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http://kumanichi.com/syasetsu/kiji/20090905001.shtml
社説
原子力政策 「核燃サイクル」の再精査を
2009年09月05日
日本原燃は青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場について、機器故障などを理由に試運転終了時期を今年8月末から来年10月に延期すると国に届け出た。2006年の試運転開始以来、8回目の延長だ。
同工場はプルトニウム利用を柱とする核燃料サイクル政策の要だが、当初07年夏とされた本格操業の見通しは一段と不透明になった。
核燃サイクルでは高速増殖炉の開発が停滞、プルサーマル計画も大幅に遅れ、高レベル放射性廃棄物の処分地の候補地選定も進んでいない。
国は40年以上も前から使用済み燃料の全量再処理を掲げ、核燃サイクル路線を走ってきた。だが、そのほころびは繕えぬほど深く広がっている印象が否めない。核燃サイクルはこのまま進めていいのか。安全性はもちろん経済性も含めて原子力政策の方向性の是非を再精査すべきだ。
再処理工場が直面しているのは、高レベル放射性廃液のガラス固化体製造試験でのトラブルの悪循環。試験では溶融炉の底に廃液中の金属がたまる問題が頻発。炉底部を混ぜようとした棒が曲がり、炉内の損傷も出たほか、配管からの廃液漏れなどのため長期停止に追い込まれた。
工場は技術の大半をフランスから導入したが、心臓部となるガラス固化体製造など国産技術を使った部分でトラブルが集中。試運転では一部のガラス固化体に想定外の化合物が含まれる不具合も生じている。
一連のトラブルでは、高レベル放射性廃液の漏れが国や自治体にすぐ報告されないなど保安規定に反する対応もあった。原燃は「安全確保の意識が希薄だった」との報告書を出したが、技術、安全管理の両面から徹底的に再検証すべきだろう。
核燃サイクルでは高速増殖炉が燃料の利用効率やプルトニウム利用面でも本命視されてきた。だが、原型炉もんじゅのナトリウム漏れ事故から13年余。トラブル続きで運転再開は大きく遅れ、技術や経済性からみても実用化できるかは疑問だ。
日本が海外での再処理で保有するプルトニウムは約25トン、国内保管分6トン超に加え、工場の操業が始まると毎年最大8トン増える。「余剰分は持たない」と公約している日本は、利用計画の明示も重い責務となる。
国と電力会社は、プルトニウムを混合酸化物(MOX)燃料に加工して原発で燃やすプルサーマルに期待をかける。計画は九州電力など三社で実施の方向だが、準備や地元了解が整っていない電力も多く全体の達成目標は5年間先延ばしされた。
再処理工場と高速増殖炉開発に費やされた費用は約3兆円。放射性廃棄物の処分費などを加えた核燃サイクルの後処理費用は19兆円超とされる。そのエネルギー全体コストや国民負担の割合も詳しく知りたい。
原子力政策では原発をはじめ関連施設の耐震性や使用済みウラン燃料の中間貯蔵施設も難題となっているほか、使用済みMOX燃料の扱い、高レベル放射性廃棄物の処分地など手つかずの課題が山積している。
新政権を担う民主党は公約で「国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用に着実に取り組む」としているが、直面する諸難題と向き合った説得力のある政策を示してほしい。