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http://mainichi.jp/select/world/hegemony/news/20080329ddm007030153000c.html
覇権漂流:第1部・きしむテロ戦線/5止 「世代超えた戦い」あえぐ米
◇次期政権も「戦略」見えず
広大な草原が広がる米カンザス州中部の米陸軍フォートライリー駐屯地。アフガニスタンの村を再現した訓練施設で、米兵士がアフガン治安部隊の隊員31人とともに汗を流す。
家宅捜索の方法や、路上爆弾の発見法、現地語習得など60日間、集中的な訓練が続く。演習を指揮するイングラム大佐は「最前線に派遣される兵士が、生き延びる方法を学ぶ」と話す。06年の開始以来、約8000人が、ここで訓練を積んだ。
学ぶのは戦闘技術だけではない。アフガン人と寝食をともにし、直接、現地の状況や悲惨な体験談を聞くことで、「テロへの憎しみを共有、戦いの意義を認識する」(駐屯地幹部)場でもある。
アフガン治安部隊のシャリフ曹長は「携行式ロケット弾に撃たれ片腕を失った父親の姿を忘れられない」と、アフガンの現状を米兵に語り、グラフマン中尉も「(国際テロ組織アルカイダ指導者)ウサマ・ビンラディン容疑者が生きている間は戦いが続く」と話し続けた。
01年9月の米同時多発テロを機に始まった米国主導による対テロ戦争は、開戦から6年半が過ぎた。戦地に2回以上派遣された陸軍兵士は74%に達し、出口の見えない戦争にいら立ちが募る。
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「破壊的なリーダーシップしか示していない」。カーター政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたブレジンスキー氏は、近著でこうブッシュ政権を批判した。
「自由と民主主義の拡大」を掲げるイスラム過激派との戦いは、アラブ諸国の警戒感を誘発した。同時多発テロ直後は「怒れる米国」のもとに結集した国際社会も、イラクへの戦線拡大で亀裂が走った。「友好国を分断し、敵を結束させている」というのがブレジンスキー氏の分析だ。
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米陸軍のゲリラ戦専門家ジョン・ナグル中佐は「対テロ戦争は40〜50年続く、世代を超えた戦いになるだろう」と分析する。
だが、ブッシュ政権は、確たる戦略や、ゲリラ戦の準備もなく、米同時多発テロの「報復」目的だけで戦争にひた走った。ブッシュ政権は09年1月に退任するが、その後を狙う大統領選の有力候補からは、「対症療法」を超す戦略は見えない。
共和党のマケイン上院議員は基本的に現政権の路線を継承、「イラクの成功」をテコに米国の威信回復を目指す。
一方、民主党指名争いを続けるバラク・オバマ、ヒラリー・クリントン両上院議員は、イラク戦争を「誤った戦争」と位置付け、早期撤退を打ち出すが、アフガンでの対テロ戦争は重視する。オバマ氏は「本当の主戦場はアフガン、パキスタンでの戦いだ」と強調、クリントン氏も同様の主張を展開する。
ブッシュ政権が「長い戦争」と位置付ける対テロ戦争。その混迷は、冷戦後の世界戦略を定めきれず、世界のリーダーとしての役目を果たせない超大国・米国の漂流を浮き彫りにしている。【フォートライリー(米カンザス州中部)及川正也】=第1部おわり
毎日新聞 2008年3月29日 東京朝刊