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[Part1] 「蒸気が出ない」乱開発が窮地を招いた
曲がりくねった道を車で1時間、行けども行けども、蒸気を運ぶパイプラインが山肌に続いている。山手線の内側面積の2倍近くの山中に18の発電所が点在する米国の地熱発電地帯「ガイザーズ」は、とにかくスケールが大きかった。
ガイザーズの地熱発電所を走るパイプライン。地下から噴き出る蒸気をタービンに送る。Photo:Yasuda Tomoki
地下2000〜4000メートルに横たわる巨大な熱のたまり場(地熱貯留層)から蒸気を取り出す井戸(生産井)は、15発電所を所有するカルパイン社の分だけで約340本ある。原発1基分にあたる約90万キロワットの発電能力は、世界最大規模だ。
米国は、約300万キロワットの地熱発電所を持つ世界最大の地熱利用大国。大半は環太平洋火山帯が貫くカリフォルニア州に位置する。サンフランシスコ北方のガイザーズは、その中でも最も早く、1960年に商業運転を始めた。
15発電所の一つ、ソクラテス発電所の建屋に入ると、東芝製のタービンがキーンという回転音をたてていた。地中から噴き出してくる6.8気圧の蒸気がタービンを回す設計だ。
だが、実際の蒸気は2.7気圧にとどまると、案内役の技術者が教えてくれた。「減衰」が深刻なのだ。
みんなが吸い取った
通常の地熱発電では、地下から噴き出る熱水や発電タービンを回した後の冷やした蒸気を、専用の井戸(還元井)で地中に戻す。マグマの熱はほぼ無尽蔵だが、熱を地表に運ぶ水分は、取りすぎると勢いが衰えてしまうからだ。
ガイザーズには、原油価格が高騰した70年代から掘削技術を持つ石油会社が続々と参入した。再生可能エネルギーの促進政策や火力発電所の排ガス規制強化も拍車をかけた。1980年代半ばの5年間で蒸気の産出量は倍増。ピーク時の発電能力は200万キロワットに達した。
その後に起きたのが、年に25%というすさまじい蒸気の減衰だ。「ひとつのミルクセーキに何本もストローをさし、みんなができるだけたくさん吸い取ろうとした」とガイザーズ地熱協会代表のロナルド・シース(68)。撤退が相次ぎ、いくつかの発電所はわずか数年の稼働で閉鎖に追い込まれた。
減衰はどの地熱発電所でも避けられない現象だ。地中への還元に気をつかう日本の発電所でも、井戸1本あたり年2%程度は蒸気が減り、新しい井戸を追加して発電能力を保っている。だが、ガイザーズほど極端な乱開発は世界でも珍しい。
対策として、生活排水の処理水を地熱貯留層に注入する「リチャージ」が1997年以降続けられている。
生活排水が救う
ガイザーズから南に30キロほど離れたサンタローザ市は、市郊外の下水処理場から約65キロのパイプラインを通じて毎日約4万5000トンの処理水をガイザーズに送っている。この水が、発電能力を10万キロワットほど押し上げているという。
リチャージは、農業用水や公園の散水に再利用しても大量に余る処理水の捨て場に困っていた市にとっても、渡りに船だった。パイプラインの建設費は2億5000万ドルと安くなかったが、カルパイン社から水の代金が年30万ドル入る。ポンプを動かす電気代の大半も同社が負担。市のリチャージ・プロジェクト事務局のマイク・シャーマン(48)は「長期的に、双方が満足する解決策だった」と語る。
リチャージは、マグニチュード3以下の微小地震を増やすことがわかっている。地熱発電所から2キロほどの人口約500人の集落アンダーソンスプリングスでは、ガツンという1秒ほどの揺れが1日に1、2回起こると住民が訴え、カルパイン社と北カリフォルニア電力公社側から年に計10万ドル受け取るようになったという。
集落に40年暮らすメリエル・メドラノ(77)は「地熱発電に反対はしない。ただ、まっとうにやってほしい」と、ひびの入った家の壁や壊れたコンクリート製プールの写真を見せた。
こうした様々なコストをかけても、燃料代不要で稼働率が高い地熱発電は、天然ガス火力より安上がりだという。先進的な環境政策で2020年までに再生可能エネルギーによる電力供給を33%以上にするよう義務づけるカリフォルニア州で、地熱へのニーズは高い。
15年後に蒸気が今より15〜20%減り、発電能力が約60万キロワットに落ち込むとカルパイン社は予測するが、効率の悪い発電所の閉鎖などによってあと50年は経営が成り立つ、とみている。
発電効率のいい新型タービンへの更新も2002年から東芝と進めている。カルパイン社の責任者ジョン・アヴェリー(41)は「大事なことは資源を採りすぎないことだ。減衰をできるだけ遅らせるのが今できる最善の道。その戦略はうまくいくと信じている」と話した。
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