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http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/bunmin/list/CK2008120802000163.html
【揺らぐ文民統制】
<1>幹部教育 『現場任せ』 残す疑念
2008年12月8日
制服姿で整列し、教室へ向け行進する防衛大学生=神奈川県横須賀市で(川北真三撮影)
神奈川・三浦半島の東南端、小原台。東京湾を見下ろす絶好の場所に将来の幹部自衛官を養成する防衛大学校がある。卒業生は約二万二千人。旧軍出身者が定年退官した後、陸海空各自衛隊のトップである幕僚長は防衛大学校卒業生が独占してきた。
太平洋戦争で旧日本軍の侵略行為を正当化する論文を公表し、更迭された田母神(たもがみ)俊雄前航空幕僚長は第十五期生の一人だ。
校長の五百旗頭真(いおきべまこと)氏が名誉会長を務める日本防衛学会の研究大会が十一月、防衛大学校で開かれ、シンポジウムで「田母神問題」が取り上げられた。
森本敏拓殖大教授(防大九期)は「文民統制への信頼をつぶした」と批判し、竹河内捷次(たけごうちしょうじ)元統合幕僚会議議長(同)は「歴史や社会現象は単純ではない」と苦言を呈したが、自衛隊の「教育」に言及する意見はなかった。
今年四月、入学した防大生に配られた「必読資料集」には歴代校長の講話が再録されている。第四代校長だった土田国保氏(元警視総監)が一九八四年入学の三十二期生に行った講話のテーマは「愛国心」だった。
終盤、唐突に「戦後の精神的な空白のすき間に、突出してきたのがマルクス・レーニン主義であります」と語る。階級なき社会をつくり、国家を消滅させる思想と断定し、「こういう見方が日教組(日本教職員組合)を中心に、戦後の教育界に大きな影響をもたらし、現在でもその尾を引いている」と続く。
愛国心が薄いのは教育や日教組に原因がある、との主張だ。幹部自衛官が「国民の愛国心」を語る時の論法と見事に一致している。
二〇〇三年七月、航空自衛隊幹部の登竜門である幹部学校指揮幕僚課程の選抜第一次試験があり、論文のテーマはやはり「愛国心」だった。
試験後の所見で、主任試験官の一等空佐は「ごく一部の受験生において、戦後のいわゆる自虐史観教育による影響から抜けきれず、その考え方を是とした者がいたのは極めて残念であった」とした。この所見から「植民地支配と侵略によって、多くの国々に多大な損害と苦痛を与えた」(九五年、当時の村山首相談話)との歴史認識を背景にした答案は低い評価を受け、合否に影響したのではないかとの疑念を抱かせる。
選抜第二次試験で主任試験官の別の一佐は「防衛問題(専守防衛、攻勢作戦、武器輸出三原則など)は高等教育を授かった受験者ほど、従来の枠組みの中での発想しか見られず、意気込みを感じることが少なかった」と評した。
憲法九条や国是に沿った「従来の枠組み」に基づく答案は評価されず、専守防衛を否定し、武器輸出三原則の見直しを主張するような答案が高い評価を受けたのだろうか。
自衛隊の教育は“現場任せ”である。過去の侵略戦争を正当化し、今の憲法は不自由だと不満をいう。田母神論文の核心は、幹部自衛官たちにすり込まれているのではないか。
◇
田母神前空幕長の懸賞論文問題をきっかけに文民統制の在り方が問われている。現状と問題点を報告する。(編集委員・半田滋が担当します)
<文民統制(シビリアンコントロール)> 民主主義国で、国民が選挙で選んだ政治家が軍事を統制する原則のこと。「軍隊による安全」と「軍隊からの安全」の二面性を持つ。
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