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(回答先: 次期政権のアフガン戦争(対テロ戦)の本体…米リーマン・ブラザーズ・ホールディングス、破産法適用を申請の見通し(ロイター) 投稿者 新世紀人 日時 2008 年 9 月 15 日 17:34:53)
http://www.tanakanews.com/080914iraq.htm
イラクの石油利権を中露に与える
2008年9月14日 田中 宇
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2003年にアメリカがイラクに侵攻したのは、世界有数の埋蔵量をほこるイラクの石油利権をサダム・フセインから奪って獲得するためだった。多くの人が、侵攻当時から現在まで、そう考えている。グリーンスパン元米連銀議長も、昨秋に出版した回顧録で、イラク侵攻は石油利権が目的だったと書いている。(関連記事)
しかし、石油利権が目的だったとしたら、今、イラクで起きていることは、全く説明のつけようのない話になる。イラク政府は、今後最も多くの石油を産出しそうな2つの油田の開発権を、中国とロシアの石油会社に与える手続きを進めており、米政府はそれを黙認しているからである。
イラク政府は8月末、イラクの5大油田の一つである中部のアフダブ油田(Ahdab)の採掘権を、中国の国有石油会社「中国石油天然ガス」(CNPC)に与える22年契約を結んだ。米侵攻後、イラクが外国企業と油田開発の契約を結ぶのは、これが初めてである(72年の石油国有化以来初めて)。この契約はもともと、フセイン政権時代の1997年に、イラクと中国の合弁事業として締結されたが、イラクが国連に制裁され続けたため事業が開始できないまま、03年の米イラク侵攻を迎えた。(関連記事)
イラク政府は同時期、ロシアの石油会社ルクオイルに対し、イラク南部にある世界最大級のウエストクルナ油田開発の入札に参加してほしいと要請した。フセイン政権は、中国石油にアフダブ油田の開発権を与えたのと同じ97年に、ウエストクルナの開発権をルクオイルに与えていた。ルクオイルとの契約は、中国石油との契約と異なり、米の傀儡的なイラク政府によって8月末に無効が宣言され、入札のやり直しとなったものの、ルクオイルには入札参加権が与えられた。(関連記事)
(イラクは91年の湾岸戦争以来、米英主導の国連から制裁されていたが、96−97年に、制裁が効きすぎてイラクの一般市民ばかりが苦しめられ、人道問題になっているとして、国際社会で対イラク支援の緩和が検討され、そのすきにイラクは中露と石油契約を結んだ。フセイン政権は、国連安保理常任理事国である中露に、気前良く石油開発権を与え、国連に制裁をやめさせようとした)
▼協力者のクルドに冷や飯、敵対者の中露に油田
中国とロシアは、03年の米イラク侵攻に際し、反対の立場を表明した。侵攻直後、米政府は「米による侵攻に協力賛同しなかった国には、イラクの石油開発など経済の利権を与えない」と公言していた。イラク政府は、米の傀儡政権として作られた。にもかかわらず今回、イラク政府は、中国に石油開発権を与え、ロシアを開発の入札に招待した。
中国が開発するアフダブ油田と、ロシアが入札しそうなウエストクルナ油田は、いずれもほとんど開発されておらず、これから長期にわたって産油が可能だ。半面、現在のイラクで産油している南部のルメイラや、北部のキルクークなどの油田は、すでに何十年も産油しており、これからしだいに産油量が減っていく。イラク政府は、これからのイラクの石油利権の中核部分を、中露に与えそうな様相となっている。(関連記事)
キルクーク油田は、クルド人とアラブ人が混住する都市キルクークの郊外にあり、クルド人は何とかしてアラブ人を追い出して石油利権を手に入れ、クルド独立の財政的な足がかりを作りたいと思っている。キルクーク油田獲得のために、クルド人は長いこと米のフセイン打倒作戦に協力してきた。
だがキルクーク油田は、フセイン時代からの劣悪な管理の結果、油田の寿命が縮んでいる。しかも、シーア派アラブ人主導のイラク政府は、クルド人がキルクークを独占することを許していない。隣国トルコはクルド人の独立を嫌って軍事的圧力をかけているが、米はこれも黙認している。米に協力したクルド人には、出がらしのキルクーク油田さえ与えられず、見殺しにされている半面、米に敵対してきた中露には、おいしいまっさらな石油利権が与えられている。
しかも、その一方でイラク政府は最近、米のエクソンモービルやシェブロン、英BP、仏トタールなど欧米の石油会社6社と契約していた既存油田の増産開発契約を破棄してしまった。イラク議会では、石油開発に関する新法を何年もかけて検討しており、6社との契約は、新法ができるまでの短期契約という意味合いで、石油新法が成立した後、6社に本格的な長期の油田開発契権が与えられるはずだった。(関連記事)
しかしイラクでは、米英に対する反感が強まるばかりで、欧米企業に有利な石油利権を与えることになる石油新法に対する反対の世論が強まった。新法の成立は遅れ続け、もはや予定どおり欧米6社に石油利権を与えることが難しくなったとして、今回、予備的な短期契約も破棄された。
▼米政界もマスコミも騒がない奇妙
そして、その代わりにイラク政府は、中露に石油利権を与えた。イラク政府は、アメリカが作った従来のイラクの石油政策は、欧米企業に利権を与えすぎており、国内世論の反発が強いので、バランスをとるため中露にも利権を与えることにしたと説明している。(関連記事)
この説明自体はもっともだが、この件について米政府は阻止も反対もしていない。1兆ドル以上の戦費を使い、100万人のイラク市民を殺し、4000人の米兵の命と引き替えに得たイラクの石油利権を、中露という敵方に取られそうだというのに、米のマスコミも議会も、全く騒いでいない。この件の奇妙さを指摘しているのは、私が知る限りでは、イラク反戦系のウェブサイト(uruknet)だけである。(関連記事)
イラク政府が中露に石油利権を与えるのは、中露と反米勢力と見立てて親密にしているイランが、イラク政府に影響力を行使しているからだという説もある。シーア派のイランが、イラクの多数派であるシーア派を通じ、イラクの政治を操っている観は以前からあるが、イランが、イラク政府の石油利権の配分まで決められるのだとしたら、アメリカは何のためにイラクを占領しているのかという、あきれた話になる。
こうした驚くべき事態が起きるのは、ブッシュ政権が「隠れ多極主義」であることを如実に示している。今後、ウエストクルナ油田の開発権がルクオイルに与えられた場合、その疑いはますます強くなる。
ブッシュ政権は、イラク市民に対する殺害や誤爆、誤認逮捕による拷問などを繰り返し、イラク人(や、その他のイスラム世界の人々)を反米・親イランの方に誘導した。若造なのでそれほど尊敬されていなかったシーア派の反米的な宗教指導者ムクタダ・サドル師を、米は執拗に攻撃し、サドルを反米の英雄にしてしまった。サドルは今、イランにいるが、イラク政界で最も影響力を持っている。
最近、イラク駐留司令官のミューレン海軍大将は議会で、イラク占領はアメリカの勝利に終わらないかもしれないと述べた。また、ゲイツ米国防長官は9月10日、米議会で「イラク戦争は終盤に入っている」と述べた。イラク占領は、来年の次期米政権に受け継がれるだろうが、次政権は敗北的撤退の後始末に追われることになる。米軍が撤退した後のイラクは、米の(故意の)失策の結果、世界有数の石油埋蔵量を持ったまま、イランや中露と親しい反米の国になることが確定的となっている。(関連記事その1、その2)
米金融界では今週(9月15日からの週)、大手投資銀行のリーマンブラザーズが、米当局から救済されないまま破綻しそうな流れとなっている。ファニーメイとフレディマックという公的不動産金融機関2社は、米政府が公金を使って救済することが決まったが、これは長期的に、米の財政赤字を急増させる。米政府は、イラク・アフガンなどの防衛費や、政府系健康保険(メディケア)の赤字増大もあり、いずれ財政破綻に陥る。米は金融・財政の両面でも、破綻に瀕している。次政権にかけて、米は覇権を自滅させ、世界は多極化していくだろう。次の米大統領が誰になっても、この動きを逆流させることは、ほとんど無理である。
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