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上の投稿に幾つか間違えがありましたので訂正します。
http://www.asyura2.com/09/genpatu6/msg/263.html
投稿者 taked4700 日時 2009 年 10 月 14 日 02:38:04: 9XFNe/BiX575U

(回答先: 原発解体 〜世界の現場は警告する〜 NHKスペシャル 投稿者 taked4700 日時 2009 年 10 月 11 日 23:39:44)

すいません、再放送を見たら、幾つか間違って記憶していた箇所がありました。正しくは次のようになります。

1.当初解体費用が900億円と見積もられていてそれが1300億円となったとされる原発は日本の東海発電所ではなくドイツのビュルガッセン原子力発電所でした。東海発電所はいくらかかる予定か、番組の中では示されませんでした。なお、ビュルガッセン原子力発電所は出力六七万キロワットらしいので、東海発電所よりもかなり大きく、東海発電所の解体費用は1300億円もかからないのかもしれません。

2.ドイツの放射性廃棄物の元地下埋設場は、アッセ元処分場と言い、地下595mにある洞窟というか処分場の壁が崩落していました。上の記事では地下100mほどと書いたのですが、地下600mほどにある埋設場ということです。

 なお、アッセ処分場を調べてみると、http://www.veoh.com/browse/videos/category/news_politics/watch/v158357077BWYBw4Wに「ドイツ:アッセの核廃棄物貯蔵庫に重大な欠陥」というビデオがあるのが分かりました。どうやら、岩塩の採掘場跡地だったようで、その岩塩が乾燥岩塩ではなく水分を含んだものだったので、塩水が核廃棄物の容器と反応し、放射性物質が水溶液として漏れてしまったということのようです。

 また、http://nikonikositaine.blog49.fc2.com/blog-entry-858.htmlにテレビでの音声情報をそのまま反訳したのではないかと思われる程よくできたメモがあります。かなり長いですが、その反訳を引用させていただきます。
以下引用開始;


原発解体
〜世界の現場は警告する〜

深刻化する地球温暖化。各国のエネルギーの獲得競争。世界を巡る環境が大きく変わる中、今、原子力発電が注目されている。火力発電所に比べて大幅に二酸化炭素の排出が少なく、発電の出力が大きいからだ。
チェルノブイリ原発事故以降、脱原発の政策を続けてきた欧米。中国・インド・ロシアなどの新興国。そして産油国までも建設に舵をきった。世界で新たに導入の準備がすすむ原発の総数は100基にのぼる。
その陰で初期につくられた原発が役割を終えて解体されている事はあまり知られていない。
閉鎖された数は既に120基あまり。私たちは原発の大解体時代をむかえていたのだ。 国内にも「ふげん」と「東海発電所」の2つが解体に着手。取材クルーははじめて、知られざる原発解体の現場に密着した。そこでは放射線という一般の建物にはない特殊な環境下での厳しい作業が続いていた。次々と関係者の事前の想定を越える壁が立ちふさがる。さらに原発の解体は別の課題を抱えていることもわかってきた。解体した後に発生する大量の放射性廃棄物を処分する場所が未だに決まっていないというのだ。

世界の社会経済環境が大きく変わる中で高まる原子力発電へのニーズ。 一方で未だ解決の道筋がみえていない解体からでる廃棄物の行き先。この難しい問題にどう私たちは答えをだすのか。解体現場の取材からの報告。
(番組HPより)

(以下、メモ)


運転を停止して14年経った原子炉。原子力発電所の心臓部です。今も強い放射線を出し続けています。

「数値は1900マイクロシーベルト」

この数値は、一般の人が1年間に浴びても差し支えないという量を30分余りで超えてしまいます。原発は運転を終えてもなお、数百年に渡って放射能が消えないのです。これまでに世界で作られた原発は539基、そのうちの100基以上が閉鎖され、解体の時を迎えています。日本でも2つの原発の解体が始まっています。その現場に初めてカメラが入りました。立ち塞がっていたのは放射能という目に見えない壁。あらゆるところに汚染が残っている可能性があるのです。

既に15機の原発を解体してきたドイツ。最先端の技術を使っていますが、思うように行きません。
放射性廃棄物の処理に苦しむイギリス。巨額の税金を注ぎ込まなければならない状況に陥っています。

原発が生み出す電気、それによって成り立つ私たちの暮らし。その原発の建設がさらに加速しようとしています。運転中に二酸化炭素を出さないため、温暖化対策として注目されているのです。しかし、その影で、放射性廃棄物という負の遺産が生み出され続けています。原発解体という人類が初めて直面している課題、現場からの警告です。

福井県敦賀市にある原子力発電所、ふげん。去年から解体が行われています。原発は内部が汚染されているため、放置すると安全上問題があり、管理コストがかかるとして、国は全て解体する方針です。解体は、放射性物質を絶対に外に漏らさずに進めるとしています。本当に周囲に影響を与えず安全に解体できるのか、私たちは取材を始めました。

ふげんの内部です。健康に影響を与えるほど放射線が出ている場所もあります。まず持たされたのが放射線の測定器です。どれだけ被爆しているか常に確認できるようにしておくためです。ふげん、地下2階。解体を行うのは放射線による被曝を防ぐための特別な教育を受けた作業員たちでした。現場責任者の井上辰也さん。今回の作業は安全に解体できることを実証するのが目的だと言います。

汚染区域に入る前、作業員はゴム手袋を二重に付けていました。テープで入念に固めるのは、汚染物質が手に付くと口や鼻を触って体内に入る恐れがあるためです。マスクも付けなければなりません。放射性物質は、仮に顔に付いても洗い流すことができますが、吸い込むと健康被害に繋がる恐れがあるからです。

解体が進むふげんの構造です。ふげんは原子炉内で核分裂を起こし、その時に出る莫大な熱を使ってタービンを回します。その際、原子炉では極めて高い放射性を持つ核のゴミが出ます。原発は運転を終えても配管やタービンなど広い範囲で汚染が残ります。解体は危険な核燃料を抜いた後、汚染の比較的少ないところから始めます。もっとも強い放射線が出る原子炉は最後です。解体で出る放射性廃棄物は、特別な容器に入れ地下に埋めるなどして処分されることになります。私たちが取材したのは原子炉とタービンの間にある主蒸機関室です。比較的汚染レベルが高い場所で取材が入るのは今回が初めてです。他の区域へ汚染を広げないためのシート、この先に主蒸機関室がありました。

主蒸機関室。一般の建物と違い、目に見えない放射性物質が残っている恐れがあります。配管が複雑に入り組んだ空間で作業は行われていました。この日、汚染の可能性が高い機器の解体に取り掛かろうとしていました。原発を緊急に止める時に使われる大型のバルブの解体です。バルブは原子炉から流れ出る蒸気を止める時に使われます。内部には放射性物質を含んだ蒸気が溜まります。解体は弁を抜き取る作業から始まりました。弁を引き抜いた後、内部から放射性物質が見つかりました。その直後、事務所に戻った井上さん、緊急に対策を話し合いました。

見つかった6キロという数値は、平均的な汚染レベルの6倍、吸い込むと健康に影響を及ぼす恐れがあります。作業員は急遽放射性物質が付きにくい特別な防護服を着ることになりました。

Q.測ってみないと分からない?

「そうですね。ばらつきもあるので、とってみないと分からない、正確な数値というのは」

取材を始めて1ヶ月。この日、新たな問題が持ち上がりました。井上さんたちが切ろうとしていた太い配管。周りには配管を支える鉄骨が張り巡らされていました。そのため電動のこぎりを使うスペースがないというのです。代わりにとったのが高温のガスで溶かして切断する方法でした。しかし、この方法は危険を伴います。高温のガスで切断すると、「ヒューム」という気体が発生、ヒュームには配管の中に残った放射性物質が含まれることがあり、吸い込むと危険なのです。

Q.できれば溶断は避けたいんですか?

「出来ればですね。小さい配管はバンドソー(電動のこぎり)の方が楽なので。火花が飛び散らないし。溶断するとヒューム、金属の蒸気が出て体に良くない」

特別なマスクを付けることになりました。作業員とは別に放射線を管理する専門の人がいます。ヒュームに含まれる放射性物質を10分ごとに測定していました。基準を上回った場合、退避させることもあると言います。放射能という目に見えない壁に阻まれ、予定していた行程は1ヶ月以上遅れました。

現場責任者 井上辰也さん
「僕らが想定していた作業時間、こういう格好で作業すると、実際5時間もつだろうと思っていたのが4時間しか体力がもたないとか、そういう読み違いがあったと思います。半面(マスク)しながら作業するのがきついというのが分かったと思います。そこの読みも甘かったと思います」

放射性物質を絶対に外に漏らさず解体しようという現場。安全を確保しながら解体することの難しさが取材で明らかになってきました。

国は原発の解体についてどのように考えてきたのか。これは日本の原子力政策をまとめた原子力長期計画です。昭和31年にできた最初の計画の中に解体についての記述はありませんでした。将来起こりうる解体を考慮せずに原発は作られてきたのか。専門家は原発は事故や地震に備えて頑丈に作ることが第一に求められ、解体に対する対策はいわば後回しになってきたと言います。

原子力研究 バックエンド推進センター・榎戸裕二さん
「解体を特に考慮した設計は採用されていなかったのが実態です。設計思想においては、原発の健全性や安全性の確保を主に考慮しておりまして、解体については、将来の技術開発で対応できる、また、今後技術開発をすることによって十分な技術が確保できるという考え方のもとでやっておりまして、近い将来の課題とは考えておらなかった」

国が解体しやすい原発の研究を始めたのは、昭和60年代。しかし、今も国は解体を考慮した設計を建設の際の条件にはしていません。日本に最初の原発ができたのは昭和41年。その後、電力需要の伸びと共に次々と建設され、現在57基に上ります。しかし、解体を前提で作られていないため、現場で思わぬ問題が起きていることが取材で見えてきました。

11年前に運転を停止した東海発電所です。最も難しい、原子炉の解体に向けた準備が進んでいます。東海発電所の構造です。5年かけて配管やタービンを解体してきました。現在は原子炉周辺の機器の撤去を進めています。原子炉は強い放射線を出しているため、今も人が入ることができません。そこで、原子炉の解体に国内で初めてロボットを導入することにしました。コンピュータを使ってロボットの遠隔操作の訓練が行われています。ロボットを使うには、原子炉内部の詳しい構造と正確な寸法を入力しなくてはなりません。そのためには建設当初の詳細な図面が必要でした。しかし、ここで壁にぶつかりました。必要な図面が見つからないのです。東海発電所の建設は40年以上前、保管義務のない書類も少なくないのです。図面が見つかっても、古くなったり汚れたりして数字などがよく見えないものもあります。

「今のように電子データをそのままPDFにしているんじゃなくて、写真をとったんじゃなくて、昔の青いコピーを写真にとっているんです」

これまでに集めた原子炉の図面は合わせて1500枚。それでもロボットを操作するにはまだ不十分だと言います。

日本原子力発電・松本松治副社長
「40年前に作られたものですから、今の解体を想定しながら、それがうまくいくように図面を整備しておかないといけないという考え方はその時点でなかった。今、原発を作るとなると、図面を残す工夫がどんどんされていかないといけない」

必要な情報を入手できないか。解体プロジェクトの担当者が原子炉を作った当時の技術者を訪れました。今のままでは解体が遅れかねないため、話を聞こうと考えたのです。今年71歳になる林勝さんです。建設が始まった昭和35年から完成まで現場で工事を担当してきました。

原子炉解体担当者
「事前準備で調べておかないと解体の時に思わぬことが起こると考えていますから」

林勝さん
「これは基本的に解体を考慮しない建設行程で作っていますから、非常に解体の方の逆行程を想定するのは難しいかもしれませんね」

解体を考慮せずに建てられた古い原発。建設に携わった技術者から話を聞けるうちに方法を見極めることができるのか。解体は時間との戦いになっています。東海発電所の解体は2年後に迫っています。

これまでに世界で閉鎖された原発は107基。これらが次々と解体される時代を迎えています。日本より10年先に原発を導入したヨーロッパ。中でもドイツでは32の原発うち、既に15基を閉鎖しています。ドイツでは今、最新の技術を使って原発の解体を進めようとしています。14年前に閉鎖されたビュルガッセン発電所。ここでも解体を考慮してなかったことで新たな問題に直面していました。

・ビュルガッセン発電所

私たちは日本がまもなく取り組むことになる原子炉の解体を取材しました。この解体プロジェクトの責任者、ヘンゲルハウプトさん。原子炉の構造に詳しい解体の専門家です。これまでアメリカやヨーロッパ各国で原発の解体に関わってきました。遠隔操作のロボットを使って原子炉の解体に当たっています。

原子炉解体責任者 クラウス・ヘンゲルハウプトさん
「この原子炉は閉鎖された時より放射線の量は低くなっています。それでも人への影響がないほどではありません。だから離れた場所で作業しなくてはならないのです。遠隔操作のロボットを開発するためには長い時間と技術が必要で、コストもかかります」

ヘンゲルハウプトさんが解体に取り組んでいる原子炉です。運転を停止した今も強い放射線を出し続けています。私たちは被爆を最小限に抑え安全を確保するため、撮影を20分以内に終えるように求められました。

「ここの空気は外部と遮断されています」
「ここは6マイクロシーベルトだけど、上に持っていけば測定の音が変わる」
「音を聞いて。全然違うだろ」
「1900マイクロシーベルト」

この数値は一般の人が1年間に浴びても差し支えない量を30分あまりで超えるものです。原子炉は運転停止から14年経っても強い放射線を出し続けています。それは「放射化」と呼ばれる現象のためです。核燃料から出る中性子にさらされたため、金属の性質が変化し、自ら強い放射線を出すようになっているのです。長い間運転した原子炉は全てこのような状態になります。ビュルガッセン原発の原子炉の解体を行っているのは世界で最先端の解体技術を持つ企業です。

・エアランゲン
・除染研究センター

放射性物質による汚染を除去する研究で実績を挙げてきました。今では細い配管の中の汚染までほとんど取り除けると言います。しかし、原子炉から出る放射線を抑えることは、この企業でもできません。

除染技術責任者 ライナー・ノイハウス博士
「原子炉の汚染を減らすには限界があります。原子炉自体が放射能を持っているので取り除くことができないのです。これがまさに原子炉の難しいところです。表面の汚染しか取り除くことができません。原子炉そのものが放射化してしまうと、どんな方法を使っても放射能を減らすことができないのです」

ヘンゲルハウプトさんは原子炉を解体するため建設当時の図面をもとに1年間かけて計画を作りました。この計画に基づいて解体する場所ごとに別々のロボットを特注。さらに原子炉と同じ大きさの模型を作り、事前にテストを繰り返しました。

ロボットを使った解体が始まりました。つねにモニターでチェックしながらの作業です。ヘンゲルハウプトさんが考えた解体の方法です。原子炉の中に入れたロボットを離れた場所から操作し、リング状の構造物を切ります。切断に使うのは高圧で噴出する金属を混ぜた水です。

「ゆっくり、静かに動かすんだ」
「速さの調節が難しい」
「うまくはめるのは大変だ」
「気をつけろ。止めろ止めろ。失敗してしまった」

技術の粋を集めたロボットを使っての作業。それでもヘンゲルハウプトさんが予想しなかった問題が起きました。

「これは切り残しになっているのか」
「そうです。こっちの線もジグザグです」
「こっちはぶれているが切れている。でもこっちは完全に切り残しだ」

計算上問題なく切断できるはずだった金属が実際には切り離せないのです。原因を探ると、問題は溶接の部分にあることが分かりました。厚みのある溶接部分を避ければ切れるはずでした。建設当時の図面です。溶接の幅は20ミリと書かれていました。しかし、実際の溶接の幅は50ミリになっていました。建設当時より厚くすることで安全に固定できると現場で判断していました。そのため切断した部分は予定より厚みがあり、切り残しが出たのです。リングの切断にかかった期間は35日間、10日間で行う予定が3倍以上かかりました。

原子炉解体責任者 クラウス・ヘンゲルハウプトさん
「原発は解体を想定して作られたわけではなく、あくまで運転を目的に作られています。私たちが想像しているような方法で全ての部品を解体できないことがあらためて分かりました」

解体は計画よりも7年遅れる見込みです。費用も当初の900億円からおよそ1.5倍の1300億円に膨れ上がっています。

・解体 7年遅れ
・費用 900→1300億円

ドイツの取材から見えてきたのは、最先端の技術を使っても時間とコストがかかる原発解体の難しさでした。世界で運転を取り止めた原発は既に100基以上。取材を進めるうちに、さらに大きな課題があることが分かってきました。解体に伴って原発から出る大量の放射性廃棄物の問題です。解体した後に残る廃棄物、解体した原子炉で使われた核燃料も含め、人が住む環境に影響を与えないよう特別な容器に入れ、地下などに処分しなければなりません。しかし、世界各国は共通の問題を抱えています。全ての廃棄物を埋められる処分場がある国はひとつもないのです。

ドイツ・ザルツギッター

今年5月、ドイツで処分場の建設に反対するデモが行われていました。今、ドイツでは放射性廃棄物が大きな問題となっています。国民の不信感を募らせたのは、廃棄物の処分を巡って起きたある出来事でした。

・アッセ元処分場

ドイツ中部、17年前に閉鎖されたアッセ処分場です。施設は地下深くにあります。ドイツ政府は処分場を作る際、安定した地質だと住民に説明していました。しかし、問題が発覚し閉鎖されたのです。

処分場管理担当者
「ここは深さ595メートルの地点です。壁が塊になってはがれてしまうんです」

処分場の壁はあちこちで崩れていました。建設当時は予想しなかった地下水が漏れ出し、汚染が広がる恐れが出てきたと言います。過去に持ち込まれた放射性廃棄物は今も埋められたままです。

処分場管理担当者
「この下の廃棄物から出る放射線は命にかかわるほど強いです」

処分場の環境が悪化していたことを国は10年近く公表しませんでした。アッセ処分場は住民不信の象徴となりました。ドイツでは解体の時代を迎えても、住民が処分場を受け入れることは極めて難しいのです。国の放射性廃棄物管理委員会のミハエル・サイラー委員長です。ドイツは原発の建設を優先し、廃棄物の問題をを先送りにしてきたと考えています。

放射性廃棄物管理委員会 ミハエル・サイラー委員長
「そもそも原発を使い始める時から処分場のことを考えるべきだったのです。原発があるどの国でも、放射性廃棄物は大量に生まれています。そして、最終的な解決方法を見出した国は世界のどこにもありません。私たちは解体や廃棄物の処分の問題にもっと注目すべきなのです」

処分場がないまま進む原発の解体。今、最も深刻な状況を招いているのがイギリスです。1956年、イギリスは世界で初めて原発を建設しました。

エリザベス女王
「皆さんは歴史が誕生する瞬間に立ち会っているのです。未来は私たちが想像できないものになるでしょう」

それ以来、半世紀あまりの間に45基の原発を作ってきました。しかし、半数を超える25基は、既に寿命を迎え、閉鎖されました。そのため解体や廃棄物の処理にに多額の税金を注ぎ込まざるを得ない事態に陥っています。イギリスで今後必要となる費用は11兆円。市民の間で問題意識が高まっています。

市民の声
「原発の解体は問題だ。本当に恐ろしい。どこに放射性廃棄物を置くというのか」
「どこの国よりも廃棄物を多く作ってきた。そのツケを背負うしかないんだ」

・トロースフィニド原発

なぜ費用が膨らんだのか。18年前に運転を停止したトロースフィニド原発を取材しました。発電所にある貯蔵施設には、放射性廃棄物が入ったドラム缶が積み上げられていました。どこにも処分場がないからです。そこで、やむを得ず発電所内に貯蔵施設を作ることになりました。建設費はおよそ30億円、全て国民の税金です。

貯蔵施設責任者
「1960年代に原発を作ったときにはこんな施設が必要になるなんて思ってもいませんでした。廃棄物の処分場がないから、こんな施設を作らないといけない。もし処分場があればこんな施設はいらないのに」

・セラフィールド

経営が立ち行かなくなった原子力関係の企業も出ています。イギリス中西部にあるセラフィールド。ここでは世界有数の原子力企業が原発だけでなく使用済みの核燃料などの再処理工場を運営していました。しかし、放射性廃棄物の処理や事故への対応に費用が嵩み、債務超過に陥ったのです。こうした費用を国が肩代わりすることなり、3兆5000億円の税金を投じる事態になっています。

・カンブリア州

費用が嵩むのにはもうひとつ理由があります。処分場の建設を巡る地域への対策費です。国の放射性廃棄物処理の責任者、アラン・エリスさん。各地を回って住民への説明を行っています。処分場への不信感が根強いイギリス、ほとんどの自治体が拒否する中、3つの自治体が関心を示しました。しかし、受け入れには条件がありました。

地元議員
「処分場を受け入れると利益があるのかみんな関心を持っているのよ」

アラン・エリスさん
「処分場は地域のためになります」

地元議員
「それは見通しでしょ」
「地域としては、ただ処分場を作らせるのではなく、関連事業も含めたあらゆるところから利益を得たいのです。そうすれば多くのお金を得られます」

住民
「それは重要だ。最初に考えて欲しい大事な点だ」

住民からは具体的な地域振興策を求める声が相次ぎました。

原子力廃止措置機関 アラン・エリスさん
「地域に利益をもたらすことができるか、それが処分場を作る鍵になります。地元の要求すべてに応えるのは不可能です。理解を求めていくしかありません」

エリスさんは処分場を建設する目途を立てられずにいます。イギリスでは25基の原発の解体や廃棄物処理の費用が積み上がり、最終的には11兆円という巨額の負担になったのです。負の遺産を解決できないまま、世界は原発の建設に舵を切り始めています。温暖化対策に繋がるとして、二酸化炭素を出さない原発に注目が集まっているからです。

アメリカ・オバマ大統領
「気候変動による危険は否定できない。私たちは責任を取らなければならない」

フランス・サルコジ大統領
「温室効果ガスを2050年までに50%削減。先進国は80%達成しなければならない」

・フィンランド

ヨーロッパではチェルノブイリの事故以降、およそ20年ぶりに原発の建設が再び始まりました。新興国でも建設ラッシュが始まっています。経済成長を続ける中国、今後3年間で16基の建設を予定しています。今後、世界で作られる予定の原発は100基を超えます。放射性廃棄物という課題に私たちはどう向き合うのか。原発の解体と建設が同時に進むイギリス。政府は温暖化対策やエネルギーの確保を目的に方針を転換、原発建設に乗り出しました。

エネルギー気候変動省 エド・ミリバンド大臣
「この国には原子力ルネサンス、新しい原発が必要です。気候変動が国民の考え方を変えたのです。原子力ルネサンスは世界中でわきおこっています」

これに対し、政府内から反対する声もあがっています。

政府のエネルギー諮問委員会 ジョナサン・ポリット委員長
「廃棄物の問題を解決した国はほとんどありません。現状では原発はデメリットの方が大きいのです。問題が解決できるまでは、新たに原発の建設を進めるべきではありません」

市民の間でも意見が分かれています。原発の建設候補地で開かれた住民説明会です。

「原発は持続可能な発展をもたらします。反対してる人はごくわずかです」
「本当にこの村が建設に適しているのですか」
「なぜここに原発を建てたいと思うのか分かりません」
「雇用が生まれますし、将来的には子供にとっても良いニュースです」

イギリスでは、政府、住民、さまざまなレベルで議論が広がっています。

日本でも2つの原発が解体されると同時に9基の建設計画が進んでいます。しかし、国民的な関心は十分に高まっているとは言えません。処分場がないまま、解体で出る廃棄物が増え始めています。

・東海発電所

解体が進む東海発電所。運転中の7倍の放射性廃棄物が出ると予想されています。東海発電所に設けられた貯蔵施設です。廃棄物は専用の容器に入れられ、コンクリートの施設の中に保管されていました。しかし、広さは限られています。解体作業が進むと数年後には満杯になると見られています。

日本原子力発電・松本松治副社長
「解体をやっているのだけど、廃棄物がどう処分されるか分からない。外に出せない場合は、そこに(発電所内)保管せざるを得ないわけですが、だんだんとひっ迫してくると、ある意味解体に着手が出来ない状況に陥っていく」

放射線の影響を受ける廃棄物は6万8000トン。少しでも減らすため、一般の製品にリサイクルしようとしています。国の制度では、放射線が胃のレントゲンで浴びる量のの60分の1を下回ればリサイクルできます。作業員は汚染の度合いを測定します。基準以下と認められれば、原発の外に持ち出すことができます。

この日、リサイクルを許可された廃棄物を地元の企業に持ち込みました。廃棄物を溶かしてベンチやテーブルに加工しています。リサイクルの目標とする量は4万トン。しかし、こうした廃棄物の加工を引き受けてくれるのは1社だけです。健康に影響のないレベルだとしても、放射能への抵抗感が根強いためだと言います。リサイクルを始めて2年、まだ広がっていません。

・廃止措置安全小委員会の報告書

国は放射性廃棄物の処分場についてどう考えているのか、平成13年にまとめられた国の審議会の報告書です。原発が解体撤去される前に廃棄物の処分場を作ることが不可欠だとしています。東海発電所で原子炉の解体が始まるのは2年後、大量の廃棄物が生まれることになります。

・原子力委員会(東京 千代田区)

国の原子力政策を立案する内閣府、原子力委員会の近藤委員長に処分場がない現状をどう考えているか問いました。

内閣府 原子力委員会 近藤駿介委員長
「当初はもう少し早く進むということを想定していたと思うんですけど。しかしこれは、いろいろな当時は想定していなかった不都合、不具合がプロセスで起きた、結果として遅れている。国民との対話を通じて、自分たちの問題と理解していただける、そういう人たちの数を増やしていく。私はまだまだそういう目で見ますと、われわれ原子力関係者の努力が足りない」

国民の理解を広げ、処分場を作りたいとする国、原発を推進してきた責任が今問われています。

・市民による原発を考える授業

原発解体で出る廃棄物の問題に将来向き合うのは子供たちです。

・大和田小学校(埼玉 新座)

賛成意見「電気ができて、二酸化炭素を出さずに環境にもすごくいいと思いました」

反対意見「地下に埋めてもそのうち埋めるところがなくなります。いくら環境にいいとしても地上に置かれるとちょっと怖くて、厳重にされているとしても本当に怖くなるからです」

原発が生み出す負の遺産を次の世代に先送りし続けるのか。私たちは再び「ふげん」を取材しました。地下に作られた廃棄物の処理施設では、作業員たちが廃棄物を分別する作業に追われていました。解体で増え続ける放射性廃棄物。日本のどこに処分されるのか、その行方は決まっていません。人類が原発を手にしてきてから半世紀。これまでに作られた原発は世界で539基に上ります。そして、その全てがいずれ解体され、廃棄物となるのです。

(以上)  

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コメント
 
01. 2011年4月09日 06:53:25: E8oEvpP5cs
私も背筋が寒くなる思いで見た記憶があります。誰が、原発を、推進、してきたのか。彼らにとって、原発は、なぜ、どこに、メリットがあるのか。それが誰なのか、なぜなのか、わからない。

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