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憶測にすら値しない日本政府の米国債売却報道(KlugView)
2009/12/04 (金) 14:02
12月3日、米情報配信大手のブルームバーグは、マーケット・ニュースの報道として、日本政府が国内プログラムの資金を調達するため、米国債1,000億ドル(約8.8兆円)の売却計画を米政府に通達するとの「憶測」があると報じました。報道によると、MNSは、この報道に関する情報源を明らかにしていないそうです。
翌日、平野官房長官は、閣議後の記者会見で、日本政府が米国債の一部を売却するとの「憶測」があるとの報道について、「まったく現時点でそういう話はない」と否定しています。平野氏は「誰が発信したかは分からないが、こういう時期になってくると、よく知恵として出てくる」と指摘し、「政府として考えているということはない」とコメントしています。
日本政府は、外貨準備として大量の米国債を保有しています。
2009年10月末の外貨準備高は、1兆567億6900万ドル(約93兆円)ですが、その多くは米国債で運用されているといわれています。これだけ巨額の外貨を有しているのであれば、1,000億ドル程度を売却しても問題ないように思われるかもしれません。
また12月3日に開催された政府税制調査会では、2010年度の税制改正として、一般扶養控除を国・地方ともに廃止する方針が決められています。これにより、所得税で8,000億円、住民税で6,000億円の税収増が見込まれるそうですが、一般扶養控除を廃止して(せいぜい)2兆円足らずの税収増になるくらいなら、米国債を売却したほうが手っ取り早く効果的いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
こうした考えは、一見すると合理的のように思われますが、日本政府が外貨準備を使って米国債を売却するのは、いろいろと問題があります。
短期的な問題は、円高の進展です。
米国債を1,000億ドル売却することは、多少時間をかければ技術的には可能でしょうが、売却後に得られる資金はドルです。仮に財政支出のために米国債を売却するのであれば、売却後に得られたドルを円に換える必要があります。1,000億ドルもの資金を円に換えるとなると、円高圧力が高まるのは避けられません。つい先日、円高とデフレに対する危機感を表明している日本政府が、円高を促すような行動を取ることは難しいでしょう。
長期的な問題は、財政赤字の固定化です。
あまり知られていないことのようですが、日本政府が保有する外貨準備は、政府が発行する外国為替資金証券(通称「為券(ためけん)」)という一種の国債によって資金を調達し、その資金を外貨に換えたものです。言い換えれば、現在1兆円以上もある外貨準備の多くは、借金によって構成されているものといえます。
このため、仮に外貨準備である米国債を売却し、為替レートに影響を与えずに円に換えることができたとしても、それを財政支出に使ってしまえば、為券という借金だけが残ることになります。これでは、国債を新たに発行して財政支出することと全く同じことになります。
こうしたことを考えれば、財政支出のために外貨準備である米国債を売却する、という話は「憶測」にすらならないことがわかります。ただ、外貨準備の多くを米国債に固定化されていることは、日本として問題なのは事実です。財政支出のため、税収確保のため、といった視点ではなく、日本の財産を有効的に使うため、米国債の保有戦略を検討することは重要でしょう。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
2009年10月末の外貨準備はどれくらい?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
1兆567億6900万ドル(約93兆円)
http://www.gci-klug.jp/klugview/2009/12/04/007581.php