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AIGの巨額ボーナス問題とオバマ政権
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投稿者 tanbo 日時 2009 年 3 月 24 日 08:21:06: .WPV82c58ZnIw
 

(回答先: AIG賞与課税法案「慎重に精査」 米大統領(日本経済新聞) 投稿者 そのまんま西 日時 2009 年 3 月 24 日 01:16:07)

2009/03/19
米政府からこれまでに1,730億ドル(約16兆9,688億円)もの公的支援を受けて経営破綻を免れている保険大手AIGが、今月に入ってから幹部社員に1億6,500万ドル(約161億7,092万円)をボーナスとして支払っていた件で、全米に怒りの声が拡がっている。

当該ボーナスは先週金曜日にすでに支払われたが、AIGはさらに2010年3月までに追加ボーナス2億3,000万ドルを従業員に支払う計画であるという。ボーナスを受け取る側には、同社を経営破綻に導いた部門も含まれているというのも驚きだ。通例では、会社に大損害をもたらした社員は、解雇されるか、ひどければ賠償責任を負ったりするはずなのに、AIGでは単に「会社を辞めないで」と慰留されるだけでなく、失敗の功績を讃えてボーナスまでくれるというのだ。全米失業率が8.1%、地方では10%を超えているこのご時世に、これほど従業員を大切にする企業があっただろうか。

一方で、バラク・オバマ率いるホワイトハウスは自らの失敗隠しに奔走しているらしい。

AIGの巨額ボーナスについてオバマ大統領は「納税者への侮辱」と糾弾している。ガイトナー米財務長官も事態に憤ったようすで「ボーナスは取り返す」と鼻息が荒い。また、クリントン政権時代に財務長官を務め、現在オバマ政権で国家経済会議委員長を務めるローレンス・サマーズはABC放送のインタビューでAIGについて「必要な規制も監査もされていなかったとは言語道断だ」と批判した。

しかし、これらは全てオバマ政権が批判の矛先を逸らすために施す「演出」にすぎない。実のところ、公的支援を受け取る企業に対して、強化されるはずだったボーナス制限事項をコッソリ“規制緩和”したのは、ホワイトハウスの面々であった。

今年2月中旬、オバマ大統領が署名し成立した7,870億ドル(約72兆円)の景気対策法(American Recovery and Reinvestment Act)の原案には、クリス・ドッド上院議員(民主党・コネチカット州・米上院銀行委員長)の提案により、支援を受ける企業のボーナス規制強化案が盛り込まれていた。この段階では、ボーナスは過去に契約された報酬額であっても遡及的に規制対象となる厳しいもので、このアイデアがそのまま法として成立していれば、今回のAIG騒動は起きなかった(もしくは法令違反として支払われたボーナスを回収できた)。

ところが、このボーナス規制強化に反対したのが、オバマ大統領とその側近たち、つまりガイトナー財務長官とサマーズ国家経済会議委員長だった。彼らホワイトハウス組は、法案成立前に契約された報酬については、規制対象から除外するよう求めたのだ。 結果としてボーナス規制は緩和され、オバマ大統領はガイトナー財務長官ら側近を並べて華々しく法案に署名した。そしてAIGのエドワード・リディCEOが、この緩和された条件通り、法案成立前の契約に基づいた報酬を従業員に支払うと、オバマ政権は「知らなかった」と驚いたフリをして態度を“チェンジ”したというわけである。給与1ドルで新CEOを引き受けたリディ氏は、ホワイトハウスのメディア対応によって、まるきりスケープゴートにされてしまっている。

なぜオバマ政権の人々は公的資金注入先のボーナス制限に抜け穴を作ったのか?

ボーナス制限を公的資金注入の交換条件にしたら、企業側は支援を求めず破産を選択し、経済危機がますます進行するという懸念があったとしても、ホワイトハウスの裏事情を鑑みれば、真意を疑われても仕方ないだろう。2008年度、金融業界政治献金先ランキングのトップから大統領になり、再選目指して前回以上の資金集めを画策するバラク・オバマ大統領としては、むしろ支援先企業には巨額のボーナスを従業員に支払って欲しい(そしていつも通り迂回献金して欲しい)と願っているかもしれない。サマーズ国家経済会議委員長の場合は、以前のようにシティグループの社用ジェット機にタダ乗りするためか、あるいは次の天下り先候補企業から嫌われたくなくて、金融業界へのボーナス規制には気乗りがしないのかもしれない。

http://www.opensecrets.org/orgs/recips.php?id=D000000123&type=P&state=&sort=A&cycle=2008

2008年度のAIG献金相手トップ5。(source:The Center for Responsive Politics )米上院銀行委員長クリス・ドッド議員は、90年以降今日まで合計するとAIGから最も多くの献金を稼ぎ出している。

大統領選挙戦当時、「これからもロビイストの金を受け取ります」と宣言したヒラリー・クリントンを猛烈批判し、大企業の影響力から決別すると主張していたバラク・オバマは、ロビイスト入閣禁止という公約をたちまち“チェンジ”しただけでは飽きたらず、大企業の影響力をもっと受け入れるべく、シティグループ元会長でギャンブル資本主義の立役者ロバート・ルービン元財務長官を政権移行チームの経済問題担当に迎え、さらに入閣直前までシティグループ重役だった二人−ジャコブ・ルーとマイケル・フローマンを閣僚に採用した。

先日、訪問先のカナダで退任後初のヘタクソな演説を行ったジョージ・W・ブッシュ前大統領は、オバマ大統領についての評価には沈黙を保ちつつ、「助けが必要とあらばいつでも電話してくれたらいいよ」と気遣った。ブッシュは気づいているにちがいない。ブッシュからオバマに政権委譲されたが、金庫番はゴールドマンサックスからシティグループに委譲され、ホワイトハウスの経営スタイルは全く変わっていないのだ。

ところで、今回のAIG高額ボーナスの件をオバマ大統領が知ったのは問題が発覚する1日前で、ガイトナー財務長官は、オバマ大統領より2日早く事態を知っていたという(AIG側の説明では、ガイトナーの側近は昨年11月時点ですでにAIGの報酬計画を知っていたとされる)。今後の対応次第では、ガイトナー氏引責辞任という展開もありうるだろう。

 

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