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(回答先: 立花隆さんの「メディア ソシオ-ポリティクス」の海外アーカイブを阿修羅のスレッドでまとめて保存してくれないかと、。 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 05 日 18:06:37)
第61回 ネットの日記が暴く耐震偽装問題の裏を読む (2005/12/22)
http://web.archive.org/web/20051231040455/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051222_ura/
2005年12月22日
<この項、前回から続く>
NASAの事故調査報告書問題の話を知って私が想起するのは、最近の、姉歯建築士、ヒューザー、木村建設、総研、それに公的、私的検査機関などが複雑に絡んだ、耐震強度偽装事件である。
この事件も、形式的には斯界に一応の確立された安全性基準と、安全性を守っていくための手続きルールがあり、それが正しく守られていれば起きるはずもないことが起きたという点において、シャトルの事故と似ている。
この事件、いちばん悪いのは誰かと真犯人さがしをして、それが見つかれば一件落着というものではあるまい。
誰が正しく誰が悪いかを論ずることがほとんど無意味
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いまそれぞれに非難を受けている人々が、自分より他の人がより大きな責任を負っていると主張し、醜い責任のなすりつけ合いをはじめているが、それでことが決するというものでもない。聞いていると、盗人にも三分の理屈で、それぞれ他人に聞かせる多少の理屈は持っているようで、聞けば聞くほど、誰が正しく誰が悪いかを論ずることがほとんど無意味ということがわかってくる。要するに、この連中は、いいかげんな検査機関の人間も含めて、みんなが共犯者といってよいのである。
この責任のなすり合いの風景、ファインマンの「困ります、ファインマンさん」の中におさめられている事件調査書委の内情を書いた「ファインマン氏、ワシントンに行く」の場面をほうふつさせる。
耐震強度偽装のほうは、幸いにも大地震が起きる前だったから、大きな建物が倒壊して多数の犠牲者が出るような事態(おそらく、大地震が起きていたら、チャレンジャー号事故、コロンビア号事故などものの数ではない何十倍の犠牲者がでたことは必定と推定できる)。とりあえずは、大破局が避けられているものの、その無責任ぶりは、シャトルの事故の何十倍もひどい。
この事件、聞けば聞くほど、関係者一同の人間性の低劣さが見えてくるだけで、同じ日本人として、とにかく情けないとしかいいようがない。最近の低劣な犯罪事件の続発といい、日本という社会が、どこか大事なところで壊れつつあるのではないかと思えてくる。
宇宙飛行士の野口さんは、船外活動で、一人宇宙空間に出て、地球全体を、すぐそこに見たとき、地球と自分が1対1で対峙していると実感したという。そして、こういった。
「見渡す限りの星空の中で、生命の輝きと実感に満ちた星は地球しかない」
next: こう感じたとき…
http://web.archive.org/web/20051231040455/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051222_ura/index1.html
こう感じたとき、それはほとんど「天啓」を得たといっていいような高次認識の獲得だったという。
同じ日本人でも、宇宙空間で地球を見て「天啓」を得た人もいれば、地球の表面で泥水の中をはいずりまわるようにして、下劣な責任のなすり合いをつづけて恥じない人々もいるということだ。
偽装事件を暴いたネットの力
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この事件で、もうひとつ特筆しておくべきことは、この偽装事件をここまで明るみに出すことができたのは、インターネットの力だということである。
これは、マスコミの世界では知れ渡っていることだが、実は、この事件の特ダネはネタのほとんどが、連日のように書き込みがある、ある女性のブログから発している。その情報ページ『きっこの日記』はこの事件のはじめから登場し、終始この事件の展開をリードしてきた。
そのページは信じがたいほどに情報が豊かで、マスコミの多くが、まずそこから情報の端緒を得、それをウラ取りしてから記事にすることの繰り返しだといってもいいくらいだ。
国会でこの問題追及の花形になっている民主党の馬淵代議士のネタ元が彼女であることも、このページでバラされている。
また、問題の人物の一人、「イーホームズ」の社長が、彼女にメールを寄せて、自分も知らなかったことが沢山書かれているので、リンクを張らせてくださいといってきたこともバラされている。
関係者たちが記者たちに追われて、いろいろ弁明を繰り返すようになると、即座にその弁明がいかにデタラメかをあばき、それをつぶしていていった。
その筆者は誰なのか。書かかれている内容からすると、この業界の内部に深く通じている者にちがいないと思えるのだが、本人は、ヘアメイクを業とする体重43キロの女性としか書いていない。
それが本当かとどうかは全く分からない。情報をどこから入手しているのかもよくわからない。彼女は前から芸能界に張ってあったアンテナからといっているが、それもホントかどうかわからない。これだけ大量の情報をバラまく理由もよくわからない。
わかることは、この事件をとことん表に出してやろうとする強い意志である。
事件の内部事情に通じる陰の人物の正体とは
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面白い時代になったものだと思う。日本では、このような業界ぐるみの黒い事件が内部から明るみにでることはきわめてまれだった。
欧米では、大組織の内部から、「ホイッスル、ブローワー」として、悪事を暴露する者がよく出てきて、大スキャンダル事件が明るみに出るということがあったが、日本では、組織の内部にいるものは、一身を犠牲にしても組織の秘密を守ろうとするのがふつうで、表に秘密が出ない。秘密を守るためには自殺までする人がいるくらいで、歪んだ忠誠心の持主が日本には多いのである。
next: このページの場合…
http://web.archive.org/web/20051230092410/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051222_ura/index2.html
このページの場合、その情報の濃密さからいって、事件の内部事情によほど通じている人だろうと思われる。想像をたくましくすると、これは姉歯にきわめて近い人物(姉歯とワンクッションくらいの距離にいる人物)なのではないか。
その根拠は、姉歯が、事件の当初から、悪びれることなく堂々と表に出てきて、偽装の事実を認め、途中、身の危険を理由として表に出てこない(国会に呼ばれても出てこない)日が数日あったが、そのあとは、表に出てきて、警察等の調べにも応じ、知っていることは全部話すつもりであることをはっきりさせていることだ。
そして、最近では自分が偽装にまきこまれていく過程で、心理的に非常に苦悩して、悪の世界から脱けたい脱けたいと願いつつ、悪い仲間との腐れ縁的しがらみの中で、ガンジガラメに縛られ、脱けられなくなってしまったと語っていることだ。
姉歯自身が、しがらみから脱け出る唯一の方法
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それを聞いて、この事件が明るみに出たはじめの頃、姉歯があまりにもいけシャアシャアとそして堂々と偽装した事実を認めるので、「この男はいったい何なのだ!?」と不思議に思っていたのだが、やっとそれがわかる気がした。
もともと、姉歯自身が、このしがらみから脱け出る唯一の方法が自分から全部をバラして仲間を当局に一網打尽にしてもらうことと考えていたのだとすると、あの不思議な表情の解釈もつく(やっとバラせたと安心した!)。
そして、身の危険を理由として外に出なかった理由もわかる。悪い仲間たちは、すぐに誰がバラしているか感づき(「これだけの情報を持っているのは姉歯しかいない」)、いまのうち、あいつの口を封じておかないと大変なことになると考えて、本当にそのころ姉歯に身の危険を感じさせるような行動に出ていたのではないか。
そして今は、もはや後もどり不可能なところまで、徹底的にバラしにバラしたので、ついに身の危険がなくなり、安心して表に出るようになったのではないか(あるいは警察が陰で保護しているのかも)。
以上の推理、私が頭の中で勝手に作り上げた推理であって、特別の根拠になる材料を持っているわけではないということを念のために付け加えておく。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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