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カナダシェール誤算 三菱商事、権益を売却 高い輸送コスト/環境規制 石油資源開発も事業遅れ
日本企業が参画するカナダのシェールガス事業で誤算が続いている。三菱商事は2日、2010年に360億円強で手に入れたガス鉱区5割分の権益を売却したと発表した。石油資源開発や出光興産もシェール由来の液化天然ガス(LNG)事業の延期・見送りに追い込まれている。米国はシェール産業に勢いが出ているが、カナダには特有の問題が横たわる。
「コストを下げるハードルがかなり高い」。エネルギー業界ではカナダのシェール事業の難しさがよく語られるが、今回の三菱商事の決定はそれを裏付けた。
売却したのはブリティッシュコロンビア州のコルドバ鉱区の権益。11年に操業を始め、日量3千万立方フィート前後を生産していたが、権益を持っていた子会社は14年12月期に424億円、15年12月期に89億円の最終赤字に陥っていた。売却額は非開示だが、過去に計270億円の減損を計上した。
三菱商事の誤算はこれだけではない。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルと共同で西海岸のLNG生産・輸出計画を進めているが、16年末に予定していた最終投資決定を延期するとシェルが7月に発表。当初はコルドバからここにガスを送る計画だった。
カナダのシェール事業苦戦の理由は3つある。
まず地理的な問題だ。主なガス消費地はカナダではなく米国。パイプラインによる輸送コストがかさみ、米国産シェールより利幅は薄い。低コスト生産技術で米国に後れを取っているのも不利だ。西海岸までパイプラインを敷くのにロッキー山脈を越える必要があり「整備コストは膨れあがる」(大手商社幹部)。
次に環境問題。環境への影響を懸念する住民の反対運動が多く、余波が石油資源開発に及んでいる。マレーシア国営石油会社と組み、西海岸にLNG基地を建設する計画だが、温暖化ガス削減や海洋生態系保護についてカナダ政府との調整が続く。18年末稼働が目標だが、着工時期は未定だ。
3つ目は輸出競争力の低下だ。日本が輸入するアジアや中東産のLNG価格は原油価格に連動する。今は原油安の局面なので、ある金融機関の幹部は「北米からシェールガスを輸入する利点が薄れつつある」と指摘する。出光興産はカナダ企業と合弁会社を設立し、17年から年200万トンのLNGを輸出する計画だったが、採算が見込みづらく、今春に事業化を当面見送る決断を下した。
もちろんカナダの事業をすべて捨てるわけではない。三菱商事は産出量が多く、採算が良い別のガス田権益を持っており、ここに集中する。ほかの企業も掘削技術開発や調達コスト削減で採算改善を目指すことになる。
(藤野逸郎、指宿伸一郎)
[日経新聞11月3日朝刊P.14]
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