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(回答先: 安富氏らによって、経済学の根底に横たわる虚構が原理的に暴かれつつあることを今目撃している。なんとスリリングではないか! 投稿者 仁王像 日時 2012 年 8 月 23 日 21:40:59)
マルクスの労働価値説について、関連するのでやや古臭いがアップする/仁王像。
≪何故マルクス経済学は滅んだのか≫
マルクスの労働価値説には決定的な欠点があった。この事はリカードも認めている。それは「労働の換算」の問題である。
リカードは、労働価値説について「これは資本主義より前の世界でしか通用しない」と反省している。
苦心惨憺した挙げ句、マルクスは遂に一つの解決策を見出した。「労働の換算率は市場のメカニズムで決まる」としたのである。
これに対し「マルクスの説明は循環論に陥っている」と批判の狼煙を上げたのが、オーストリアの経済学者オイゲン・フォン・ベームバヴェルクである。
そもそも、労働価値説において労働時間は「モノの価値を決める要素」だった筈である。その労働時間に実質的な価値(賃金)が「市場で決まる」となれば、賃金は物価(モノの価値)と相互連関関係にあるから、話は堂々巡りで説明にも何もなっていない、という訳だ。19世紀末の学者達は、循環論では説明にならないと思っていたのである。
反論しようにも、既にマルクスは亡く、マルクスが負けを喫する形となり、
経済学の第一線から退けられたマルキストが以降再び経済学の表舞台に立つことはなかった。
≪近代経済学がマルクス理論を証明≫
時が経ち数学が発達して、ワルラスの一般均衡理論を使えばマルクスの労働価値説を循環論に依って説明しても差し支えない事を見抜いたのがサムエルソン博士だった。これを受けて森嶋通夫教授がシャドー・プライス理論を使ってマルクスの労働価値説を完全に証明したのである。
資本主義には必ず失業が出る、と指摘していたのはマルクスだけである。だが、すでに失墜したマルクス、マルキストの言に耳を貸す者はなく、革命も起きなかった。
労働価値説における「マルクスの限界」は、単に経済学におけるマルクスの評価を左右したに止まらず、歴史の風向きを変えるほどに大きな意味を持っていたのである。
≪遅過ぎた循環論の解明≫
そもそも労働価値説において労働時間は「市場価値を決める」ものである筈である。その労働時間の実質的な価値が「市場で決まる」とは何事だ−全く説明になっていない、と言うのが批判者の理屈である。苦心惨憺したのは、一つには彼らが数学を十分には理解していなかったためである。物価と賃金は、片方が一方的に他方を決めるような関係にはない。相互に影響を及ぼし合い、一方が上がれば他方も上がり、それが又一方を押し上げる。この事を数理的に解明したのは数理経済学の始祖、レオン・ワルラスである。もしマルクスがワルラスに入門していたならば、マルクスの学説に対する評価は大きく違った筈である。
マルクスの労働価値説が「循環論であっても十分に説明になっている」と認められたのは、20世紀も暫く経ってからの事である。だが、何と言っても遅過ぎた。マルクスの説は経済学の世界ですっかり存在価値を失っていた。世もすでにマルクスの説に依って革命が起きるような時代ではなくなっていたのである。
【出典】「経済学をめぐる巨匠たち」小室直樹/ダイヤモンド社 ‘04年
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