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震災についての演劇
2011年9月9日
白石 征
本年は、大好評をいただきました昨年の「さ
んせう太夫」を、アンコールに応えて公演いた
します。主題や演技においても、さらに一層の
深化、向上をはかって、名実ともに遊行かぶき
の代表作となるよう、全力で取り組んでおりま
す。
ところで、この三月十一日の東日本大震災は、
計り知れない惨事ばかりでなく、これからの日
本人が背負わなければならない、苦難と不安の
道を私たちに課すことになりました。
現代に生きる私たち一人一人が、これから生
きていく方法を、そしてその根拠を、重くきび
しく問いかけられたのです。
「家族とは何か」 「故郷とは何か」、そして「本
当の意味で、人間の倖せとは何か」と。
日本全国のすべての人が、ひとしなみに問い
かけられたこの課題は、ある意味では、あの昭
和二十年八月十五目の終戦以来のことかもしれ
ません。
これからは、人間の生き方も、社会のあり方
も、自覚的に変わらなければなりません。むろ
ん演劇とても、例外ではありません。
そんななかで、遊行かぶきが主題としてで掲げ
る、人間の生の意味を根源的に問いかげる
「死と再生」の主題こそ、中世説経節の物語がすで
に内包していたものであり、乱世の無常の風に
翻弄されながら、家族が解体され、故郷からひ
きはがされた流離のすえに、まさしく「死」的
体験、つまり「地獄めぐり」をくぐりぬけるこ
とによって家族再会、人間の悲願に至るという
物語であります。
人間文明が生み出した恩恵としての利便性、
経済性など、さまざまな表層がはぎとられた究
極の赤裸の姿のなかで、人間の「幸せ」が追求
されでいくのです。
この世を繁栄ではなく、乱世と認識して、か
けがいのない人生を、家族、隣人、同胞と共に、
お互い支えあいながら生きること、そしてさら
には、これからの営みを、いつに変わらぬ目本
の自然の風土のなかで呼吸を共にし、共生する
ことこそ私たち、命ある者にとってもっとも大
切な心の支えである永生感、親から子へ、子か
ら孫へと身も心も受けつがれていくことを信じ
ることのできる永生感を持つことができるので
はないかと思われるのです。
その意味では、遊行かぶきの試みは、この苛
酷な震災の日々に対応し、それに負けない、本
来人間が持っている生きる勇気と歓びを追求し
ていると言っていいと思います。
今ここに、遊行かぶきの原点を再確認すると
共に、本公演において、さらに気持ちも新たに
再出発したいと願っています。
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ものがたり
安寿とづし王の姉弟は、筑紫の太宰府に赴いた
まま音信の途絶えた父、奥州五十四郡の主、岩城
判官正氏を訪ねて母親、乳母と共に旅に出る。
しかしその道すがら、直江津の浦で人買いに欺
されて、母子は引き離され、母親は佐渡に、また
姉弟は悪名高い丹後の由良湊のさんせう太夫のも
とに売られてしまう。
安寿とづし王は、譜代下人(奴隷)として苛酷な
労働を強いられ、かつさんせう太夫の息子三郎の
暴力にも苦しめられるが、片時として別れた母親
のことが忘れられない。
姉の安寿は、立ちはだかる暴力を前に意気消沈
するづし王を、母親に代わって庇護し励ましつづ
けるが、ある山まつりの日、ついに意を決して、
づし王に脱出を敢行させる。
づし王は、執拗な追手の迫撃を国分寺の聖(ひ
じり)に救けられ、身は乞食(こつじき)となり
ながらも、天王寺にたどり着く。
そしてそこで持っていた守り本尊、地蔵菩薩に
よって都の有力貴族、梅津の院に見出されること
になる。
やがて身を立て、栄達を果たしたづし王は、待
望の丹後の国の国司に任命されるが、姉はすでに
さんせう太夫たちの手によって惨殺されていた。
憤激に駆られたづし王は、三日三晩の鋸(のこぎ
り)引きという極刑で、さんせう太夫の首を息子
三郎の手で引がせて、その復讐を果たす。
もはや一切の官位を捨てたづし王は、関白に辞
表を提出すると、ひとり母親の行方を訪ねて佐渡
へと渡る。
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遊行かぶき さんせう太夫ー母恋い地獄めぐり 9月11日(日)15時30分開演 藤沢遊行寺本堂
遊行寺本堂
スタッフ
脚本・演出 白石征
短 歌 寺山修司
音 楽 J・A・シイザー
振付 花柳輔礼乃
岡庭秀之
照 明 小粥新一
音 響 A_kira
衣 裳 金子澄世
美術 水島 孝
演出補 柴田明良
運営 花岡雪花
進行 平山はづき
宣伝美術 市川勝典
文 芸 新戸雅章
舞台監督
清水義幸(カフンタ)
舞台スタッフ
小川信濃
江連亜花里
制 作
高須譜生
矢野彰教
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キャスト
安寿
中島淳子
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三郎
青江 薫
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さんせう太夫
梅津の院
井内俊一
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山岡太夫
国分寺の聖
岡庭秀之 (開座)
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づし王(少年時代)
村田弘美 (演劇実験室●万有引力)
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づし王(成人後)
飛永 聖 (演劇実験室●万有引力)
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母親
花岡雪花
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太郎
宮崎三郎
乞食1
村の男
高橋優太 (演劇実験室●万有引力)
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佐渡二郎
仙次
乞食S
脇村
森 裕介 (開座)
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小萩
沢田
子守り
岡田真美
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打の女2
婢女
飯島一代
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村の女1
お君
お六
平山はづき
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工藤
乳母だけ
乞食2
力徳 朋
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歌唱・録音 長谷川恵子
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説経節
説教節政太夫
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協力/ 遊行寺
テラヤマワールド
演劇実験室・万有引力
開座
踊民偶
富田房枝事務所
カフンタ
ポトピの会
増田隆子
三上晴夫
河野真弓
植木小百合
熊本俊太郎
藤沢公民館
遊行かぶきを支える会
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●遊行フォーラム2011
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