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議会制度に一石 町村議会のあり方、総務省2案
両極の姿だけが解なのか
人口減で議員のなり手がいない小さな町村議会のために総務省の町村議会のあり方に関する研究会(座長・小田切徳美明治大教授)が2つの新しい議会の形を提言した。議員数を絞る少数精鋭の「集中専門型」と、議員の負担を減らし多くの人が掛け持ちできるようにする「多数参画型」だ。議会制度に一石を投じる抜本改革案だけに賛否を巻き起こしている。
今回の報告書で示された2案はまったく正反対の地方議会の姿といえる。突き詰めていうと、少数のプロ議員による議会か、多数のアマチュア議員による議会か、という選択である。
欧米に比べると、日本の市町村が担う仕事量は多いといわれる。日本では国、都道府県、市町村の役割や業務をはっきりと区分するのではなく、一緒に取り組む「融合型」の行政体制になっているからだ。それに伴い、市町村議会が審議し、議決すべき案件も多い。
仕事量が多いのだから専業で取り組んでもらい、相応の報酬も支給するというのが「集中専門型」だ。仕事量を減らして兼業でもできるようにするのが「多数参画型」である。
地方議会の将来像を示したという点では有意義な提言だが、これで議員のなり手不足が解消するのかといえば疑問だ。両極の議会像だけがあって真ん中がないからだ。
新たな2つの議会像を選べば、議員の兼職・兼業規制が廃止されたり、議員活動のために休暇を取得する会社員に対する不利益な扱いを禁止したりする。立候補した公務員の復職制度まである。一方で、現行制度のままなら新たな対策は考えられていない。
例えば、高知県大川村が求めている非営利の団体役員に限って議員の兼業規制を緩和することは検討に値するだろう。北海道浦幌町議会が提案した議員報酬に「若者手当」や「育児手当」を設ける案も理解できる。
総務省は今回の提言を実現する場合、小規模な市町村に限った特例制度にする方針だ。それならば大川村や浦幌町の現行制度のなかでの提案も、柔軟に認めればいい。この研究会の本来の目的は、議員に立候補しやすい環境をどう整えるかという点にあったはずだからだ。
一方、地方議会側も今回の提言にただ反発するだけでは困る。議会への住民参加を促す「議会参画員制度」などは面白い案だ。それぞれの地域で住民も踏まえて大いに議論してほしい。
(編集委員 谷隆徳)
集中専門型 定数最少3人、住民参加 多数参画型 兼務OK、夜間・休日運営
研究会が示した新しい議会の形は(1)議員数を減らし、少数精鋭のプロ議員による「集中専門型」(2)立候補できない制約を減らし、多くの掛け持ち議員による「多数参画型」――という2つだ。
集中専門型は議員定数を最少3人に絞れるようにする。町村の議員報酬は平均月額21万円で、小さな町村の議員報酬では生計を立てていけない。議員を減らせば1人当たりの報酬を生活保障の水準に引き上げられる。プロの専業議員として首長並みに働いてもらうようにするのがねらいだ。
ただ議員が少なくなると多様な民意を反映するのが難しくなる。そこで集中専門型には、住民に参加してもらう議会参画員制度を併せて設ける。
議会参画員は条例や予算など重要な議案について議員と話し合うが、議決権は持たない。裁判員制度を参考にしており、住民からくじなどで無作為に選び出し、議会への出席義務を課す。職務に就いた日数に応じて日当と旅費を費用弁償する。人数は議員定数の2〜4倍を想定している。
一方、多数参画型は議員の権限や負担を減らし、多くの住民が立候補しやすくする。小さな町村は議員が少ない分、幅広い議決案件を抱えて拘束時間が長い。契約や財産処分を一つ一つ議決するのはやめて議決案件を絞る。夜間や休日を中心に議会を運営し、本業を別に持ちながら議員を続けられるようにする。
議員の規制も緩める。個々の契約を議決案件としない分、自治体から業務を請け負う企業の経営者でも議員との兼業を認める。ほかの自治体の一般職員の兼職も可能にする。集落や小学校区を単位とした今よりきめ細かな選挙区を設け、議員定数も増やす。
研究会は当初、なり手不足に悩む高知県大川村が議会に代わり住民全員で議論する町村総会を検討したのを受け、町村総会について議論した。だが過去の事例や海外の類似ケースから実効性がないと判断、特例的な議会を設ける方針に転換した。人口減の影響が全国一律の議会制度に見直しを迫るところまで来た形だ。
新しい議会を導入する場合は条例で定める。地方制度の根幹に関わる改革になるため、首相の諮問機関、地方制度調査会で議論するもようだ。ただ全国町村議会議長会は反発しており、総務省は「今後については全く白紙」(行政課)としている。
(桜井佑介)
理想型語ることが重要 小田切徳美明治大教授(研究会座長)
――報告書の狙いは。
「住民参画をキーワードに地方議会の持続性をいかに確保するかを考えた。高知県大川村から町村総会について問題提起があり議論が始まったが実効性のある取り組みは難しい。だからといって否定しているわけではない。町村総会にある住民参画の力が必要だからとり入れるよう工夫した」
――2つの議会から選ぶ仕組みに反発もある。
「実は2つではなく3つ。現行議会もひとつのタイプ。サポーター制度などを自主的に行っていくパターンがある。それで対応できないところに2つ用意した」
「私は地域づくりの専門家であって議会の専門家ではない。議会制度や憲法、法哲学、行政法の専門家と非常に幅広いメンバーを入れ、議論の幅を広げた。従来であれば過去の地方制度調査会で積み残しがあるから検討しようとするが、あえてしなかった。いままでの部分的な改革を少し突破したかもしれない」
――現行制度の規制緩和は考えなかったか。
「今後、現行議会にどうとり入れるかの議論もあるだろうが、今困っているから動くというアクションが重要だ。特例が実験的に行われ、効果があるから一般制度に、ということになっていく可能性もある。いきなり現実で調整すると、どこを目指して改革したらいいかわからなくなる。理想型を語ることが我々にとって重要だった」
押しつけ、大きなお世話 桜井正人全国町村議会議長会長
――研究会の報告書に反対意見を表明した。
「報告書は高知県大川村をきっかけに検討したというが、我々は何もお願いしていない。全国を束ねる議長会に打診もなければ相談もなかった。現行制度での兼業禁止規定の緩和など我々の要望はスルーしておいて2つの議会像なんて。こんな検討は頼んでいない。大きなお世話だ」
――一番問題なのはどこか。
「2つのパッケージの押しつけだ。パッケージがなくても議会は報酬や定数、運営の仕方を決められる。自治体の判断でできることは任せればいい。唯一、身分規制、兼業・兼職の話は法律を改正しなければできないからパッケージと切り離して個別事項として検討すればいい」
「現行制度で苦労して頑張っている議会を応援するようなことを考えてほしい。我々と議論するのであれば、まずパッケージ論はやめてもらわないといけない」
――今後の対応は。
「報告書通りに制度化されることには大反対だ。地方制度調査会にかけるとの見方もあるが、認められない。地方自治、地方分権といいながら、なぜ一方的なもので法制化できるのか。スタートから無視された地方の現場の声をもう一度考えてほしい。肉付けや削除ではどうにもできない」
[日経新聞4月2日朝刊P.25]
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