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エネルギーパスとは、EU全土で義務化されている
http://energy-pass.jp/activities/epass.html
「家の燃費」を表示する制度。
一年間を通して快適な室内温度を保つためには、床面積1m2あたり○○kW時のエネルギーが必要かが数値化されており、誰でも自分の家の燃費を確認する事が出来ます。
例えば、30kW時/m2の燃費性能をもつ床面積100m2の家の場合、一年間で必要な冷暖房エネルギーは3000kW時です。
この家のエネルギーを全て灯油で賄う場合は一年間で300Lの灯油が必要です。(10kW時の電気は1Lの灯油と同じエネルギー)※1
※1
10kW時の電気エネルギーは概算でおよそ1Lの灯油エネルギーと同等。30kW時/m2の燃費の建物は3L/m2とおよそ同等。このレベルの燃費性能の家のことを、3リッターハウス、あるいは30kW時ハウスなどと呼びます。
エネルギーパスの登場以前は、全ての建物で省エネルギーに関する共通の「ものさし」が無かった為、住宅購入者はおろか工務店やハウスメーカーなどの造り手ですら分かりませんでした。「省エネ住宅」とか、「超省エネ住宅」「外断熱住宅」「無暖房住宅」「3リッターハウス」「パッシブハウス」「ソーラーハウス」などの様々な省エネ住宅がありますが、名前だけではどれが低燃費なのか、さっぱり分かりませんでした。
そこで消費者保護や地球温暖化対策として、家の省エネ性能が一体どれくらいなのかを、一般の住民にも分かり易く表示する「燃費のものさし」としてエネルギーパスが開発されました。エネルギーパスは、住宅のエネルギー消費量の削減に関心を持ってもらうと共に、実際の賃貸契約や売買契約の主要な条件の1つとして、エネルギー性能を考慮する為に開発されています。このエネルギーパスによって、居住者はより快適で光熱費のかからない家を求めるようになり、ヨーロッパ全土で省エネ住宅が爆発的に普及するようになりました。
ところで、あなたは「ご自宅の燃費」を把握しておりますか? エネルギーパスの普及しているヨーロッパでは、「うちは○○kW時/m2だよ!」とすぐに答えが返ってきますが、残念ながら今の日本ではこの質問にはっきりと答えられる方はいらっしゃいません。
「電気代は月に1万円、ガス代は・・・」と実際の光熱費をこたえられる方はいらっしゃいますが、これは燃費性能ではなく、実際に支払ったエネルギー価格。車でいうと月のガソリン代を答えているようなものであり、○○km/Lという「燃費性能」とはちょっと違います。
ガソリン代は走り方や運転する環境やガソリン価格によって大きく変動するものです。極端な例では、同じガソリン代が月5,000円でも、一ヶ月に200km走っている場合と、800km走っているのかで燃費は何倍も違います。ガソリン代だけを聞いても、車自体の燃費性能を把握することはできません。同じ理由で月々の光熱費を聞いても家の燃費を正確に知る事は出来ません。住人が暑さ寒さを我慢するほど、省エネ性能の高い家という事になってしまいます。我慢しなくても省エネ性能の高い家こそが、本物の低燃費住宅です。
自動車のほかにも家電でも年間の消費電力が明示されていますが、24時間つけっぱなしである冷蔵庫などは、10年前と比べて消費電力が半分以下になっていることが分かります。新規に購入する場合や、買い替えの際には、この表示されている年間消費電力は大きな判断基準となっています。このように、自動車や電化製品では必ず表示されている「燃費性能」が、一生で最も大きな買い物のはずの住宅に無いことは、今思えば非常におかしいことだったのではないでしょうか。
2011年7月に、日本でも「家の燃費」を表示する為に、日本エネルギーパス協会が発足し、日本版エネルギーパスの発行が始まりましたので、今後は「家の燃費」が日本においても明確になっていくことでしょう。
ほんの一例をご紹介すると、100m2の戸建住宅があり、エネルギーパスに40kW時/m2と表示があった場合、この家は全室において一定範囲の室温(※2)で24時間、365日の一年間を過ごすと4000kW時のエネルギーが必要な家である事が分かります。この家に最近のエアコンを取り付けた場合、一年間の冷暖房費はたったの24,000円(※3)、小さな部屋用のエアコン一つで、家全部が快適な空間に出来ると言うことを意味しています。かなり低燃費な家ですね。
※2
国交省と経済産業省では、告示で、建物の燃費計算の際は、一年間を通じて室内温度を18度〜27度に保つことを想定しています。
※3
COP4=最近のエアコンでは1の電気で4の空調エネルギーを造り出すことが出来ます。4000kW時÷4→1000kW時のエアコン用電気が必要とみなし、電気代24円で計算。
このように住む前に家の燃費が計算できるようになると、燃費の悪い家は、家賃や売買価格が低くなり、逆に燃費の良い家は家賃や資産価値が高くなります。今はまだ日本ではこのような家の燃費を知るすべがありませんが、10年以内にはヨーロッパのように、住む前に家の燃費を知ることが出来る、そんな時代がすぐそこまで近づいています。
ヨーロッパにおける経験と奨励
EUでは、エネルギー効率の高い建築物を普及させるために、多くのパイロットプロジェクトが政府支援のもとで長い年月をかけて進められてきました。これらのプロジェクトは査定評価された後に適切な基準値が公表され、また経済性の面からも評価され、多方面の異なるレベルや分野でお互いに影響を与えながら発展してきました。
日独間交流におけるパイロットプロジェクト
ドイツ ノルトラインヴェストファーレン(NRW)州にあるエコセンターNRWは、1991年に州政府によって設立され、2000年の民営化を経て現在に至るまで、ドイツ国内の様々な商業ビルや公共施設の省エネ化コンサルタントや、省エネ基準の法律改正の基となる研究など、州・国・EUといった公的機関からの委託も受けてきました。
日本との交流は10年の歴史を持ち、2008年より石川県知事の仲介で石川県建築住宅総合センターと業務提携し、数々のプロジェクトを実施。2009年には国内初の公共施設用エネルギーパスが、石川県庁を対象に作成されました。
こういったプロジェクトを通して、ISO13790の評価システムを基に、日本国内や県内に適したシステムの模索や評価システムを研究・開発しています。
エコセンターと石川県では、県内の関連機関や大学と共に「いしかわ住まいのエコ性能評価制度」として、エネルギーだけでなく県産建材の使用度などといった項目も含めたシステムの開発に務めています。
また、上記の件とは別に類似した目的として、一般社団法人クラブウォーバンとの交流も開始され、こちらでもプロジェクトが始まっています。
その第一段として、実際に日本で計画された住宅2件のエネルギー性能を評価しています。ひとつは国内で最も普及している新築の仕様(公庫仕様)、もうひとつは世界基準(ドイツ基準)のエネルギー性能を満たした仕様として設計されたもので、この比較により、住宅の比較評価および省エネ化の第一歩が踏み出されたと言えます。
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