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(回答先: 野村HD株主総会 赤字批判に「V字回復」強調 投稿者 gikou89 日時 2009 年 6 月 27 日 00:22:33)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090623/198346/
今回の金融危機・景気悪化と比較されることの多い1929年以降の大恐慌。皮肉なことに、これを的確に乗り切り、勝ち残り組として優位なポジションに立った企業の代表格が、米ゼネラル・モーターズ(GM)と米クライスラーだった。
大恐慌前の25年時点では、米国の自動車市場では米フォード・モーターが40%のシェアを持ち、ダントツの企業の座にあった。2位のGMが20%だったので、その2倍ということになる。創業間もないクライスラーは、その他多数の中小メーカー同様、2強を仰ぎ見る「残りの40%のほんの一部」という位置にあった。
この2強プラス弱小メーカー多数という市場構造は、その後、大恐慌を経て大きく変化する。不況の傷が癒えた40年には、GMが48%のシェアを獲得して1位、2位がクライスラーで27%。3位に転落したフォードは、シェア19%と半減している。
では、GMとクライスラー、フォードの明暗を分けたのは、どういう要因だったのだろうか。振り返って比較できる今だから言えることなのかもしれないが、実際には「至極当たり前のことを、きちんと、かつスピーディーに実行できるかどうか」ということでしかないように見受けられる。
コストは迅速に削減し、将来への投資は継続
まず、GMとクライスラーは、猛スピードで大幅なコスト削減を実行した。GMは、29年から32年の間に収入が7割落ちたにもかかわらず、利益を確保し続けた。いかに強烈なコスト削減が行われたかが、よく分かる。結果的に、損益分岐点は競合に先駆けて大幅に下がり、不況期の売れ筋である低価格ラインのシボレーは、同じ期間に損益分岐レベルが3割以上下がったという。
25年に創業したばかりだったクライスラーは、28年に米ダッジ・ブラザーズと合併し、規模のメリットを享受できるレベルに達しつつあったが、29年の不況以降、こちらも同様に大幅なコスト削減をスピーディーに行った。彼らの場合、間接コストを1年間に3割削減、同時に、生産現場の生産性向上を徹底した。
ある調査によると、クライスラーの安価なラインであるプリマスは、当時1時間に90台生産されていたが、フォードでは安価車が1時間に60台しか作れなかったらしい。
また、両社とも、不況時の需要構造の変化への対応もスピーディーに行った。それぞれシボレー、プリマスという低価格ラインに資源を徹底投入したのがその代表例だし、チャネルの見直しも素早く実行した。
一方、将来への投資は、選択的にではあっても継続した。例えば、両社とも、売れ筋ブランドへのマーケティング投資は積極的で、結果として培われたブランドは、恐慌後大きな力を発揮したとされる。クライスラーは、研究開発(R&D)投資にも積極姿勢を変えず、これが「エアフロー」という大ヒットデザインにつながった。GMは、大恐慌直前までに様々なR&D投資を行っていたが、不況とともに費用は削減。それまでのイノベーションを活用するという方向に方針転換した。
さて、フォードはどうだったのだろう。同社はT型フォード以降、1車種への絞り込み、そして部品・材料の分野も含めた垂直統合という勝ちパターンを作り上げていた。これが裏目に出て、まず、需要構造の変化に素早く、柔軟に対応することが全くできなかった。収入が落ち込む中、新車種を開発する余力もなく、既存製品にこだわり続けてしまった。
さらに、上流も含めた垂直統合体制は、コスト削減スピードを遅らせた。正確な原価会計システムが未整備だったこともあり、固定費の切り込みができずに時間が経ち続けたのだ。29年と36年の決算を比較すると、フォードの利益は77%減少している。これは、微減のGMや180%増のクライスラーとは好対照だと言えよう。
当たり前のことを、スピーディーかつ確実に
果断なコスト削減、需要構造への柔軟・スピーディーな対応、将来に向けた投資の継続。こう書いてみると、どれも当たり前のことのように思える。おそらくGM、クライスラーだけでなく、フォードの経営陣も同じようなことは考えついていたのではないだろうか。これを「確実に」「過去の成功パターンや抵抗勢力をものともせず」「猛スピードで」実行しきれるか否か、ということが結果の大きな差を生むことになる。
大恐慌を乗り越えた勝ち組としては、GM、クライスラーだけでなく、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や米IBM、あるいは米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)といった名だたる企業もある。どの企業も、ごくごく当たり前の基本的な定石を、倦(う)まず弛(たゆ)まず、徹底的に実行してきたから、その後につながる成功があったに違いない。
本コラムをまとめた最新刊、『経営思考の「補助線」〜変化の時代とイノベーション〜』(日本経済新聞出版社)が、6月25日に発行になります。アマゾンで予約受付中。ぜひご覧ください。 最初にも書いたように、大恐慌時の勝ち残り組、GMとクライスラーが実質破綻ということになったのは、歴史の皮肉を思わざるを得ない。当初のフォードがそうであったように、成功体験故の変化拒否、あるいは、驕り(complacency)が、今回の結果につながったのだろう。
多くの日本企業は、今回の危機に果断に立ち向かっているし、その中からグローバルな勝ち残り組が必ず出てくるだろう。その時にこそ、成功の復讐、驕りの蔓延を防ぐために、経営陣が敗者の歴史に学ぶ必要が出てくるのかもしれない