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見ているものは同じ
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投稿者 ダイナモ 日時 2009 年 2 月 15 日 23:21:43: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.chikumashobo.co.jp/new_chikuma/kikuchi/19_1.html

 B型本にはじまる血液型の本が去年のベストセラーに挙げられている。血液型の本がなんで今さらという気がするけど、人数の多いA型やO型じゃなく、まずB型の人向けの本を作るという画期的なアイデアが、残念ながら成功しちゃったようだ。
 充分に売れたからもういいんじゃないかと思ったら、それからテレビCMが流れ始めたので、さらにびっくりだ。血液型本のテレビCMははじめてじゃないのかもしれない。でも、ちょっと珍しい。
 血液型と性格の関連なんてものは実際には見つかっていないわけで、血液型性格判断はいわば現代の迷信だよね。根拠はないのに、なんとなくみんなが信じている。今回は、今まで血液型性格判断で悪く言われてばかりだったB型をターゲットにした本が作られて、しかもそれがヒットしてしまった。実に残念で、がっかりさせられる話だよ、いやほんとに。

初めて見る世界


イラスト ケーブルテレビで見られるディスカバリー・チャンネルに「怪しい伝説(mythbusters)」というシリーズがある。これは、mythbusters と呼ばれる人たちが、巷に流れるさまざまな怪しい話を体を張って検証していくというなかなか痛快な番組。もちろん、娯楽番組だから、割り引いて見なくちゃならないのは当然だし、これで本当に検証になっているかなという疑問がわくテーマもあったりするものの、テレビ番組としてはかなりがんばっていると思う。体を張った実験という意味では、アイドルグループ「嵐」がさまざまな実験に挑戦する日本のテレビ番組にテイストが近いかもしれない。ディスカバリーのほうはいかにもアメリカ的なセンスの演出だけど。
 アポロ月着陸捏造説を検証した回は、シリーズ中でも特に人気のあるもののひとつらしく、つい先日再放送されたので、ご覧になったかたもおられると思う。実は僕もこの再放送ではじめて見た。
 アポロは月に行っていないという月着陸捏造説についてはこの連載の第一回で取り上げた。今回は別の角度から考えてみたい。もちろん、アポロは月に行ったし、十分な証拠が揃っているから、捏造だと考えなくちゃならない理由はどこにもない。ありていに言って、捏造説は単にばかばかしいだけだ。それなのに、捏造説が今も根強くあって、いっこうに消えないのはどうしてなのだろう。理由はいくつかありそうだけど、そのひとつは、うっかり信じてしまいたくなるようなもっともらしい説明がついているからだ。そして、その説明のかなりの部分は、当時撮影された写真や映像の不自然さに基づいている。もちろん、不自然さといっても、本当は不自然じゃないから、正確にいうと、捏造説によれば不自然な点があるとされているということ。本当に月面で撮影したにしてはおかしな点があるので、実は月になんか行ってなくて、映像は地球上のスタジオで撮影したものに違いないというわけだ。

 ディスカバリー・チャンネルでは、模型を使った再現実験でアポロの映像が不自然じゃないことを確認してみせていた。逆に、捏造説が主張する通りに地上で特殊撮影をしてみても、本物のアポロ映像のようにはなかなかならない。頭で考えてうまくいきそうなものも、いざやってみると、どこかが違う。地球と違って月面には空気がないし、重力も地球の1/6だ。それを特殊撮影で完璧に再現するのは、やっぱりむずかしいということだ。今ならCGでやっちゃうのかもしれないけど、なにせ40年近く前のことだからそうはいかないしね。
 月の上ではあらゆることが地球上とは違っている。だから、月面では普通のことでも、地球上の感覚ではおかしく見えて当たり前。いや、地球と違うから不自然だというわけじゃない。そんなことを言ったって、誰にも相手にされないと思う。月と地球が違うことくらいは誰でも理解しているのだから。捏造説ではあくまでも、月面で撮影したにしては不自然だと主張する。その意味では、真剣に考えた結果なのだとは思う。
 問題は「不自然」ってなに、っていうことだ。というより、まずは「自然」ってなに、が問題だ。不自然だと言いたければ、「月面での自然な映像」がどういうものになるはずかをあらかじめ知ってなくちゃならない。低い重力のもとで歩くとどうなるかとか、空気がないから昼でも空は暗いはずとか、そういういろいろな知識を動員して、映像がおかしいとかおかしくないとかいう話をする。だけど、それが実はむずかしい。どうしたって、考え落としはあるものだから。実際の映像を見せられてようやくそれに気づいて、ああこうなるのかと納得するというのが、まあ普通の話。
 ところがそこで納得せずに、自分の知識のほうが正しいと思い込んじゃうと、映像のほうに「不自然」というレッテルを貼ることになる。言うなれば、自分の知識や常識についての過信、だよね。捏造だとか言い出す前に、自分たちの知識は本当にそんなにしっかりしたものなのか、振り返ってみなくちゃならないのだと思う。

はじめて見る光景


 似たような事情はたとえば、9.11自作自演説にもある。これは2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロが実はアメリカ政府の自作自演だという陰謀論で、これも第一回でちょっと紹介した。念のために結論だけ言っておくと、これは妄想に過ぎない。
 ワールドトレードセンタービルが崩壊するニュース映像を見て、世界中の誰もが驚いた。旅客機がビルに衝突する場面は何度見ても衝撃的なのだけど、もうひとつの驚きは、衝突からだいぶ時間が経った後で突然ビル全体が崩れてしまったことだ。ビル建築の専門家も驚いたようで、爆破されたのかと思ったと書いた専門家もいる。あくまで、思っただけね。もちろん、それは事件直後の情報もあまりなかった時点での話で、今は爆破されただなんて信じられていない。
 ところが、崩壊のしかたが不自然だから、飛行機の衝突で崩壊したのじゃなく、爆破されたに違いないと、かたくなに信じる人たちもいる。そのひとり、アメリカの物理学者スティーヴン・ジョーンズによれば、あの崩壊が爆破でないとしたら物理法則に反するらしい。物理法則から考えて、不自然な崩壊のしかただというわけ。物理学者が法則に反するというんだからそうに違いないと、鵜呑みにしちゃった人は世界中にいる。日本でも少なからぬ人が今もそう信じている。
 問題はやっぱり、不自然ってなに、ということだ。

 巨大ビルの崩壊っていうのは複雑な現象で、コンピュータ・シミュレーションで解析するのも非常に難しい。それなのに、ニュース映像を見ただけで、これはおかしいだなんて断言しちゃっていいのだろうか。物理法則に反するなんて言っちゃっていいのだろうか。もっというと、僕たちは巨大ビルの崩壊について何を知っているといえるんだろうか。
 ワールドトレードセンター級の巨大ビルに巨大旅客機が衝突して崩壊したなんていう事件はこれまでになかった。あれは人類がはじめて体験したできごとだった。専門家もああいう壊れ方をするなんて予想していなかった。むしろ、僕たちはあの事件ではじめて、巨大ビルがあのように崩壊することを知ったわけだ。
 おおがかりなコンピュータ・シミュレーションによって、あの状況であのビルはあのように壊れるものらしいとわかってきた。とはいうものの、完全に理解できたとはまだとても言えない。世の中では誤解されていそうなのだけど、コンピュータ・シミュレーションをすればなんでも再現できるというのは幻想にすぎない。シミュレーションのもとになるモデルがちゃんとしていないと意味のある結果は出ないし、モデルがよくても計算には誤差がついてまわる。だから、努力はこれからも続けられていくはずだ。ひとつはっきりしているのは、映像を見ただけで物理的におかしいだとか不自然だとか言っていいほど簡単な現象じゃないということ。ジョーンズがどうしてあれほど自信を持って、物理法則に反すると言い切れるのか、その自信の出どころが僕にはさっぱりわからない。

常識の問題


 もっとも、月着陸捏造説だとか9.11自作自演説を判断するのに、月面についての専門知識だとか、ビルについての専門知識だとかが本当に必要なのかというと、実はそうじゃない。「不自然さ」の問題は本質的とはいえない細かな話であって、知らなくても判断はできる。むしろ、映像の不自然さのような細部にこだわりすぎると「木を見て森を見ず」になっちゃうので、あまりよろしくない。
 なんのために捏造だの自作自演だのをしなくちゃならないのか、とか、自作自演のためにはどれくらいの数の人間が秘密を守らなくちゃならないか、とか、そういうおおざっぱな問題を考えるだけで、そんな陰謀はありえないことくらいすぐにわかる。特に、9.11自作自演説が正しいとしたら、同じ国にすむ人たちを犠牲にするために多くの人間が秘密を守っていなくちゃならない。本当にそんなことを信じるとしたら、それはやっぱり決定的に想像力が足りないのだと思う。別の角度から考えていたつもりが、結局は想像力の問題に行き着いてしまった。やっぱり、だいじなのは想像力だ。もっとも、陰謀を信じる人たちにしてみれば、こういう説こそ想像力が足りないのだろうけど。
 mythbustersの楽しい話を書いていたはずなのに、重い話になってしまった。正月早々すみません。

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ヤッパリ想像力の問題なのだろうと思う。仮に陰謀だとしたらどれだけの人間が一生秘密を守り続けなければならないのだろうか?
こんなことを想像してみると911はアポロ月着陸と同じ質の事柄であることに気づく。
ビル崩壊の映像を微細に観察するとおかしな点があるように見える。しかし別の視点から見れば自然なことなのかもしれない。実際、陰謀論を唱える人がこの映像にビル爆破の証拠が映っていると言われて見た映像は私から見て爆破などとは到底見えない映像だった。
陰謀という予断を持って細部を微細に観察すると陰謀に都合のように見えてしまう。これは人間の見え方の特性なのだと思う。どれだけ予断を持たずに自然に見ることができるか。

今どきアポロ月着陸陰謀論を唱える人は救いがたいと思う。では911はどうだろうか?
陰謀だとしたらそれに関与した人数はどれくらいだろう。100人、1000人、あるいはそれ以上か。
計画した人間は相当なバカと言わなければならない。陰謀だとしたらだが。
911は常識で判断できるレベルであることは間違いない。と思います。

 

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