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英BP原油流出事故の余波:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100624/215131/
英BP原油流出事故の余波
大西 孝弘(日経ビジネス記者)メキシコ湾での原油流出事故で、英BPが損害補償として1.8兆円を負担する。米政府は海底油田の開発に制限をかけており、開発コストの上昇は不可避だ。今後、石油価格の上昇が、新エネルギー開発を促進させる可能性が出てきた。
4月20日、英石油大手BPがメキシコ湾で原油掘削中に起こした爆発事故は、映像を通して世界に衝撃を与えた。しかも、史上最悪と言われる今回の原油流出事故は一夜にして、世界のエネルギー産業の将来を変えつつある。
英BPの原油流出事故の経緯 via kwout
事故の概要は以下の通りだ。
石油掘削リグが爆発・炎上し、作業員11人が死亡。2日後には掘削リグが海底に沈み、海底から原油の流出が止まらなくなった。BPは原油の噴出口をセメントで封じ込めるなどの様々な応急措置を講じたものの、1500mもの深海のために作業は難航し、いずれも失敗。2カ月以上にわたって最大で日量950万リットルの原油が流出し続けている。最終的に流出が止まるのは8月頃と見られる。
原油開発コストは急上昇事故の与える影響は広範囲に及ぶ。まず、米国民の怒りが沸点に達した。流出した原油による環境汚染が、メキシコ湾における漁業や観光へ深刻な打撃を与えたからだ。一部水域の禁漁は今も続いており、漁獲量が事故前と同じ水準に戻るかは不透明だ。
さらに、事故が起きたメキシコ湾には風光明媚なリゾート地があり、鯨が回遊する自然豊かな海域でもある。経済的な損失のみならず、米国民に与えた心理的な悪影響も無視できない。事態を受けて、米政府と議会はBPの責任を厳しく追及。初動の遅れなどの批判を浴びているオバマ大統領はテレビ演説で「最悪の環境災害」と断定し、指導力を発揮しようと躍起だ。BPに地域住民や企業への補償原資として200億ドル(約1兆8000億円)を拠出させることを決めたが、これは世論の沈静化を図るためと言っていい。
しかし、感情論が絡んでいるだけに、補償額はそれで済みそうにない。200億ドルという補償額はあくまでも最低ラインに過ぎない。実際、オバマ大統領は「200億ドルは負担額の上限ではない」と発言し、補償額が増えることを示唆した。言うまでもなく、米国は訴訟社会。様々な住民訴訟が起こされ、BPは訴訟対応に追われることになりそうだ。最終的な損害賠償額は、最大で490億ドル(約4兆4000億円)に達するとの見方も出ている。
日本企業も無関係ではない。三井物産子会社の三井石油開発は同権益の10%を所有。操業には携わっていないものの、損害責任を問われる可能性も指摘されている。
しかも、影響はメキシコ湾だけにとどまるわけではない。過去最大の原油流出事故は、多様なリスクを浮かび上がらせることとなった。
1つは原油価格への影響だ。事故を受けて、米国政府はメキシコ湾での試掘をやめさせている。今後は、さらなる規制が導入される見通しだ。
世界ではメキシコ湾だけでなく、ブラジルや西アフリカなどで深海油田の開発が進んでいる。陸上での油田開発の適地が減りつつあるからだ。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の伊原賢・上席研究員によると、深海油田用として世界で700基ほど掘削リグが稼働しており、そのうちメキシコ湾には240基があるという。伊原上席研究員は、「2015年のメキシコ湾での原油生産量は、予測より日量10万〜30万バレル下回る」と指摘する。
米国での海底油田開発に対する規制強化は、世界全体での新規海底油田の減少に結びつく可能性がある。
足元では原油の余剰があるため、原油価格に大きな影響は出ていないが、世界的に海底油田の開発に制約がかかれば、中長期的には需給の逼迫時期が予想よりも早く訪れることになる。おのずと原油価格は上昇基調を強めざるを得ない。
新エネルギー優位が明確に加えて、価格動向と同様に見逃せないのが法的リスクだ。
米国には原油流出での苦い経験がある。1989年、米石油大手エクソンの原油タンカー「バルディーズ号」がアラスカ沖で座礁し、約4000万リットルもの原油を流出させ、漁業などに深刻な被害を与えた。これを契機に米国では油濁法が成立。同法は汚染原因者の責任を明確に規定し、当時の国際法の水準を超えて企業に重い責任を課すことになった。企業は反発したが、その後他国も追随して国際標準となった。
今回のBPの原油流出事故でも、この油濁法が企業責任の1つの法的根拠になる。同法には無過失の場合は7500万ドルという有限責任の規定があるが損害の大きさを鑑みて、米議会では無過失でも無限責任を問うべきとの声は高まる一方。法改正が検討されている。
しかも油濁法は、損害の範囲を幅広く規定。同法は漁業や観光などへの被害といった金額換算できる損害だけでなく、「自然汚染そのもの」への賠償責任を企業に課すことができる。学習院大学法学部の小塚荘一郎教授は、「欧米だけでなく、発展途上国も環境汚染関連の立法に強い関心を持っている。生産過程などで環境を汚染する企業には、世界的に厳しい責任を課すようになるだろう」と指摘する。
今回の原油流出事故は、エネルギー事業の投資に関して、様々な教訓をはらんでいる。BPはかつて、太陽光発電や風力発電など新エネルギー事業を強化し、2004年には太陽光発電で世界シェア3位に入るほどだった。
ところが、2008年のリーマンショックによる経済危機で原油価格が急落し、業績が悪化すると元の石油開発路線に回帰する。短期的に収益が上がらない新エネルギー事業への投資は増やさず、確実な収益拡大を見込める石油・ガス事業に経営資源を集中したのだ。その矢先に起こったのが原油流出事故だった。
米政府の姿勢ははっきりしている。オバマ大統領は原油流出事故を受けたテレビ演説で、再生可能エネルギーを推進する方針を改めて示した。
「BPの原油流出事故は原油供給の不確実性を示した。近い将来、原油価格はまた1バレル=100ドルを超えるのではないか」(三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長)との声は根強い。BPの原油流出事故は、今後のエネルギー需給とエネルギー開発の行方、さらには需要家である世界の企業の経営戦略に、大きな影響を与えそうだ。
日経ビジネス 2010年6月28日号162ページより
「かっての海底油田とは、大陸棚200m程度の水深で、2000mほどの掘削深度」だったが、ディープウォーター・ホライズンは、水深1500m・掘削深度5486mである。石油減耗により、このような危険な油田をも掘らざるをえなくなっている。
単なる原油価格や新エネルギー開発の問題ではなく、これは近代の終焉という人類史の岐路となる事件である。
◆関連
石油ピークは食料ピーク、そして文明ピーク : メキシコ湾の石油事故と「石油ピーク」:オバマ演説からの視点
http://oilpeak.exblog.jp/13517215/
米大統領演説要旨 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201006/CN2010061601000295.html
米軍、「グリーン部隊」へ転換 20年に化石燃料半減へ - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201006/CN2010062101000153.html
あらかじめ告げられていた原油流出事故 - シートン俗物記
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20100627/1277600159
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