていた。 改めてsigetaさんご本人から試聴感想を掲示板にご投稿いただくことになっているので、本音についてはそちらを待つことにしよう。 9/25 ※追伸 sigetaさんから本日の試聴感想を、掲示板の方にご投稿いただきました。
興味のある方はそちらもご覧ください。 ↓ https://zawazawa.jp/bcjd0i1lnr55w007/topic/1
■ 2020年9月現在のシステム構成
ANALOG AMP SPEAKER PLAYER TONE-ARM CARTRIDGE MC-TRANS PHONO-EQ PRI POWER THORENS TD-126MKIII Centennial SME 3010R/B Thorens MCH-II ORTOFON T-30 → Marantz7 TUBE AUDIO LABO PX4/RE604 Compatible Single Marconi Telefunken GOODMANS 2WAY ▼▼▼▼ AXIOM22MKII + TREBAX GARRARD 401 audio-technica AT-1501 II ORTOFON SPU MEISTER-GE Western Electoric KS-9450 → Notthingham Interspace-Jr GRACE G-565/1 LYRA Clavis D.C. EAR 834P GARRARD 401 audio-technica AT-1503 III ORTOFON SPU-GE J's No.6600 → Chriskit MARKY Custom SUN VALLEY SV-91B 300B Single TAKATSUKI GOODMANS 3WAY ▼▼▼▼ AXIOM150MKII + MIDAX + TREBAX
Notthingham Interspace-Jr
Interspace-arm ORTOFON MC-ER Langevin 408A → Notthingham Interspace-Jr GRACE G-565/II SHELTER MODEL501 Classic PEERLESS 4722 SHELTER MODEL 216 EMPIRE 598N EMPIRE 980 SHURE M44G → SHURE M64 ↑ ↑ ↑ 9月に入り待望の新作アンプが到着したので、我が家のシステム構成はリニューアルすることとなった。
4台のアナログプレーヤーを使用して、MC型からMM型まで数多くのカートリッジで音楽を楽しませて貰っている。 最近はアナログレコードが復活して古い名盤がリカッティングされて発売されることも多く、傷のない新品で購入できるようになったのは嬉しい限りである。 もう少し広いオーディオルームで音楽を聴くことができないか常々考えていたが、大きな部屋でオーディオを楽しむのはそれはそれで大変らしく、12インチのSPを使用するならば、音響面で我が家の約8畳の広さはちょうど良いのかもしれない。 今年中はこの構図で古典球を各種楽しんでゆくつもりである。 9/27 ■ 2つのTelefunken Telefunken RS289 Telefunken RENS1374d 我が家で試聴するソースは約50%がPOPS&ROCKで、クラシックが40%、その他10%程度の割合となっている。
新作アンプは出力管を挿し替えることで、これらの曲種をほとんど無理なく楽しむことができる優れものだ。 クラシックは主にMarconi PX4とTelefunken RE604を使用し、POPS&ROCKやソロ楽器はTelefunkenの2種類のTUBEを使用している。 新作アンプの音質を料理に例えるとアクセントの効いた関東風の味付けで、優秀なアウトプットトランスの影響かシングルアンプに関わらず重心が低い。 特にこれまで使用してきた各種アンプと2WAYの組み合わせでは、音場密度がやや希薄で柔かな浮遊感を感じさせるのは良いが、音質自体が軽い印象があった。 その点今回の新作アンプでは、重心が落ちてどっしりとした安定感があり、さらにコクと豊かな響きを併せ持った音質が最大の長所となっている。 特にPX4を使用した時は濃厚さが増して豚骨ラーメンのようなコクの深さが出てくるが、RE604はさしずめ風味豊かな味噌ラーメンといった趣である。 それに比べるとテレフンケンのRS289/RENS1374dは、すっきりした爽やかな喉越しを生かした塩ラーメン的な音質である。 同じ塩ラーメンのカテゴリーではあるが、RS289は細麺のストレートタイプでRENS1374dの方は縮れた太麺の図太さを感じさせる違いがある。 このRENS1374dは先日の定例会に於いてもsigetaさんから高評価をいただいたTUBEで、暖かくなるまでは実力を発揮しない寝起きの悪さはあるが、持ち味のパンチの効いたダイナミックな音色はROCKなどのパルシブな曲種にも抜群の相性を見せている。 何となく音のニュアンスをお分かりいただけたのではと勝手な解釈をしているが、ラーメンは嫌いであまり食べてことがなく、味がよく分からないとおっしゃるオーディオ愛好家の方にはお許し願いたい。 そんな訳でコンパチアンプの利点を味わい始めているが、このアンプと軽量コーン紙を使用した12インチGoodmans2WAYを組み合わせることで、オールジャンルの曲種を楽しめるシステムとなりそうだ。 9/29 ■ レイアウト変更 コロナ禍という未曾有の危機に直面した2020年も、残すところあと3ヶ月となった。
海外では感染者の増加に歯止めが掛からない国もあり、早急なワクチン開発が待たれるところである。 さて、我が家のオーディオは先月末の2日間を利用してレイアウト移動を敢行し、思い切ってシステムを一系統に集約してみた。 これでしばらくSV-91BとGOODMANS 3WAYの組み合わせは、別室で待機してもらうことになる。 気分を変えて違うカートリッジの音質を楽しむのも良いが、アナログが7系統あっても結局いつも使用するカートリッジは決まってくる。 そんな訳でアナログの方も、Marantz7で3台のフォノイコとともに使用できるカートリッジを5系統に絞り込んだ。 音質の肝となるAXIOM22MKIIのエンクロージャーは音質が良いと言われている進工舎製を使用しており、ツイーターは純正のTREBAXを組み合わせている。 ある意味セオリー通りで以前と同じSP配置に戻した構図だが、SPの中心から中心までの間隔は220cmとレイアウト変更前より若干広くなった。 嫁殿と老夫婦二人で一系統のシステムを別部屋に運び出し、新たなレイアウトに配置が完了するだけで丸一日がかりの作業となった。 おまけに久しぶりの肉体労働がたたって夫婦共々腰痛に悩まされ、近所の極楽湯に湯治に行く羽目となってしまった。 (特にSV-91Bは送信管用の大型アウトプットトランスを採用していることもあり、24kgもあるヘビー級アンプだ。) <2020年10月からの新たなシステム構成> ANALOG AMP SPEAKER CARTRIDGE TONE-ARM CARTRIDGE MC-TRANS PHONO-EQ PRI POWER THORENS TD126MKIII Centennial SME 3010R/B Thorens MCH-II Ortofon T-30 → Marantz7 TUBE AUDIO LABO PX4/RE604 Compatible Single Marconi Telefunken GOODMANS 2WAY 🔻🔻🔻 AXIOM22MKII + TREBAX GARRARD 401 audio-technica AT-1501/II Ortofon SPU MEISTER-GE WESTERN ELECTRIC KS-9450 → audio-technica AT-1503/III SHURE M44G SHURE M64 Notthingham Interspace-Jr Interspace-arm Ortofon MC-ER EAR845P GRACE G-565F SHELTER MODEL501 Classic Peerless 4722 SHELTER MODEL216 さて、やっと機器の移動や配線も完了して試聴に入る。 アンプ完成から半月以上が経過してその音質にも徐々に慣れ、TUBEごとの特徴もおぼろげながら掴めるようになってきた。 これまでと使用している機器に変更はないが、SPケーブルWE16GAが少し寸足らずなため、先日sigetaさんから頂戴したヴィンテージWE線をSP側に加えている。 SP間に物が無くなって空間に広がりが出たためか、響きに窮屈さが無くなり壁一面に広がる音場がとても心地よいものとなった。
さらに音場に漂う微妙な雰囲気も感じられるようになるなど、見通しが良く透明度の高い音質に改善された模様である。 その影響か若干高域の切れ味が増したように聴こえ、弦楽器の柔らかい響きがやや薄らいだようにも感じる。 ツイーターのレベルを調整するなどして、今後は愛機たちにもこの新しい環境に馴染んでもらうことにしましょう。 10/1 ■ ルームチューニング レイアウトを変更しただけなのに、結構出てくる音のニュアンスが違って来ている。 今回のレイアウトは3m×3.6mの長方形短辺にSPを配置しており、これまで長辺に2セット置いていた状態と比較して内側AXIOM22MKIIのSP間隔は広がっている。 低域の響きが増したのは良かったが、高域の質感が硬くシャープなものとなっている。 組み合わせている機器にほとんど変更はないが、置き方を変えることで部屋自体の響きが違ってくるのだろうか? それとも部屋の音響特性を改善するために使用している「卵トレー」を、今回の変更に合わせSP間の天井部分に追加したのが良くなかったのかもしれない。 このトレーを最初に試した時も、枚数が多すぎるとコントラストが強くなりすぎて聴き疲れする傾向があったのを思い出した。 そんな訳で追加したSP間天井部分のトレーと、左右側面カーテン上部に設置していたトレーの天井部分も撤去することにした。 その結果、直線的な音質に柔らかさが出始めて、なんとかバランス上の問題が改善されたように感じている。 チューブ オーディオ ラボのK村さんから、古いWEトランスで使用されていた線材とnassauのハンダを分けていただいた。 このハンダはプラグのホットに馴染ませるだけで結構音質が改善されるとのことで、我が家のWE昇圧トランスにこの線材とハンダを使用して内部配線をやり直した。 いつも使っているKESTERに比べて綺麗にハンダを乗せるのが難しく、当方のような下手くそな初心者が使用するのはなかなか難しい物だった。 うまく乗らずに何回か接触不良を起こしてやっとのことで音出し完了するが、ヘボなハンダ付けでは逆に音質が悪化するのではと心配になる。 そんなこんなで当分の間は調整の日々を過ごすことになりそうだ。 そろそろ新作アンプのエージングも終了して落ち着いてくる頃合いではないだろうか。 10/2 ■ 多国籍混成アンプ 新たなレイアウトで連日試聴を続けている。 本日は出力管に独Telefunken RENS1374dを使い、前段に旧ソビエト軍用MELZ/6N9S、整流管には米軍用SYILVANIA/VT-244といった強力な布陣の組み合わせ。 いろいろ試聴した結果、ロックに限っていうとこのテレフンケンの五極管がベストと感じている。 これまで使用して来たプッシュプルアンプと比較しても、締まったドラムや太いベースが2〜3割パワーアップして轟くところが素晴らしい。 一緒に聴いていたメタル好きの嫁殿も、若かりし1980年代昭和の愛聴盤を聴いて、これまで気が付かなかった音が聴こえるようになったと喜んでいる。 RS289の解像度の高いゾリゾリ感のある高域も素晴らしかったが、こちらのTUBEは低域の量感と太さで優っている。 この出力管の音の太さや締まり、広帯域なバランス感は安定していて、前段や整流管を米・英など他のTUBEに入れ替えても大きな影響を感じさせない。 整流管のSYILVANIA/VT-244は相変わらず蛇口全開のじゃじゃ馬で、MELZ/6N9SはRCA/5691赤ベース同様、音質がクリアな反面やや硬さがある。 鬼門のクラシックは、バランスの良かったPX4の高域に少し違和感を感じているので、もう少し前段や整流管の選別にも時間が掛かりそうだ。 チューブ オーディオ ラボのブログでは、新たにフォノイコライザーの試作情報が掲載されている。 なぜか同じタイミングで使用しているSHELTERのフォノイコに片chの音が出ない接触不良が発生し、直るか分からないがとりあえず修理に出している。 なんかタイミングが良すぎるな〜(笑) 10/3 ■ POPSに最適な組み合わせ お次はPOPSやボーカルなど、少し大人しい曲を聴くときの真空管の組み合わせについて・・・・・。 やはり出力管については、最もスタンダードなMarconi PX4の出番となる。 今回こちらのTUBEに入れ替えて試聴してみると、レイアウト移動後初めて音質を確認した時に感じた違和感は嘘のように消えている。 レイアウト移動による音質の変化に耳の方が当初違和感を憶えたのか、それとも試聴を続けるうちに徐々に機器が新しい環境に馴染んできたのかどちらだろう? ROCKに最適なTelefunken RENS1374dに比べ、こちらは温度感がグッと上がって響きの優しい安定感のある音質となるが、打楽器のドラムではチューニングキーを緩め気味でベースも少し太めの音質に変わるなど、それぞれの楽器の音質にも変化が現れている。 ROCKに最適なTelefunken RENS1374dの特筆すべき音質特徴は、音の締まりと解像度の高さにある。 その一例として、この出力管で80年代にヒットしたデュエットのバラード曲を聴いた時、これまではSP間中央部分からそれぞれシンガーの歌声がぼんやり聴こえていたが、初めて左右に並んだ状態(女性左側、男性右側)で定位し眼前に浮かび上がった。 一方、Marconi PX4の全体的な特徴は、低域から高域までのバランス感の良さに加え、奥行きを伴った臨場感のある優しい響きではないだろうか。 音の固さが薄れて柔軟性が出る分、肌触りの良い上質な響きが加味されるように感じられる。 そしてこの出力管には前段のSTC CV1985/ECC35に加え、整流管にはBRIMAR/5Z4Gといった純英国勢のサポートがふさわしい。 この組み合わせは最もノーマルかつ全方位的な音質バランスを兼ね備えており、全てのジャンルに於いて音楽を破綻なく楽しませてくれるものだ。 さて、ここまではほぼ順調にそれぞれの曲種で満足感を得られる音質を味わうことができた。 いよいよ最後に残ったのはクラシックである・・・・・・。 10/6 ■ クラシックに最適な組み合わせは?
Marconi PX4 Telefunken RE604 いよいよ最終関門のクラシックを検証する・・・・・。
これまでの試聴で、長年使用して来たプッシュプルやシングルアンプを凌駕する音質をこの新作アンプはもたらしてくれている。 ROCKやJAZZなどの曲種には音の締まりとキレが要求されるし、POPSやボーカルなどでは心地よい音の温もりと響きの美しさが必要だ。 しかしクラシックになると少し話はややこしく、コクのある弦楽器の胴鳴りや湿り気のある肉声の響き、ホールトーンを感じさせる残響など要求が多岐に渡る。 まず最初にオールマイティーなPX4を試してみると、前段や整流管などPOPSと同じ組み合わせでは音が少し鈍重傾向となり、抜けや見通しが今一歩に聴こえる。 整流管をCOSSOR/53KUに換えると粗かった高域に細やかさが加わって低域の響きに軽快さと躍動感が出始め、持ち味のブリリアントで硬質な輝きが生きてくる。 オペラやコンチェルトなどでは歌手の肉声やソロ楽器が音場にクローズアップされ、オケとの融合がとても気持ちの良い相乗効果を醸し出している。 この組み合わせで1950年代に録音されたオペラの英EMI/ASD録音盤などを聴くと、最高の気分を味わうことができそうだ。 一方、80年近く前に製造されたバリウム昇華フィラメントのTelefunken RE604はどうだろう。 このTUBEは古典球を愛してやまない真空管博士やアンプビルダーのK村さんから最高の評価を得ており、レイアウト変更前に実施した定例会でもshigetaさんからPX4を超えるのではとの感想を伺っている。 2本とも同じ昇華型フィラメント構造だが、全体形状は画像左の後期型が僅かに背が高くなっている。 高域の繊細感に優れ、抜けの良さが持ち味の整流管COSSOR/53KUを組み合わせたPX4では、豪華絢爛に響く高域がやや派手な音質を見せていたものが、このTUBEに換えると重心が下がって雄大ないぶし銀の音質バランスに表情が変わってくる。 同じテレフンケンのRS289/RENS1374dはやや温度感が低いが引き締まったストレートな音質が持ち味となっていたが、こちらのTUBEでは光の当て方によって色目が変わって見える肌触りの柔らかいビロード地を想わせるような奥深い音色が味わえる。 さらに整流管を前段と同じブラウンベース英STC CV1985/ECC35に交換すると、繊細感が増して重厚感がやや薄らぎ、音質に見通しの良さと軽快な躍動感が出て来るなど全く甲乙付け難い選択となる。 どちらにしてもPX4ほど絢爛豪華に響くリッチな趣きはないが、回転数を落としたような重厚で渋い音色傾向を持っており、オケの弦楽器群のユニゾンが心地よくほぐれて特に鳴り終わった後の余韻がとても美しく聴こえる。 やや帯域は狭いが、高域の豊かな余韻や中域の濃厚なコクともに申し分なく、予想通りクラシックにはRE604が最適なTUBEと確認できた。 新作アンプが我が家に到着してからほぼ1ヶ月が経過している。 いろいろな曲種を試聴したが、このコンパチアンプは各種古典球を使用することで、幅広いジャンルの曲種を満足ゆくレベルで楽しめるものだ。 真空管博士によるとRS289/RENS1374dのように、あまり市場には出ていないが音質の良い古典球がまだまだ存在するとのことなので、今後はそれらのTUBEの音質を楽しんで行きたいと考えている。 10/8 ■ 5系統に絞り込んだアナログの楽しみ方 この半月の間どっぷりと試聴を続けた結果、コンパチアンプを使った音楽ジャンルごとの楽しみ方も理解できるようになってきた。
現在主力ソースのアナログはSPシステムを縮小した結果、5系統が使用可能となっている。 Marantz7に装備されたフォノイコ入力を使用しているのは、WE-KS9450でステップアップするOrtofon/MEISTERとJ'sトランスを内臓したOrtofon/T-30で昇圧するThorens/MCH-IIのMC型カートリッジ2機種である。 カートリッジの中で最も使用する機会が多いのがOrtofon/MEISTERで、クラシックをメインにほぼオールジャンルで活躍している。 幅広いジャンルに対応するMEISTERに比べ、MCH-IIはクラシック専用のカートリッジとなっている。 Ortofon SPU MEISTER GE
Thorens MCH-II 最も使用頻度の高いMEISTERの音質にとても似ているのが、発売年代の近いOrtofon/MC-ERだ。
こちらのカートリッジは現在EAR/834Pのフォノイコを組み合わせており、ステップアップもパラヴィッチーニ翁ご自慢の内蔵トランスを使用している。 MEISTERと同様に、馬力のあるブリリアントでリッチな響きが楽しめるため、主にPOPSで使用することが多い。 Ortofon MC-ER SHELTER MODEL216/EAR 834P ROCK専用に使用しているのが、フォノイコSHELTER/MODEL216+SHELTER/MODEL501ClassicとSHURE/M64+SHURE/M44Gの純正組み合わせだ。 最もガツンとパンチが効いて弾ける音を聴かせるのがMM型SHURE/M44Gで、SHELTER/MODEL501Classicはこれに重低音の豊かな響きが加わる。 SHURE M44G
SHELTER MODEL501 Classic どの組み合わせを聴いていても、これまで気が付かなかった音にハッとさせられるのは、アンプの基本性能が優れている証ではないだろうか。 レコードに針を落とすたびに、自然とニンマリとした笑顔になってくるのが分かる。 10/10 ■ Telefunken RS vs RENS 現在のところROCK&POPSを中心として、最も出番の多いのがTelefunken RENS1374dだ。 RS289と同じ五極管だがRENSの方は低域の量感が増えて、やや中高域に持ち上がった軽めの音質バランスが改善されているように聴こえる。 このRENSを使用する時は真空管博士から使用上の注意として伺った通り、SPインピーダンスを16Ωから8Ωに接続変更して使用している。 先日博士と電話で情報交換していた折に、低域の音質の違いはSP端子の変更に影響されているのではとの話になって、同じ条件で再検証することにした。 そんな訳でRS289を使用するのは久しぶりとなるが、SP端子をRENSと同じ条件の8Ωに接続して試聴を開始する。 以前試聴した記憶と違って中高域が乾いたマットな音質となり、持ち味の切れもやや薄らいだようで、低域の量感や広がりも期待したほど感じない。 結論としてこのRS289を8Ω端子で使用すると、最大の利点だった高域の解像度も低下してあまり魅力のない音質となってしまうようだ。 再びRENSに戻すと、高域のゾリっとした切れ味と低域の押し出し、ダンピングの効いた躍動感とも申し分なく、やはり我が家のコンパチアンプにはこの豆タンクのようなフォルムをしたRENS1374dの方が相性が良いことを再確認できた。 RS289 RENS1374d いよいよエージングも終盤に近づいて、ますます本領を発揮して来た模様。 10/12
■ Telefunken RENSの可能性
整流管各種 6SL7系初段管各種 コンパチアンプに古典球を使って試聴を繰り返した結果、ROCK&POPSなどのジャンルではRENS1374dが最も相性の良いTUBEと感じている。
流石にクラシックではPX4やRE604など銘球の音質が優っているが、先日ROCK盤を楽しんでいたそのままの流れでクラシック盤に針を落としてみたところ、エージング効果も出て来たのか当初不満だった低域の広がりや量感をそれほど問題なく感じるようになった。 その反面高域の潤いや艶感に物足りなさがあり、細部に渡る描写力は十分に感じられるものの、やや乾燥した音質が影響しているのかもしれない。 そんな訳で基本的な音質には問題ない訳だから、初段管や整流管の変更により細かな表現力が改善できないか試してみることにした。 音質に影響力がより大きいのは整流管の方だが、高域の質感となると初段管での改善も見込めるのではないか。 初段管では音の輪郭や表層的な部分に違いが現れるが、整流管になると根本的な音質バランスが使用する真空管によって変わるようだ。 現在初段管6SL7系のストックは、英STC ECC35の他、米RCA5691/ RCA6SL7GT(スモーク)、 米RAYTHEON5691、旧ソビエト MELZ/6N9Sがある。 整流管は英Cossor53KU/Mullard GZ32(CV593)/STC5R4GY、米KENRAD VT-244/SYLVANIA VT-244/RAYTHEON 5U4Gなどである。 これらを各種組み合わせて試聴を行い、音質改善が計れないものか試してみることにした。 その結果、前段にRCA5691(赤ベース)と整流管にCossor53KUを使用する組み合わせに落ち着いた。
じっくり腰を据えてクラシックを楽しむ時はPX4やRE604を使用するが、気軽に音楽を聴く時はこの組み合わせでオールジャンルが楽しめそうだ。 しばらく聴いていると、オーケストラの立体的な音場がとても好ましく、弦楽器の繊細な響きもなかなかのものでこれはこれで魅力のある音色である。 10/16 ■ 新たな整流管 ZENITH/Super Silvertone 5Y3G(Raytheon) / DARIO GZ32 Silvertone(Ribbed Plate)/ZENITH(Smooth Plate) 5Y3G 青森の真空管博士からまた魅力的な整流管が送られて来た。
博士のお宅には3000本近いTUBEストックがあるとのことで、真空管マニアには応えられない桃源郷のような場所と勝手にイメージしている。 以前送っていただいたBRIMAR-5Z4Gは残念ながら、先日電源を投入した際に管内にポンポンと花火のような火花が散って昇天してしまった。 RENS1374dのような小振りのST管と組み合わせるには、Cossorや5U4G系の整流管はサイズが大き過ぎるのでこれぐらいがちょうど良い大きさである。 黒ベースにZENITHとSuper Silvertoneの商社名が刻印されているのは5Y3GというRaytheonで製造されたTUBEで、ともに音質の良いフックフィラメント構造を持っているがスムースとリブでプレートタイプが異なっている。 もう一種類は仏DARIO GZ32で、我が家で使用していたDARIO GZ32がエミ減となっていたのでちょうど良いタイミングだった。 こちらのDARIOも製造時期が古いようで、これまで使用していたのは通常のスクエアゲッタだったが、こちらはトレーを逆さまにしたようなRENS1374dと同じ形状のゲッタとなっている。 DARIO GZ32 OLD DARIO GZ32 NEW 5Y3Gの音質は、若干帯域が狭まって音場が中央に集まるような傾向はあるものの、音色バランスは滑らかで温かみのあるものだ。
GZ32の方は音場に広がりが出て余韻も豊かになり、テレフンケンの几帳面な音色を和らげるような大らかさを持っている。 全体的なバランスを見ても、出力管とほぼ同じくらいのサイズで収まりがよろしい。
どちらにしても製造時期が近いTUBEを組み合わせると、相性の問題で音質もそれなりに良くなるのかもしれません。 10/20 ■ Telefunken RENS1374d ナス管 東北地方に実在する桃源郷から新たなTUBEが届いた。 現在最も使用頻度の高いRENS1374dのナス管で、滅多にお目にかかれない初期型である。 これらの古典球は同じ種類のものでも製造メーカーごとに型番が異なっており、共通化がなされていない。 このTUBEもRENS1374d(Telefunken)=L4150D(Valvo)=E453(Philips)=APP4100(Tungsram)=P440N(Triotron)=RS4353・RS4553(Vissuaex)=TE53(Dario)として、ヨーロッパの数多くのメーカーで1932年頃から製造されていた。 今回送られて来たものには管頂に独Telefunkenの同じロゴ印字があるが、博士の説明によるとTelefunkenはValvoと相互にOEM供給しており、背の高い方はValvoで製造されたTUBEとのことで、内部構造もグリッドやメッシュサイズなど若干異なっている。
最初はやはり少し寝ぼけた音質で、何十年も寝かしてあったTUBEだとすると、はっきり目覚めるまでにかなりの時間が必要かと思われる。 現在使用しているST管と違って基本的にはふくよかな余韻を感じさせ、エッジの角が丸まってカチッとした硬質感が抑えられた大人しい音質だ。 どちらかというとスケールを落とした小振りなRE604のような音色に感じるが、ガラスの形状が影響しているのだろうか? 現在のところは今一歩はっきりとしない音質だが、エージングと共にキレが加味されてくるかどうかは今後一週間ほど試聴してみないと分からないようだ。 ST管で聴くことができる素晴らしいキレと、RE604のような奥の深い大らかさが合わさった音質になれば文句なしになるのではと期待している。 10/22 ■ 古典球の長所と短所 Telefunken RENS1374d ナス管のエージングを続けているが、使用して二日目には劇的に音の締まりと伸びやかさが出始めた。
その辺りのところを真空管博士にお伺いしてみた。 アマチュア愛好家(私):「先に使用していたST管の方はそれほど最初から寝ぼけた音がしなかったんですが、ナス管はなぜこんなに寝起きが悪いんでしょうか?」 真空管博士:「ナス管とST管の使いはじめの音質差は管内の真空度の違いから来ています。ST管が製造される頃には真空ポンプの性能が大きく改善して、製造直後から真空度が高いことが要因となっています。ナス管製造時にはまだ真空度が低く、エージングによるゲッタの活性化により管内の真空度がじわじわと高まって、低域の締まりや解像度の増加が顕著となって現れます。」 なるほどそういうことだったのだ。 以前、真空管のエージングについてお話を伺っていたのを思い出したが、その時は傍熱管では36時間ほどのエージングが必要だとの話だった。 そんな訳でこれまで寝ぼけて弟分のST管とは全く別人の出来の悪い兄貴だったTUBEが、にわかに優秀で模範的な実力を示しはじめた。 そんなこんなで良いことばかりかと思えばさもあらず・・・・・・・。 古典球の弱みは製造後1世紀近い年月が過ぎているため、その分だけ品質の低下をリスクとして考慮しておかないといけないという面にある。 真空管博士のようにその品質を徹底的に吟味して全世界からTUBEを調達し、その後には真空管試験機にて良否を判定してピンの劣化したハンダを入れ替えるなど徹底したリファインを実施したとしても、実際にアンプに装着して長時間音出しをすると不具合が出るパターンがあるのだ。 今回博士からお譲りいただいた貴重なTUBEについても、最初に届いたRENS1374dのペアは片方のノイズが収まらないので品質の高い良品に入れ替えてもらっているし、今回のナス管についてもValvo製の片方からノイズが出るのでTelefunnken製に交換してもらい完璧なフォロー対応を受けている。 「どうしても試験機などでは判別できないリスクがあるので、できれば複数を調達するよう心がけています。」とは博士の弁であるが、これを独自でe-bayにて海外から調達し、実機に装着して問題が起きた時を考えると誠にゾッとする話である。 この辺りも博士が古典球の良さを日本のオーディオ愛好家に広めたいという、真空管への愛情が垣間見えるところである。 そんな訳で1930年代の人間が100年近い時を経て現代にタイムスリップし、その昔の素晴らしさを融合させていくという側面も伺える物語のような話でもある。 当時はラジオ程度にしか使用されていなかった真空管を、現代の高品質パーツに融合させて音楽を楽しむという、新たな発見がそこにはあるのかもしれない。 10/24 http://my-vintage.music.coocan.jp/2020.html
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