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(回答先: <渡辺治・一橋大学教授に聞く>新政権、求められる構造改革と”軍事大国化”(上) 投稿者 gataro 日時 2008 年 9 月 23 日 06:59:58)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080922/171276/
新政権、求められる構造改革と“軍事大国化”(下)
2008年9月22日 月曜日 大豆生田 崇志
前回の記事はこちら(http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080919/171080/)
―― 総裁選には5人もの候補が登場しました。政策的な差はどれほどあるのでしょうか。
渡辺 5人の候補に加え、民主党の小沢一郎代表には、どんな形でも政権を取ったら米国に対する国際協力はきちんとやらなければならないという点では一致しています。改憲まで突っ走るか、テロ新法止まりか、恒久派遣までいくのかという違いだけです。手直しは必要でも、とにかく消費税も取らない、構造改革もやめるという人はいません。
財界や米国は、国民には接していないので急進的改革をやれと主張します。しかし日本の場合、今の局面では社会的破綻の度合いが大きいので、このまま突っ走れるかという不安はあります。ある程度の手直しをしないと進めないという機運が強く、国民に近い政治家であるほどできない。
選挙で勝たないといけない小沢代表は、農家の戸別所得補償まで言い出しました。麻生太郎自民党幹事長も与謝野馨経済財政担当大臣も、地方問題を重視する。選挙に勝てないし、総裁選で地方票も取れないからです。
小池百合子前防衛大臣らは基本的に勝つ気はなく、財界や米国の圧力を念頭に置いてできるだけ広く議論するということでしょう。地方にメッセージを出すには、どうやって構造改革をある程度止めるか言わないといけないのに、いずれも抽象的で触れていません。総選挙では消費税も自衛隊の海外派遣も絶対言い出せないので、総裁選で言うのが重要なのです。
そういう意味では、総裁選は自民党の生存競争のような面がありますが、華やかにやるという意味はあります。そう考えると5人も立候補した理由が政策的に説明できると思います。
構造改革を急進的に実行する案も含め、多様な政治勢力がいろんな形の政策を出すと、今までの2大政党政治のイメージではイエスかノーだけだったのが、微妙に差異のある政策が並びます。ほかにやることがあると気づいてしまい、よけいに選択肢を限る方法が無理になっているのです。
■旗印のない民主党
―― 問題は、この後に予想される総選挙の結果次第となりますね。
渡辺 総選挙では本質的な問題はあまり議論されないと思います。ただ、与党と民主党のどちらが勝つかによって、2つの課題を今後どうするかターニングポイントになると思います。
まずは自公与党が多数を取れるかどうかで違います。取った場合は確実に参議院の改変が起きます。とにかく衆院選で政権を取れば、2つの課題を絶対にこなさなければなりません。最初にテロ新法、それに構造改革の手当てのため公約した緊急経済対策を進めなければなりません。
すると財源をどうするかという問題が出るので、税制改革をすぐにやらなければなりません。恐らく自公が勝った場合は、参議院を改革して民主党を割ってとにかく衆参両院で多数派を作って突破するでしょう。
問題は自公が過半数取れなかった場合です。民主党には2つ選択肢があって、民主党が他党と組まないと過半数を取れない場合は、公明党に手を突っ込むか、それか社民と共産を引っぱってくるか。この場合、公明に手を突っ込む方が簡単です。
ところが民主党は自民党と違って、党内では急進派か新漸進派か全く議論していません。自衛隊の海外派遣の恒久法についても議論していない。そもそも代表選をやらなかったのは、結局できなかったから。やれば衆院選を戦えないので蓋をするしかなかったのです。
いずれにしても民主党政権になれば、福田康夫政権が抱えた以上の問題を抱えます。民主党は去年の参院選で、反構造改革、反大国化の旗を掲げて支持された面があります。
いつかは旗印を変える必要があったのですが、ついに変えるチャンスは衆院選まで来なかった。もともと小沢代表は大連立を機に変えたかったのですが、民主党が言うことを聞かなかったのです。
■良いバラマキ、悪いバラマキ
―― そうすると総選挙でどのような政策のメニューがあるかが問題となりますね。
渡辺 民主党が一度政権を握った場合、どの政党と組むかという問題もあるものの、やらざるを得ないのが後期高齢者医療制度の廃止です。しかし廃止した時にどんな制度を出すのか。今までの自民党政権なら変わりませんが、変えるという経験は非常に重要です。自民党の候補が言う構造改革の手直し策も、政党が代替的な政策を出せば出すほど、それににじり寄らなければならないからです。
米国や財界は怖がってバラマキだと批判しますが、問題はどんなバラマキかというバラマキの質にあります。バラマキの中に、古い自民党利益誘導政治のバラマキと、それから新しい新自由主義を超えた福祉国家型のバラマキの両方が混在しているからです。
自民党の政治家が唯一経験のあるバラマキは、公共事業による利益誘導のバラマキですから、すぐに飛びつきます。でも今はさすがに、かつてのバラマキはなかなかできません。しかし、漁業者の意見を聞いたりしていると、原油価格の高騰で漁業そのものの存立が危うい。自給率の低下が問題にされる農業も危うい。
単に公共事業投資をやって道路や箱物を作っても結局一時的で農業や漁業の再建はできない。本格的にやるならば、古い公共事業による利益誘導の政治に戻るのではなく、例えば地域産業や中小企業を本格的に再建するシステムをどうやって作るかという議論が必要なのです。
従来の自民党のように公共事業投資なのか、それとも農業や教育にばらまくのか、同じバラマキでもかなり違いがあります。代替的な政策が考えられれば考えられるほど、福祉国家型のバラマキが議論になります。それの本格的な財源の検討をすべきでしょう。私は福祉国家型の政治は、かなり可能だと思います。それで成長が不可能なのか、またはマイルドな成長が可能なのか考える必要があります。
■転換期の新自由主義
―― 世界的に見ると、日本の政治状況はどのように位置づけられるのでしょうか。
渡辺 実は世界的に新自由主義の転換が起きています。こういう形で進路が問題になってきたのは日本では初めてで、日本的な表れではないかと思うのです。
グローバル企業は競争力をつけながら、これだけ国内市場や地方政治を切り捨てて、とにかく未曾有の競争力がつきました。しかし高度成長期のように国内労働者の賃金を上げて国内市場を内包的に大きくした時期とは違って、世界市場を想定しています。国際競争力を高めるには、米国と中国が安定的に成長する必要があったのに、サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題が起きてから、その前提が崩れてしまいました。
19世紀末から1970年代末までの100年の福祉国家型資本主義は、簡単に言えば国内市場を中心に成長している限り国民統合が進み、国内の経済成長で国家資金を福祉に投入して、また国内市場を拡大するという成長循環がありました。しかし1970年代末からの新自由主義の40年間は、競争力が高まると国民統合が進むという形ではありません。
国内での成長循環がなくなると競争力が低下し、資本蓄積の隘路に直面して成長できない。そこで競争力を高めるために、国内市場と福祉の政治を切り捨て、新自由主義の新しい資本主義の発展を目指すようになったのです。生産力の低い中国など無限の可能性を持った市場が登場し、競争を拡大しました。しかし米国も国内市場が縮小し、新自由主義の転換点に差しかかっています。
しかもインドネシアやフィリピン、パキスタン、イラクなどでは、海外に展開した企業によってその土地の伝統産業や地域が壊されてしまい、雇用は増えて経済発展はするものの、半面で水や食品まで買わされる。その不満から出てくるのがイスラムです。本来イスラムは世界宗教で普遍主義的なのに、今ではナショナリズムや反米という形で登場しています。軍事的にも経済的な意味でも新自由主義は分岐点に来ています。
■解の1つは地域統合
―― そのためには地域的な経済圏が必要だと主張されていますね。
渡辺 結局、安定的に発展しているのはEU(欧州連合)ではないでしょうか。つまり解の1つは地域的な統合で競争を全体として抑えることです。EUは、もとの福祉国家を新自由主義的に改変しているので、最低限の労働基準や福祉などのセーフティーネットが一番残っているのです。かなり高賃金という問題を抱えてはいますが、新自由主義の野蛮な展開は全体として抑えているのです。
例えば東アジアでの経済圏を構築することによって、民主主義のレベルや賃金水準を同等にして、自国産業を存立させながら平準化していく。基本的な安全保障の問題や外交、民主主義の問題も地域的な統合の中で解決するのです。そのためには中国や北朝鮮も市場に組み込むしかありません。
相手国に入り込んで力で反発を抑えるのでは結局、世界的な安定はできません。地域的なブロックの中で共通ルールを作る。EU的な市場の自律調整を制御していく形を取るのです。
かつて日本は法人税が50%でよかったのは国内市場を相手にしていたからです。ところが海外が20%まで下げると、どうやっても勝てません。しかし各国が税の安売り競争をすれば、結局は資本蓄積だけが進んで福祉の水準は当然下がります。それを止めるには地域的な統合体制を作るしかないのです。
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