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(回答先: 「太政官札「打ち出の小槌」を使っても、ハイパー・インフレの心配はない! 投稿者 ワヤクチャ 日時 2009 年 1 月 31 日 17:42:16)
世界の主要中央銀行は、穏やかにインフレを高進させることが巨額の債務から逃れるうえで有益であることを認識すべきである。
原則的にいえば、インフレは債務問題を解決する公正な方法とはいえない。なぜならインフレになると債権者は価値が下落した通貨で返済を受けることになるからだ。だからインフレに頼らないで金融システムの欠陥を是正する方法を模索するべきである。しかし、銀行への資本注入や住宅ローン債務の保有者に対する直接的な支援など代替案を研究すればするほど、インフレ高進は問題解決を阻害するよりも助けになることが明らかになってくる。
現代の金融は、標準的な債務問題に対する取り組み方ではとても対処できないほど複雑な仕組みを作り出している。証券化、ストラクチャード・ファイナンスといった金融のイノベーションによって金融システムの中でさまざまなプレーヤーが結びついており、ある時点で一つの金融機関だけを取り出して再建するということは不可能になっている。システム全体の解決策が必要なのである。
短期的で穏やかなインフレ高進(たとえば2年間で6%程度)では、債務問題を解決することにはならないかもしれない。しかし、債務負担を軽減させ、他の手段を取るコストを減らすことができる。
ひとたびインフレという魔人を瓶から出してしまうと、再び魔人を瓶に戻すのに数年かかることも事実である。誰も1980年代や90年代のインフレとの戦いをよみがえらせたいとは思っていない。しかし、世界経済は恐慌の瀬戸際に立っている。政府が指導力を発揮しなければ、これまで見たこともない厳しい世界不況に陥るかもしれない。
必要な政策には積極的なマクロ経済政策が含まれる。財政政策は減税とインフラ投資に焦点を合わせるべきである。中央銀行はすでに利下げを行っている。世界中の政策金利はゼロに向かっている。米国と日本はすでにゼロ金利になっており、英国とユーロ圏も最終的にゼロ金利を決断することになるだろう。
市場との対話が十分ならインフレ沈静化も可能
金融機関の資本強化と規制強化のための対策も講じられなければならない。米国や英国、ユーロ圏などの国のように金融機関が政府の支援に依存しているかぎり、大きなリスクは解消されない。
世界の最大手銀行の大半は実質的に破綻しており、生き残るためには政府の支援と資金に依存しなければならない。多くの銀行は住宅ローンで巨額な損失を被っていることを認めている。不況が深刻になれば、銀行のバランスシートは新たに商業用不動産やクレジットカード、プライベート・エクイティ、ヘッジファンドの破綻の連鎖に直撃される。政府は銀行の直接的な国有化を避けながら、第2次、第3次の資本増強を行わなければならなくなる。
シティグループに対する米政府の450億ドルもの救済も結局は効果がなかったかもしれない。数兆ドル規模のクレジット・デフォルト・スワップ市場などの問題を見ると、金融システムの穴はあまりにも大きすぎて公的資金だけでは全部は埋め切れないのは明らかである。
それを解決するには銀行を倒産させることだが、その際、預金者は保護するが、債券保有者は必ずしも保護の対象ではないことを明確にしておく必要がある。しかし、この解決策も費用が高くつき、大きな痛みを伴う。
となるとインフレという選択肢に戻ってくることになる。債務問題の緩和に加え、短期的な穏やかなインフレ高進は住宅用不動産の(インフレ調整後の)実質価値を引き下げ、住宅市場の安定化に寄与するだろう。インフレがなければ名目住宅価格は米国ではさらに15%、スペインと英国ではそれ以上下落しなければならない。インフレが高進すれば、名目住宅価格はそれほど下落する必要はなくなる。
もちろん景気後退の進行を前提にすれば、中央銀行がすぐにインフレを実現するのは容易ではない。現在、中央銀行は持続的なデフレあるいは物価下落を回避するのに四苦八苦している。インフレを作り出すのはロケット工学とは違う。すべての中央銀行がしなければならないことは、国債を購入するために通貨を増刷し続けることである。ただしそこにはリスクもある。インフレが行き過ぎて目標の5〜6%ではなく20〜30%にまで上昇する可能性があることだ。インフレが再燃するのではないかというおそれから、10年にわたって日本銀行の機能はマヒしてしまった。しかし、この問題は調整することができる。市場との対話を通じてインフレ期待を封じ込めれば、インフレは必要に応じて急速に沈静化させることができるはずだ。
100年に一度の金融危機を修復するためには、道具箱に入っているすべての道具を使う必要がある。世界恐慌が起こる可能性を前にしてインフレについて懸念することは、疫病にかかる危険性があるときにハシカにかかることを心配するようなものである。
ケネス・ロゴフ
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名を馳せる。
http://www.toyokeizai.net/business/international/detail/AC/829d806c1f49099efa0cc0578e4619f5/