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2010年、日本のイスラム金融は飛躍の可能性=国際協力銀 吉田氏
http://www.asyura2.com/09/hasan66/msg/758.html
投稿者 gikou89 日時 2010 年 1 月 11 日 17:03:51: xbuVR8gI6Txyk
 

(回答先: これからドルはどうなるか―米国の為替政策は? 投稿者 gikou89 日時 2010 年 1 月 11 日 16:59:49)

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK034987520100108

 <金融危機下で耐えた2009年>

 ここ数年右肩上がりの成長を続けたイスラム金融は、サブプライム問題に端を発する信用収縮、原油価格の急落、リーマン・ショックに始まるグローバル金融危機により、その成長の軌道修正を余儀なくされた。

 2009年も、金融危機が実体経済の活動に大きく影響を与えた環境の下で、イスラム金融にとって強い逆風が吹いた年とみることができる。とりわけスクーク(イスラム債券)市場において、2銘柄(米エネルギー企業のイースト・キャメロンとクウェートの投資会社であるインベストメント・ダール)がデフォルト(債務不履行)となったことは、そうした事例がなかっただけに世界中の関係者に大きな衝撃を与えた。

 そこへ、11月にいわゆるドバイ・ショックが発生した。その中身にナキール社発行の3件のスクークに関する債務返済猶予要請が含まれていたため、スクーク市場全体に悪影響が及ぶという見方も、少なからぬ論者から発せられた。

 とはいえ、08年と比較して09年は健闘したと評価してよい。世界におけるスクークの年間発行高は08年対比で40%を超える成長となった。イスラム金融大国マレーシアの銀行部門におけるイスラム金融資産残高も、09年11月末時点において08年対比で17%増加している(中銀データ)。さらにスクークファンド等多様なシャリア適格ファンドが組成されたり、イスラム金融専門の商品取引所が設立されたりするなど、供給側における整備も様々な面で進んだ。


 <世界のイスラム金融動向は改善へ>


 2010年の世界のイスラム金融動向について、総じて09年を上回るとの見方が大勢であるように見受けられる。その背景には、一般の金融システム全体が危機からの回復を模索する方向にあることや、世界一の超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」の先日の完成に象徴されるように、金融危機や油価急落で見合わせられた開発プロジェクト等が再び動き始めていることなどがある。 

 債券市場のクレジット・スプレッドをみても、リーマン・ショックでの急騰後、最近ではリーマン・ショック前の水準に戻っている中で、スクーク市場は前年を超える新規発行があると見込まれている。また、新しいイスラム銀行を設立するうわさもいくつか聞かれる。

 日本ではメディア・バイアスもあってバランスの取れた情報が伝わっていないかもしれないが、例えばドバイ・ショック直前に筆者がドバイを訪れた際の印象は「人や渋滞の多さ、内談取引の多さ、各社の広告戦略や雇用スタンスの積極性などの点で、リーマン・ショック後のドバイ金融業界の状況と比べ驚くほど改善している」というものであった。


 <日本は「一皮むける」可能性>


 こうした状況の下で、2010年は、日本に関連したイスラム金融の取引事例が続出する年になる可能性が大いにあるとみている。

 中でも、証券業界に胎動が感じられる。報道によれば、みずほ証券はマレーシアの大手であるメイバンク・インベストメント・バンクと提携し、イスラム金融を含めてアジア事業を強化する構えである。野村証券も、旧リーマン・ブラザーズの中東・アジア拠点を活用し、イスラム金融への事業を本格化させると報じられている。
 また、最近になって、スクーク引受の経験がある日本人証券マンが日興コーディアル証券に移籍した。彼は、イスラム金融の国際的資格を有する唯一の日本人であり、今後の同社の取り組みにも注目したい。

 実は、証券業界に期待が集まるのは自然な流れとも言える。銀行と比較して、イスラム金融取引に関する日本法の規定をクリアしやすいと考えられるからである。

 銀行が行う融資取引をイスラム金融方式にする場合、商品取引を絡めたりする必要があるため、銀行法上の規定を満たすのが困難になると考えられている。確かに、日本の銀行がイスラム金融を行うことを可能とするため、08年12月の内閣府令により、銀行の子会社等によるイスラム金融業務が法的に認められた。ところが、銀行本体にはこれが適用されないため、大手邦銀からは「現制度の下では、イスラム金融取引を扱いにくい」との声も聞かれている。

 他方、証券取引の場合、まず株式については金利を伴う金融商品ではないため、基本的にはイスラム金融での取り上げが可能である。対象銘柄企業の行う事業にイスラムの禁じるもの(アルコールや豚肉等)が一定以上含まれたり、同企業が金利に過度に依存した財務行動をしていたりする場合(有利子負債比率が高すぎるなど)に、イスラム金融での投資対象とはならなくなる。要するに商品構造を規定する金融商品取引法上は、イスラム金融での株式保有やそれに準じた投資信託などにつき問題ないと考えられる。

 また、債券については、割引債であれ利付債であれ金利を伴うので、イスラム金融の対象外となる。これを可能とするために開発されたスクークは、SPC(特別目的会社)を設立するなどして資金調達主体との間に事業キャッシュフローを発生させ、それを発行体たるSPCが投資家に提供するクーポン相当とすることで、教義で禁じられた利子取引を回避するものである(詳細は光文社新書の拙著「イスラム金融はなぜ強い」等を参照されたい)。

 この点につき、こうしたスクーク取引が日本の法律上どのような取引とみなされるのか、すなわち投資家と発行体との間における債権債務関係等に注目して債券とみるのか、事業キャッシュフローの取得という点などに着目して信託受益権とみるのかなどについて、今のところ明確な整理はなされていない。

 とは言え証券会社としては、いずれであっても取り扱い可能であり、その意味で、債券の引受ができない銀行に比べ、証券会社の方が、スクークビジネスに取り組みやすいと言えるだろう。

 他方、スクーク発行につき日本企業等も高い関心を抱いている。低コスト調達の可能性、多様な投資家層の獲得、イスラム圏とのビジネスの足がかり等を展望し、グローバル企業を中心に取引の実現を展望している。
 実際、トヨタ、オリックス、イオン・クレジットが海外での取引実績を持つ。こうしたニーズを証券会社が着実にくみ取れれば、上述の法的整理がなされることを前提に、多くのスクーク取引事例が出てくると予想される。

 前回の本欄でも紹介したように、多くの金融関係者の間で実務的情報へのニーズが高まっており、筆者の周囲でもいくつかのセミナーが企画されている。こうした機会を着実に捉えながら、金融仲介機関、発行体、投資家、金融・税務当局、法律・会計関係者等の間で実務情報が着実に共有されれば、「2010年が日本にとってイスラム金融の飛躍の年になる」との標題は、あながち誤りとは言えないものとなるだろう。


 国際協力銀行・アフリカ室調査役、早稲田大学ファイナンス研究センター・客員准教授 吉田悦章

 

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