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中野重治 『広重』から
http://www.asyura2.com/09/jisin16/msg/778.html
投稿者 みやした 日時 2011 年 3 月 31 日 21:15:20: FfJ9tJ8f6Odts
 

(回答先: 視点:日本の気高さが怖い(BBC) 投稿者 無段活用 日時 2011 年 3 月 31 日 18:19:51)

コメント欄かフォローアップ投稿か迷いましたが・・

震災後、中野重治のエッセイを思い出しました。浮世絵画家・歌川(安藤)広重にまつわっての一文。以下、引用


・・・百姓町人のかなしさ、そんなものとして意識される以前での政治権力にたいする恐れ、雨や風や洪水やにいたぶられどおしの生活とその連続、
そこから自然に出てきた軽口による逃げ、
ほんのちょっとしたものに見だすたのしみと
それを見つけ出す知恵といったもの、
そんなものが広重という人だという感じが私のなかに自然に出来てきていた。


・・・何もない河原、ずっとさきに見える森、そういうものが、その森の向うにも同じような淋しい生活があることを見せている。
露骨でなくそれがしずかに出ている。
どこかの雪の夕暮れの絵などもある。

どこでも、人間の生活が貧しくておとなしい。反抗というものなどがない。
自然にたいする人間のほうから押しかけて行く関係がない。牛肉をしこたま食って、それから匂いの強い野菜をむしゃむしゃ食って行動するというようなところがない。
それがそのときの私に慰めのように働くのだった。
 

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コメント
 
01. みやした 2011年3月31日 21:42:01: FfJ9tJ8f6Odts : FXlsIA4Hrg
・・・これゆえ、熱狂的な「湧き上がり」は恐れられたのかもしれませんね。

一揆・打ち壊し・ええじゃないか・日比谷の焼き打ち・米騒動・労働争議・安保闘争などなど

そういえば、昨日の国会。
衆議院法務委員会、自民党・稲田議員と警察庁生活安全局長とのやりとりで「流言飛語」とかについて話題になっていました。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=TM
(衆議院インターネット審議中継、稲田議員の時間19分経過のあたり)

この局長さん、ジェスチャーがおもしろいね


02. 2011年4月01日 03:04:57: sHkbotZDCo

大江健三郎;洪水はわが魂に及び

大江健三郎氏の上記小説は1973年9月に発表されている。今から35年前、氏が39歳のときの作品である。


首題の「洪水はわが魂に及び」については睡魔と闘いながら4日費やして読み終えたが、悪夢にうなされながら目を覚ました幼児の如く、はてあれは夢だったのかと、いまだ寝床から起き上がれない。あの物語は一体何なのか、と考えてしまう。


「怪」とあだ名される保守系政治家の秘書をしていた主人公、勇魚(イサナ)が「怪」の娘、直日(ナオビ)と結婚し、子供「ジン」が生まれる。

「怪」は癌に侵され次回の選挙には絶望的なことから娘の「直日」が支持者から推されて活動することから、夫の「勇魚」に「ジン」の養育を押し付ける。

片目の見えない35歳の「勇魚」はかってセールスをしていたとき核戦争に備えるというキャッチフレーズで地下シェルターの販売活動をしていたが、その見本として郊外に建てられた地下シェルターの上に3階の堅固なコンクリート建物をつくり、妻から生活費をうけながら「ジン」と二人の生活をしている。

「ジン」は智恵遅れながら周囲の音に敏感であらゆる鳥のさえずる声を聞き分け、「勇魚」は日がな建物の中で周囲の樹木や遠い海に住む鯨と交感すべく瞑想している。

「勇魚」父子の日常は物理的にも精神的にも世間から隔離された生活であったが、ふとしたことから娘一人を含む数人の不良少年グループとかかわりを持つようになる。

このグループは「自由航海団」と称し、やがて地球規模の大地震、大災害が起きると信じ、その時に海洋に乗り出して生き残り国籍を離れて自由人になるのだという荒唐無稽な考えを目標にかかげ破壊と略奪を重ねて当局に追われ「勇魚」のシェルターに逃げ込んでくる。

「勇魚」は彼らに共鳴し、無学な彼らに教養と英語を教えるため教材に小説「カラマーゾフの兄弟」の英訳を教える。

「勇魚」は樹木や鯨と交感するために瞑想するような狂人かと思うと、無学な不良少年団に英語を教えるインテリでもあり、その「勇魚」が荒唐無稽な「自由航海団」に共鳴するという複雑な人物像を抱かせるのだ。

この後、物語りは不良少年団グループの一人一人の特異な人物性格、肉体の縮む男や近くの自衛隊駐屯地から色仕掛で参加し、軍事訓練教官となる男などが描かれる。

「勇魚」は、幼児「ジン」の世話をするようになるクループの中の未成年の娘、伊奈子と性交を重ねるようになり、人生に積極的な生存の意義をつかみかけたのか、と読者に思わせるが、取り囲まれた機動隊の攻撃を目前にして「伊奈子」に「ジン」を託して投降させ、「勇魚」は過激な少年グループとともにシェルターに残る。

戦うグループを階上に残し「勇魚」一人武器はもたず一人地下のシェルターに入り瞑想する。地下室の一角に土の露出しているところから地下水が湧き出してくる。「勇魚」は地下室で心の中で一人語りかけている。

〜オレハ樹木ト鯨ヘノ人類ノ凶暴ヲ告発スルコトヲ望ンデキタ。ソノヨウナ者トシテ、モットモ人間ラシク生得ノ凶暴サヲアラワシ、永年ノ考エノ正シサヲ証明シナケレバナラナイ。

凶暴ナ抵抗ヲオコナウナカデ、最後ノ人類タルオレノ肉体=意識ハ、宙ブラリンノママ爆発シ、ソシテ無ダ。

ソノトキコソ、鯨ヨ、キミタチハ、樹木ヨ、ホカナラヌキミタチニムケテ、スベテヨシノ大合唱ヲオクルダロウ。アリトアル葉ムラハ身ヲフルワセテ唱和スルダロウ、スベテヨシ!

http://blogs.yahoo.co.jp/yhm1420/28490369.html


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