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(回答先: 銅は調整局面の可能性、中国市場に荷余り感 投稿者 gikou89 日時 2009 年 6 月 17 日 01:00:42)
英経済を支える移民労働者。彼らを食い物にする女性起業家・アンジー。悪いのは誰か? ケン・ローチ監督の「この自由な世界で」は、観客に疑問を投げかける
http://www.cinema.janjan.jp/0808/0808084096/1.php
人材派遣会社をクビになったシングルマザーが、自ら派遣ビジネスを始める。不法移民を低賃金で働かせ、ピンハネして私腹を肥やす。移民の弱みにつけこんだ悪徳ビジネスだ。しかし、不法移民としては仕事がもらえるだけでも御の字。事業は順調に進んでいく。ところが、思いもかけぬピンチが彼女を襲う。受け取った小切手が不渡りとなり、移民たちへの支払いができなくなったのだ。そんな彼女にタイミングよくもちかけられたもうけ話。今までにない大口の取引だ。だが、請け負うには一つ問題があった。彼女は問題を解決するため、人間として越えてはならない一線を越えてしまう――。
イギリス経済を底辺で支える移民労働者。彼らを食い物にして金もうけをする女性起業家、アンジー(キルストン・ウェアリング)。両者は“搾取される弱者”と“搾取する強者”という関係に見える。しかし、事はそれほど単純ではない。アンジーは人材派遣会社の有能な社員であった。にもかかわらず、理由も告げられず突然解雇されてしまった。解雇の直前、彼女は尻を触ったセクハラ上司に恥をかかせており、それが引き金になった可能性がある。起業家となったのも、失業状態を脱するためである。いずれにせよ、彼女は強者ではない。
アンジーの願いは、金もうけすることで、多額の借金を返し、豊かな生活を手に入れること。両親に預けた一人息子を引き取り一緒に暮らすこと。大それたことは何も考えていない。派遣業務を通じて知り合ったポーランド移民の青年・カロル(レズワフ・ジュリック)とは男女の関係に陥り、共同経営者のローズ(ジュリエット・エリス)とは仕事帰りにクラブで男をナンパ。ワーキングクラスの平凡な女性である。彼女はまた人間味にもあふれている。困窮しているイラン人一家を見れば、救いの手を差し延べずにはいられない。怒った労働者たちに襲われ身体を縛り付けられれば、恐怖のあまり失禁してしまう。
そんな平凡で人間味ある女性がなぜ? ケン・ローチ監督の問題提起である。監督はアンジーを一方的に非難すべき存在としては描いていない。これまでのローチ作品がそうであったように、彼女もまた歪んだ社会システムの犠牲者にほかならないのである。何が彼女をそうさせたのか。そこを見逃さないようにしないと、作品を誤解することになるだろう。
ヒロイン役を演じた新人のキルストン・ウェアリングが魅力的。セクシーな金髪女性というローチ作品らしからぬキャラクターで、重いテーマの作品を華やかに彩っている。2007年英国インディペンデント映画賞主演女優賞および新人賞、2008年BAFTA主演女優賞にノミネートされるなど、見事なデビューを飾った。
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「この自由な世界で」(2007年、英)
監督:ケン・ローチ
出演:キルストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス、レズワフ・ジュリック
8月16日、渋谷シネ・アミューズほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。