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第74回 大手銀に“架空利益”もたらした政府・日銀の異常な金融政策の行方 (2006/05/24)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/746.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 16:07:46: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第73回 ポスト小泉を呪縛する靖国問題と竹中問題 (2006/05/17) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 00:18:10)

第74回 大手銀に“架空利益”もたらした政府・日銀の異常な金融政策の行方 (2006/05/24)
http://web.archive.org/web/20060710141742/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060524_kinyuseisaku/

2006年5月24日

 三菱UFJフィナンシャル・グループの当期利益が1兆1817億円に及んだという記事を驚きをもって読んだ。みずほフィナンシャルグループもそれに次ぐ6499億円の利益を上げたことも同時に発表された。苦しい苦しいといっていた銀行がそんなに儲かっていたのかと驚いた。

 三菱UFJの利益は、1兆3721億円の利益を出したトヨタ自動車に次ぐ利益である。快調に進撃をつづけるトヨタがそれだけの利益を生みだすことには何の不思議もないが、つぶれそうになったので、公的資金の注入まで受けていた巨大銀行がそんなに儲けてよいのかという思いが多くの人の胸に浮かんだはずである。

 
「架空の損失」が銀行に利益もたらす政策の愚
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 夕刊紙などは早速、「そんなに儲かっているなら、住宅ローンの金利を下げろ」という論調で銀行を叩いていた。

 よくよく読んでみると、三菱UFJの場合、巨額の利益を上げたとはいっても、その内容は、通常の銀行業務による営業利益がそれだけあったということではない。

 巨額の不良債権と化していた、倒産寸前(とみなされていた)企業への融資に対応して積んでいた巨額の貸し倒れ引当金が、融資先の経営が改善され、貸し倒れの可能性が低下したため、不要になって戻ってきた「戻し益」によるものである。

 それはいってみれば、帳簿操作で生まれた利益のようなものである。粉飾決算で生み出される「架空の利益」とは逆に、実体以上に将来の損失を過大に見積もったが故に生じていた「架空の損失」が消えたことによって生まれた利益である。

 その底にあるのは、不良債権問題を心配しすぎた金融庁の行きすぎた指導が、貸し倒れ引当金の過剰積み立てをまねいていたということであって、銀行に特別に責められるべき理由があったということではない。

 それ以上に銀行のバカ儲けの根底にあるのは、政府が日銀に続けさせてきたゼロ金利(プラス量的緩和)政策である。ゼロ金利政策とは、倒産寸前だった銀行を救済し、巨大債務をかかえて四苦八苦していた巨大企業の債務負担を軽くするためにとられた、世界の金融史上いまだかつて例がないような異常な政策である。

 
next: 踏みにじられた小泉政権の公約…
http://web.archive.org/web/20060710141742/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060524_kinyuseisaku/index1.html

踏みにじられた小泉政権の公約
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 ある意味で、その異常な政策が功を奏して、景気は回復した。

 旧UFJを破綻寸前まで追いやっていたダイエー、ミサワホーム、大京、日商岩井(現双日)などがいずれも黒字経営に戻っている。しかし、この政策の裏で何が起きたかというと、政府債務のとてつもない膨脹である。

 いま国家財政は、全部ひっくるめると現在1000兆円をこえる債務をかかえており(国債だけなら昨年12月末で663兆7743億円)、それは GDPの2倍をこえていて、日本の歴史上いまだかつてないレベルに達している。あの貧乏のドン底状態であった終戦直後の国家財政ですら、GDP比でいってこれほどひどくはなかった。

 景気回復によって、銀行も企業も、空前の利益をあげているというのに、国家財政は、歴史上かつてないほどの借金をさらに積みますだけで、いっこうに改善のメドが立っていない。

 政府はプライマリーバランス(借金の積み増しをしない状態)を2010年代のはじめに回復したいと希望を述べるだけで、それをどのようにして可能にするのかという具体的解決策は、政府当局者が誰も語らないという為政者にあるまじき恐るべき無責任体制がずっと続いている。

 プライマリーバランスが回復ができない状態で政府が何をやっているのかというと、借金の証文を書き換えるだけなのだ。支払い期限がきた国債を払うために、毎年発行する借換債がとっくに年に100兆円を超えている。国債の発行枠を30兆円とするという小泉政権の発足時の約束は、とっくの昔に踏みにじられている。

 
借換債問題が国家財政を破綻へ追い込む
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 今年度の新規国債発行額が、30兆円にもなるということはよく知られているが、現実の国債発行は、それにプラスして100兆円以上の借換債があるから、165兆4351億円にも上るということはあまり知られていない。

 新規国債も借換債も利息は払わなければならないから、すでに国家予算の20%を超えている国債費(国債関連諸経費)の半分以上が、支払利息だ。元本を減らすことはまるでできないので、利息を払うことで借金証文の書き換えだけには応じてもらっているという借金地獄の末期状態に、日本の国家財政はずいぶん前から突入している。

 借換債は、間もなくもっともっと増やさなければならなくなるということがはっきりしている。

 
next: 98年、小渕政権時代に…
http://web.archive.org/web/20060702094759/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060524_kinyuseisaku/index2.html

 98年、小渕政権時代に、景気回復のためと称して、それまでにないほど大量の国債を発行して、史上空前の規模の公共事業を行った。80年代後半から90年代の前半までは、10兆円ほどしかなかった国債の発行額がこの年一挙に34兆円に及んだ。

 その国債の満期日が、08年にやってくる。08年には、それだけの借換債を発行しなければならないのだ。99年はもっとすごかった。37兆5000億円もの国債が発行された。その満期日は09年にやってくる。

 その借換債への乗り換えがスムーズに進むかどうか(これがいわゆる08年危機だ)、まだ何ともいえない。

 量的緩和政策が進められても、ゼロ金利政策は続けると政府・日銀が言明している背景には、この借換問題がある。借換債の金利が予想以上に上昇してしまったら、本当の国家破綻状況(ハイパーインフレなど)が生まれる可能性が大いにあるからだ。

 
プライマリーバランスの回復に有効な50年国債
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 つい1カ月ほど前、財務省の今年度新規採用1級職公務員の研修会に招かれて、何でも話したいことを話してくれといわれたので、財務省に課せられている喫緊の課題は、何といってもプライマリーバランスの早急な回復にあるという話をした。

 景気が回復した今こそそれに手をつけないと(すぐに回復はできないにしろ、少なくともその筋道は見つけておかないと)、悔いを千載に残すことになると述べた。

 そのためには、既成概念にとらわれたものの考え方をしていてはダメで、これほどの異常事態が起きている状況においては、相当過激なことをする必要があるから、たとえば、こんな考え方もあるとして、次のようなことを述べた。

 すでにヨーロッパ諸国で行われていることだが、50年国債を発行して、順次現存の10年、20年、30年国債をそれに書き換えていく。そして、50年国債に限って、相続税を免除(あるいは大幅軽減)することにする。

 それも1代限りでなく、2代、3代にわたって相続してよいことにする。

 そうすると、資産家の最大の心配は、自分の死後、子孫が遺産を相続するにあたって、相続税を国にどさっと取られて、貧乏することになるのではないかということにあるから、資産家であればあるほど、他の資産をどんどん売ってでも50年国債を購入しようとするだろう。

 
next: 相続税を免除したりすると…
http://web.archive.org/web/20060702094817/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060524_kinyuseisaku/index3.html

 相続税を免除したりすると、本来国に入るべき相続税が入ってこなくなるから、国は相続税減収効果で、相当損失を被ることになるのではないかと考える人もいるだろうが、実は相続税というのは、それほど巨大な費目ではない。年間1兆3000億円程度(03年)である。それよりも、この制度によって引き出されてくる数百兆円規模の隠れ資産によって50年国債が大量消化できれば、それによって、国の財務を立て直す筋道がつく。その利益のほうが国にとってははるかに大きなはずだ。

 
消費税の増税では財政破綻は救えない
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 以前から、日本には1400兆円もの個人金融資産があるから、国の借金がちょっとやそっと増えても大丈夫なのだという議論がよくあったが、個人の金はあくまで個人の金である。国家がそれを勝手に使うことはできない。

 国家がそれを使うためには、それを個人の懐から国家の懐に移す手続が必要だ。税金として取り上げてしまうか、国家が借金として借りるという形にするかである。

 税金として取り上げる道は、政治的に大変動をまねく恐れがあるので、政治家はやりたがらない。それで借金政策できたが、それはすでに見たように、現存のスキームのままでは量的限界に達している。

 これからも借金政策でいくなら、新しいスキームが必要だ。何らかのメリットを個人に与えて、個人が喜んでその金を、新しい借金の証文とともに国庫に入れるスキームが必要になるのだ

 いま述べたようなスキームであれば、大金持ちほど喜んでそれを利用し、それを長期にわたって(何代にもわたって)保有し続けるだろう。それによって、個人の懐に止どまり続けたら死んだままで終わるであろう巨額の資金が、国家の財政基盤を下支えする超長期固定資金として生き返ることになる。

 まじめな話、これくらい過激なことをやらないと、日本の財政破綻は救えないと思う。

 財政破綻を救うためには結局消費税を増やす以外にないという議論をよく聞くが、計算すればすぐわかるが、消費税増税によって財政をバランスさせようと思ったら、必要な消費税の税率は40%をこえてしまうのである。そんなことは政治的にできるわけがないし、できたとしても、その増税によって経済の足が引っぱられ、所得税も法人税もダウンしてしまう逆効果のほうがはるかに大きいだろう。

 ここは大金持に少々甘い汁を吸わせることになるが、国家が資産家たちに助けてもらう以外ないのではないか。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
 

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