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覇権漂流:第1部・きしむテロ戦線/2〜4(毎日新聞)
http://www.asyura2.com/08/wara1/msg/885.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 3 月 29 日 15:12:18: twUjz/PjYItws
 

(回答先: 【次期政権も「戦略」見えず】覇権漂流:第1部・きしむテロ戦線/5止 (毎日新聞) 投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 3 月 29 日 14:57:31)

▽覇権漂流:第1部・きしむテロ戦線/2(その1) アフガン、支援に亀裂
http://mainichi.jp/select/world/hegemony/news/20080326ddm001030038000c.html

 カブール市内をパトロールするISAFの装甲車 アフガニスタンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)が岐路に直面している。治安維持と復興支援が主任務だったが、旧支配勢力タリバンの攻勢で、対テロ戦争の前面に立たされているためだ。開戦から5年を経てもイラクの泥沼から抜け出せない米国には余力がなく、他国に部隊増派や展開地域の見直しを求める。だがドイツなどが拒否、ISAFの主体・北大西洋条約機構(NATO)内の亀裂も広がる。

 首都カブールの東5キロ。約700人が駐留するISAFイタリア軍本部から、午後2時、装甲車2台がパトロールに出発した。「最大の脅威は路上爆弾だ」。装甲車の中でミネオ大尉(33)が説明する。同時に電波妨害装置を作動させた。タリバンは路上爆弾をリモコン操作で起爆させるため、周囲に妨害電波を送り、爆発回避を図る。

 タリバンは最近、ネットで「今後、路上爆弾と自爆攻撃の2本柱で戦う」と宣言した。過去1カ月、アフガンでは路上爆弾でISAF兵ら12人が死亡。カブールでは13日、米軍車への自爆攻撃で市民8人が死亡した。

 自爆攻撃にも細心の注意を払う。装甲車に近づく車には、手で近寄らないように命じ、威嚇発砲も許される。

 ISAFの主任務は治安維持のほか、軍・警察の訓練や人道支援だ。ミネオ大尉は「われわれはカブールで学校、病院などを建設した」と、その成果を強調する。だが、カブールの治安も最近悪化し、タリバンとの戦いに直面している。

 「これは反乱鎮圧の戦いだ」。ライス米国務長官は2月、そう訴えた。テロを「自由と民主主義への挑戦」ととらえるブッシュ米政権にとって、アフガンは安全保障上、極めて重要だ。失敗は今後、数十年間続くとみられる対テロ戦争の敗北につながるからだ。【カブールで福原直樹】

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 ■ことば

 ◇国際治安支援部隊(ISAF)
 International Security Assistance Force。アイザフ。01年12月の国連安保理決議で設置が承認された国際部隊。NATOの指揮下にあり、NATO加盟26カ国と非加盟13カ国の計39カ国が参加。

毎日新聞 2008年3月26日 東京朝刊

▽覇権漂流:第1部・きしむテロ戦線/2(その2止) アフガン南・東部、治安悪化
 <1面からつづく>
http://mainichi.jp/select/world/hegemony/news/20080326ddm002030068000c.html

 ◇タリバン復権、米戦略狂い

 「日本人記者? 危ないから、行くな。タリバンが出没する」。カブール市から100キロ南のロガール州内を目指すと、検問所でアフガン兵がそう警告した。たどり着いた州都プルイアラムでは人々がおびえていた。

 「2年前から治安が悪化した。夜は怖くて出歩けない」と雑貨商のモハマド・ザモンさん(36)が語る。町は昨年、タリバンによるロケット砲攻撃を受けた。「政府軍も夜は動かない。夜はタリバンが支配している」。町には電気はなく、炊事はマキ頼りだという。

 ロガール州南部にタリバンの出身母体パシュトゥン人を訪ねた。「若者に失業が続けば、多くはタリバンにつく」「米は空爆でアフガン人を殺している。このままでは、銃を取る人間が増える」。材木商のアハマドさん(34)が話す。

 カブール西方のワルダック州でも治安悪化は深刻だ。警察は2月、自爆テロ用の車を摘発、ロケット砲を押収した。「春からタリバンの攻勢がまた始まる」。警官のアハマド・ジェッダさん(18)は気を引き締める。

   ■   ■

 国連によると、アフガンでは昨年、テロなどによる死者が8000人を超えた。「アフガンは比較的安定している北部と、武装勢力が連携して攻撃を仕掛ける南部・東部に分かれる」。国連安保理への報告で潘基文(バンギムン)国連事務総長が指摘する。

 カブールから北100キロのパルワン州内部。パシュトゥン人主体の南部州と違い、町に活気がある。タリバン政権時代に抑圧されたタジク人が多い。「治安は全く問題ない。深夜も平気で外出できる」。18人に聞くと全員が口をそろえた。州都チャリカでは夜も電器店が開き、ベール姿の女性が新製品に見入る。「当面の心配事は交通事故ぐらいだ」と警官(45)が話した。

   ■   ■

 「ISAFは死も辞さない国と、それ以外の国に分かれる可能性がある」「各国は負担を分担すべきだ」。ゲーツ米国防長官が2月、指摘した。アフガン北部など比較的安全な地域に駐留するドイツなどを批判したのは明らかだった。ドイツは、米国などの要請にもかかわらず、危険な南部への派遣を拒む。


カブール南部で休む、ISAF部隊に燃料を補給する長距離トラック。「アフガン南部でタリバンの攻撃を受けた」という。一部のトラックは、タリバンの攻撃のあおりで、破損していた。 一方で、南部に駐留する英、カナダ、オランダ各国軍にはタリバンとの戦闘で兵士の死傷が続く。「復興のために来たのに、任務はタリバンとの戦闘ばかりだった」。南部から帰還したオランダ兵(28)が振り返る。カナダはNATO各国に南部への増派を求め、要請が認められない場合には撤退も示唆する。

 「ISAFには統一された戦略や行動基準がなく、各国がばらばらに動いてきた」。ブリュッセルのNATO本部で高官が内情を吐露した。「今、やっと戦略を練っている。順序が逆だった」。その言葉通り、NATOは4月の首脳会議でアフガン戦略を練り直す。

 米国はイラク戦争をめぐり亀裂が入ったNATO諸国との同盟関係を再構築できるか。情勢悪化が続くアフガンで、対テロ戦争の真価が問われている。【カブールで福原直樹・写真も、ワシントン及川正也】=つづく

毎日新聞 2008年3月26日 東京朝刊

▽覇権漂流:第1部・きしむテロ戦線/3 原理主義ハマス支持が急回復
http://mainichi.jp/select/world/hegemony/news/20080327ddm002030092000c.html

 ◇「ガザ封鎖」米の狙い裏目

 3月6日夜、エルサレムのユダヤ教神学校に銃声が響いた。銃を乱射して学生8人を殺害したのは、東エルサレムに住んでいたパレスチナ人のアラ・アブ・デイム容疑者(25)だった。

 パレスチナ自治区・ガザ地区ではイスラエル軍による連日の攻撃で、多数の市民を含む100人以上が死亡していた。「悲しくて眠れない」。家族によると、容疑者はガザの惨状を嘆き、そう漏らしていたという。

 事件の決行後、現場で射殺された容疑者。自宅に設けた弔問所にはためいていたのは、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの緑色の旗だった。

   ■    ■


密輸業者がガザ・エジプトの境界地下に掘り進めていた密輸用のトンネル=ガザ地区南部ラファで昨年12月27日 

 1月23日未明、ガザ地区南端の町ラファ。エジプトへ抜ける地下トンネルを掘っていたイスマイルと名乗る密輸業者(24)の前に、顔見知りのハマス軍事部門メンバーが姿を現した。「もうトンネルなんて必要なくなるぞ」。男がそう言い残して間もなく、爆発音が響き渡った。ガザとエジプトを隔てていた壁が倒壊した。

 兆候はあった。昨年夏、数人組の男がバーナーで壁の下部にミシン目のように亀裂を入れ始めた。男たちは約4カ月かけ、この亀裂の範囲を着々と広げた。破壊計画は周到に準備されていたのだ。

 破壊の直前。ラファのパレスチナ人女性たちは、壁を棒でたたいて境界の開放を求めた。エジプト側では、ハマスのルーツであるイスラム原理主義組織ムスリム同胞団が「ガザの兄弟を窮地から救う」ため、座り込みなどの抗議運動を始めたばかりだった。

   ■    ■

 ハマスは06年1月のパレスチナ評議会(国会に相当)選挙で圧勝した。国際監視団は「選挙は民主的に実施された」と評価したが、ハマスが政権を握ると、イスラエルや中東民主化構想を掲げる米国はパレスチナの民意を無視した。

 ガザ境界の検問所は閉鎖され、昨年6月にハマスが武力でガザを制圧すると、締め付けは強まった。国連機関によると、昨年1月には1日当たり250台の物流トラックがガザに出入りしていたが、今年1月にはほぼゼロになった。

 米国は、封鎖の苦しみによるガザ住民の怒りがハマスに向かうと考えた。イスラエルは、武装勢力によるロケット弾攻撃の気勢がそがれることを期待した。だが、現実は反対方向に動いた。

 ガザ住民は倒れた壁を踏み越え、エジプト側に燃料や日用品の「買い出し」に殺到した。「ハマスが封鎖を解いてくれた」と無職のアブハシムさん(30)は絶賛した。今月17日発表の世論調査によると、ハマスのハニヤ最高幹部の支持率は47%まで急回復し、イスラエルとの和平に取り組む穏健派のアッバス自治政府議長の46%を逆転した。

 ガザ住民の約8割に食糧を援助する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)ガザ事務所のノルダル副所長は「封鎖は失敗だ。若者を過激思想に走らせ、武装集団の勢力拡大を容易にするだけだ」と断じた。【ラファ(ガザ地区南部)で前田英司】=つづく

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 ■ことば

 ◇中東民主化構想
 ブッシュ米政権は01年9月の同時多発テロを受け、「非民主的な体制が過激主義の土壌になっている」として中東民主化構想を掲げた。だが、非民主的なアラブ国家・地域で自由選挙を行うと、イスラム勢力が台頭する矛盾が露呈。フセイン政権崩壊後のイラクではイランと近いイスラム教シーア派が勢力を伸ばし、パレスチナではイスラム原理主義組織ハマスが選挙で圧勝した。

【関連記事】

【関連写真特集】パレスチナ自治区ガザ地区 エジプト境界壁壊れる

毎日新聞 2008年3月27日 東京朝刊

▽覇権漂流:第1部・きしむテロ戦線/4 パキスタン兵士1割前線離脱
http://mainichi.jp/select/world/hegemony/news/20080328ddm007030024000c.html

 ◇米の「盟友」独裁も揺らぎ

 「あなたの息子は軍から逃亡した」。パキスタン北西辺境州スワート近郊で農業を営むアミールさん(47)=仮名=は、昨年10月、そう記された文書を軍から受け取った。

 アフガニスタン国境沿いの山岳地帯に広がる「部族支配地域」での、イスラム武装勢力掃討作戦。ムシャラフ大統領が米国の強い要請を受け02年春から始めた。アミールさんの長男(24)はその最前線に派遣されていた。

 だが、先が見えない戦闘が続き、前線の兵士にはえん戦気分が広がる。長男は「同じ地域で暮らすもの同士が、何のために殺し合うのかわからない」と悩み、武装勢力に投降した。昨年の投降者数は500人、自主退役者も4000人に上り、前線に立つ兵士の1割が戦列を離れた。

    ■   ■

 「石器時代に戻るか、それとも、対テロ戦争に参加するか」。01年9月の米同時多発テロ直後、アーミテージ米国務副長官はムシャラフ大統領にそう迫ったとされる。大統領は、支援してきたアフガンのタリバンなどイスラム原理主義と決別。90年代に核開発疑惑が表面化して以来悪化した米国との関係を修復し、対テロ戦争の同盟国となる道を選んだ。

 これを受け、米国はアフガンに侵攻。以後、部族地域にはアフガンの旧支配勢力タリバンや、国際テロ組織アルカイダのメンバーが多数逃げ込み、テロリストの聖域と化した。

 だがパキスタンにとって、対テロ戦争への参加の代償は大きかった。戦闘で部族地域の住民に死者が出るたびに、各地で軍施設などを狙った自爆テロが起き始めた。昨年7月にイスラマバードで起きた神学生によるモスク(イスラム礼拝所)ろう城事件、12月のブット元首相暗殺事件にも、部族地域を拠点とする武装勢力の関与が疑われている。

 米国は、対テロ戦争遂行のための「盟友」としてムシャラフ大統領に依存した。だが結果として、イスラム過激派は勢力を拡大。アフガンからのテロリスト一掃を狙った米国の対テロ戦争は、パキスタンの「テロの温床」化という、思惑とは逆の結果をもたらした。

 イスラム国家として唯一核兵器を保有するパキスタンの不安定化は、地域のみならず、世界全体への核拡散への懸念を高めかねない。

 盤石と思われたムシャラフ体制は、今年2月の総選挙敗北で死に体化した。米国はムシャラフ大統領への過度の依存を断ち切り、「民主化支援」を名目に政党勢力結集路線へと軌道修正を急ぐ。

    ■   ■


「テロとの戦いでこの地は敵と味方に引き裂かれた」。アミールさんは自宅で、息子の無事を祈った=パキスタン北西辺境州スワート近郊のカトゥラン村で1月 

 1月2日、アミールさんの元に息子から電話がかかった。「(武装勢力から)解放されたよ」と語った息子は帰郷を望んだ。だが、アミールさんは「軍に戻りこれまで通り仕送りしてくれないか。さもないと家族が路頭に迷う」と答えた。

 対テロ戦争遂行に悩み続ける息子は、父の言葉に従い軍に復帰。今も戦場に立ち、月給4500ルピー(約9000円)の半分を仕送りしている。【パキスタン北西部スワートで栗田慎一、ワシントン笠原敏彦】=つづく

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 ■ことば

 ◇部族支配地域
 パキスタン北西部の山岳地帯にあり、住民はアフガニスタン多数派のパシュトゥン人。パキスタンは1947年の独立後、パシュトゥン人に分離・独立の動きが広がることを恐れて、部族地域の住民に高度の自治権を与えた。中央政府の行政権や警察権は及ばず、ジルガ(長老会議)でさまざまな決定を下す。02年まで、軍も一度も足を踏み入れていない。

毎日新聞 2008年3月28日 東京朝刊

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