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(回答先: S氏の相場観:民主党と航空行政 投稿者 gikou89 日時 2009 年 10 月 14 日 14:19:04)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20091013-00000002-voice-pol
◇若者の所得を激減させる政策◇
民主党と社民党・国民新党は、連立政権の合意文書に「日雇い派遣、スポット派遣の禁止のみならず、登録型派遣、製造業派遣も原則的に禁止する」と明記した。この労働者派遣法の改正案は、前の通常国会で民主党と社民党が共同提案しており、社民党の福島瑞穂党首は「臨時国会で改正したい」といっているので、早ければ10月にも製造業の派遣労働は(一部の専門職を除いて)禁止される可能性がある。
民主党や社民党は、派遣労働が禁止されたら、企業はすべての労働者を正社員として雇うと想定しているのだろうが、そういうことは起こらない。
業界の調査では、派遣労働を打ち切った場合、正社員に雇用されるのは5%程度という結果が出ている。つまり派遣労働が禁止されたら、企業は派遣の大部分をパートや請負に切り替え、残業を増やすのだ。事実、かつて「偽装請負」騒ぎで激減した請負契約が最近、また増えている。
さらに最近では、派遣も請負も規制がうるさいので、「研修生」という名目で外国人の低賃金労働者が大量に流入している。財団法人国際研修協力機構(JITCO)の受け入れている支援研修生と技能実習移行申請者は合わせて13万2000人、全体では約20万人の研修生が国内にいると推定され、その8割以上が中国人である。彼らには労働基準法も適用されないので、過酷な労働条件を強いられ、年間2000人以上が失踪している。要するに、国内の「格差解消」と称して規制が強化された結果、国際格差が拡大しただけなのだ。
そして国内の規制が強まると、雇用は海外に流出して「空洞化」が起こる。中国の大連には、日本企業のサポートセンターがたくさんでき、最近は日本人スタッフを積極的に募集している。その求人広告を見ると、「年俸制5万元〜」。5元=約15円だから、年収75万円だ。物価も日本の10分の1ぐらいなので、購買力平価でみると平均的な日本の社員とあまり変わらないが、現地でいくら元で貯金しても、日本へ帰ってきたら10分の1になる。
民主党の政策は、結果的には若者の所得を激減させ、日本にいられなくしているのだ。
◇「失業予備軍」が失業すると……◇
このように、民主党などの主観的意図に反して、雇用規制を強めると非正社員は増え、格差は拡大する。
今年の『経済財政白書』は、この点を国際比較で分析して(図参照)、結論を次のように要約している。
1 雇用保護規制が厳しい国ほど非正規雇用比率が高い。
2 我が国は雇用保護規制の度合いはやや緩めであるが、非正規雇用比率はそれから平均的に予想される水準より高めである。
3 ドイツ、イタリアなどの主要な大陸欧州諸国で、雇用保護規制の度合い、非正規雇用比率がともに高い。一方、アメリカ、英国などは雇用保護の度合いは緩いが、非正規雇用比率はそれから予想される水準より低めである。
日本の「雇用保護規制の度合い」が意外に低いのは、臨時雇用労働者の比率が高いことを反映しており、常用労働者の解雇規制は欧州諸国と並んでもっとも強い部類に入る。また白書は、雇用保護規制の強い国ほど平均失業期間が長いことを示している(『経済財政白書』第3−1−14図)。
雇用保護の強い国ほど失業問題が深刻になることは、OECD(経済協力開発機構)をはじめ多くの実証研究でほぼ一致した結論だ。
日本は、これまで「終身雇用」などの長期的な雇用慣行によって社内失業を増やすことで、失業率を見掛け上は低く抑えてきた。休職者の休業手当の一部を政府が補助する「雇用調整助成金」の支給対象者は、今年7月で243万人と、完全失業者359万人の3分の2に達する。7月の完全失業率は5.7%と史上最悪を記録したが、こうした「失業予備軍」が本当に失業すると、失業率は10%に近づくだろう。
雇用調整助成金のように社内失業を奨励する制度は、短期的には労働者を救済するように見えるが、企業が雇用調整を先送りするインセンティブとなり、経営が悪化して破綻するとさらに大量の失業者を生む恐れが強い。
◇社員の待遇を均等化せよ◇
最悪の雇用状況のなかで、民主党政権が「雇用対策」に力を入れるのは当然だが、雇用(労働需要)を増やすマクロ政策というものは存在しない。雇用というのは派生需要なので、企業収益が上がらないかぎり、雇用だけを上げることはできない。GDP(国内総生産)を引き上げて雇用を創造することこそ、究極の雇用対策なのである。ところが民主党の政策は「子ども手当」などのバラマキ福祉ばかりで、GDP成長率を引き上げる政策がない。
民主党が雇用対策と称して出してくるのは、「派遣禁止」や「最低賃金の引き上げ」など、既存の労働者を保護する政策ばかりで、雇用を増やすことをまったく考えていない。
いま全国平均で時給713円の最低賃金を全国一律1000円に引き上げるという民主党の数値目標を本当に実施したら、人件費は20%近く上がり、中小企業は全体として赤字に転落するという調査もある。赤字になった企業は当然、雇用を減らす。少なくとも最低賃金の引き上げによって雇用が増える可能性はまったくない。これによって非正社員が正社員になるチャンスはさらに減り、格差も固定されるだろう。
このように民主党が既存の労働者を厚遇する「雇用対策」ばかり掲げるのは、ある意味では合理的だ。正社員を解雇できるのは、非正社員をすべて解雇して正社員の「解雇回避努力」を尽くしたあとに限られるので、非正社員を増やすことによって民主党の集票基盤である労働組合員の雇用は守れるからだ。
他方、経営者には株式市場から賃金コストを減らせという圧力がかかる。その結果、組合員の既得権を守るために新卒を採用しないで非正社員に替える。言い換えれば、現在の雇用規制は、経営者と労働組合の結託によって非正社員を身分差別する制度だといえよう。
これは、結果としての「格差」というより、非正社員を労働市場から意図的に排除する「身分差別」である。民主党が雇用を増やそうとするなら、このようになし崩しに積み上がってきた身分差別を法律で禁じ、正社員と非正社員の待遇を均等化すべきだ。
大卒男子の生涯賃金は、従業員1000人以上の企業で平均2億7000万円、年金・退職金を入れると約4億円、社宅や医療費などを入れると5億円以上になる。しかも解雇はほぼ不可能なので、これは40年間にわたって負担しなければならない固定費だ。企業が非正社員を雇うのは、この固定費の負担を嫌うためなので、正社員を解雇するのが原則自由になったとすると、経営者は生産性の高い正社員を採用するだろう。
つまり解雇規制を緩和することによって労働コストが減り、それによって雇用が増えるのだ。これは実証的にも裏づけられている。
2007年の統計で比較すると、解雇自由のアメリカでは失業率が4.6%だったのに対して、雇用規制の厳しい欧州の平均は7.9%だった。そして失業期間の平均は、アメリカで4カ月以下だが、欧州では約15カ月だった。現在の不況でも、アメリカの失業率は9%と予想されているが、EU(欧州連合)では10%を超えると予想されている。
多くの非正社員は、民主党の政策は「労働者にやさしい」政策ではなく「労働組合にやさしい」政策だと冷ややかに見ている。
民主党のなかにも、選挙中のようなポピュリズム路線が現実の政策として実行できないことを認識している議員は少なくない。
この際、政策もゼロベースで考え直し、民主党があえて「君子豹変」することを望みたい。