http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/536.html
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現在操業する洋上風力発電所のうち最大規模となるザーネット発電所の建設時の様子。
船舶を使った建設ノウハウの積み上げも洋上風力事業の活性化に欠かせない課題だ
英国が洋上風力のメッカに 産業振興の起爆剤になるか
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20111014/108780/
海上に、かつてない規模で風車が出現している。気候変動対策にとどまらない、英国の戦略が伺える。
英国北西部リバプールから数km沖合へ船が進むと、25基の風車が姿を見せる。平均風速9m/sの北風を受け、独シーメンス製風車が回る。風速14m/sの風が吹けば、出力は最大の3600kWに達するという。
洋上風力発電所「バーボバンク」は総出力9万kW。デンマーク電力大手、ドングエナジーが運営する。年間3億1500万kWhの発電量と、20年で640万tのCO2削減を見込む。
これは英国の洋上風力事業のほんの一部。例えば操業する事業として世界最大規模を誇るザーネット発電所は、出力30万kW。スウェーデン電力大手のバッテンフォールが運営し、デンマークのヴェスタス製風車が100基並ぶ。建設費用は8億8000万ポンド(約1110億円)に上る。
英国の政府系組織クラウンエステートが2001年に入札したラウンド1事業の1つ、バーボバンク発電所。リバプールの沖合約7kmの海上に25基の風車が並ぶ
投資と技術を呼び込め 英国の本音は経済対策
2001年、政府系組織が海底借地権を洋上風力発電事業に貸与する入札「ラウンド1」を始め、昨年発表したラウンド3までに41事業が応札。総出力は4880万kWだ。今後、少なく見積もっても年間50万kWの増設(グラフ1のレベル1)が続き、3つのラウンドが予定どおり進めば、2050年の年間発電量は2000億kWh弱に及ぶ(レベル2)。英国の意気込みは半端ではない。
投資や技術開発の進展度合いが異なる4つシナリオに基づいて予測している
出所:英エネルギー気候変動省「2050 Pathways Analysis」2010年
なぜ、洋上風力に力を注ぐのか。政府が、2020年までに温暖化ガス排出量を1990年比年で34%削減すると決めたのが2008年。その翌年、2020年までに電力消費の31%を再生可能エネルギーで賄うと定めた。
しかし、気候変動対策だけが政府の主眼ではなく、「エネルギー安全保障と経済対策としての期待が高い」(風力発電事業者団体・リニューアブルUKのマリア・マカフェリー代表)。
80年代には北海の石油と天然ガスでエネルギー自給率100%を達成したが生産量が激減。2005年には輸入国に転じた。そんななか電力供給の90%を担う火力と原子力の4分の1が2020年までに寿命を迎え、運転を終える。これを補う役割を再生可能エネルギーに与えようというのだ。
産業革命の先駆けとなった英国も、現在はGDP(国内総生産)に占める製造業の割合が11.1%(2009年)まで縮小。自動車に匹敵する部品数の風車に、国内製造業の活性化と雇用創出、そして新たな輸出産業になり得る成長の芽を見出した。
コスト減へ開発も支援 洋上ならではの技術課題も
英国のもくろみは海外から投資と技術を呼び込むことだ。政府は2009年、洋上風力関連の技術開発に1億2000万ポンド(約150億円)の投資を発表。シーメンスや米ゼネラル・エレクトリック、スペインのガメサが工場設置を決めた。三菱重工業の欧州での原動機製造拠点、MPSEも、最大1億ポンドを投じて技術開発拠点を置く。政府は2014年までに200人の雇用創出を見込み3000万ポンド(約38億円)を助成する。
英国北東部ニューカッスルには、投資の呼び水となる研究所がある。国立再生可能エネルギーセンター(NAREC)は、50mの風車ブレードについて耐久性を検査できる施設の提供から、系統接続技術の開発、保守技術の普及、関連企業の育成など風力産業の発展を多方面で支援する。
風力発電設備メーカーはブレードの大型化に挑む。大型化による出力増は発電コストを引き下げる。NARECでは全長100mまでのブレードにも対応できる品質検査施設を建設中だ。「完成前からメーカーの引き合いがある。出力増と耐久性の両立は課題の1つだ」(NAREC)。
洋上ならではの課題も多い。例えば操業中の海域の水深は5m前後。ラウンド3の海域は30m以上だが、この深さでの設置技術の開発は道半ば。建設作業を進める専用船の開発や船舶の運用なども解決すべき課題だ。
いっそうの資金と技術の投入が欠かせないが、今年5月、政府の諮問機関である気候変動委員会は、2030年時点の発電コストを理由に、投資の速度を緩め、低コストの原子力を全電源の40%まで引き上げるよう提言した。一方、国内では風車の一大製造拠点への可能性に期待が膨らむ。低炭素社会づくりと新産業育成に向け、どこまで投資負担を許容できるか、産業革命の国の判断が注目される。
● グラフ2 英国の2050年までの電源構成シナリオ
「電力、産業、家庭などが理想的な低炭素化投資を進めた場合」のシナリオ
出所:英エネルギー気候変動省「2050 Pathways Analysis」2010年
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