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欧州が不安視する「内向きなドイツ」 〜メルケル首相の近視眼的な態度が意味するもの〜 http://www.asyura2.com/09/kokusai4/msg/751.html
【記事転載元:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3108】
ドイツの近隣諸国はかつて、強大な力を持つ拡張主義の国家が欧州大陸の中心部を支配することを心配していた。彼らは今、無関心で内向的なドイツと向き合わなければならない。 ドイツのアンゲラ・メルケル首相がユーロ圏によるギリシャ救済策に示す敵意は、もっと大きな話の一端だ。経済問題であれ、外交問題であれ、メルケル首相は内向きになったドイツ、つまり欧州に対する責務を見直して縮小した国を代弁しているのである。 ユーロ圏の危機は物事をはっきりさせた。ギリシャの浪費癖は、欧州の経済統合に対する深刻な脅威に発展した。欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長は先日、メルケル氏がいずれ救済策の支持に回ることを確信していると述べ、強く訴えかけるように、「何しろ彼女は献身的なヨーロッパ人なのだから」と語った。 だが、ドイツ政府が発するメッセージは、よくて曖昧なものだった。メルケル氏は、ギリシャ支援の代償として国際通貨基金(IMF)の関与を強く要求した。概して言えばドイツは、ユーロを安定させる対策がドイツが抱く財政規律の信念を傷つけることは認めないという姿勢を明確にしたのだ。 ドイツとその他欧州諸国の間に生じた軋轢は、赤字国と黒字国それぞれの責務に関する議論にとどまらない。この問題が何より強く影響するのが、かつて欧州統合の重要な原動力だった仏独同盟だ。フランスのニコラ・サルコジ大統領は今でも、欧州連合(EU)は世界的なプレーヤーであり、いつの日かその経済の強さに見合う大きな政治力を持つ組織だと考えている。 一方、メルケル氏は静かな暮らしを望んでいる。実際、リスボン条約によって新設されるEU大統領職に軽量級の政治家を充てることを断固主張したのはメルケル氏だった。国外ではほとんど知られていないベルギー前首相のヘルマン・ファンロンパイ氏は、ドイツの警告に一番反対しそうにない人物として、ドイツ政府が推す候補に選ばれたのだ。 新しいドイツは自国の国益に関して、以前より狭い――中には利己的と言う人もいるだろう――見解を抱いている。
プーチン大統領が独首相と会談、次期政権も路線継続強調 ドイツは欧州の強硬な対ロ政策ではなく、2国間の平穏な関係を望んでいる 今のドイツは、戦後世代を形成した罪悪感という重荷を負っていない。ドイツ政府はこれ以上、他国の壮大な野心のツケを払いたくない。ウラジーミル・プーチン首相率いるロシアについては、欧州による強硬な政策ではなく、ドイツ独自の平穏な対ロ関係を望んでいる。 このため、中欧・東欧の隣国が求めている共通のエネルギー政策は、ドイツとロシアの2国間の取り決めに対する大きな脅威と見なされる。 同じ理由からEUは――それを言えば北大西洋条約機構(NATO)も――旧ソ連圏からの新規加盟の承認を急ぐべきではない。トルコは50年前に約束されたEU加盟を永遠に待ち続けなければならない(ただし、トルコについてはサルコジ氏も共謀者である)。 受け身のドイツ政府は、米国の安全保障の傘の下に安穏と身を置くが、ドイツ国内にある米国の核兵器については撤去を望んでいる。アフガニスタンへの派兵については圧力に屈したが、軍隊派遣は二度と繰り返せない例外だということをはっきり示すよう計算された条件をつけた。 一方、はっきり意見を述べる別のドイツは、ユーロ圏の規則には、国益よりも共通の利益を優先させる力はないと主張する。要するに、同盟国や近隣国との結束は今、ドイツ国内の世論の後に来るものとして位置づけられているのだ。 中には、それの何が悪いのか、なぜドイツが愛他主義の役目を担わなければならないのか、と言う人もいるだろう。我々はドイツが永遠に戦争賠償金を払い続けることは期待できない。サルコジ氏や、それを言えば英国のゴードン・ブラウン首相に対して、国益より欧州の利益を優先させるよう求める人はいないだろう。 我々は必然的な転換を目にしているにすぎない。実は20世紀後半が例外であり、ドイツは今、「普通の国」なのである。もし、そのドイツが「大きなスイス」としての将来を選ぶのであれば、ほかの欧州諸国が文句を言う筋合いはない。 歴史に通じた向きには、野心がないと言ってドイツを非難することは全く奇妙に思える。パートナー諸国は本当に、欧州大陸で一番強い国が力を振りかざし始めることを望んでいるのか。それはまさに、先達が欧州石炭鉄鋼共同体の創設によって終止符を打とうとしたことではなかったか。
それ以前の強制的な封じ込めは、悲惨な失敗に終わった。第1次世界大戦は結局、ファシズムの種をまく欠点のある条約を生み、第2次世界大戦につながることになった。この循環をようやく絶ったのが、ドイツ分断と欧州統合だ。後者は、米国および欧州の一世代の政治家が示した類稀なる才覚の表れだった。 戦後の和解は、現在記憶されているほど常に平穏なものではなかった。欧州諸国は一度として、ドイツについて心配するのをやめなかった。ドイツが取ったソ連とのデタント(緊張緩和)政策は、ドイツが国家再統一と引き換えに冷戦における中立的立場を変えるのではないかという懸念を呼んだ。仏独同盟という牽引車は時折壊れた。 筆者が1980年代初頭に記者として手がけた最初の大きな仕事は、ロイターのブリュッセル特派員の任務だった。当時の大きなニュースはフランソワ・ミッテラン大統領とヘルムート・コール首相の大激論で、経済成長を追求するフランスと財政の正統性を重視するドイツが対立していた。 結局、コール氏がこの戦いに勝ち、フランスに通貨切り下げの代償としてデフレを受け入れさせた。 当時繰り広げられた黒字国と赤字国の責任を巡る議論は、今盛んに論じられている議論とほとんど同じだった。皮肉なのは、その後のフランスによる通貨同盟推進が、単一通貨ユーロがこうした論争を一掃してくれるという確信から生まれた動きだったということだ。
1989年のベルリンの壁崩壊で、ドイツの拡張主義に対する懸念が深まったが、ドイツは欧州統合の道を選んだ ドイツの意図に対する疑念は、ベルリンの壁崩壊によって再び火がついた。英国とフランスは、昔のドイツ問題の再燃を懸念し、共謀してドイツ再統一に反対した。 しかし、こうした騒動が、欧州プロジェクトに欠かせない基礎、つまり、国益と欧州の利益を一体化させるドイツの意思を崩すことはなかった。そして欧州統合はドイツの経済力とフランスの政治的な指導力を結びつけた。 この取り決めこそが、メルケル氏が今、拡張主義ではなく、ドイツの自己利益という温かいベッドカバーの下に隠れる政策によって挑んでいるものだ。これまで、地政学が激変する今の時代から、最終的にどのような欧州が姿を現すのか盛んに心配されてきた。その前に問われるのが、どんなドイツか、という問題なのだ。
【関連記事】EUの新たな問題:利己的なドイツ人 - http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/983
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