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(回答先: 第106回 安倍教育改革「負の遺産」 「哲学」の崩壊は憲法問題 (2007/05/22) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 10 日 19:41:59)
第107回 日本はエネルギー大国になれるか 実現間近に迫った核融合発電 (2007/05/25)
http://web.archive.org/web/20070527141438/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070525_kaku/index.html
2007年5月25日
この5月27日に、東大立花ゼミの主催で、ちょっと面白いことを企画している。
5月27日は東大五月祭の最終日だが、この日、本郷キャンパスの工学部2号館(安田講堂すぐ隣の大きな建物)で、日本の核融合研究を代表する学者たち6人を招んで、
“徹底討論・核融合
『点火&アフター』
ロードマップとタイムテーブル”
という一大討論会を開こうとしている。「点火」とは何かというと、核融合の火が点くということである。
核融合は、夢のエネルギーとずっと呼ばれてきた。水素、重水素といったどこにでもあるありふれた物質を燃料ににして、とてつもないエネルギーを取りだすことができる。核融合発電に成功したら、人類はもうエネルギー問題で悩むことがなくなるとまでいわれてきた。
また核融合発電は、安全性がきわめて高い。原子炉のように暴走する恐れがない。放射性廃棄物も放射能のレベルが低く、半減期が短い。原子力発電のように半永久的(100年、1000年単位)保存で悩むこともない。
能書き通り実現すれば、本当に夢のエネルギー源なのだが、研究をはじめてみると次々にむずかしい問題が生じて、実現に向けてのロードマップとタイムテーブルは狂うばかりだった。
50年前、1950年代に研究がはじまったころは、あと20年ないし30年もすれば必ず実現するものと思われていた。
next: 一国では負担できない巨大プロジェクト
http://web.archive.org/web/20070527141438/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070525_kaku/index1.html
一国では負担できない巨大プロジェクト
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核融合というのは、宇宙では日常的に起きている現象で、夜空を見上げたときに目に入る光は、すべて核融合の火である。昼間、地球を満たしている光もすべて太陽で燃えている核融合がもたらした光である。
自然の教えに従えば、ある条件さえととのえば、核融合は必ず起こる。基本的には、地上で太陽と同じ状態を作ればいいわけで、まず物質をプラズマ状態にする(電子をはぎとって原子核だけにする。身近には蛍光灯の中のガスがプラズマ状態)。それを超高温かつ超高密度状態に置けばよいのだが、これがむずかしい。高温といっても1億度以上、高密度といっても、1平方センチ当たり、100兆個以上などというとんでもない条件を満たす必要がある。
はじめは、それがあまりにもむずかしく、60年代、70年代は、悲観的な空気が学界をおおっていた。核融合なんて絶対できるはずがないとまでいう人が結構いた。
しかし、1980年代はじめに、1億度で1兆個という高温高密度状態が実験的に本当に実現されるようになった。80年代半ばには、レーザー核融合で核融合が本当に起こり、発生する核融合中性子が10兆個のオーダーに達したことが確認されるなどの原理実証的成果があがった。
磁場核融合でも、成果が確実に得られ、90年代はじめに、日米欧でいずれも、臨界プラズマ条件(加熱入力に等しいだけの出力が核融合から得られる。利得ゼロ状態)を達成したという報告があいつぎ、基本的には核融合(発電)が本当に実現する見通しが出てきた。
next: しかし、実験炉から実用炉にもっていくためには
http://web.archive.org/web/20070527114203/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070525_kaku/index2.html
しかし、実験炉から実用炉にもっていくためには、利得(出力マイナス入力)がゼロではダメで、最低でも10倍、20倍にする必要がある。そのためには、装置の大型化が必要で、それには数千億円から一兆円という巨額の投資が必要になるといわれた。
とても一国では負担できないというので、80年代の後半から、国際共同実験路を作ろうという動きになった。
イーターの仏誘致でメディアの関心薄れる
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80年代後半、長くつづいた米ソ冷戦が急速に終わりを迎える動きがはじまった。1985年、レーガン(米)とゴルバチョフ(ソ)両首脳の会談で、冷戦の終わりのシンボルとなるような巨大共同事業として、国際熱核融合炉(イーター)を作ろうという話がまとまった。
しかし、実際に作るとなると、各国の思惑の衝突(どこに作るか。誰が運営するか。資金の分担をどうするか)、研究者の意見の衝突(実験炉の設計内容。運用方式。実験計画。人事。ポスト実験炉)があって、なかなか話がまとまらず、計画は二転三転した。そのうち、一般の関心も次第に薄れてきたという状況がある。
特に日本では、イーターを日本に誘致できるかどうかが大きな話題になっていた頃は、ある程度一般メディアもイーターとか核融合研究の現状についてある程度の報道をしてきた。しかし、イーターが最終的にフランスに行くことが決まったとたん、メディアの報道量が極端に落ちこんで、いま、イーターがどうなっているのかを知る人は、一般社会にほとんどいないという状況である。
next: 現実にはイーターは、その後も計画が着々と進んでおり
http://web.archive.org/web/20070527114738/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070525_kaku/index3.html
現実にはイーターは、その後も計画が着々と進んでおり、イーターを建設運用する国際組織「イーター機構」がすでに正式に設立され、実験炉も今年中に正式に着工される予定である。建設には10年かかるが、10年後から実験運用がはじまり、運用開始数年以内(2020年代はじめ)に、核融合の火が点火することが確実視されている。
日本はイーターこそ誘致できなかったものの、最後までフランスと誘致を争った機構の主要メンバーとして、実験炉の相当部分の製作を請け負うことになっている。運用・実験のマネジメントも、日本が中心的な担い手となり、遠隔実験装置が日本に置かれ、日本からも実験操作が可能になる。イーターは装置がフランスにあっても、日本が半分主役となって主体的にかかわる実験装置なのである。
磁場核融合でもレーザー核融合でも実現間近
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また一方、レーザー核融合の世界では、アメリカが最も力を入れていて、国立点火施設(NIF)という壮大なパワーレーザーの集積装置をすでに作り上げつつある(完成間近)。それが完成したら、ターゲット・チェンバーの中に置かれた小さな小さな豆粒ほどの超小型水爆に192本のパワーレーザーをドーンとあてて、そこで核融合を起こさせる(点火させる)予定である。
NIFは、建設途中からパワーレーザーの性能テストも同時進行で行っており、2010年代はじめの点火が確実視される。レーザー核融合の世界で、「点火」とは、入力エネルギーの20倍の出力エネルギーを取り出すことをいう。
つまり、磁場核融合でも、レーザー核融合でも、ごく近い将来核融合の点火が実現することは、もはや確実といってよい状勢になってきた。このあたりで、関係者を集めて点火の後を議論しようというのが、5月27日のシンポジウム、「点火&アフター」なのである。
next: 点火のあとはもちろん、発電に向けてすすむ
http://web.archive.org/web/20070527113752/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070525_kaku/index4.html
点火のあとはもちろん、発電に向けてすすむ(原型炉。商用炉)のだが、いまのところ、2050年には、原型炉(デモ炉)によるある程度の規模の発電が行われるようになると予測されている(イーターでも後半の2030年代には発電技術の実証実験が行われる予定という)。
私は間に合わないだろうが、いまの若い人たちは確実に生きている間に核融合で発電された電気を使う時代を迎えるのである。
日本は、核融合技術の開発が世界でいちばんさかんな国で、イーター、レーザー以外にも、さまざまな方式の研究がさかんに行われてきて、研究者の厚みも厚い。
これは日本が資源的にエネルギー貧乏国であったことも大いに関係している。
主たるエネルギー資源が地下資源(石油。石炭。天然ガス。ウラン鉱)である限り、日本は資源貧乏国状況を脱することができないが、核融合がエネルギーの主流になる時代になれば、エネルギー資源はその国の技術力(頭脳力)の中にあるという時代になる。そうなると、これまでの研究の実績からいって、日本が一挙に世界有数のエネルギー大国になる可能性すらあるのである。
5月27日のシンポジウム、日本の核融合研究の主流の人々がほとんどやってくるので、イーター、レーザーはもとより、未来型核融合炉まで含めて、面白い話が沢山聞けるはずである。
私は出演者全員から予備取材的に話を聞いたが、ウヘェーと驚く話ばかりである。イーター、レーザー核融合の現状況の話も驚きだが、エネルギー世界の未来像に目を開かれる思いがした。
いま、「五月祭・核融合シンポジウム」のサイトで参加の受付をしている。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月 -2006年9月東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。2006年10月より東京大学大学院情報学環の特任教授。 2007年4月より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。近著に「滅びゆく国家」がある。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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