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【朝鮮半島ウオッチ】北が金大中氏を評価する理由 太陽政策の遺産、その功罪は【産経ニュース】
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/090822/kor0908221801005-n1.htm
2009.8.22 18:00
21日、ソウルの韓国国会議事堂に設けられた金大中元大統領の祭壇で弔意を示す北朝鮮の弔問団(AP)
北朝鮮の金正日総書記は、韓国の金大中元大統領の死去に際し迅速かつ手厚い対応を取った。
遺族に弔電を送り、最高位の弔問団も速やかに派遣、金大中氏の功績をたたえた。
弔問翌日の22日には、弔問団の金養建党統一戦線部長が韓国の玄仁沢統一相と会談した。
韓国が太陽政策で投じた対北支援は10年間で69億ドル(6600億円)に上った。
李明博政権が引き継いだ金剛山観光、開城工業団地などの太陽政策の“遺産”は核問題で国際孤立を深める北朝鮮にとっては貴重な収入源だ。
しかし、金総書記が金大中氏を「評価」する理由はそれだけではない。(久保田るり子)
■北にとっての「金大中元大統領」
北朝鮮は、核放棄を求める韓国の李明博政権をいまだに「逆賊一味」と呼び、その対北政策を「反統一対決シナリオ」と非難、李政権の求める対話は「無価値なでたらめ」(いずれも17日の労働新聞)と非難している。
一方で2000年に金大中氏と金正日総書記が合意した「南北共同宣言」(6・15合意)は「歴史的」と評価、現在も「民族共同の繁栄を発展させる合意」と賛辞を惜しまない。
その最大の理由を康仁徳・元韓国統一相は「6・15合意」の内容にみる。
「なぜなら6・15合意が北朝鮮の対南政策に沿ったものだからだ。
弔問団は金大中氏の功績と6・15合意を宣伝するのが目的だ」(康元統一相)
6・15合意は軍縮や平和体制の構築など安全保障問題が省かれ、「民族共助」で統一を成し遂げるという観念的かつ北朝鮮の主張を反映した内容となった。
以来約10年間にわたって韓国の保守・革新の対立軸となってきた合意の争点は主に2つである。
(1)合意文書で「(統一を)わが民族同士で自主的に解決」とする「わが民族同士」とは北朝鮮用語で外国勢力の排除、つまり在韓米軍撤退を意味する。
北朝鮮は米韓同盟、韓国の内部分裂を意図している
(2)(統一に関して)「南側の連合制案と北側の低い段階の連邦制が、互いに共通性があると認める」との文言は、自由民主主義による統一を規定する韓国憲法に違反する−との指摘だ。
また、合意はあくまで金大中氏の野党時代からの個人的な統一政策論「3段階統一論」を元にしており、国家の統一政策としての国会論議などの民主的な手続きが無視された、という見方も強い。
李明博政権は「6・15合意」をあからさまに批判はしていないが、事実上、無視してきた。
李政権は過去の南北合意の基礎を朝鮮半島非核化などを明記した1991年の「南北基本合意書」に置いている。
■太陽政策の“遺産”
金大中氏は冷戦まっただ中の1970年代初頭、野党(新民党)大統領候補時代から統一政策を練ってきた。
冷戦終結後、統一ドイツを訪問して「わが朝鮮半島は準備さえまったくなされていない。
ドイツを鏡にわが祖国の統一準備に余生をささげたい」と著書に決意を記し、ブラント独首相(当時)の共産圏との関係改善「東方外交」を参考に対北融和の「太陽政策」を考案したと語っていた。
しかし、使途の検証などを行わずに続けた対北支援に近年は批判が強まり、金大中氏は晩年、責任論にさらされた。
たとえば、対北支援の3〜4億ドル(約280〜380億円)と推測される核実験への転用の可能性が指摘されたほか、太陽政策は金正日政権の維持には貢献しても、北朝鮮の改革開放、民主化や人権改善などに全く寄与できなかった−との批判だ。
厳しい指摘は金大中氏をいらだたせた。
核実験(2006年10月)について「米国が北朝鮮を苦しめているからだ」と語ったり、今年5月の核実験後に経済制裁で国際社会と協調する李明博政権を「南北関係を意図的に冷却化させている」と非難、李大統領を「独裁者」と呼ぶなど、激しい言動が目立った。
太陽政策は韓国社会も変化させた。
金大中時代に労働運動は活発化、教育も確実に左傾化し、歴史教科書の内容は南北融和時代に合わせて北朝鮮に好意的に改訂された。
南北は軍事境界線近くで行っていた拡声器による非難合戦をやめ、情報機関であった国家安全企画部を大幅に縮小、名前も「国家情報院」に改めて諜報活動を含む対北情報収集活動を事実上、中止した。
10年間で韓国の公安警察の人員は半分以下に減ったといわれている。
太陽政策にともなう韓国社会の左傾化は、李政権下で教科書改訂や国家情報院の再編などの“修正”が始まっているが、李政権は南北交流事業を南北対話や緊張緩和政策として引き継いでいる。
国際孤立から柔軟路線に転じた金正日総書記は現代グループに南北交流再開などを強く働きかけ、南北政府間交渉を無視して合意文書を発表したが、現金(ドル)が直接流入する事業再開を韓国政府がどう判断するのか。
国連の経済制裁との兼ね合いで議論を呼びそうだ。
韓国のジャーナリスト、趙甲済氏(月刊朝鮮元編集長)は南北関係における金大中氏の政治家としての“功罪”をこう語る。
「野党指導者として民主化闘争を主導した役割は評価する。
しかし、大統領となって行ったことの責任は大きい。
北朝鮮の核開発を事実上、支援し、親北勢力の活動を助長、韓国国民の北朝鮮に対する警戒心を解いてしまった。
南北共同宣言の統一案は、韓国憲法に違反している。
韓国大統領にふさわしい人物ではなかった」。
金大中、盧武鉉両大統領の死去で太陽政策の時代は終わったが、左派、親北勢力の土壌は韓国内に根付いており、太陽政策の収支決算は簡単ではない。