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(回答先: 10代のIQは大きく伸びる可能性=英大学研究 投稿者 sci 日時 2011 年 10 月 20 日 23:03:24)
われわれの知能は本当に向上しているのか?
ジェームズ・フリン
2012年 9月 25日 20:13 JST
IQテストは完全ではないが、役には立つだろう。学校で成績の悪い男の子がIQテストで非常に高いスコアを出すとしたら、学校でいじめに遭っているか、家庭で問題があるかを調査してみる価値がある。IQテストではまた、誰が大学でよい成績を残せるかもだいたい予想できる。ただ、やる気や自制心といった要因が少なくとも重要だが。
Brian Stauffer
現代人は人類として初めて仮定や非言語的シンボルが支配的な世界に生きている
米国のような先進諸国ではIQテストのスコアは長期間で大幅に上昇した(1984年の研究で私が最初に指摘し、現在では「フリン効果」として知られる現象だ)。1900年代初期から今日にかけて、スタンフォード・ビネー式知能検査とウェクスラー知能検査の両方で、米国人のIQスコアは10年ごとに3ポイントずつ伸びた。このような検査は20世紀初頭から何らかの形式で存在しており、長い時間のなかで更新されてきた。もう1つの検査であるレーヴンのマトリックス検査は1938年に開発され、このテストについては1872年に生まれた人々のスコアも残っている。このテストでは10年ごとに5ポイントの上昇が示されている。
1910年に今日の基準で測ったとしたら、われわれの祖先たちのIQスコア平均は70(レーヴンのマトリックス検査では50)だったことだろう。これとは対照的に今日のわれわれのIQスコア中央値はテストにもよるが130〜150だ。現代のわれわれは天才なのか、それとも昔の人々は頭の回転が遅かったのか。
こうした結果から、IQをめぐって一連の懐疑的見方が生じている。テストでこれほどのナンセンスが示唆されている時に、どうやってテストの有効性を主張できるだろうか。われわれの祖先がわれわれよりも頭が悪かったわけではもちろんない。彼らにもわれわれと同じ実際的な知能と実社会に対処する能力があった。現代のわれわれが祖先と異なる点はもっと基本的なことだ。IQスコアの上昇は現代社会、特に教育がいかに人の知性そのものを変化させ、祖先と異なる状況となっているかを示している。祖先たちはもっとずっと単純な世界に生きていて、6年間の教育以上に正式に学校に通った人々はほとんどいなかった。
レーヴン検査は論理的関係を伝えるイメージを使用している。ウェクスラー検査には10の下位テストがあり、そのうちのいくつかはレーヴン検査とほぼ同じことを行うのに対し、他の下位テストは知性的な人々が長期間かけて取得する可能性の高い特徴を測る。つまり、語彙や対象の分類能力などだ。
新しく、特異な面を持つ現代人は、このようなテストで高得点を挙げることができる。われわれは人類が始まって以来初めて、カテゴリーや仮説に基づいた事柄、非言語的なシンボルや別の現実を描く視覚映像が支配的な世界に生きている。また現代に生きるわれわれは過去の世代には無縁だったであろう世界に対処するまでに進化している。
1世紀前には人々は有利な立場を求めて実在の世界を操作するために概して知性を利用した。彼らは私が「功利主義者の眼鏡」と呼ぶものを着用していた。一方、現代のわれわれの知性は抽象的なシンボルを理論的に分析する傾向がある――私はこれを「科学的な眼鏡」と呼んでいる。われわれは今日、物事の違いにとらわれるというよりも、物事を分類する傾向がある。われわれは仮設を真剣にとらえ、象徴的な関係を容易に識別する。
過去の物の見方は偉大な心理学者アレクサンドル・ルリヤと1920年代のロシアの田舎の住人――正式な教育をほとんど受けていない1910年の米国人のような一般人――の間の面談でも示されている。
ルリヤ:魚とカラスの共通点は?
回答:魚は海に住み、カラスは飛ぶ。
ルリヤ:両方を表す言葉を1つ挙げるとすれば?
回答:「動物」と言うのは正しくないだろう。魚は動物ではなく、カラスもそうではないからだ。人は魚を食べるがカラスは食べない。
科学以前の時代の人々は異なる用途を与える物事の差異に執着していた。私の父親は1885年生まれだ。彼に犬とウサギの共通点はと聞けば、「ウサギ狩りに犬を使う」と答えただろう。今だったら、学校に通っている男の子は「両方とも動物だ」と答えるだろう。IQテストでは後者が正しい回答だ。今日、われわれは世界を理解するための前提条件として世界を分類することが極めて自然だと感じている。
科学以前の時代のロシア人にとって、ラクダの存在と同じくらい重要なものを挙げることは、たとえ仮定の話でもできなかっただろう。仮定の話に対する抵抗はIQテストにそぐわない精神状態というだけではない。われわれは仮定の話を真剣にとらえることができるので、今日の道徳論的議論は1世紀前よりも成熟している。われわれは別のシナリオを想定し、他人の立場になってみることができる。
中等教育の普及で、書物や演劇、芸術を理解する人々が大量に生まれた
以下の考案例(実際のIQテストからのものではない)は、われわれの知性がいかに進化してきたかを示している。3例ともに、一連の関連性を示唆している。あなたはその関係を識別し、複数の選択肢の中から回答を選ばなければならない。
1. [gun(銃)] / [gun] / [bullet(弾丸)] 2. [bow(弓)] / [bow] / [空白].
具体的な物を表す絵が関係を伝えている。1910年には、平均的な人は空白部に入る回答として「矢」を選ぶことができただろう。
1. [square(四角)] / [square] / [triangle(三角)]. 2. [circle(丸)] / [circle] / [空白].
この質問では、関係は具体的な物ではなく、形で伝えられている。1960年までには多くの人々が「半円」を回答として選ぶことができた。四角形を2つに割れば三角形ができるように、円を2つに割れば半円になる。
1. * / & / ? 2. M / B / [空白].
この質問では、関連は単にシンボルであること以外、シンボル同士に何の共通点もない。このような「関係」は1つ1つのシンボルの見かけを超えている。2010年までには多くの人々がリストの中から「MやB以外の何らかの文字」を選ぶことができた。
こうした発達は、代数だけでなく人文科学における正規教育に対処する能力が伸びていることを示唆している。1910年と1990年に学校で14歳の学生に与えられたテストの質問を考えてみよう。1910年のテストでは社会的に価値のある情報に関するものが全てだった。45州の州都はどこか、といった具合だ。一方、1990年のテストは全て関係に関するものだった。つまり、多くの州の州都がその州の最大都市でない理由は、などの質問だ。田舎を中心とする州議会は大都市を嫌い、州都にニューヨーク市ではなくオールバニーを、フィラデルフィアではなくハリスバーグを選んだ。
われわれの生活は1910年以前の大半の米国民の生活と完全に異なっている。当時の平均的な米国民は学校に6年未満しか通わず、その後は工場や商店、あるいは農業に従事して長時間働いた。彼らが目にした唯一の人工的な画像は絵画や写真だけだった。基礎的な算数以外、非言語的なシンボルは(エリートにとっての)楽譜とトランプに限られていた。当時の人々の注意は所有と実用性、有益性と有害物に向けられていた。
中等教育の普及で、書物や演劇、芸術を理解する人々が大量に生まれた。1950年以降、少なくとも成人については語彙と情報に関する下位テストで大幅なスコアの上昇が見られている。より多くの言葉の使用はより多くの概念が伝えられることを意味する。より多くの情報はより多くの関連が認識されていることを意味する。仮定的な状況のより良い分析はさらに多くの革新を意味する。現代人の知性の発達に伴い、人々は技術者や科学者としてだけでなく、管理者や企業幹部としてもより良い実績を挙げた。
抽象概念を理解できる人々の層が厚みを増すことや、発想をめぐらすことを楽しむ人々との接触が増えること、さらにレジャーの充実――こうした発展の全ては社会にとってプラスとなってきた。しかも、遺伝子的あるいは生理学的に人の脳を改良することなくそれが実現している。われわれの知能は、世界の可能性をより広く知ることにより、十分に発達した。
(筆者のジェームズ・フリン氏は『Are We Getting Smarter? Rising IQ in the 21st Century』(ケンブリッジ大学出版局)の著者)
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