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B型本にはじまる血液型の本が去年のベストセラーに挙げられている。血液型の本がなんで今さらという気がするけど、人数の多いA型やO型じゃなく、まずB型の人向けの本を作るという画期的なアイデアが、残念ながら成功しちゃったようだ。 充分に売れたからもういいんじゃないかと思ったら、それからテレビCMが流れ始めたので、さらにびっくりだ。血液型本のテレビCMははじめてじゃないのかもしれない。でも、ちょっと珍しい。 血液型と性格の関連なんてものは実際には見つかっていないわけで、血液型性格判断はいわば現代の迷信だよね。根拠はないのに、なんとなくみんなが信じている。今回は、今まで血液型性格判断で悪く言われてばかりだったB型をターゲットにした本が作られて、しかもそれがヒットしてしまった。実に残念で、がっかりさせられる話だよ、いやほんとに。 初めて見る世界 イラスト ケーブルテレビで見られるディスカバリー・チャンネルに「怪しい伝説(mythbusters)」というシリーズがある。これは、mythbusters と呼ばれる人たちが、巷に流れるさまざまな怪しい話を体を張って検証していくというなかなか痛快な番組。もちろん、娯楽番組だから、割り引いて見なくちゃならないのは当然だし、これで本当に検証になっているかなという疑問がわくテーマもあったりするものの、テレビ番組としてはかなりがんばっていると思う。体を張った実験という意味では、アイドルグループ「嵐」がさまざまな実験に挑戦する日本のテレビ番組にテイストが近いかもしれない。ディスカバリーのほうはいかにもアメリカ的なセンスの演出だけど。 アポロ月着陸捏造説を検証した回は、シリーズ中でも特に人気のあるもののひとつらしく、つい先日再放送されたので、ご覧になったかたもおられると思う。実は僕もこの再放送ではじめて見た。 アポロは月に行っていないという月着陸捏造説についてはこの連載の第一回で取り上げた。今回は別の角度から考えてみたい。もちろん、アポロは月に行ったし、十分な証拠が揃っているから、捏造だと考えなくちゃならない理由はどこにもない。ありていに言って、捏造説は単にばかばかしいだけだ。それなのに、捏造説が今も根強くあって、いっこうに消えないのはどうしてなのだろう。理由はいくつかありそうだけど、そのひとつは、うっかり信じてしまいたくなるようなもっともらしい説明がついているからだ。そして、その説明のかなりの部分は、当時撮影された写真や映像の不自然さに基づいている。もちろん、不自然さといっても、本当は不自然じゃないから、正確にいうと、捏造説によれば不自然な点があるとされているということ。本当に月面で撮影したにしてはおかしな点があるので、実は月になんか行ってなくて、映像は地球上のスタジオで撮影したものに違いないというわけだ。 ディスカバリー・チャンネルでは、模型を使った再現実験でアポロの映像が不自然じゃないことを確認してみせていた。逆に、捏造説が主張する通りに地上で特殊撮影をしてみても、本物のアポロ映像のようにはなかなかならない。頭で考えてうまくいきそうなものも、いざやってみると、どこかが違う。地球と違って月面には空気がないし、重力も地球の1/6だ。それを特殊撮影で完璧に再現するのは、やっぱりむずかしいということだ。今ならCGでやっちゃうのかもしれないけど、なにせ40年近く前のことだからそうはいかないしね。 はじめて見る光景 似たような事情はたとえば、9.11自作自演説にもある。これは2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロが実はアメリカ政府の自作自演だという陰謀論で、これも第一回でちょっと紹介した。念のために結論だけ言っておくと、これは妄想に過ぎない。 ワールドトレードセンタービルが崩壊するニュース映像を見て、世界中の誰もが驚いた。旅客機がビルに衝突する場面は何度見ても衝撃的なのだけど、もうひとつの驚きは、衝突からだいぶ時間が経った後で突然ビル全体が崩れてしまったことだ。ビル建築の専門家も驚いたようで、爆破されたのかと思ったと書いた専門家もいる。あくまで、思っただけね。もちろん、それは事件直後の情報もあまりなかった時点での話で、今は爆破されただなんて信じられていない。 ところが、崩壊のしかたが不自然だから、飛行機の衝突で崩壊したのじゃなく、爆破されたに違いないと、かたくなに信じる人たちもいる。そのひとり、アメリカの物理学者スティーヴン・ジョーンズによれば、あの崩壊が爆破でないとしたら物理法則に反するらしい。物理法則から考えて、不自然な崩壊のしかただというわけ。物理学者が法則に反するというんだからそうに違いないと、鵜呑みにしちゃった人は世界中にいる。日本でも少なからぬ人が今もそう信じている。 問題はやっぱり、不自然ってなに、ということだ。 巨大ビルの崩壊っていうのは複雑な現象で、コンピュータ・シミュレーションで解析するのも非常に難しい。それなのに、ニュース映像を見ただけで、これはおかしいだなんて断言しちゃっていいのだろうか。物理法則に反するなんて言っちゃっていいのだろうか。もっというと、僕たちは巨大ビルの崩壊について何を知っているといえるんだろうか。 常識の問題 もっとも、月着陸捏造説だとか9.11自作自演説を判断するのに、月面についての専門知識だとか、ビルについての専門知識だとかが本当に必要なのかというと、実はそうじゃない。「不自然さ」の問題は本質的とはいえない細かな話であって、知らなくても判断はできる。むしろ、映像の不自然さのような細部にこだわりすぎると「木を見て森を見ず」になっちゃうので、あまりよろしくない。 なんのために捏造だの自作自演だのをしなくちゃならないのか、とか、自作自演のためにはどれくらいの数の人間が秘密を守らなくちゃならないか、とか、そういうおおざっぱな問題を考えるだけで、そんな陰謀はありえないことくらいすぐにわかる。特に、9.11自作自演説が正しいとしたら、同じ国にすむ人たちを犠牲にするために多くの人間が秘密を守っていなくちゃならない。本当にそんなことを信じるとしたら、それはやっぱり決定的に想像力が足りないのだと思う。別の角度から考えていたつもりが、結局は想像力の問題に行き着いてしまった。やっぱり、だいじなのは想像力だ。もっとも、陰謀を信じる人たちにしてみれば、こういう説こそ想像力が足りないのだろうけど。 mythbustersの楽しい話を書いていたはずなのに、重い話になってしまった。正月早々すみません。 -------------------------- 今どきアポロ月着陸陰謀論を唱える人は救いがたいと思う。では911はどうだろうか? |