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【週刊東洋経済】キヤノンの一眼レフで不良事故が多発する理由、製造請負依存の死角(上)
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キヤノンの一眼レフで不良事故が多発する理由、製造請負依存の死角(上)
(1) - 09/05/14 | 12:20
「あれ? なんで何も見えないんだ?」。都内に住む30代のプロカメラマンAさんが血の気の引く“恐怖体験”をしたのは昨年夏のことだ。愛用するキヤノン「EOS 5D」のシャッターを切っていると、前触れもなく急にファインダーの視界が真っ暗になったのだ。
「何だ?」。もう1回シャッターを押すと、今度は「カラカラ」という軽い音。突然の異変にレンズを外してカメラの内部をのぞき見ると、基幹部品であるミラーが落ち、光を感知する画像センサーの上に覆いかぶさっていた。
「仕事中に、エライことをしてくれたなという感じですよ」。Aさんは憤りを隠さない。同じカメラマン仲間には、今年初めに「5D」を購入し、使い始めた途端にミラーが外れてしまった例もあるという。「プロのカメラマンにとって、撮影中にカメラが動かなくなることが、どういうことを意味するか」――。憤ると同時にキヤノンへの信頼を失ってしまったという。
2005年以降、キヤノンは一眼レフカメラの新製品を12機種発売しているが、そのうち5機種で製品不良が発生している。品質不良のオンパレードと言っていいだろう(下表参照)。その間、ライバルのニコンでは、製品不良は1機種も公表されていない。製造台数が少ないものの、オリンパス、ソニー(06年に旧ミノルタの事業を買収)などその他の一眼レフメーカーも、製品不良を公表していない。
製品不良の内容はさまざま。そのうち、昨年12月発売したハイアマチュア向け機種「5DマークU」の「撮影した画像に黒点が写り込む」については、画像センサーやソフトウエアの不具合と推測される。一方で、プロ向け機種「1DマークV」「1DsマークV」の「ミラーの外れ」「AF(オートフォーカス)調整不具合」などは、メカニクス(機械)の問題であり、製造現場に起因する可能性が高い。
国内製造ながら圧倒的な収益力
05年から昨秋まで3年間続いたデジタルカメラ業界の好況。世界のカメラ市場はこの3年間で1・4倍の2・2兆円まで拡大した。特に一眼レフカメラは低価格化によりユーザーの裾野を広げ、市場は年平均25%増の急成長を遂げてきた。
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(2) - 09/05/14 | 12:20
その一眼レフ業界で圧倒的な2強を占めるのがキヤノンとニコンだ。両社が占める世界シェアはおよそ8割。パナソニックなどの電機メーカーを含め、各社がこの有望市場の取り込みに注力したが、2強のシェアはほとんど揺らいでいない。シェアを伸ばせない各社は一眼レフ事業における赤字が続いており、キヤノン、ニコンの2強だけが、市場拡大の恩恵を享受することができた。
とりわけ巨額の利益を稼ぎ出したのが、業界首位のキヤノンだ。コンパクトデジタルカメラでも世界1位のキヤノンはコンパクト、一眼レフ合わせ年間販売台数約2560万台(08年12月期実績)に及ぶ量産効果により、07年12月期にはカメラ事業全体でライバルのニコンやソニーの倍近い26・7%の営業利益率をたたき出している。
しかもキヤノンは一眼レフ全機種を含め、デジカメの約7割を100%子会社である大分キヤノンの国内工場で製造している。海外製造やOEM(相手先ブランド製造)メーカーへの製造委託を主体とする他メーカーに比べて、その製造体制も特別だ。人件費の高い日本で製造を行いながら、圧倒的な利益率を誇ったキヤノンは、まさに驚異的と言えるものだった。
だが、そのキヤノンで頻発しているデジタルカメラの製品不良。それは高品質の代名詞として長年信奉されてきた「メード・イン・ジャパン」神話を揺さぶる苦い現実だ。
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(3) - 09/05/14 | 12:20
●クリーンルーム内でホコリが舞い上がる?
キヤノンの主力カメラ工場は九州・大分県に立地している。大分空港近く、国東市にあるのが、1942年から74年まで社長、74年から84年まで会長を務めた御手洗毅氏の時代、82年に建設された大分キヤノン安岐事業所。もう一つ、大分市内から車で20〜30分、大野川を越え小高い丘陵地帯を登ったところに立地しているのが、大分事業所だ。こちらは、95年から06年まで社長を務め、現在は会長の御手洗冨士夫氏が社長を務めていた時期に建設が決まった国内カメラ工場だ。
この2工場がキヤノンのカメラの7割弱を製造している。コンパクトデジカメの低価格品を中国やマレーシアの工場で製造しているものの、すべての一眼レフを大分で製造している。
大分キヤノンを支えてきたのが、常時数千人規模で製造現場に従事する請負労働者(請負会社社員)だ。主に製造管理や工具のメンテナンスなど組み立て以外の業務を大分キヤノンの正社員、期間社員が担当する一方、日研総業、テクノスマイルなどの社員が、請負労働者として、現場での組み立て作業を行ってきた。
「他社の工場からキヤノンに来て感じたのはクリーンルームの汚さ。驚くほど、とは言わないが、前の工場と比べるとギャップを感じる」
今年初めまで大分事業所でCMOS(画像センサー)モジュールの組み付け工程で働いていた30代男性は、現場の様子をこう振り返る。
光を調整するクリスタルプレート、画像モアレ(干渉縞)等の発生を防止するローパスフィルターなどを圧着するCMOSモジュールの組み付け工程は、微細なチリの混入も許されないため、クリーンルームで作業が行われている。
ところが、大分キヤノンの2つの事業所では作業者はマスクをしていない。それはクリーンルーム内でも同じだという。キヤノン広報部は「マスクをしなくても品質にかかわりはないという判断をしている」と説明する一方、現場で働く30代請負会社社員からは「クリーンルームはホコリが多い。圧着時に大気中のホコリがモジュールに入り込んで不良になることは常にある」と食い違う意見が聞こえてくる。大分事業所で働いていた20代女性に尋ねると、「蛍光灯の光で、大気中にホコリが舞っているのが目に見えるときがある」と言う。
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(4) - 09/05/14 | 12:20
クリーンルームに求められる清浄度の水準は半導体、医薬品、食品など製造するものの種類によりさまざまだ。カメラの場合、半導体である画像センサー(CCD、CMOS)の製造工程を除き、それほど厳しいクリーン度を要求されているわけではない。
が、“ホコリが舞うクリーンルーム”というのはそもそも、ありえない。「クリーンルームに要求される水準は0・5ミクロンという超微細なチリが大気中にどれだけあるかで測られる。簡易的なものでは『可視塵埃なし』という設備もあるが、それはクリーンルームと言わない。ましてやホコリが舞っているのが見えるというのは、話にならない」とあるクリーンルーム設計者は語る。
なぜ、こんな非常識が放置されているのか。それはクリーンルームの内部が、キヤノンにとって“治外法権”になっているためだ。
請負契約は業務委託元の会社(キヤノン)が現場の請負会社に所属している作業者に直接指示、命令を行えない業務契約だ。仮に直接の指示を行えば偽装請負となり、労働者派遣法違反となる。そのため、キヤノン社員は、作業者を統括する請負会社の管理者に指示を出し、そこから現場の作業者に指示が流れることになる。
04年に解禁された製造派遣を用いれば、現場の作業者に直接指導を行うことが可能だ。しかし、08年末現在、キヤノンは製造現場で派遣労働者を使っていない。3年以上同一業務で派遣労働者を使った場合、キヤノンに直接雇用を申し入れる義務が生じる。生産量に応じていつでも調整できるようにするためには、派遣労働者は不向きなわけだ。
製造派遣が人材を借りることであるとすれば、業務請負は自社工場の中に他社を招き入れることだ。自社工場内とはいえ、金属ポールとビニールテープにより仕切られた向こうは“他社の敷地”であり、その内部の管理は限定的なものにならざるをえない。
キヤノンの社員は原則として、クリーンルーム内の現場に入って指導を行うことはできない。「クリーンルームの上部には窓があって、週1回程度お偉いさんがガラス越しに視察する。そのときだけ事前に台拭きなどをしてきれいに見えるように取り繕う。現場には請負しかいないから、普段の管理はいい加減になっている」(前出の30代男性)と言う。
(下[5月15日掲載予定]に続く)
(桑原幸作 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)
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