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経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”
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http://diamond.jp/series/machida/10056/
メディアはあまり報じないが、「100年に一度あるかないか」の経済・金融危機が一段と深刻になる中で、麻生太郎政権は2つの“悪政”を目論んでいる。
第一は時節をわきまえない“役人優遇”策だ。来年4月から東京・霞が関の本省に勤務する各省庁の若手国家公務員を対象に「本府省業務調整手当」を新設する。巷では失業者が溢れ始めたのに、この手当てが再来年4月から完全実施されると、30歳前後の若手官僚(係長クラス)で月額1万4000円程度の増収になるという。
第二が公的資金を使った金融機関への資本注入だ。社会的に必要な場合は現行法でも可能な枠組みが整備されているにもかかわらず、「予防的」「中小企業の資金繰り支援」といった大義名分を掲げて、廃止するはずだった時限立法(「金融機能強化法」)をわざわざ復活。これに改正を加えて、税金で救済する場合、これまでのような経営責任を問わないで資金を投入する道を開くという。
周知の通り、麻生太郎首相は、企業を経営した経験が売り物のひとつ。「政局より政策」と解散・総選挙を先送り、「経済」と「景気」を立て直すと広言してきた。ところが、効果が期待できる経済政策より、公務員優遇手当の新設や金融機関の経営者擁護を優先して、国民の血税をドブに捨てようとしているのが実態なのだ。これでは、とても経済通の宰相などと言えない。すでに20%台前半に落ち込んだ世論の支持率がさらに下がるのは確実な情勢だ。
「本府省業務調整手当」の支給対象になるのは、東京・霞が関の内閣府本府や財務、経済産業、総務、外務などの本省に勤務している若手官僚たち約3 万5000人。本府省での勤務は、国会における野党の質問攻勢に対応して、深夜・早朝まで政府の答弁などを作成する激務に追われ、人気が離散。近年は特に勤務希望者が減少していることから、激務に応える給与体系を構築する必要があるというのが、この手当を新設する理由だ。
年金や居酒屋タクシー問題を追及する質問を連発した民主党の長妻昭衆議院議員に引っ掛けて、この手当を「長妻手当」と呼ぶ向きもあるという。
ちなみに、手当は、来年度と再来年度の2回に分けて段階的に支給額を引き上げて完全実施することになるが、その再来年度以降の手当額の算出は、課長補佐が基本給の9・4%(来年度も9・4%)、係長が4%(同2%)、係員が2%(同1%)となるという。実際の支給額は、課長補佐で月額4万円前後、係長で1万2000円前後になる見通しだ。
国家公務員の給与は、長年にわたって、スト権を認めないなど労働基本権を制約する代償として、民間企業の従業員と比較して見劣りしないものとするよう、人事院が調査・比較して是正の勧告を出す仕組みを取ってきた。昭和50年代半ばには、政治主導で、その実施をほとんど見送った時期もあるが、最近は、その勧告を不可侵のものとするムードが定着。2006年の見直し後も、比較対象の民間企業が従業員50人以上の大企業とされており、平均的な民間の給与水準を推測するのに不適当ではないかといった批判を無視する形で、勧告の完全実施が続いている。
この結果、人事院の公務員のモデル給与例をみると、係長(35歳、配偶者と子1人)の年間給与は479万3000円、本府省課長補佐(同じく35 歳、配偶者と子1人)は739万9000円、本府省課長(45歳、子2人)は1219万5000円、本府省局長は1790万6000円、事務次官は 2351万8000円などとなっており、一流企業と比べても遜色ないものとなっている。
加えて、最近は、公務員には民間企業の従業員のような倒産やリストラクチャリングに伴う失職のリスクがないことから、「そもそも同水準の給与を保証する必要はない」といった批判の声が霞が関の内部からも起こっていた。
実際、民間では、非正規雇用労働者を中心に給与カットどころか契約の更改打ち切りなどが横行しており、失業者が急増しているからだ。あのソニーでさえ、9日、全世界で1万6000人程度の人員を削減すると発表し、世間を驚かせたばかりだ。
さらに考慮しなければならないのは、麻生首相が、当面の景気対策の代償として、「3年後には消費税の引き上げをお願いしたい」などと増税を持論としてきたことだろう。国民に重い負担を求めるのならば、まず、政府の側が、もっと機動的に、公務員給与を抑制できる枠組みを作り、それを断行するのが筋である。
麻生政権は先の公務員制度改革でも、こうした問題にメスを入れる方針を打ち出さず、同じ公務員である人事院に検討を委ねようとしているという。そこにあるのは、政策を作ってくれる官僚たちともたれあい、媚びるだけの指導力のない政治姿勢だけである。今回のような経済や景気の流れに逆らうかのように、公務員だけが“昇給”する施策が、幅広く国民の理解を得られるとは考えにくい。
一方、25日の会期末を待たずに、12日にも成立すると見られている金融機能強化法も見逃せない問題を内包している。
同法は、もともと国が地方金融機関などに公的資金を投入できることを定めたものだが、2004年の施行からの適用実績がわずか2件しかなく、今年 3月には新規の申請を受け付ける期間が終了し、廃止に向かっていた。その背景には、欧米が迫られたような金融システム危機を回避するために公的資金を投入する枠組みは、我が国の場合、預金保険法や貯金保険法に規定があり、金融機能強化法が失効してもなんら支障がないという事情も存在していた。
ところが、政府・自民党は今年秋になって、唐突に、同法の復活を目指した。貸し剥がしや貸し渋りに遭っている中小企業への資金供給を円滑にするというのが当時の名目。このため、中身の面で、公的資金投入の是非を決定する際に設けていた、財務内容の検証や経営責任の追及といった血税の浪費に歯止めをかけるための措置を削除した。つまり、本来ならば、破綻処理しかそぐわないケースでも「一律に拒まない」と公的資金の投入余地を作ったり、経営陣の辞任などを求めないスキームの救済を可能としたのだ。
10月後半には、農中を通じて各地の農業協同組合への資金投入に道を開くことや、投入できる資金の規模を当初想定していた規模の5倍に相当する 10兆円に増やしたことが憶測を呼び、「農林中央金庫が債務超過に陥ったのではないか」との噂が永田町で駆け巡る事態も引き起こした。
さらに10月22日(水曜日)の夜には、ある全国紙が同紙のホームページ上で、農中の経営危機を報じる記事を掲載し、約2時間後に消去する騒ぎも起きた。混乱は大きく、当の農中広報部に取材したところ「事実無根と抗議した」と憤っていたほどだった。
債務超過と認定すべきかどうかとなると、政治的な判断もあろうが、農中がその後11月27日に発表した2008年9月中間期の業績は経常利益が前年同期比で86・9%減の201億1300万円と悲惨な内容だった。しかも、資産内容はさらにひどく、純資産が2兆4473億円しかないのに、一般の証券化商品を6兆8230億円保有し、その評価損が7584億円に達している。さらに、これ以外にも米政府が政府の管理下に置いた住宅金融公社2社などのモーゲージ債を3兆4825億円も抱えている。
金融機能強化法で資本注入をするのは、農中ではないかとの噂はいまだに払拭されていない。同法の公的資金注入については、政府・与党だけでなく、参議院民主党でも様々な議論があり、放漫経営の末、都民の税金を投入した新銀行東京や農中を救済対象から外すべきだとの議論が根強かった。しかし、修正が加えられたうえ、12日にも成立するとみられている同法では、農中は救済対象として存続する見通しだ。同法のこのお粗末な側面が放置されたのは、政府・与党の意向だけでなく、民主党も先の参議院選挙で勝因となった農中・農民票を失うことを恐れて筋論の主張を引っ込めてしまったことが響いている。
血税を戻る見込みのない資本注入で大盤振る舞いすることなど、やってよいはずがない。麻生政権や与党は論外だが、そういう悪政を地方票や農業従事者票の欲しさから止めようとしなかった野党・民主党もおおいに批判されるべきではないだろうか。
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【マスゴミが伝えない民主情報】「資金運用の拡大で損を出した農林中金や新銀行東京の救済は、経営責任を問うことが大前提」08 年 10 月 29 日
http://www.asyura2.com/08/senkyo55/msg/432.html
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